【登場人物】

【物語】

斜陽興業 A 
安堵晋三 B 
岸下開発 C デベロッパー

このところの不景気で倒産寸前の斜陽興業。
このままでは債権者に所有する不動産を差し押さえ
られるのも時間の問題である。
そこで、懇意にしている安堵に相談をもちかけた―。

斜陽興業:安堵ちゃんよぉ。
     ワシとこの不動産、ちょっとの間、あんたに
     売ったことにして、名義を変えておいて
     くれんかのう。
     債権者に差し押さえられてしもうたら、
     かなわんからな。

安堵:斜陽興業さんには、昔からお世話になってますし、
   こっそりやっていただけるのでしたら。

斜陽興業:さすが、よ−く、わかっとるやないか。
     じゃ、交渉成立ということで、よろしく
     頼みますわ。

それから半年が経過。なんとか倒産を免れた斜陽興業が、
不動産の名義を戻そうと安堵を訪ねると―。

斜陽興業:えっ、アンタ、あの不動産を岸下開発に
     売却したって
     あんたのとこには仮装売買ということで
     お願いしとったやないですか。

安堵:あのー、私もですね、このところ何かと
   物入りだったんでしてー。
   ほら、葬祭合戦とか、祝儀IN選手権とか、
   いろいろあったでしょ。

斜陽興業:あのねー。岸下開発は、ワシとアンタのとこの
     売買が、仮装だって知らんでしょ。
     そしたら、ワシは、岸下開発に対して、
     仮装売買は無効だから、不動産を返せって
     主張できんのよ(民法94条2項)。
     どないしてくれんのや。

安堵:えーと。その点につきましてはですね。
   私の方で、岸下開発さんに仮装売買が無効だと
   伝えますので。これでよろしいかと。。。

【問題】
Aが自己の所有する甲土地をBと通謀してBに売却(仮装売買)した。Bが甲土地をAに無断でCに転売した場合に、善意のCに対して、AはA・B間の売買の無効を対抗することはできないが、Bはこれを対抗することができる。(H20−27)
【正解】「×」

斜陽興業:なんや。
     安堵のヤツも、ワシとの仮装売買が
     無効だってことを、岸下開発に主張
     できないやないか。

さくら:はい。
    斜陽興業さんと安堵さんの売買は、通謀して、
    売るつもりがないのに売ったことにするという
    いわゆる虚偽表示によるものだったわけですが
    安堵さんも、通謀して買うつもりがないのに
    買ったという虚偽表示をしているわけです。

斜陽興業:ということは、安堵の虚偽表示もまた
     無効ということか(94条1項)。

さくら:はい。
    そして、虚偽表示の無効は、そういう事情を
    知らずに新たに利害関係に入った第三者には
    主張できません(94条2項)。
    善意(=事情を知らない)第三者を保護する
    必要がありますからね。

斜陽興業:安堵と岸下開発は、契約の当事者やないか。

さくら:岸下開発さんは、安堵さんとの売買では契約
    当事者ですが、斜陽興業さんと安堵さんとの
    仮装売買を前提に新たに利害関係に入った者
    ですから、仮装売買との関係では「善意の第三者」
    であることに変わりありません。
    したがって、安堵さんも、岸下開発さんに、
    斜陽興業さんとの仮装売買の無効を対抗すること
    ができません(94条2項)。

安堵:斜陽興業さん、このたびは申し訳ございません
   でした。
   しかし、この安堵晋三、大胆に金融を緩和し、
   必ずや景気を取り戻しますから。

斜陽興業:ワシが取り戻したいのは、不動産じゃ


【条文】
(虚偽表示)
第94条  相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。