【登場人物】

阿波野沫子 家主
駒田啓介 再三合併銀行の社員


【物語】
201X年
株式市場は、日経平均25,000万円に迫ったところで急落。
瞬く間に5,000円を割り込み、国債の金利は上昇。
銀行は一斉に貸しはがしに走った―。

駒田:阿波野様。私どもと致しましても、これ以上、
   お待ちするのは難しいところでございまして。

沫子:もうバブルには2度、踊らされちゃったわ。
   昔は、ジュリアナ東京のお立ち台、今度は証券
   取引所のお立会い―。
   腰を振ってた頃の方が被害が少なかったけどね。

駒田:・・・。
   では抵当権実行のお手続に入りますので
   家は、今月末までには明け渡していただくように
   お願い致します。

沫子:わかったわ。
   でも、その前に吹き抜けの窓に取り付けた
   ステンドグラスを業者に外させなきゃ。

駒田:いえいえ。それも家の一部ですから、
   外さないでください。
   でないと、家の競売価格が下がってしまいます。

沫子:これは、家を建てた後に、バーニーズのオークション
   で手に入れて取り付けたものなのよ。
   家には抵当権を設定したけど、ステンドグラスに
   抵当権を設定した覚えはなくってよ。

【問題】
 建物に設定された抵当権の効力は、特約がない限り、建物に備え付けられていた建具に及ぶ。(司S59−41)
【正解】「○」

【解説】
沫子:抵当権の効力が、建物に備え付けられていた建具に
   及ぶってことは、この窓にはめたステンドグラス
   にも抵当権の効力が及ぶってこと!?

さくら:はい。
    家に備え付けたステンドグラスは、家とは独立の
    物ですが、継続して家の経済的な効用を増すため
    に付属させた物ですから、家(主物)に対して
    従物にあたります(87条)。

沫子:従物っていうけど、このステンドグラスは
   2000万円は下らないのよ。
   そこらの家より高いんだから

さくら:従物かどうかは、主物の効用アップさせるものか
    という機能の問題で、価格で決まるわけでは
    ありません。
    そして、抵当権は、目的物の付加一体物にも
    及ぶわけですが(370条)、通説によると、従物
    「付加一体物」に含まれると解されています。

沫子:さっき従物は、独立の物だって言ったのに、
   今度は、「付加一体物」ですって?

さくら:従物は、物の社会経済的な効用を発揮させる
    ために付属させられた物ですから、抵当権が
    把握している交換価値に含まれる、つまり、
    「付加一体物」に含まれると解するのが合理的
    なんですね。

駒田:ということで、ステンドグラスは抵当不動産の
   付加一体物ですから、家に設定された抵当権の
   効力が及び、家と一緒に競売にかけられることに
   なります。

沫子:これがバブルの顛末なのね。。。
   アベノミクスはアベノリスクと一体だったわ

【条文】
(主物及び従物)
第87条 物の所有者が、その物の常用に供するため、自己の所有に属する他の物をこれに附属させたときは、その附属させた物を従物とする。
2 従物は、主物の処分に従う。

(抵当権の効力の及ぶ範囲)
第370条 抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ。ただし、設定行為に別段の定めがある場合及び第424条の規定により債権者が債務者の行為を取り消すことができる場合は、この限りでない。