【登場人物】

須加 日本ビル(不動産屋)(A)の社員 
安部閑三 (B)

【物語】

永田町にある賃貸住宅に住むことになった安部閑三。
しかし、契約後6か月を経っても引っ越さない。
どうしたものかと、家主である日本ビルの須賀が訪ねてきた。

須加:まだお引越しされていないと伺ったのですが、
   何か不都合でも、ございましたでしょうか。

安部:不都合もなにも、夜中に足音がするし、扉は
   勝手に開くし。
   どうも知らないヤツが居座ってるんだよね。
   ちゃんとそっちで追い出してくれないと。

須加:そんな馬鹿な。
   この間も見回りましたけど、そんなことないです。

安部:そう言われても。なんとかならないでしょうか。

須加:ですから、社としましても、そのようなことは
   承知しておりません。これが正式な回答です。
   どうしてもと言われるなら、賃借権を保全する
   ためということで、不法占有者に対し
   弊社に代わって建物の明渡しを請求されたら
   いかがですか。
   それで直接、引き渡せと請求すればいいですよ。

安部:おたくの会社に代わって私が権利を行使するのに、
   直接自分に引渡せなんて請求できるわけ

【問題】
 AはBから同人の所有する建物を賃借する契約を締結したが、その建物の引渡しが行われていない状態のもとでそれをCが権原なく占有してしまった場合において、Aが、自己の賃借権を保全するためにBに代位して、Cに対して建物の明渡しを請求するときは、Aは、建物を直接自己へ引き渡すことを請求することができる。(H17−27)
【正解】「○」

須加:ほらね。私の言ったとおりでしょ。

安部:そもそもなぜ私が、オタクの会社に代わって
   権利を行使することになるのかが、よくわかりま
   せんけど。

さくら:債権者には、自己の債権を保全するために
    債務者の権利を代わって行使することが
    認められています(423条)。
    これを債権者代位権といいます。

安部:私は賃料を払う立場なんですけど。

さくら:賃借人は、賃料を払うという側面では、債務者
    ですけど、賃貸物件の使用を請求できるという
    側面では債権者となりますね。
    今回は、不法占拠者によって使用を妨げられて
    いるわけですから、賃借権を保全するために
    債務者の不法占拠者に対する所有権に基づく
    明渡請求権を代位行使することができます。

安部:でも、債務者の権利を行使するというなら、
   債務者である日本ビルに建物を引渡せと請求できる
   だけではないでしょうか?

さくら:判例は、賃借人が賃借権を保全するために、
    賃貸人が不法占拠者に対して有する明渡請求権を
    代位行使する場合、賃借人へ直接明け渡すように
    請求できるとしました(最判S29.9.24)。
    物の引渡しを求める権利を代位行使する場合、
    もし債権者が受領できないとすると、債務者
    受領しないときは、債権者代位権の目的を達成
    できなくなるからです。

須加:ということですから。後は、安部さんに
   お任せいたします。

安部:もう。。。
   代位行使で解決できないってわかってるのに

須加:そういううわさもありますね。


【条文】
(債権者代位権)
第423条  債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利は、この限りでない。
2  債権者は、その債権の期限が到来しない間は、裁判上の代位によらなければ、前項の権利を行使することができない。ただし、保存行為は、この限りでない。