【登場人物】

西園寺君麻呂:借主
銭田 守  :金融業者(債権者)


【物語】
 スマホのアプリで一儲けを狙った西園寺君麻呂。
 鳴かず飛ばずで、残ったのは借金の山。

銭田:西園寺さん。返す、返すって言うけど、
   いったい、いつになったら返してくれるんかいな。

西園寺:申し訳ありません。
    それに、親父が死んでバタバタしていたもので。。。

銭田:えっ!
   まさか、アンタ、あの西園寺君望の息子なの
   この間、葬式をニュースで見たけど。

西園寺:ええ。。。

銭田:西園寺君望といったら、日本有数の金持ちやないか。
   ほんじゃ、相続した金があるやろ。
   元利一括、耳を揃えて返してもらうわ。

西園寺:すいません。
    僕、君望の息子ではあるんですが、実家は
    次男に全部継がせるということで、
    相続は放棄したんです。

銭田:相続放棄やとぉ〜!?
   返済する金もないクセに、なんでそないなこと
   するんや。
   債権者に対する嫌がらせか

西園寺:い、いえ、けして、そういうつもりじゃ…。

銭田:いいや。ワシら債権者を困らせるつもりじゃろ。
   そんなバカなことさせるかいな。
   相続放棄は、債権者を害する法律行為として
   債権者取消権に基づいて取り消してやるわ

【問題】
 財産権を目的としない法律行為は、原則として債権者取消権の行使の対象とならないが、相続の放棄は、例外として債権者取消権の行使の対象となる。(H11−29、H8−30)
【正解】「×」

銭田:債務者が、債権者害することを知ってした
   法律行為については、債権者が取り消せる
   はずじゃろ。

さくら:確かにそうなんですけど。
    でも、債権者取消権の行使の対象となるのは
    財産権を目的とした法律行為です(424条)。
    債権者取消権は、財産上、債権者を保護する
    制度だからです。

銭田:相続放棄によって、財産をもらわないことに
   なるわけだから、財産権を目的とした法律行為
   にならんか!?

さくら:相続放棄は、財産に影響しますが、身分行為です。
    したがって、他人の意思によって強制すべきもの
    ではありません。
    それに、債権者取消権の行使の対象となる行為は、
    積極的に債務者の財産を減少させる行為ですが、
    相続放棄は、消極的に財産の増加を妨げる行為
    すぎません。そういう点でも、債権者取消権の
    行使の対象にはなりません(最判S49.9.20)。

銭田:こうなったら、西園寺さん。
   アンタ、相続放棄を撤回しろや。

西園寺:相続放棄の撤回なんて、できるないですよ。
    それに、実家にも多額の借金があって、
    お前に相続させる金はないって言い渡されて
    ますから―。


【条文】
(詐害行為取消権)
第424条 債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした法律行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者又は転得者がその行為又は転得の時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。
2 前項の規定は、財産権を目的としない法律行為については、適用しない。