【登場人物】
森田雅子 秘密のお家の管理者 A
益子実 B

【物語】

 阿部社長から秘密のお家の処分を託された森田雅子。
 秘密裏に速やかに処分してくれとのお達しに、
 今日も四苦八苦…。

益子:ちわー。阿部社長が例のお家を処分したがって
   いると聞いてやってきたんですが。

森田:あ、益子さん…。

益子:俺もさ、阿部社長とは長い付き合いだから
   いろいろ聞いてるんだけどさ。
   でね、確認なんだけど、処分される範囲には、
   この「TPP」物置まで入るわけ!?

森田:そこは、入るような、入らないような…。
   ええと、正確に言いますと、入る可能性があります。
   ですから、必ずしも入るとは限りません。

益子:それじゃあ、どっちかわかんないよ。
   じゃあ、この西山工務店による「建具」は?

森田:それは当然、秘密のお家の範囲に入ります。

益子:えっ、そこは、はっきりするのかよ。

森田:(いつまでも、秘密のお家にかかわりたくないわ。
   もう、とっとと処分しちゃおう)
   いいですか、こちらの建物は、あなたに贈与させて
   いただきます。
   ただし、ご承知のように、いろいろと訳有ですから、
   書面は一切作りません。
   あとは委任状をいただければ登記を移転します。
   それで、いいですね。

こうして秘密のお家は益子に贈与され、登記が移転された。
しかし、益子は森田の対応が悪いなどと何かにつけて
難癖をつけてくる。

森田:もう、アナタの相手なんかしていられないわ。
   幸い、まだお家の引渡しはしてないんですもの。
   贈与は撤回させていただきます! 

益子:もう移転登記までしたんだから、今更、撤回なんて
    できないでしょ。

【問題】
 既登記の建物を書面によらずに贈与した場合において、贈与者Aから受贈者Bにその建物の引渡しが行われていないときであっても、判例の趣旨に照らすと、所有権移転登記がなされていれば、Aはその贈与契約を撤回することができない。(H17−28)
【正解】「○」

森田:書面によらない贈与は撤回できるはずだったと
   思ったけれど…。

さくら:書面によらない贈与撤回できますが、履行
    終わった部分については撤回できません(550条)。
    軽率な贈与を防ぐとともに、贈与者の意思を
    明確にさせる趣旨です。

森田:それなら、建物はまだ引き渡していないのよ。

さくら:不動産を贈与する場合は、引渡し又は登記の移転
    いずれかがあれば、「履行が終わった」とされます
    (最判S40.3.26など)。

森田:引渡しプラス登記ではない…。

さくら:はい。引渡し又は登記があれば、贈与者の
    意思が明確になったといえるからです。
    したがって、森田さんは、贈与契約を撤回することが
    できません。

森田:阿部社長から、秘密のお家の処分なんて
   仰せつかるんじゃなかったわ(涙)

【条文】
(書面によらない贈与の撤回)
第550条 書面によらない贈与は、各当事者が撤回することができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。