2008年07月30日

ぼけとうつ1

 認知症で被害妄想全開中のBさん。アパートの隣人からの借金がかさんできました。
 実はこのところ毎日、泥棒が彼女の脳内からお金を持ち去っているため、おかずを買うお金もないのです。
 で、「ちょっとだけよ」と寸借していたものが、樋口一葉から福沢諭吉へと出世。
 「可哀想だから」と大目に見ていたお隣さんも年金暮らしの独居老人。
 遂にたまりかね、
 「あんた、そんなことでどうするの。
毎日盗られるってことは、無一文じゃないってことでしょう。
借りたもんは返すのが道理ってもんでしょう」
と説教した、その翌日。

 Bさんが財布を持ってやって来た。
 「見て見て、あたし、日頃の行ないがいいから神様がお金をくれたわよ!」と。
 きれいに借金を返してくれたので、お隣さん、ごほうびに天丼をおごってあげたそうで。

 げに美しきは老人の友情。
 わが上司は
 「認知症じゃなくて知能犯ね」
と呆れていますが、これも、ぼけ力の効用というべきでしょう。
 Bさんは今日もひとりたくましく生き延びておられます。

 それにひきかえ、うつ病のAさん。
 老健(介護老人保健施設)への入所が決まりそうです。
 お嫁さんが根まわしをしたようで、対応をグズっていた私に上司から圧力がかかりました。
 「即、老健に入所の申し込みをしなさい!」と。
 ヘタレな私は抵抗できず。あとは、上司の口ききでトントン拍子に話が進んでいます。
 「何人待ち」「何ヶ月待ち」と言われる老健も、コネがあれば話は別なんですねー。はぁ。

 救いとしては、とかくレベルが落ちがちなショートステイよりはマシかと思えること。
 老健、建て前は「在宅復帰のための施設」ですので、リハビリをちゃんとするのが売り物ですから、ひょっとしたら、Aさんのうつも軽快するかもしれません。
 とはいうものの、入所は入所。
 せっかくデイに慣れてきたのに、また新しい環境に放り込まれるのです。
 期間も、家族が望めば3カ月までいられます。
 どうとりつくろっても、家族のための入所です。

 身体機能的には自分のことは自分ででき、ぼけもなく、攻撃的でもなく、ただ気分の障害で「できない」Aさん。
 「できないよう、嫌だよう」の連呼が家族にうとまれ、家を追われて施設へという仕儀。

 一方、もともと家族とは疎遠、独居でぼけて、他人に迷惑かけまくりのBさん。
 でも、お隣に、説教しながら優しく案じてくれる友だちがいる。
 Bさんのぼけ力を、Aさんに分けてあげられないのが残念でなりません。




 



 
 
 
 



warabinosato1 at 00:50│Comments(0)TrackBack(0) 介護 | 健康・医療

トラックバックURL

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
本の検索
ブログ村
ブログランキング・にほんブログ村へ

 にほんブログ村 本ブログへ
 にほんブログ村 介護ブログへ
 にほんブログ村 メンタルヘルスブログ うつ病(鬱病)へ