woodboard-s_thumbwoodboard-ray-s_thumbboard-picture_thumb 12月15日の鳥取県埋蔵文化財センターの発表によりますと、鳥取市青谷町の青谷横木(あおやよこぎ)遺跡で、6人の貴婦人が描かれた飛鳥時代(7世紀末〜8世紀初め)の板が見つかりました。

 複数の女性がまとまって描かれた群像は、「飛鳥美人」で知られる同時代の高松塚古墳壁画(国宝、奈良県明日香村)に次いで国内で2例目、板に描かれたのは国内初ということです。


詳しい内容は追記に示します。

person4_thumbperson5_thumbperson6-2_thumb 一般国道9号(鳥取西道路)改築事業に伴い、「青谷横木遺跡」が平成25年度から27年度にかけて発掘調査されました。その際見つかった古代の官道「山陰道」を構築した際の盛り土の中に、女子群像を描いた古代の板(長さ約70cm、幅15.5cm)が含まれていたことが判明したものです。


 絵は髪を結い裳(も)という縞模様のスカートをはいた女性が6人、右から左に向かって歩を進めている様子を墨で描いています。一番右に描かれた払子(ほっす、獣毛や麻などを束ねて柄をつけたもの)を捧げる侍女は他より小さく描かれています。板材は板目で樹種はまだ同定していません。
  
  高松塚古墳壁画の女子群像が衣装等の表現と女性が集まって描かれているというモチーフで、当時の中国(唐)の影響を強く受けているのに対して、この絵は衣装等の表現は高松塚古墳壁画と同様、中国(唐)の影響が見られるものの、複数の人物が行列するというモチーフは、当時はすでに滅亡していた高句麗(朝鮮半島北部)の壁画表現と類似性があるという特徴があります。


 描かれた時期は高松塚古墳壁画とほぼ同じ飛鳥時代(7世紀末から8世紀初頭)と考えられますが、朝鮮半島からの影響も受けた絵画表現であるという点で高松塚古墳壁画とは異なっています。


 板絵は、国内外の類例から葬送に関わるものと考えられます。板絵上部に直径5mm程の穴が開けられていますが、具体的な用途はよく分かりません。古墳の石室に架けられていたとか、実際に壁画を描く際に参考にする構図のデザイン画であるなど色々な可能性が考えられます。


 いずれにせよ、この地が朝鮮半島と伝統的な関係があった可能性を裏付ける絵画資料としても価値が高い発見です。今後は、墨だけではなく顔料で色づけされていなかったかを調べ、将来にわたって保存していくための処置を行う予定とのことです。
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 以上が収集した情報の全てです。鳥取県では以前、米子市の「上淀廃寺跡」から法隆寺金堂壁画と並ぶ最古の仏教壁画片が出土したこともありますし、エンタシスと蓮華文を持つ「岡益石堂」もあります。こういった飛鳥時代と密接する壁画が出ても不思議ではない考えていたところです。

 現代の我々が感じる以上に、因幡、伯耆、出雲は重要な地域であった筈と、この地域の古墳の文献を収集し始めたところでこの発見! 褪色が進んでいるのが残念ですが貴重です。

 この地には、石馬や石屋形、そして九州装飾古墳のとの関連性が深い装飾壁画もいくつか見つかっています。日本古来の芸術と渡来芸術が共存した国内唯一の地域としてこの地を捉え、その交流背景について考察することが必要性を増していると感じました。
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