北方侵進

BL系二次創作SSブログです。 カップリングは、リバーシブルから、マイナーものまで。

『新しい光ー10−』(シキ&アキラ+リン×源泉)(完結)

 源泉は一足先に仕事を追え、一人、部屋に帰っている。リンはなにやら仕事で使うもので買い物があるようで、今はいない。
 リンの源泉への想いに少し戸惑いつつ、慣れてはきたが、やはり不思議な縁だと思う。そして、リンの若さ故の勢いに少々圧され気味ではあるものの、源泉自身もリンに惹かれている事を否めない。
 そんな事を、つらつら考えつつ、どうしても煙草に手が伸びてしまい、リンがいないのをいいことに、ふかし続けていた。
 源泉も考え事をしていて気付かぬうちに、その本数は増え、灰皿にはこんもりと吸殻の山が出来てしまっていた。
「おっさん、ただいま〜。何? 考え事? まーた、アキラの事でも考えてるの?」
「いや、そうじゃないが……」
「じゃ、俺の事とか」
「……まあ……そんなところだ」
「何をそんなに考える事があるのさ……って」
 源泉はリンの視線の先に目をやり、吸殻の山をリンに見つけられてしまったが、今更もう遅かった。
「おっさーん」
「う」
 源泉には言い訳の言葉も出なかった。言い訳したところで、どうなる訳でもないのだが。
「おっさんの、俺への想いはその程度、って事か」
「いや、そうじゃない。違う」
「違わない。どうやら、まだ足りないようだね」
 そういうとリンは源泉をベッドに押し倒した。
 源泉の唇にリンのそれを重ね、舌を口腔内に進入させて、源泉のそれを絡め取る。煙草の味のする口づけ。
 そこから、下へと口と指を這わせていき、源泉の鎖骨を甘噛みする。
 指は、胸の突起を弄り、もう片方の突起を口で吸った。
「リ……ン……あ……」
 リンは中々そこを弄るのをやめない。
「そんな……しつこく……あ……んん」
「でも、ここもよく感じるようになっただろ」
 そんな問題ではないが、その刺激を受け、源泉のモノも昂ぶってくる。リンに直接そこを握られては、隠しようもない。
 ズボンも下着後と剥ぎ取られて露になり、直接源泉のモノを弄ってくる。
「リン、そんな、ちょっ……もう……」
 丹念に扱いた後、後腔に指を挿入し、続いて、リンのモのを埋めていった。
「ふ……く……あ……」
 リンの律動が始まって、源泉は内壁を突かれ、堪らず喘ぐ。
「ああ……リン……あっ」
「源泉……」
 絡み合う、二人の躯。リンの激しい突き上げに感じながら、源泉は思わず達しそうになる。
「リン……もう……あっ……ああっっ!」
「まだ足りないでしょ?」
 源泉のモノを握った手に力が込められて、射精をせき止められる。
 リンも達しそうになるのをこらえながら、それから何度も、抽挿した。
「お願いだ、リン、もう……」
「俺も……」
 リンは最奥まで突き上げながら、源泉のモノを開放し、ともに、それぞれの場所で白濁を放った。

 一息ついて、休息の時間を得る。
 源泉は少々疲れたが、その満足感についつい煙草に手を伸ばしてしまっていた。
「ふぅー」
 源泉が、しまったと思ったときは、もう遅かった。よりによって、リンの目の前で……。
「おっさん」
「はっ!」
「どうやら、まだ全然足りなかったみたいだね。俺が、どれだけおっさんのこと思っているか今度こそ重い知らせてあげるよ」
「リン……あの、その、お手柔らかに」
「善処するよ、って、おっさんがいったよね」
 再び、リンの躯が源泉にのしかかってくる。今度は、源泉が喘ぎ疲れて、声がかれるまで、たっぷりとリンに抱かれた源泉だった。

 ぐったりと、ベッドに横たわる二人。
「しっかし、リンもでかくなったよなぁ」
「今では、おっさんより背が高いよ」
「さすが、シキと血の繋がっている事だけは……スマン」
「いいんだ。もう、あいつの事は。俺は一度死んだ身だ。恨みは消えない。でも、それでもうどうこうする気もない。二度と会う事も……」
 シキにもう二度と会う事はない、という事は、傍にいるアキラとも会う事がない、ということだ。
「今生きているのが不思議なくらいだ。いくら、急所から外れていたとはいえ、アレだけの重症だ。トシマでの治療も限られていた。リンの回復力には驚いたよ」
 しかし、シキが急所を外す、なんてへまをするとは源泉には思えなかった。
「おっさんと違って、若いからね」
 源泉は話すべきかどうか迷って、しかしやはり話した。
「シキが目を覚ましたらしい」
「そっか、よかったね、アキラ」
「○○へ向かうと言っていた」
「え!? そこってたしか、まだ争いは起こっていないけど、一触即発のところだろ?」
「だから、だろ」
「そうか……。じゃあ、俺たちの次の行き先も決まったね」
「ああ」
 
 こうして、二組のカップルが○○へ向かう。それぞれ、成し遂げる事をする為に。
 これ以上、争いの火種を増やしてはならない。今、戦争を行っている国でも、早く終らせて欲しい。そんな願いがある。
 平和への『希望』という新しい光指す世界を目指して、戦いを起こすのではなく、終わらせる為の戦いが始まる。



目次へ



『新しい光ー9−』(シキ&アキラ+リン×源泉)

 シキとアキラは再び、シキの目覚めた草原に立っていた。今度は、シキは己の両の足でしっかりと大地を踏みしめて。
 シキがリハビリに、アキラは仕事に明け暮れているうちに、季節はすっかり秋になっていた。
「シキは、ここで目覚めたんだ。覚えてる?」
「いや……あの時は、まだ朦朧としていたからな」
「そっか。季節もすっかり変わったよ。紅葉がもう始まっている。木の葉が、赤や黄色に染まりだしたんだ」
「ああ、そうだな」
「ここに来て、俺は初めて自然を眼にしたよ」
「こんなところも残っていたんだな」
 シキの中のずっと遠く昔に封じ込めてしまっていた記憶のには、こんな光景も残っていた。
 まだ戦争も始まる前の、幼き日の記憶。戦争で、ニホンでは殆どが焼きただれてしまっていたが。
 それでも、ニホンは再興を試みて、植樹も行われていた。もう、その頃には、既にシキに目に留まるものではなかった。ただ、シキの中にあったのは、ナノを殺すため己の力をつけることだけだった。
 だから、シキにとっても、こういった風景は新鮮で、尚且つ、懐かしくもあった。今は、昔を振り返る事が出来る。ただ、先の事だけを考えていた日々とは違う。
「そういえば、シキは知っているかな? 俺が、トシマで知り合った人なんだけど、たまに連絡があるんだ。源泉っていうおっさんなんだけど、トシマで生き残って、源泉やリンも元気にやっているって」
「……リン……」
 トシマで、一度対峙し、両方とも力は拮抗していたが、勝っていたのはシキの方だった。止めの一撃は急所は外したが、生き残る事が出来るかどうかは不明だった。願わくば、リンが生き残って、シキがナノと決着をつければ、シキは亡き者になるはずだった。
 だが、シキも生きている。シキとリン、両者生き残ってしまえば、今後、リンがシキに対抗してくる事は、無きにしも非ずだ。
 シキは今度こそ死ねない。アキラと共に生きると決めたのだから。そのアキラを遺して、死ぬ事など出来ない。
 リンも負けるつもりはないだろうが……こればかりは、対峙してみなければわからない。
 一度撒いてしまった、リンへの憎しみの種は、やはり、殺し合わなければ、収まらないのかも知れない。
「シキ? どうかしたの?」
「いや、なんでもない」
 リンとの対峙はアキラには直接は関係ない事だ。これは、シキとリンの問題なのだから。
 一度生まれた、肉親への恨みは、他人へのそれより根が深い。和解する事は不可能だろう。
 もし、出会う事があるのなら、シキは心してかかるしかないのだ。
「ここはね、安全だけれど、ここの人が言ってた。近隣の○○は危ない状態だって」
「危ない?」
「いくつかの勢力がせめぎあっていて、いつ争いになってもおかしくない状態だって」
「そうか……」
 多くの平和な国もあれば、争いの耐えない国もある。一国の問題ではなく、国と国との争いも。
 一つの国でも、思想や宗教、民族の違いで、争いが起こっている。
 ○○もその一つだ。お互いが、正義だと考えている。だから、他方は、倒さねばならない相手なのだ。
 一度戦争を経験し、今度こそ平和な世界をと望んでも、それはいつしか忘れ去られ、同じ過ちを繰り返していく。勝っても、負けても。
 戦争の為だけではないが、科学も進歩し、より殺傷能力の高い兵器も開発されている。逆に、戦争の為に開発されたものが、日常をより便利にする為に役立ったりする事もある。戦争を抜きにして、科学の発達が成し遂げられたのもまた事実だ。
 もう古いニホンのかつての大きな戦争でなされた人体実験も、非難の声も大きいが、その後の医療の役にも立っている。
 人体実験……そう考えれば、ナノもまたその犠牲者の一人だったのだ。
 戦争をなくして、人の歴史は語れない。だからといって、戦争を起こすのも、続けるのも、平和に過ごす者にとっては、なくさなければならないものだと考えている。
 しかし、戦争に入れば、戦いに勝つ事こそ、有意義で、その為に、そこにいる人々は、相手を殺し命を奪う事を誉れとし、戦争の為の教育がなされる。
 アキラも、その教育を経験し、敗戦という名の終戦を迎えて、戦地に立つ事はなかったが、そこで教えられた事は覚えている。
 国の為に戦えと、国の為に敵兵を殺せと、国の為に死ね、と。
 教えられていたその当時は、その教えを疑う事など出来なかった。
「アキラ、○○へ向かうか」
「え?」
「俺たち二人で、何が出来るかわからない。何か出来るかもしれないし、何も出来ないかもしれない。それでも、こういった場所を守る為に、今度は違った戦いが出来るかもしれない」
「そう、そうだね。何もしないでいると、ここも失われてしまうかもしれない。これ以上、争いの火種が大きくならないように」
 それが、どんなに困難な事だとしても、何もしないではいられない。誰かがやってくれるかもしれるなんて、期待するよりも、自ら動いて、どんな結果になろうとも、立ち向かい戦う。それは、相手を殺す事だけじゃない。
 アキラはシキと共に、その場所を目指した。ナノの忘れ形見のナイフも仕舞って。



目次へ



『新しい光ー8−』(シキ&アキラ+リン×源泉)

 シキはその思うように動かす事の出来ない躯のリハビリに精を出していた。始めは一人で立てなくとも、アキラの肩を借りて立てるようになり、歩けるようになった。そして、その他にも、今までもっていた身体能力を取り戻すべく余念がない。
 そして、その間にも、眠る前には交わすようになったキス。
 シキがリハビリをしているのを見て、アキラはシキも生きる気になったんだと、喜ばしく思っていた。まだこの先、シキがどうやって生きていくかはわからないけれど。それでも、体が動くようになってもアキラの傍にシキはいた。
 けれど……キスは交わすようになって、想いは通じ合えたのだと思ったけれど、シキはアキラを抱こうとはしない。シキはトシマでの事を気にしているのだろうか。そんな事なら、アキラにとっては関係ないのに。それとも、男同士だからか。
 シキが目を覚ましたら、アキラはシキに対してもっと貪欲になっていた。抱いて欲しい、と。
 しかし、シキからは一向にその気配がない。だったら……。
「ねえ、シキ。そっちのベッドに行ってもいい?」
「ああ」
「シキは男の俺の躯抱くの、気持ち悪い?」
「いや、そんなことはないが……アキラは……」
「シキに抱いて欲しい。愛しているから」
「アキラ……」
「でも、そうしてくれないから、俺が、シキを抱いてもいい?」
「……ああ、いいよ」
「シキ、愛している……」
 そうして、キスから始まり、アキラは実際に誰かを抱いた事はないけれど、行為自体は知っている。
 シキの衣服を脱がし、シキの肌に愛撫の手を加えていった。
「ん……アキラ……」
 男にとって、飾りにしかならない胸の突起を弄り、それでも、確かにシキは感じているようだった。
 その手は次第に下に下りていき、シキのモノをアキラは咥えた。口と、指を使って、シキの熱を高めていく。
 最終的には射精に至るのだけれど、それだけが目的ではなく、また、トシマであったようにどちらが上か知らしめる行為ではない。愛する者に触れて、肌を触れ合わせ、快感を分かち合うものなのだ。
 後腔に指を進入させ、シキのこれから入り口になる場所をほぐす。
「ん……く……あぁ……」
 そんなシキの姿にアキラのモノも昂ぶっていった。その昂ぶりをシキの家に挿入していく。
「く……ふぅ……はぁ……」
「大丈夫、きつくない?」
「大丈夫だ。続けて……」
 シキに促されて、アキラは律動を開始する。シキの締め付けに達してしまいそうだったけれど、一人でそう早々と達する訳にもいかない。
 シキの内壁を角度を変えて突き上げて、シキの感じられる部分を探す。
「あぁ……はっ……ああ……」
 シキの嬌声が漏れた箇所を攻め立てて、シキもアキラ達した。

「そんなに、抱いて欲しかったか? 俺に」
「だって……」
 直接的に問われれば、言葉に詰まってしまうアキラだった。
「アキラは嫌だと思っていた。昔を思い出すから」
「そんな事ないよ!」
「俺も、アキラを抱きたい」
「シキ……抱いて……」
 以前のように力でねじ伏せるのではなく、シキの指が、舌が優しくアキラの肌を撫でていく。
「んあ……シキ……」
「アキラ、これは、そのままだったのか?」
 そうして、臍のピアスを弄る。
「んん……だって……シキがつけてくれたものだもの。その方が、シキと一緒に生きていられる気がして……」
「アキラがそのままで構わないならそれでいいが、外してもいいんだぞ」
「いいよ……そのままで……」
 一度放った熱も、再び勃ち上がり、絶頂を望んでいる。
 シキの挿入を受けて、シキのモノがアキラの裡で脈打ち、アキラを欲している。それが嬉しくてついアキラは……。
「泣いている、辛いか?」
「そうじゃない。嬉しくて……」
「それなら、続けるぞ」
「うん」
 シキに抽挿されて、力強く突き上げられて、開放の時が近づいてくる。
「シキ……もう……」
「ああ、俺も」
 一際強く突き上げられて、シキとアキラは一緒に白濁を放っていた。

「二人だと狭いね。このベッドは」
「でも、こうしていれば、狭くはない」
 シキはアキラの躯を引き寄せた。
「俺、明日は休みだし、そこらへんを歩いてみようか」
「ああ、そうだな」
「おやすみ、シキ」
「おやすみ、アキラ」
 先行きはわからないけれど、二人、共にベッドで過ごした一夜だった。


目次へ



『新しい光ー7−』(シキ&アキラ+リン×源泉)

 翌朝、アキラが目覚める頃には、シキはもう起きていた。長い間の車椅子生活だったので、己の足で立ち上がる事もままらなかった。
「おはよう、シキ」
「……」
「今、食事の支度するからね」
 食事を作る、といっても料理らしき料理はそれ程出来ないし、長らく固形物を口にしていなかったシキにいきなり本格的な食事は無理だった。
 今では、レトルトも惣菜も自分で作らなくとも手が入るし、数多く出食事をしない限り、そちらの方が、破棄する量も少ない。
 シキには粥と、栄養の為に粥に卵を載せ、それと、温かいスープをつけた。アキラはアキラで相変わらずのものだ。
 アキラに躯を支えられて、シキは食卓に着いた。
 食事を終えると、アキラは仕事があったので、シキを再びベッドに戻し、出かけていく。
「仕事にいってくるから、帰ってきたら、また、話しよう」
「……ああ」
「じゃあ、いってきます」
 シキは目覚めてどう感じているのだろう。ずっと戻ってきてくれる事を願っていたアキラには嬉しい事だったが。
 仕事を終えて帰れば、まだシキはいるだろう。躯は早々動かないし、車椅子を使えば何とかなるかもしれないけれど、「話をする」といったアキラにシキは頷いた。だから、きっと家にいる事だろう。
 一日の重労働を終えて、アキラは家へ戻る。やはり、シキはベッドの端に腰を掛けてそこにいた。
「ただいま、シキ」
「……ああ、おかえり」
「先に、夕ご飯にしようか」
「ああ」
 今度は食品売り場の人に、シキが食べられそうなものを教えてもらったから、多少は品揃えも豊富だ。とはいっても、限られている。
「あまり、変わりばえはないけど……」
「いや、いい」
 そうして、何も言わずに食事を平らげた。

「どうして、俺を助けた」
「わからない。でも、シキをあのままにはしておけなくて。今でも、その時の理由はわからない」
「……俺は、生きていてはいけない人間なんだ」
「何故?」
「いや、話すほどの事ではない」
 そうして、シキは己の中に封じてしまう。トシマで、いやもしかしたら別の場所でも沢山の人を殺してきたからだろうか。そして、何故そうしてきたかも、尋ねてもきっと同じ答えが返ってくるだろう。
「あの男を殺して、俺の全ては終わったんだ」
 あの男、ナノの事だろう。ナノはどうだったのだろうか。戦闘兵器として生きる事を余儀なくされ、自ら命を経つ事も、研究所によって施され、阻止されて、どこでナノという存在を消してくれる者を待っていたような気もする。これは、アキラの考えすぐなのだろうか。そして、ナノの忘れ形見となってしまった壁の立てかけてあるナイフに目をやった。
「でも、まだ、シキは生きているんだよ。意識が回復したのもシキの力だよ」
「俺の……力……?」
「俺はただ、シキに向かって呼びかけるだけだったもの」
「お前は、何故俺を恨まない」
「全く、といったら嘘になる。始めはそうだった。だけど、それ以上に不思議だったんだ。何故、シキが俺を殺さなかったのか。やはり、俺の血の所為だったのだろうか」
「確信はなかった。でも、やはりそうなのかもしれない」
「……そうか。でも、ナノがいなくなってしまったら、俺の血なんて何の役にも立たない。それに、ナノとは違うけれど、同じように操作された血を持つ俺の事は恨んだりしないのか」
「お前はあの男とは違う……。それに血のもつ力などそうそう知れるものではない」
「そうだね。誰がどんな血を持っているか……なんてね。俺自身もいわれるまでは気にした事はなかったし」
「生まれ持った血を操作された人間などどれほどいるか……」
「血なんか関係なく、戦争や争い事は人を変えてしまうんだね……」
「……」
 かつての穏やかだったシキの生活の中、ナノの大量殺戮の為、大切なものを奪われ、シキの生き方もそこで決定付けられた。シキが選んだ道、シキが己で決めた生き方。ナノを追う事だけを、ナノを抹殺する事だけを考えて、その為には、その力を得る為には、何だってしてきた。
「……シキは、やっぱり生きていてはいけないとまだ思う?」
「俺のしてきた事は、許されるべきではない」
「俺は、シキに生きていた欲しいと思うよ。シキが許せなくても、俺が許したい」
「どの道、戦う事でしか生きてこなかった俺に、他に生きる道はない」
「そんな事ないよ。俺だって、シキとは比べられないかもしれないけど、戦う事しか知らなかった。でも、ここで、違う生き方も出来るって、シキが教えてくれたんだよ」
「俺は何もしていない」
「ううん。シキは意識がなかったからそうだけど、でも、シキがいなかったら、俺だって、こんな風に生きられるなんて知る事もなかった」
「……俺にも出来るのか、今更そんな生き方が……」
「出来るよ。シキは強いから」
「今はお前の方が余程強く感じるよ」
「力だけじゃない。本当に、本当にシキは強いから。弱い部分があったって、人間なんだから、当たり前の事だよ」
 弱さを排してきたシキ。戦う為に、それは必要じゃないのだと。弱い部分があっても、それを認められて生きられれば、十分に強い。
「今は、まだ躯がいう事を聞かないだろうけど、気長に訓練していこう。また、元のように動けるようになるよ」
「そう……だな。色々迷惑をかける」
「迷惑だなんて、思ってないよ。今は、何よりもシキが愛おしい。こんな風に他人を思えるなんて、自分でも不思議だ。愛してるよ、シキ」
「アキラ……」
 そうして、アキラはシキに軽く触れるだけのキスをした。



目次へ


『新しい光ー6−』(シキ&アキラ+リン×源泉)

 シキの意識が戻らなくとも、時は流れ季節は巡る。
 それまで意識などした事のなかった、動物や草花がある事にシキを散歩に連れながら感じていた。もっとも、荒れ果てた街ばかりで過ごしてきたから、そういったものと巡り合う機会がなかったのも事実なのだが。
 それをアキラに教えてくれたのがシキだったなんて。もちろん、シキが直接教えてくれた訳ではない。争いもなく、シキとのんびり過ごす休日がそれをアキラに教えてくれた。
 ここは穏やかだけれども、世界はまだ争いの耐えない国や地域がある。それを源泉が教えてくれた。そんな場所を源泉は巡っているのだと。
 寒い季節は去り少し温かな風が吹き始めた休日。アキラはいつものようにシキを車椅子に乗せ、冷やしてしまわないよう脚に毛布を乗せて、散歩へと出かけた。
「シキ、散歩に行こうか」
 春の芽吹きを感じさせるように季節の花が咲き、蕾をつけ始めた木もある。鳥のさえずりも聞こえ始めた。
「シキ、温かくなってきたね」
 冬の間は、寒すぎて、中々散歩に出かける事が出来なかった。出たとしても、厚着をさせて、数刻位だった。
 少し遠くへいってみようかと、アキラは小高い丘の上にある草原へと足を伸ばした。
 はしゃいで走り回っている子供らもあれば、のんびりと風景を楽しむように腰をかけている老夫婦もいる。
「あれは、なんていう花だろうか?」
 シキに向けて独り言のようにアキラが話すと、近くにいた老婦が名前を教えてくれた。それをシキに伝える。
 鳥にも花にも名前がついている。名もなき雑草も多くあるが。全て人間がつけたものだ。鳥たちはお互いを何と呼び合っているのだろう。個々の鳥に名前があるのだろうか。などとアキラは考えるが、もしあっても、人間にはわからない。飼われている鳥は別として。
 ここはニホンのように四季がある。だからその変化も、その流れゆきも知らせてくれる。
春風が心地よく肌をなでていく。
 ぴゅうっと一際強い風が吹いて、シキに掛けていた毛布が飛んでいってしまった。アキラは慌ててそれを取りにいく。
「シキ、ごめん、毛布が飛んでいっちゃって」
 再びアキラはシキの脚に乗せる。
「ア……キ……ラ……?」
 小さな声だったけれど、確かにシキはアキラの名を呼んだ。それは、きちんとアキラの耳にも届いていた。
「そうだよ、シキ」
「何故……?」
 何を問うているのか、アキラはわからず、アキラは返答に困った。
「お帰り、シキ」
 シキは何故生きているのか、何故アキラがいるのか、どこにいるのか、混乱していた。
「トシマでの戦いは終ったんだよ。トシマも崩壊したし……。今は新しい街が作られているみたい」
「そう……か」
 シキにとっては、トシマでの戦いより、ナノとの決着で、己の中の争いは幕を閉じていた。
「それより、本当にシキが戻ってきてくれて本当に良かった」
 アキラはそういうけれど、シキ自身はそう感じてはいなかった。だが、アキラは良かったといっている。シキの胸中は複雑だった。
「意識がない間、今までシキは何を見ていたんだろう」
「わからない……ただ、誰かが、ずっと俺の名を呼んでいる気がしていた」
「呼んでいったよ。ずっと。きっとシキは戻ってきてくれると信じてた」
「俺はもう、死んだはずだ」
「生きているよ。俺も、生きている。ほら……」
 アキラはそういうと、ぎゅっとシキの手を握った。そしてゆっくりとだけれど握り返された手。確かにシキが握り返したアキラの手。それはこんなにも温かい。
「生きているの……か。俺は」
「ずっと動かなかったから、躯はまだ動かないかもしれないけど、確かに生きている」
「アキラ……」
「少し長居しすぎたから、小屋へ戻ろうか」
「小屋?」
「借りてるんだ。シキと俺が今生活してる場所」
「生活……」
「シキには実感がないかもしれないけどさ、トシマを離れてから、そこにいるんだ」
「そうか……」
 アキラは車椅子を押して、来た道を戻り、小屋へと戻った。
「ほら、ここだよ」
 シキがいつ戻ってきてもいいように、整えられた二つのベッド。数少ないけれど家具と食器、綺麗に掃除された部屋がそこにはある。
「ここが……」
「ここにずっといたんだよ。久しぶりに少し話をして疲れたかな。横になる?」
「ああ……」
 アキラは掛け布団をめくって、シキを抱き起こすと、そこへ寝かせた。
「今日じゃなくていい。まだ、シキと話したい事は沢山あるんだ」
「俺も、尋ねたい事がある」
「また、明日にしようね。明日が、きっとあるから」
「ああ、そうだな」
「じゃあ、お休み、シキ」
 それだけ話すと、シキは眠りに落ちていった。明日も、きっと目覚めてくれると、アイキラは信じている。一作業終えてから、アキラ自身もベッドに入り、「お休み、シキ」と既に眠りに落ちているシキに声を掛けて眠りに入った。



目次へ



楽天市場
あし@
にほんブログ村
ブログランキング・にほんブログ村へ
管理人によるオリジナル創作BLブログです。 設定年齢は高め。カップリングはリバーシブル。 暴走書家
livedoor プロフィール
livedoor × FLO:Q
QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ