何だろうなぁ、俺って、ちょっとかわったんだろうか?
 今まで3人でやって来て、フツーにしてたつもりだったんだけど。
 それなりに、メンバー内でのトラブルとかも、別に起こすことなく、まあ、あんまり、変に馴れ合わず、っていうか。
 やっぱり、触れられたくない部分とかあって、テキトーにそこら辺は上手くあしらってきたつもりだったのに。

 キョーイチと付き合うようになって、一応、俺自身の中では、キモチの中とかは、すこーしだけど、変わった気がするんだけど。
 『先生』の存在も、やっぱ、変わったかな?
 でも、ホント、ビミョーにだと思うんだけどな。

 でも、そういうところって、よーちゃんって、鋭いと思う。
 激しく自己主張したりとかしないし、えっと、多分、俺が、ある程度距離を置いてたのがわかってたみたい。
 そんでもって、今は、ちょこっと変わったってことも。
 まあ、よーちゃん自身も俺に対して、ベタベタしてくることはないけど、その方が、ありがたいし。

 ずっとずっと、拘ってたのかな、よく聴いてた音楽も、前は誰にも知られたくなかったんだけど、そういうのもなくなって、よーちゃんに、聞かれたから、答えた。
 そしたら、よーちゃんが、俺の誕生日プレゼントにくれたの。
 これ。

 『ボレロ』のオルゴール。
 23弁のシールケースに入ってて、中身が良く見えるの。
 CDで聴くのとまた違う感じ。
 おウチにいてね、螺子巻いて、眺めながら聴いてるのって、楽しい。

 あ、止まった。
 そしたらね、もう一回螺子を回すの。
 この繰り返されるメロディーを今までCDで繰り返し聴いてきたけど、こうやって、自分の手で、螺子を回して、みるのもいいな、って。

 あ、誕生日で思い出した。
 キョーイチの誕生日がもうすぐだった気がする。
 むー、何にもしないと、きっと、キョーイチの方が、自分で、進めてしまうよなぁ。
 やっぱ、何とかしないとなぁ。
 何をするかは別として、滅多に、俺からメールを送らないけど、取り敢えず、『10月18日はあけておくよーに』って連絡しておいた。

 そしたら、電話かかってきて、「もちろん、喬志から誘ってくれたんだから、喜んであけておくよ。でも、直接、声が聞きたかったなぁ。」って。
 うう、既に、押されかけてる? 俺って。
 さて、当日は、どーしたら、いいんでしょうね。
 だって、いっつも、キョーイチが何でも、さっさと決めちゃうから。
 俺の意見を無視する事はないけど。

 普段、キョーイチと行かないところ……。
 頑張って、色々調べましたよ、俺。
 でも、これって、天気良くないと駄目だよなぁ。
 けど、こーゆーのっていいなぁ。
 もう、後は、運は本当に天任せ。
 日頃の俺達の行いがいいことを祈るしかない。

 んでもって、キョーイチはともかくとして、俺の日頃の行いはよかったようで、何とか晴れました。
 お昼過ぎに、キョーイチと待ち合わせて、キョーイチのお車で、行き先を告げて、そこへ向かったんです。
 とある公園です。
 公園内を散策して、芝生の上に生えている木の根元にごろん、って寝っ転がりました。

「都会にも、こういう場所ってあるんだね。秋の日差しが、強くなくって、気持ちいいよ。」
 って、キョーイチも言ってくれた。
 お仕事してると、過密スケジュールになっちゃうからね。
 こうやって、たまには、落ち着いて過ごすのもいーでしょ?
 緑に囲まれた中で。
 森林浴で、心身をリフレッシュってね。
 ホントーは、新緑の季節が一番いいんだけど。
 もちょっとしたら、紅葉のシーズンなんだろうけどな。
 でも、シーズンにはいっちゃうと、人が混むからヤだな。

 その後、日本料理のお店で、秋の味覚を味わいました。
 ホントは、俺は、あんまり興味なかったんだけど、キョーイチが「美味しい」って食べてるから、うん、やっぱり美味しい。

 それから、俺の家に行って。
「アタシ、今日は、キョーイチの為に頑張るから。」
 って、キョーイチのコト、ベッドの上に押し倒して、唇を重ねていった。

「嬉しいよ、喬志が、積極的に求めてくれるなんて。」
 キョーイチが言って、俺の口付けを更に求めるように、腕を首に絡めてくる。
 その行為が、次第に深まっていって、キョーイチの裡に挿入して、キョーイチが感じられるように、抱いていく。

「……んん……ぁ……イイよ……喬志……」

 キョーイチが俺の名前を呼んで、俺の事を捕まえて、求めてくれるから、だったら、俺だって、それに答えないわけにいかないでしょ?

「キョーイチ、俺、も……」

「俺も、もう、イきそう。………っ……あ……!」

 そして、二人とも達した。
 ちょっと頑張って、疲れたかも、って思ってたら、キョーイチが。

「今日は、嬉しかったよ、本当に。沢山、プレゼントを貰った気分だから、おれも、お返ししてあげなくっちゃね。」

「え? え?」

「おれの、誕生日なんだし、おれも、喬志を抱きたい。」
 
そのまま、抱きすくめられて、キョーイチが与えてくれる快感に身を任せていった。

「喬志、愛してるよ。」

 耳元で、囁かれて、それだけでも、犯罪的にクるのに。
 キョーイチの指も、舌も、全部、俺の快感を煽っていって。
 そして、キョーイチのソレを体内に受け入れて、リアルに、ダイレクトに、その熱を感じ取る。

「あ……キョーイチ……キョーイチ……っ!」

「喬志、もっと感じて、その眼で、そのカラダで、俺の全てを。」

「ん……は……ぁっ…!……あ……んんっ!」

 二度目の絶頂を迎えて、ベッドにカラダを投げ出した。
 はい、俺、キョーイチと付き合うようになって、かなりタフになりました。
ベッドの傍に置いてあった、オルゴールをキョーイチが見つけて、螺子を回している。
 そこから流れる、音楽を聴いて、キョーイチが俺に尋ねてきた。

「……あれ? これ、喬志、前から持ってたっけ? 自分で買ったの?」
「この前の、アタシのたんじょーびに、よーちゃんがくれたの。アタシがよくCDで聴いてるからって。」
「へえ。ボレロってさ、確かに、基本的には同じのが繰り返しだけど、始めは、フルートだけだったのが、色々、楽器構成が変わってきて、メロディーもリズムも次第に勢いを増していくし、実際には、色彩としては豊なんだよね。繰り返しているようで、ただ、同じことを繰り返してるだけじゃない。」

 朝が来て、夜を迎えて、また朝が来て、そんな毎日の繰り返しの中にも、違ったモノを見出すことが出来る。
 全く同じ位置にとどまっていない。
 そして、オルゴールを鳴らすように、その螺子を自分で巻くことが少しでも出来たら。
 日常が、より一層、色彩豊になっていくだろう。

 そして、俺と、キョーイチも同じように求め合っても、その全てのカタチが、全く一緒なわけじゃない。
 そうやって、少しずつ変わっていって、それでも、一緒にいられる時があれば、いいと思う。

「あ、そーいえば、キョーイチ。言い忘れてたけど、おたんじょーび、おめでとー。」
「うん。ありがとう、喬志。でも、まだ、終わりじゃないよ。」

キョーイチはそう言って、再び、俺のカラダを探り始めた。

「え? キョーイチ、まだ、スるの?」
「うん。だって、折角、あれだけ、ゆっくり休めたし、今日は、まだまだ体力残ってるよ。」

 そのまま、愛撫を続けられ、カラダが昂ぶってくる。
 えっと、でも、俺は、ちょっと疲れたかなー、なんて。
 俺、ちょこっと、計画を誤った?
 与えられる快感の中で、まだ、ちょっと、いやかなり? タフにならなければいけないのか、という考えが、脳裏をよぎっていった。


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