2010年10月21日
百菌夜行絵巻:054&058
*******************************
――054――
妖怪名:【死乃天使】シノテンシ
モデルになったきのこ:【ドクツルタケ】 ハラタケ目テングタケ科
*******************************
いつもこの季節になると、毒キノコによる中毒事件がよく耳にしますが、今年は特に多いように思います。そのなかでも「毒キノコ(クサウラベニタケ)を食用として販売した」というケースが相次ぎました。私も含め、天然のキノコの知識に乏しいものは、パッケージして売られているものを疑う事はしないでしょう。人の健康や生命がかかっているのですから、販売者はそれを十分に自覚して、責任ある選別・販売をお願いしたいものです。もちろん、自分で採ったキノコも信頼できる専門家の鑑定なしに口に入れてはいけません!
さて、ようやくゴールが見えてきた「百菌夜行絵巻」ですが、その残りに日本を代表する猛毒キノコが二種含まれています。
そのうちのひとつが、「死の天使(Destroying Angel)」とも呼ばれる「ドクツルタケ」です。一本食べただけで内蔵を破壊し、死に至らしめるという猛烈な毒を持っています。しかし、真白でツバとツボをそなえた姿はまた、あやうい美しさを持っています。
きのこ妖怪は「天使」にちなんで、羽根をつけました。
どうやら、その猛毒キノコすら恐れるものが、この先にあるようですが……。
*******************************
――058――
妖怪名:【振袖火焔】フリソデカエン
モデルになったきのこ:【カエンタケ】 ニクザキン目ニクザキン科
*******************************
さて、死乃天使のすこし先にいるのが振袖に火がついた女きのこ妖怪、振袖火焔です。
(死乃天使は彼女を見ておびえている訳ではありません)
もちろんイメージの元は明暦の大火(振袖火事)、小泉八雲な怪談や三遊亭円生の落語でもお馴染みのお話です。これが実話であるかどうかは諸説あるようですが、一人の娘の悲恋が江戸の町を焼き尽くすという鮮烈なイメージはこれからも語り継がれていく事でしょう。
鮮烈といえばこのカエンタケ、「触ってはいけない」毒キノコです。ふつう、キノコの毒は口の中に入れなければ大丈夫なのですが、カエンタケは汁の中に刺激成分が含まれていてただれる事があるそうです。もちろん、食べてはいけません!
以前はあまり見かけないキノコでしたが、最近は気候の変化のためか大量発生する事があるようです。
非常に特徴的な色・形ですから、見つけても横目で通り過ぎましょう。