予想と期待を悉く裏切ったけれどそれなりに楽しめたアニメでした。
wikipedia(もの凄く詳細に書いてある)

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このアニメを一言で表すと、
「特殊能力をセコい使い方をしていたシスコンの主人公が紆余曲折を経て世界を救う話」
となります。すでにこの一文を読んだだけで察しの良いあなたは、

「ああ、風呂敷を広げすぎてどうしようもなくなってしまったのね」

と考えるかと思いますが、違います。このアニメはきちんと風呂敷は畳みます。
じゃあ何で微妙な評判なのか。一話から順を追ってみていきましょう。

◇第一話◇
主人公、乙坂 有宇(おとさか ゆう)が「他人に五秒だけ乗り移れる」能力を使い、
カンニングをしまくって頭脳明晰を気取り学園生活を楽しんでいたら、
それをヒロインである友利 奈緒(ともり なお)ら生徒会メンバに見破られて、
能力者ばかりが集まった高校に強制的に編入させられる。

ここではコメディタッチで能力をしょぼい感じに使って粋がる主人公が描かれます。
主人公の下衆な感じが非常に良いアクセントとなっており、
手垢のついた「制約付き能力持ちの学生生活」が非常に楽しく描かれます。
このまま下衆な主人公が微妙にしょぼい能力持ちと織りなす学園青春コメディを続け、
最後の三話ぐらいで大きなピンチと解決を描けば良かったのに。

物語は少しずつあさっての方向に進みます。

◇第二話〜第五話◇
ヒロイン率いる生徒会メンバが能力者達に、
「悪い科学者に連れて行かれて廃人になるから能力を使うのを控えなさい」と諭す。
一話簡潔ストーリー。


このあたりもまだギリギリ青春ものの範疇です。
麻枝准脚本恒例の謎野球等も織り込まれてそれなりに面白いですが、
コメディ色はどんどん減っていき、シリアスな雰囲気になります。

◇第六話〜第七話◇
能力発現したての妹が能力の暴走で死ぬ。
主人公が一話ずっと落ち込んで、ヒロインの取り計らいで立ち直る。

麻枝准脚本恒例(?)の非の打ち所のない健気妹キャラが死にます。
そこで妙にリアルな主人公の逃走劇が描かれます。
ここでの主人公の落ち込み描写と、透明になれる能力を駆使して、
そのそばにそっと寄り添うヒロインの健気さが良かったです。

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(透明化能力で荒れる主人公に付き合うヒロイン。
ここは素直に感動できる部分。ストーカーとか言わない。)

健気妹キャラの死はまあともかく、シリアス方面でまとまっており、
基本ツンツンしたヒロイン友利さんが違和感のない形で主人公を立ち直らせる様は、
なかなか良かったと思います。
このまま麻枝ヒロインの中でも特に可愛い友利と、シリアスな恋愛を続け、
最後は彼氏彼女になると言う展開を描けば良かったのに。

物語はついに僕の思った方向ではない佳境にさしかかります。

◇第八話〜第十ニ話◇
主人公の兄はタイムリープ能力の持ち主で、
悪い科学者に研究施設に放り込まれる時間軸から何度もタイムリープを経て、
能力者を保護する学園を作っていたのだ。
そして主人公の真の能力は「略奪」で乗り移った相手の能力を奪う。
ZHIENDというポストロックバンドのライブがきっかけで、
それらのことを思い出した主人公は兄の能力を奪いタイムリープして妹を救う。
しかしそのあとなんかマフィア的な人に狙われて兄の親友とヒロインが拉致され、
辛くもマフィアに勝利するも兄の親友は死んでしまう。


タイムリープ系SFへ突入しました。
これはこれで、タイムリープ系大好きな僕としては好みの展開ですが、
僕の予想をことごとく外します。期待もついでに外します。

ある音楽をキーに過去(別の時間軸)の記憶を取り戻す、これはまあいいです。
そのZHIENDのボーカルもタイムリープ系の能力者であることを臭わせていましたし、
ZHIENDがロックではなくポストロックと作中で強調されている割には、
普通に綺麗めなロックでしかなかった
という点も些細な話です。

しかしその後タイムリープで妹が普通に救われました。これは衝撃でした。
大体こう言うシナリオって、時間を遡っても妹は別の形で死にますよね。
それでも何か方法はないかと悩み苦しむのが定石です。
なんの作戦も工夫もなく妹は救われました。若干コメディすらもまじえて。
僕が期待していた学園青春コメディがこんなところで顔を出しました。
いや、このタイミングでは期待していない。
確かに何もなく妹が救われるのは意外でしたが、意外なだけで面白くはなかったです。

その後も、

・略奪の能力を持つ主人公は狙われるから組織にかくまう
→今まで普通に学園に登下校とかしてたのは……
・しかし組織のセキュリティはザルでさっそくマフィアに脅される
→運転手(脅されている)がマフィアのアジトへ向かうのに抵抗しない兄の親友……
・マフィアは学校を作る前から緻密な計画を立てており
 タイムリープしたらスケジュールのずれで検知できるため人質を殺す
そのりくつは
・脅された運転手の家族を救うため、仲間が全員殺されるかもしれないのに要求を受け入れ、
 最終的に何の作戦もなく主人公をマフィアのアジトに送り出す兄貴
→確かに最強の能力者だけと作戦がないと無理だって……

などと粗だらけの展開が続いていきます。そもそも、マフィアって何?

◇第十三話◇
能力は病気だから主人公が全部世界中の能力者の能力を奪えば世界が救える。
それを実行し、世界中の能力者の能力を実際に奪うことに辛くも成功し、
日本に帰国するも、脳に負担がかかり過ぎ記憶喪失に。
ヒロインがこれから楽しい記憶を作っていこうと言ってエンディング。


ここらへんから僕は口をぽかーんと空けて視聴していました。
それでもいろいろ予想はしました。だいたい外れました。

予想:主人公が世界を旅すると決意した時に仲間が助けたりするのでは?
結果:「俺らは日本を守る。あと、組織のボスが能力者探す能力を持っているはず」by兄
その雑な方針だけ与えて一人で行かせんの?

予想:ヒロインや仲間の持っている能力がうまく主人公を救うのでは?
結果:マフィアを車で待ち伏せする時に使ってたかも。
ぶっちゃけあんまり役に立ってない。

予想:主人公が道中巨大化能力とかを得てエヴァみたく世界を滅ぼす神になる。
結果:ちょっと気が狂って記憶を失った。
それだけ?破壊神と化した主人公にヒロインの声が届くとかはいい?

予想:最後に奪う能力は「能力を消す」能力とかになる。
結果:最後に奪う能力は少女の「勇気」。
斜め上すぎてちょっとコピペになりそう。

そしてまさかの、主人公能力奪取一人旅、完遂。
意外すぎてびっくりしましたが、ただびっくりしただけでした。
主人公はヒロインのくれた英会話カードを心の支えに、
記憶が混濁したり喪失しながらも、世界中の人間から能力を奪うことに成功し、
これで能力が原因で不幸になる人はいなくなりました。めでたしめでたし。

そしてハッピーエンドの中、僕は思いました。麻枝氏にSFは無理だ。




■まとめ

レビューとしては、★は三つです。
「続きが楽しみ」ではあり、最後までストレスなく視聴できたからです。
まあ、途中から「続きが楽しみ」の意味は若干変わりましたが。

面白い部分は多々あるものの、
こう行けばいいアニメになりそうという予想をことごとく斜め下に裏切り、
最後は誰も見たことがない(見る必要もない)エンディングにたどり着いてしまった、
まるでジャンプの打ち切り漫画の、それも、
突き抜けた終わりを迎える作品を読む時のような感覚を抱くアニメでした。


長文感想を書いてしまったのもこの打ち切り感が好みだったことが理由かな。
ちょっと期待しないぐらいの温度感で見るのがオススメです。