甲子園での2戦目の相手は、U18日本代表候補のサウスポー櫻井君を擁する鶴岡東。

最近は甲子園でも良い試合をしているので、簡単には行かない相手だと思っていたものの、予想以上に苦しむ試合になった。

試合序盤は鶴岡東櫻井君と早実中村君との投手戦。
3回までお互い1人のランナーも許さない。
今年の早実では見たこともない試合展開。

中村君は今日は序盤から制球が定まり危なげないピッチング。
故障する前は7回くらいまでこういうピッチングをするときもあったけれど、公式戦でここまでの出来は初めて見た。
1戦を経たことで大舞台での肩の力が抜けたからなのか、初戦の2回以降は失点しなかったことで自信を持てたのか。
それとも、櫻井君のチェンジアップに翻弄される早実打線を見て、自分がこの試合で背負う役割の重要性を感じて意気に感じたからなのか。
エースの矜持を見た気がした。

試合が動き始める兆しを見せたのは、4回に雷で中断した後。

4回表に鶴岡東に脚を使われて2アウト3塁のピンチを迎えると、4回裏には高崎君が内野安打で出塁した後、二盗してチャンスを作る。
とはいえ、両校とも無得点に終わって、そのままクーリングタイムへ。

動き始める兆しだけで終わった。

こういう展開の場合は、お互いが我慢するしかない。
ミス1つが命取りになりやすい。

すると、後半、早実は守りが冴える。

6回表に2アウトから鶴岡東にランナーを許すと、そのランナーが試みた盗塁を山中君が余裕の刺殺で、ピンチの芽を摘む。
GW明けからキャッチャーにコンバートされたばかりとは思えないほど、山中君のスローイングは安心して見ていられる。

7回表には1アウト2塁の場面で迎えるは、4番エースの櫻井君。
この試合で最大のピンチと言ってもいい場面。
このピンチも早実は至って冷静に、送りバントで1塁が空いたこともあり櫻井君を申告敬遠し、続くバッターを空振り三振とサードゴロで凌ぐ。

ピンチの後にはチャンスあり。
ところが、早実はチャンスをことごとく潰す。

7回裏、早実は高崎君のレフト線ツーベースを皮切りに1アウト2・3塁。
この試合初めてのチャンス。
すると、ここで代打。
どう考えてもスクイズを前提とした人選。
しかし4球連続でセーフティスクイズの後、普通のスクイズに切り替えたかと思えば2球連続で失敗し、結果、スリーバント失敗に。
続く中村君も打ちとられ無失点。
致命的になってもおかしくないミスだった。

続く8回裏にも先頭の内囿君がショートゴロエラーで出塁。
しかし、鶴岡東の櫻井君も冷静で、ちょっとリードの大きかった内囿君は牽制で刺されてしまう。

2イニング連続での早実が自滅し、非常に悪い展開。
こういうときは鶴岡東に流れが行ってしまいがち。

しかし、その流れを渡さなかったのは、タイブレークでの2年生の國光君と山中君の守備。

延長10回表ノーアウト1・2塁からの見え見えの送りバントに國光君がキャッチャーの目前に迫るほどの猛チャージをして3塁で刺す。
春以降の練習試合でこの猛チャージをしているシーンをよく見たので(例年の早実でこんな猛チャージは見かけない)、練習の成果が実った瞬間だった。
今日の國光君は厳しいファーストゴロも何本も捌き、またサード、ショートからの難しい送球にも対応し、この試合での守備での貢献度は非常に大きかった。

そんな國光君の活躍でチャンスを広げられなかった鶴岡東は、どうしてもランナーを進塁させたいからか、次にダブルスチールを仕掛ける。
すると、これを山中君が3塁で刺殺。
この刺殺は鶴岡東に精神的に大きなダメージを負わせることができた。
山中君の肩は本当に大きな武器になる。

こういう場面では往々にしてキャッチャーからの悪送球が外野を転々とする光景をよく見かけるけれど、レフトの守備固めに入っていた片山君も3塁のすぐ後ろまでカバーリングで入っていた。

さらに、続くセンター前に落ちそうな難しい打球を、代打からそのままセンターに入った松尾君が膝をつけそうなほど屈んでキャッチ。
スクイズできなかったミスを引きずらず、気持ちを切り替えて守りで貢献できたのは、松尾君本人のメンタルにとってもよかったかもしれない。

この回を終わった後、中村君はベンチに戻る際に足を攣ってびっこを牽いているくらいだったから、この守備が中村君を助け、この試合の行く末を決めたと言ってもおかしくない。

すると、10回裏はノーアウト満塁の場面で、治療明けの中村君が初球をライトオーバーのサヨナラタイムリー。
中村君が自分で試合に終止符を打った。

このチームが秋春夏と通じて、今日が一番張り詰めた試合だったかもしれない。
そんな試合を経れば、選手たちはまた一段階成長してくれるはず。

次の対戦相手は、大社。

大会前から評判の高いサウスポーMANIWA君と1塁駆け抜け3秒台のトップバッター藤原君を擁し、開星、石見智翠館、報徳、創成館を倒し続ける。
去年の秋には中国大会にでているし、たまたま出てきた訳でも、勢いだけで勝ちあがってきたわけでもない。

馬庭君は鶴岡東の櫻井君と同じサウスポーだけれど、チェンジアップなど変化球が多かった櫻井君とは対照的に真っ直ぐとスライダーが多い印象。
早実打線とは噛み合いそうな気がする。

大社は島根大会でも甲子園での報徳戦、創成館戦でも見せたように、盗塁や積極的な走塁が目立ち、かつ、バントやスクイズが圧倒的に多い。
投内連携でバタバタしないようにアウト1つを大切にしたい。

「和泉監督、全国制覇がしたいです」