メールマガジンのタイトルとして使用された商標が、そのメールマガジンからリンクされたウェブページで宣伝されている商品についても使用していると言えるか

本件は、原告(ハウス食品)の登録商標「CLUBHOUSE / クラブハウス」(指定商品:第32類「加工食料品,その他本類に属する商品」)について、被告が不使用取消審判(商標法50条)を請求したところ、特許庁が同請求を認める審決をしたことから、原告がその審決の取消しを求めた事案です。

1.本件審決の理由の要旨
原告のメールマガジンにおける「クラブハウス」標章の表示行為は商標法2条3項8号に該当しない。

【参考】商標法2条3項8号(標章の「使用」の定義)
「商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒付し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」

2.本件メールマガジンについて
原告商品を宣伝する目的で配信され、多数のリンクにより、直接加工食料品等の原告商品を詳しく紹介する原告ウェブサイトの商品カタログ等のページにおいて商品写真や説明を閲覧することができる仕組みになっている。

3.裁判所の判断
裁判所は、以下のように述べ、原告の主張を認め、本件審決を取り消しました。

(1)指定商品についての使用の有無
商標の使用があるとするためには、当該商標が、必ずしも指定商品に付されて使用されていることは必要ではないが、その商品との具体的関係において使用されていなければならない。(最高裁昭和42年(行ツ)第32号同43年2月9日第二小法廷判決・民集22巻2号159頁)

本件メールマガジン及びWeb版は、上記のような仕組みであることを考慮すると、原告商品に関する広告又は原告商品を内容とする情報ということができ、そこに表示された「クラブハウス」標章は、原告の加工食料品との具体的関係において使用されているものということができる

(2)登録商標との同一性
原告のメールマガジンに付された「クラブハウス」標章は、上下2段で表された本件商標の下段と同一であり、その結果、本件商標と同一の称呼及び観念を生ずるものということができる。よって,上記「クラブハウス」標章は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標に当たる。

なお、被告は、原告が「クラブハウス」標章をメールマガジンの名称・識別標識としてのみ使用しているから,商品についての使用に当たらないと主張しましたが、裁判所は、「クラブハウス」の表示はメールマガジンの名称としても使用されていることは否定することができないものの、原告商品に関する広告(商標法2条3項8号)に当たらないということもできないと被告の主張を斥けました。

判決全文は、こちら(PDF)
コメント
商品との具体的関係性
 まず、本件においては、「メールマガジン【クラブハウス】」のような使い方をしていることから、本件商標(「クラブハウス」)が本件メールマガジンのタイトルとして使用されていることについては異論がないように思われます。ここで、メールマガジンのタイトルは、書籍や雑誌の題号に準じて考えることができ、いわゆる「商標的使用」には該当しないと言え、審決はこの立場でした。
 しかし、裁判所は、本件商標がメールマガジンのタイトルとして使用されていると同時に、当該メールマガジンからリンクされたウェブサイトの商品カタログ等のページに紹介された商品の「広告」としても使用されていると判断しました。
 この判断にあたって、裁判所は、広告において商標の使用があると言えるためには、「必ずしも指定商品に付されて使用されていることは必要ではないが、その商品との具体的関係において使用されていなければならない」(最高裁昭和42年(行ツ)第32号同43年2月9日第二小法廷判決・民集22巻2号159頁)と判示しています。
 例えば、メールマガジンやウェブページ内に直接、商品が掲載されている場合、そこに表示されている商標とその商品との具体的関係性は比較的理解されやすいと思われます。
 これに対して、メールマガジンまたはウェブページから「リンク」されたウェブページに商品が掲載されている場合において、メールマガジン等に表示された商標と、リンク先のウェブページに掲載された商品との関係性については様々な意見があるかもしれません。この点について、裁判所は、『同項8号所定の使用においては、指定商品に直接商標が付されていることは必要ではないところ、リンクを通じて原告のウェブページの商品カタログに飛び、加工食料品たる原告商品の広告を閲覧できること、そして、そのような広告はインターネットを利用した広告として一般的な形態の一つであると解されることからすると、原告のメールマガジン及びWeb版における「クラブハウス」の表示が、原告商品に関する広告に当たらないということはできない。』として、商品との具体的関係性を肯定しました。
 ただ、メールマガジンからリンクされたウェブページに掲載されている商品についてまでも使用を認めることとした場合、その商標がカバーする範囲(商標権の効力が及ぶ範囲)が不明確になり、当事者自身でも管理することが困難になると思われます。リンクされたウェブページから、さらに「再リンク」(あるいは再々リンク)されたウェブページまで含めることにした場合はなおさらです。本件については、不使用取消審判に関する事案であることも考慮されて判断された可能性があり、侵害事件についても同様の判断がなされるかどうかはわかりません。