下町の製本屋さんのブログ -渡邉製本株式会社-

荒川区東日暮里の書籍製本会社 渡邉製本株式会社のブログです。
社長のほかに、社長の奥さんやスタッフもどんどん参戦します。

2018年05月

昭和30年5月25日は広辞苑が世に出た日だという事です。 

うちにも古い広辞苑が有ります。

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今回のブログはこちらに関する個人的な思い出話です。


今から数十年前、私が子供だった頃は出版社の社員さんや重役さんと製本業者が家族ぐるみでお付き合いするのは割と普通の事だったのではないかと記憶しています。
会社の用事でこちらにいらっしゃるのはもちろん、我が家でお酒を飲んでいかれる事もありました。

辞書を下さった方はいつも細身の身体に三揃のスーツ、金縁めがね、時間を見るときは懐中時計
というような下町のおじさんたちとはまた雰囲気を異にする山の手の紳士でした。
祖父は外ではなく家でもてなしたい人でしたので、祖母と母は酒肴の用意にいつも大わらわ。
その家の子供たち(私ときょうだい)も三つ指ついて挨拶しに行きました。
そんなふうですから、いつも会社にくるときには「お子さん達に」といってお菓子などを持ってきてくれます。
舶来もののチョコレートを少し、とか。
「ヨックモック」を始めて食べたのもこの方のおもたせだった記憶があります。

写真の新村 出編集の広辞苑は大学入学祝いです。
萬年筆や時計などが一般的なお祝いの品だった時代に、珍しいプレゼントだったかもしれません。
でも、知的な人柄が現れたものでとても嬉しかったものです。


分厚いので持ち歩く事はもちろんありませんし、本棚から引っ張り出すのも大変。
でも、いざという時には頼りになります。
その後卒論を書く時に大活躍してくれました。

最近では漢字を忘れた時には電子辞書はおろか、携帯で簡単に済ませるのですが、
文章を推敲したり、言葉の使い方を吟味する時にはやはり広辞苑を使います。

自社製品のホームページのテキストはスタッフ全員で頭をひねって考え、直しを繰り返しましたが、
ここでも語句の使い方が間違っていないか確かめるのに大活躍でした。

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空押しで「第二版補訂版」とあります。

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印刷会社、製本会社が載っているのは普通ですが、用紙やクロスの会社まで。
用紙は特別誂えなのでしょうね。

もうひとつ辞書で思い出しました。
中学の国語の先生が「辞書は長く使うものだから、壊れないように最初は真中を一度開いてから語句を探すように」と教えてくれたので、今でもそうやっています。
本当は辞書はそんなに簡単に壊れない製本になっていますけれど。
ものを慈しんで大事にするのを教わりました。

記事担当;A



この前のブログで紹介したAtelier GIannnini&Kuwataで購入したカードケース

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トスカーナのカーフスキンを使っています。
最近は革の色を出すのにスプレーで上からシューっとやる事が多く行われているらしいです。
こちらは天然の素材できちんと染めています。
スプレーの色掛けは鮮やかな色が出る反面、傷が付いたらそれまで。
きちんと染めた革は落ち着いた深みのある色あいになり、修復が可能だとのこと。
革の裏側を見ればどちらを使っているか分かるそうで、染めたものは裏側まで色が付いているのだとか。


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この完璧な丸み出し!
製本業者はこんなところが気になるんです。

細部まで神経を行き渡らせて作られたこのカードケース、お値段は日本円に換算して
1万円とちょっと。(現地での価格。2018年現在)
丁寧な手作り、エイジングしていく良い素材、修復もできる事を考えたら一生もの。
決して高くはありません。

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箱も手作り。こちらもすごくきれいでしっかりしていて、捨てるなんて出来ないのです。

イニシャルを箔押ししてもらいましたが、空押しにするか、シルバーにするかで
迷いに迷って銀箔にして貰いました。
この箔押しも、以前AtelierGKのFBで知ったのですが、文字の形によりただ版を置いただけでは
文字間が均一にならないので、1字ずつ調整するのだそうです。
このあたりも聞かなければ知らない職人仕事なのですね。

今後は革を使ったグッズにももっと力を入れていきたいそうです。



その他の文具のこと

私達の会社ではオリジナルノートも出しているので自然と気になるのは他社製品。

成田空港内、イタリアの空港、街中の文具店、99セントショップ、トスカーナに何店舗かある
特産の紙ものを扱う店舗、中央駅の中のブックショップ、駅地下にあるフライングタイガー、、、
わざわざ探してまでは行かなかったものの結構チェックしました。


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前回のブログで紹介した Atelier Giannnini & Kuwata のお仕事の一端を紹介します。

私達の会社は手仕事も出来ますが、メインは機械の作業です。
私が子供の頃には今ほどの機械化も進んでおらず、工員さんが手で行う部分も多かったとはいえ
全ての工程を手でやってはいませんでした。
(束見本を作成する時は別ですが、それでも完成品というのとはちょっと違います)

また、祖父の時代には金箔を小口に貼る作業などもあった様ですが最近は請け負っていません。
マーブル染めや革も扱いません。

翻ってジャンニーニさんと桑田さんの工房は伝統的な西洋式製本がベースです。
紙はもちろんの事、革の装丁もやればマーブル染も作業のうち、そして花布も手作りです。
 
『美術製本』という分野の仕事の写真です。
以下は全てLapo Giannini作。

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革の装丁。ケースの他に全てが入る箱も作っています。

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真ん中の青い部分はガラス。中身の文章に合わせて水をイメージし、
下の部分が透けて見えます。
ガラスの下はマーブル染になっていて、1点ずつ柄が違うそうです。


製本の歴史を紐解いていくと、先に中身の文章があり、それに合わせてカスタマーの依頼を受けた
製本家が本全体をデザインし
なおかつ製作して完成するという在り方だったそうです。
つまり製本家はデザイナーであり、職人だったのですね。
そして芸術家です。

Lapoさんは代々家業を受け継いだ現代の職人さんです。
世界の製本コンクールに出展されており、中でもオックスフォードのコンクールは分業でなく全ての工程を1人でこなすのが条件なので、
楽しいとお話ししてくれました。

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何と素敵な写真でしょう。
Lapoさんは7代目の職人さんです。



もひとつのAtelier GKの仕事、『修復』。

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訪ねた時ちょうど工房に依頼があった仕事。
表紙は木と革。
依頼主が床に置いていたらペットの猫がガリガリ爪を研いでしまったそうです(笑)

もうひとつ、何百年も代々継承されてきた聖書というのを見せていただいたのですが、
余りに長い年月を経た本に圧倒され、しかも訪問時の私は風邪気味だったのでクシャミの飛沫や
鼻水など垂らしては大変なので緊張して写真を撮るのを忘れてしまいました。
ちなみに先程の写真の美術製本も手袋をして触るようなものなので、若干離れた位置から撮っています。
角度がいまひとつですがご容赦ください。

ところで、工房に立派な革装のオリジナルノートやアルバム製作をを頼んだり、
何百ユーロもかけて修復を依頼する人とはどの様な客層なのか尋ねてみました。
「アメリカの建築家やヨーロッパ各地の貴族ですね。」
との事でした。
FBには蒐集家ともありましたっけ。
箱付きだと値打ちが出るものが世の中には多くあるので、壊れた箱を修復するという訳です。



それにしても、今の世の中で本格的、伝統的な技術をきちんと受け継ぎ、尚且つ革新も忘れずに
単なる商業主義に偏って手を抜いたりせずに芸術家としての矜持を保ちつつ、
お店の経営をするというのはどれほどの覚悟が要る事でしょう?
ぶれずにやっていく大変さ、少なからず理解出来るつもりです。



お店ではトスカーナの美しい紙を使って作ったノートやカード、革で作った小物などもオリジナルグッズとして販売しています。


私は日本にいる時からずっと欲しい物があり、今回購入してきました。

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カードケースです。
色は茶色っぽく見えますが、深みのあるボルドーなのです。
マーブル染も工房オリジナル。


こちらについても色々書きたい事があるので、それはまた次回の記事で。
ノートなどの文具まわりについても触れます。

追伸; Atelier GKは全欧州で14社選ばれた工房の一つとして、ヴェネツィアン・ビエンナーレで発表されるビデオに出演するそうです。
           

記事担当;A








 

そのお店はフィレンツェ旧市街側から見ると、アルノ川に掛かるかの有名な『ヴェッキオ橋』から
右に数える事3つ目の『アメリゴ・ベスプッチ橋』を渡って直ぐの場所にあります。

川を挟んだこちら側は観光の中心とは少々趣を異にして、もっと庶民の生活のにおいを感じる場所です。
職人さんも多く、ぶらりと気ままに散歩していると家具の修復などを窓の中で行なっているのが見えたりするのです。
ずっと下町エリアで生まれ育っているので、こういう雰囲気は落ち着きます。
(ステキなレストランやワインバーなどもあるのも良いです。)
 
Atelier Gannini & kuwata はイタリア人のLapo Giannini(ラポ・ジャンニーニ)さんと日本人の桑田宝子(くわた みちこ)さんが
経営する製本工房。本その他の修復、手製本、紙や革製品の自社製品販売などをしています。

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数年前に偶然見たBSのテレビ番組でお二人の事を知り、直ぐに検索(今の時代は本当に便利ですね)。

それ以来FBで繋がって、製本周りの事やら小さな会社を経営する事に関してなどをSNS上で交流させて貰っています。
二人の仕事の腕はもちろん、取り組み方などインスパイアされる事も多く、
「これは実際に会いにいかねばならない」
という思いが日増しに強くなって今回の旅行の行き先を決定したという訳です。
イタリアも大好きですし。

実は昨秋、彼らは日本の百貨店の「イタリアフェア」で実演をしに来日する事が決まり、
そのお仕事後の休暇に私達の会社を訪ねてくれたのでした。
その時に私達の会社の機械でする作業などを見学して貰い、そして今回は私達がフィレンツェの工房を見せてもらいました。

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プレス機です

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この機械は箔押し機です。

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日本では「ギロチン」と呼びます。カッターですね。

美は細部に宿る。
SNSでのやりとりからだけでも端正な仕事をするのが充分伺えるのですが、確信したのはここ。

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この道具の並べ方です。そして手入れの良さ。

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製品の型紙の整理の仕方に見惚れる社長。

「散らかっている工房だと思われるでしょうね」と言われてましたが、どこもきちんと整理整頓されてました。
こういうところも見習わなくては。
日常の些細な事も物づくりに反映するのです。

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これは現在請け負っている仕事の箔押し用の金型。真鍮製。
向こうは金箔。ちょっとブロンズがかった色ですね。


次はいよいよLapoさんとMichikoさんの作品を紹介の巻、です。
素晴らしいです!


Atelier Giannini & Kuwata →製本工房のサイト

記事担当;A 






連休にイタリアのフィレンツェに行ってきました。

大きな目的の一つに『知り合いの製本工房を訪ねる』というのは有ったのですが、
仕事の旅行ではなく普通の旅行です。
旅行の良いところは環境を変えて日常のアレやコレやを忘れて気分転換をするところ。
でも、興味あるものにはついつい目が向いてしまいます。

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旅行の前から読んでいた本です。
読み終わっていなかったので行きの飛行機の中で読んでいました。
偶然にもトスカーナ。
山あいの何も産業が無い小さな村の人達が本の行商を生業とする事で生計を立てた、
そしてその村が日本でいう『本屋大賞』のようなイベント発祥の地となった、というとても興味深い内容です。
なかなか感動的なので本好きさんにおススメします。

さて、フィレンツェ初日にアルノ川を渡った下町エリアを散歩していると

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教会前の広場の青空市場で古書を扱う屋台を見つけました。
日常にあるこんな風景。魅力的です。

私も今後の参考に一冊買いました。
イタリアでは一般的な様ですが日本では珍しい函の形なので。

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フィレンツェはぶらぶら歩いていると「書店の多い街だなぁ」と感じます。
人口や大学、専門学校の有る無しにもよるので一概には比べられないのかもしれないけれど、
本屋さんがたくさんある街は文化度が高いのだと私は思う。

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書籍がいっぱいある風景はいいなぁ。

フィレンツェ近郊の街で見かけたショットも載せておきます。

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これらはサンジミニャーノにある『塔の家』内部。
書斎は憧れますね。  

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これが『塔の家』。財力を示す為にニョキニョキ塔を建てたらしいです。さしずめ「うだつを上げる」とか、「タワーマンションの上層階に住む」、みたいな感じでしょうか?

次のブログでは今回の旅行のハイライト
「フィレンツェの製本工房訪問記」を書きたいと思います。
興味があったらまた読んで下さいね。

記事担当;A

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