私の一冊、私の一本

講師の好きな本や映画をご紹介していきます。

2015年06月

高セレクションVol.4 筒井康隆『俗物図鑑』新潮文庫

筒井康隆『俗物図鑑』新潮文庫

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あの有名な『時をかける少女』(略称:時かけ)の原作者でもある筒井康隆の作品・・・

ですが、いったい何をどうすれば「時かけ」という青春SFを書いた頭脳から、
こんな下品でどうしようもない作品が生まれてくるのか不思議でしょうがありません…

この作品のあらすじは、
「タブー」つまり犯罪行為などを得意とする連中が一時マスコミに持て囃される。
しかし、次第に「世間の良識」に反撃されるようになり、
最終的には自分たちの正義(?)のために大暴れするというものです。

人間の隠れた悪への欲望や破壊衝動を気の利いた言葉遊びなどで描き出しており、
下品でありながらも実に痛快な物語。

知らなくていいようなことに詳しくなれる、ある意味素敵な一冊です。
国語において雑学というのはとても大事なことですので、是非ご一読を。





早稲田大学文学部4年 高

高セレクションVol.3 貴志祐介『黒い家』角川文庫

貴志祐介『黒い家』角川文庫

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今回はホラー小説の紹介です。
とにかく怖い。。。
映画などの映像作品ではなく読書でここまで怖い思いができるものなのかと唸らされた一冊です。


貴志祐介さんの作品ではサイコパス

(共感性が著しく欠陥していたりする人。
他人をためらいなく傷つけたり殺害してしまったりできる。
昨今ではメディアでたびたび取り上げられたりしています。)

がテーマとされることが多く、
一昨年には同じく貴志の作品でサイコパスを扱った『悪の経典』が
映画化されたりもしましたが、この『黒い家』の怖さはその比ではありません。


自分の利益のみを考えるサイコパスとその餌食になる人たちというのは、
決して本の中の作り話ではなく、実際にある話ということもこの作品の怖さを引き立てています。

お化けなどの怖さではなく、人間の怖さがよーくわかる。


読んで眠れなくなるどころか、軽く人間不信に陥ってもおかしくない…
そんな作品だと思います。





早稲田大学文学部4年 高
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