「政治的利用」としたが、「政争の具」と置き換えてもいい。
 「政争の具」とは、辞書によれば、「政治的争いに勝つための手段として利用されるものごと」とある。ただ、ここでは、限られた業界の利益代表としての政治的利用も含めていることをはじめに断っておく。

 武漢ウイルスの感染拡大を封じ込めるため、国民が一丸となって闘っているいま、感染対策を「政争の具」にする、あるいは「自らの利益拡大に利する」ことが、万に一つもあってはならない。
 ところが武漢ウイルス感染拡大に対処するため政府・与党が議論を煮詰めている緊急経済対策をめぐり、この機に自己の権益や影響力の増大、果ては「ポスト安倍」を絡めた動きがみられるのが気になるのである。
yjimage 先日、米大リーガーのダルビッシュ有投手が次のようにツイートしていた。
 「日本はなんでこんな状況なのに補償がステーキ券とかなの?」
 「和牛券って、デマとかじゃなくて話がでるだけでやばいと思うんやけど」
 
 なんのことやらと思うが、これは緊急経済対策で焦点になっている現金給付に関する議論のなかで、商品券の一つして、高級和牛が食べられる「お肉券」とか、高級刺身の「お魚券」が浮上したことが報道されたからだ。
 ダルビッシュ投手は、奇妙な話で、笑い話にしてはおかしいが、これが本当なら日本は世界から物笑いにされる、と思い、ツイートしたのだろう。

 議論ではこのほかにも、外食に使える食事券や観光クーポン、高速道路を一定期間無料にする案などが出たという。
 これらを提案した議員は容易に想像がつく。農畜産業界や水産業、外食産業、観光業、運輸輸送業界などを支持基盤にする、いわゆる自民党の「族議員」たちだ。この際に、業界の利益代表として、自らの支持者に向け大いに点数を稼ごうという、魂胆がみえみえである。
 自己権益の保持あるいは増大をもくろんでの奇策であることは明白だ。

 現金給付案は、自民党の岸田政調会長が「生活を守るために手元流動性(現金などすぐに支払いに充当できる資金)を確保しないといけない」といち早く提案。いまは一律給付か、所得が減った人に限るかが議論の焦点になっている。
 公明党は「収入が激減したり、現実に生活に困ったりしている大勢の人たち」(山口代表)の生活を支援するため、所得制限など線引きしたうえで一人当たり10万円を目安に給付するとしている。
 しかし、こうした現金給付案を否定しているのが「観光業界のドン」で知られる自民党の二階幹事長だ。
 この二階幹事長は、武漢ウイルス発症直後から中国に防護服を送り、あげくに7月に都知事選を控える小池都知事にも防護服を中国に送るよう要請するなど、「媚中」ぶりを発揮している。そこに透けて見えるのは、権力を誇示し、自己権益の増大を図る政治家の一面だ。

 緊急経済対策をめぐっては、岸田政調会長が安倍首相の指示を受け、党内論議を進めていた。そこへ突然、政府と与野党の連絡議会を設置したのが二階幹事長である。岸田氏は「協議会は政策論議する場ではない」としているが、自らリードし、加速していた議論にブレーキをかけられた格好だ。
 二階幹事長は、「ポスト安倍」を狙う岸田氏に手柄をあげさせないと目論んでいる、との見方もある。
 いずれにしろ武漢ウイルスの感染拡大に対処する緊急経済対策が、政治的に利用されるようなことがあってはならない。現金給付は国民の関心が高く、その議論の行方を注視していることを与野党議員は忘れてはならない。

 
 

 
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