2006年12月25日

小説さよなら涙くん第2話

慌ただしい街。師走。
色彩豊かな灯りに飾られた街の通りには若い男女二人が体を寄せあい歩いている。それも大勢。その中をキレたいのししのような眼で練り歩いていた俺。
部活終わりに母に頼まれた月刊あしのうらを求め書店へ向かったところ、どうだろう街はいわゆるカップルと呼ばれるアベック集団ばかりで俺は終始その場に浮いた存在となっていた。

最初は教室で話をしていたら川下に目撃され、付き合っちゃえよとからかわれた。それ以来なんか気になってしまい、教室で見るたんびに好きになってしまった。田崎のことを。
次第に気持ちは高まってしまった。いつしか田崎の瞳も声も手も髪も仕草も全部がキラキラ輝いているような、錯覚をおぼえるような、そんな気分になってしまった。



そんな田崎とこの日この通りをふたりで歩けたら、と思いつつため息をひとつして俺は駅へと向かった。

駅前に塾がある。そこには同じ高校の生徒が多数通っている。出口のほうへ目をやると、講義を終えた生徒がわやわやと出ていく。それを尻目に俺は改札を通ろうとした。その時



「なーみーだー」



という声とともに肩をたたく女性であろう人が背後にいるのを確認し、うしろを振り返った。「もしこれが田崎だったら」というメークミラクルを抱いてしまった自分に腹が立つ。



「涙久しぶりー。いま塾終わったんだ」


中学からの女友達の田中めぐみである。女友達っていうほど大げさな関係ではなく、まあ三日に一回話すくらいの関係を送っていた。高校は別々になり、かなりキャラがギャル系になった。噂によると軽い女らしい。



「やっと涙くんのアドレス聞けるじゃん。教えてよ」「あっいいよ」



アドレスを聞き終えると田中めぐみはじゃねぇ〜と手を振りホームへ駆け込んだ。


正直俺はちょい腹が立っていた。今のコミュニケーションのせいで電車が行ってしまった。トボトボと椅子にすがり、なにをするでもなくどこかを見つめていた。その時




「なーみーだー」



という声とともに肩をたたく女性であろう人が背後にいるのを確認し、うしろを振り返った。「もしこれが田崎だったら」というメークミラクルを抱いてしまった自分に腹が立つ。ちなみにこれはデジャヴではない。



「星山くん久しぶり。田崎だよおぼえてる?」






…マンガ並のベタな展開に俺はなぜか腰をやられてしまい、椅子に勢い良くすべりおちてしまった。



「キャハハなにやってんの星山くん!!おどろかせた?」


おちつきを取り戻した俺はあくまで紳士的な態度をとり、「やぁ」と発言をした。落ち着いて見てみれば、私服姿の田崎を見るのは初めてであり、星山の心をくすぐるのにはちょいとおいこれ可愛いすぎちゃうか度の数値が非常に高いものであった。



「あっそう星山くんのアドレス知らんから教えて!」


俺はすごくいい返事であっいいよと返して、アドレスを交換した。あんがと!と言って田崎はホームへ駆け込んだ。

俺はいま起こったことが頭に着々と刻み込まれるのを実感し、また電車が行ってしまったのに気付かず椅子に座ったまんまだった。星の降る夜。
                                   過ぎ行く季節も

ため息の日々も

きみの笑顔だけ


胸に抱き働いている

エレファントカシマシ/夢のかけら

water12 at 21:50│Comments(1)TrackBack(0)

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この記事へのコメント

1. Posted by mika   2006年12月26日 20:57
>>瞳も声も手も髪も仕草も全部がキラキラ輝いているような、錯覚をおぼえるような、そんな気分になってしまった。

って、
めちゃくちゃイイ…

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