政府は5月末をめどに、南スーダン国連平和維持活動(PKO)に派遣している陸上自衛隊を撤収させる方針を決めた。「駆け付け警護」という国連職員たちが武装集団に襲われた時、武器を持って助けに行く任務の付与から約4ヶ月での撤収決定。とは言え、派遣部隊の任務はまだ2ヶ月余り残っている。戦闘に巻き込まれる恐れがあるのだから、駆け付け警護の任務は保留とした方が良い。そして、5月と言わずに、今すぐ 陸上自衛隊を撤収させたい。

一昨年8月、南スーダンでは和平協定が調印されるも事実上の内戦が再燃。ジュバでは昨年7月に270人以上が死亡する大規模な武力衝突も起きている。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は先月、戦闘の全土拡大による治安悪化が原因で、難民が150万人を超えたと発表した。

現地の不安定な情勢下で、不測の事態が起こった。
PKOの陸自隊員一時拘束
南スーダンで政府軍に、けがなし
(共同通信 2017/3/19 00:36)
 防衛省は18日、南スーダン国連平和維持活動(PKO)に参加している陸上自衛隊部隊の隊員5人が18日午前10時(日本時間同日午後4時)ごろ、首都ジュバで調達業務中、南スーダン政府軍に一時拘束されたと発表した。約1時間後に解放されて宿営地に戻り、けがはなかった。隊員は銃を携行しており、武器取り締まりをしていた兵士が、国連要員が対象外と知らず拘束した。南スーダン政府は日本側に「誤解があった」と謝罪した。
 防衛省によると、一連の活動で陸自隊員が拘束されたのは初めて。過去のPKOでも同様の事案は把握していないとしている。
南スーダン

わが国が国際平和協力法に基づき国連平和維持活動に参加する際の基本方針である「PKO参加5原則」の「1」につて吟味していたのなら、南スーダンPKOには参加しなかったに違いない。
参加5原則
1 紛争当事者の間で停戦合意が成立していること
2 国連平和維持隊が活動する地域の属する国及び紛争当事者が当該国連平和維持隊の活動及び当該平和維持隊への我が国の参加に同意していること。
3 当該国連平和維持隊が特定の紛争当事者に偏ることなく、中立的立場を厳守すること。
4 上記の原則のいずれかが満たされない状況が生じた場合には、我が国から参加した部隊は撤収することができること。
5武器の使用は、要員の生命等の防護のための必要最小限のものを基本。受入れ同意が安定的に維持されていることが確認されている場合、いわゆる安全確保業務及びいわゆる駆け付け警護の実施に当たり、自己保存型及び武器等防護を超える武器使用が可能。


閑話休題(それはさておき)

南スーダンなどに総額2600万ドル支援へ
(NHK 3月14日 11時06分)
 政府は14日の閣議で、国連のPKO活動に派遣している自衛隊の部隊の撤収を決めた南スーダンで起きている飢きんへの人道支援として、600万ドルの無償資金協力を緊急で行うなど、中東・アフリカ諸国に対し、総額2600万ドル、日本円で29億9000万円の支援を行うことを決めました。
 政府は、南スーダンでの国連のPKO活動に派遣している陸上自衛隊の施設部隊を、ことし5月末をめどに撤収させることを決め、今後は、南スーダン政府の自立の動きを支援することに重点を移す方針です。
 こうした中、政府は14日の閣議で、南スーダンに対し、600万ドル、日本円でおよそ6億9000万円の無償資金協力を緊急で行うことを決めました。南スーダンは、最も深刻な食糧危機の状況とされる飢きんに陥っていると指摘されていて、資金は、国連のWFP=世界食糧計画などを通じて、穀物や飲料水、それに、乳幼児用の栄養補助食品などの支援にあてられることになります。
 また政府は、ソマリアやイエメンなど中東・アフリカ諸国への支援も決定し、南スーダンを合わせた総額は2600万ドル、日本円で29億9000万円に上るということです。
 岸田外務大臣は閣議のあと記者団に対し、「国際社会における飢きんへの危機感は大変大きい。国連のグテーレス事務総長からの要請なども踏まえ、日本として支援することとした」と述べました。

参考:中東・アフリカ地域における飢饉対策のための緊急無償資金協力(平成29年3月14日)

「PKO参加5原則」の「1.紛争当事者の間で停戦合意が成立していること」に現実性がないことを理由に、当初から南スーダン政府の自立の動きを人道的に支援することに重点を置いておけばよかったのではありませんか。
現代の新保守主義の元祖ともいうべき風変わりな街の哲学者エリック・ホッファーは、「アメリカ人の浅薄さは、かれらがすぐハッスルする結果である。ものごとを考え抜くには閑暇(ひま)がいる。成熟するにも閑暇がいる。いそいでいる人たちは考えることも、成長することも、堕落することもできない。彼らは永遠に愚直状態にとどまる」(『情熱的精神状態』)と、辛辣なことを言っている。真の自信がなく、外部からのショックに過敏に反応して、男らしさを誇示しようとハッスルする指導者ほど、致命的な失敗を犯す。たとえば、一九四二年四月ホーネットから発進したドーリットルの東京空襲のショックに挑発されて、あわててミッドウェー作戦を策定した山本五十六長官。おなじく一九五七年、ソ連のソ連の打ち上げたスプートニック・ショックでハッスルして、宇宙開発大軍拡、ベトナム介入の愚行にはしった、ケネディ。むしろゴルフに興じていたかにみえたアイクのほうは、スプートニック打ちあげにいささかも動ぜず、クレムリンが「宇宙空間の国際的自由」を事実上、認めたという意図せざるプラス面をすばやく看(み)てとっていた。永井陽之助著『現代と戦略』156頁・文芸春秋社・昭和60年第1刷より引用)


SUNSUNの朝陽を浴びながら

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