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開高健 著 集英社文庫

 長く読書から遠ざかっていた私だが、読書少年だった昔を思い出し、今年の正月に「今年は通勤電車の中で週1冊ずつ本を読むことにしよう」と決めた。
 読みはじめるとこれがいい。おかげで久々に読書の喜びを毎日味わっている。たまに電車を乗り越してしまうほど。
 経済的な理由と背広のポケットに入ることから、読む本のほとんどは文庫版か新書版である。内容の傾向としては、フィクションはほとんど読まない。生き物に関する内容が圧倒的に多く、7割り以上を占めている。
 元来、私は紀行文はあまり好きではないのだが、開高健の世界各地での大物釣りをテーマにしたエッセイ、紀行文の要素のある「オーパ!」シリーズは、魚への興味もあって楽しく読めた作品だ。
 最初の巻「オーパ!」ではブラジルに珍魚・怪魚を釣りに行く。
 アマゾン河を船で溯り、我が家にも居るピラーニャや、最大5メートル200キログラムにもなるという世界最大の淡水魚ピラルク、黄金の魚ドラドといった魚が目白押しに登場する。
 カメラマン同行の企画なのでカラー写真もふんだんに使われており、読んでいてとても楽しい。
 「オーパ!」の続編として「オーパ!オーパ!」3巻があり、こちらでは、ベーリング海の2メートルになるドアサイズのヒラメの一種オヒョウ、アラスカのキングサーモン、モンゴルのイトウ等など、世界各地の名だたる大魚に挑戦する。しまいには、中国奥地で30センチもあるルアーを用意して、なんと全長10メートル以上という怪獣のようなイトウに挑戦する。
 どの巻も釣りについてだけでなく、その地方の人々の暮らしぶりや自然が描かれており、これもまた読んでいて興味を引かれる。
 一流と言われた作家が書いただけに、魚と格闘しているときの“動きの描写”そして“心の描写”が実にうまい。
 誰が読んでもある程度楽しめると思うが、特に釣り好き、魚好き、旅好き、冒険好きの人は気に入るのではないかと思うシリーズである。
 全冊を読み終えた後は、同じ筆者、類似の企画で「オーパ!」シリーズに先駆けて執筆されたと思われる「フィッシュ・オン」(新潮文庫)も併せて読むとよい。
 また、「オーパ!」シリーズの楽しみの一つは、釣り上げた魚でいかに御馳走を作るかにもあるのだが、この旅に専属料理人として同行した辻調理師専門学校の谷口教授が書いた「オーパ! 旅の特別料理」(集英社文庫)を読んでみるのもいいだろう。

※この記事は1996.11.19日に書いたものを訳あって今更再掲載しました。