日経ビジネス2017年5月15日号

p22-27
肉ではない「植物肉」で作ったハンバーガーが、米国で売れている。健康や環境への意識の高まりなどを背景に、既存の食をゼロから作り直す動きが台頭。食品のみならずITやバイオなど異業種を巻き込み、食のイノベーションが加速する。
(略)
 ビヨンド・ミートは、植物肉に需要があることを証明した。既に、米国ではベジタリアン(菜食主義者)向けに「Alternative Meat(代替肉)」という冷凍食品売り場を設けているスーパーも少なくない。ビヨンド・ミートはそこで販路を広げてきた。大豆やエンドウ豆から抽出した植物性タンパク質で作った「植物牛肉」や「植物鶏肉」の冷凍食品は、健康志向の消費者の間で人気が出た。米国の高級スーパー、ホールフーズ・マーケットのほか、ウォルマート・ストアーズやターゲットなど約1万1000店舗で販売されている。
(略)
 タンパク質はエンドウ豆由来のものを使い、肉汁の代わりにサンフラワーオイルなどを追加。アラビアゴムから抽出した食物繊維などでひき肉の食感を出し、赤カブの色素などで赤みを付ける。これらの原料を独自開発した成型機を使って混合・抽出する。


栄養が偏りそうな。

 肉を植物からではなく、家畜の細胞を培養して作る動きも活発化している。「あと3年もすれば、レストランで培養肉を食べられる時代がくるだろう」。オランダにあるマーストリヒト大学のマーク・ポスト教授は言う。
 培養肉とは、再生医療などにも活用される、細胞の自己組成の特性を応用して作った肉のこと。ポスト教授は牛の幹細胞を取り出して培養し、人工的な牛肉を作ることに成功した。理論的には、牛の幹細胞数個から1万トン以上の牛肉が生成できるという。
 ポスト教授は13年に英ロンドンの記者発表会で成果を披露。その後、脂肪分などを工夫し本物らしい味に近づけた。昨年、事業化に向けた新会社モサミートを設立。大手食肉メーカーなどが出資を検討している。課題は量産化だが、ポスト教授は「培養肉のハンバーガー1食当たり10ドルも実現可能」と話す。3Dプリント技術を使い培養肉でステーキを作る検討も進む。


栄養はともかく、もうわからんね。

p28-31
植物由来の成分で既存の食品を置き換えようという動きは、肉だけではない。卵も魚も牛乳も、将来の市場拡大を期待して“偽物”の開発競争が加速している。だが、「地球を救う」という壮大な計画とは裏腹に、ビジョン先行の危うさも露見する。
(略)
 ハンプトン・クリークは食品の開発に加えて、世界中から植物を取り寄せてタンパク質の特性を分析し、企業向けにソリューションを提供する計画も掲げる。米製薬会社などで微細藻類などの研究を手掛けてきたR&D(研究開発)責任者、ジム・フラット氏は「製薬業界で培った手法を食の分野で展開する」と話す。
 テトリック氏は「既存の食料システムには大企業の既得権や政府の補助金などが絡み、変革は容易ではない。だからゼロからシステムを再構築する」と、あくまで強気。だがこうした壮大なビジョンは、危うさと紙一重だ。
(略)
 海洋生物の多様性と保全を研究していたドミニク・バーンズCEOが15年に創業した米ニューウェーブ・フーズも、その一つだ。「今や世界の魚の消費量は牛肉を上回っているが、サプライチェーンはサステナブル(持続可能)ではない」(バーンズ氏)と考え、植物性タンパク質でシーフードを代替することを思いついた。
(略)
 植物性タンパク質の企業向けソリューション事業を目指す者もいる。酵母菌を使った発酵によって卵の白身と同じ植物性タンパク質を作る米クララ・フーズだ。白身に特化したのは、栄養価が高い上に、様々な食品に活用される機能性を評価したからだ。
(略)
 開発しているのは、2015年創業のアヴァ・ワイナリー。ワインが含有する数百種類の化合物を、製薬業界などで使われている解析装置で分析。どの物質がワインの味に影響しているかを特定し、その成分をエタノールに合成する。ワインが含む化合物のすべてを完全に再現するのではなく、あくまでも人間が感知できるものだけだ。共同創業者のアレック・リー氏は「それで十分」と話す。
 合成にかかる時間は約1時間。長期間、醸造する必要がないために生産効率は高く、製造方法はコーラのような飲料に使用されているものでいいという。毎年、ブドウの出来具合に味が左右されることもなく、在庫が切れることもない。既存のワイン業界からは反発もあるが、一部のワイナリーからは熟成の管理などに技術を応用できないかといった関心も寄せられている。


ワインは、合成じゃなくて、混合じゃないのか?

p32-33
昆虫食、量産化競争の本気度
珍味から脱却へ
(略)
 研究対象としている昆虫は、アメリカミズアブ、ミールワーム(ゴミムシダマシの幼虫)、コオロギ、イエバエなど。いずれも、家畜の飼育に使われる飼料などが不要で、環境負荷が小さいことが主な理由だ。「バッタは家畜と同じ飼料が必要で、現在は研究していない」とファンルーン教授は言う。昆虫食の実用化に向け企業が研究開発費を拠出する動きも広がっている。
(略)
 一方で、いきなり人間向けの昆虫食を展開する動きもある。フィンランドのスタートアップ、エントキューブだ。14年に創業した同社は、食用コオロギを生産するための専用コンテナを開発した。飼育に必要な餌や環境をコンテナ1つに集約し、効率的なコオロギ生産ビジネスを支援する。「土地の制約から大規模化ができない養豚農家などが、コオロギ生産者に転じるケースが増えている」と同社のペルトゥ・カーヤライネンCEO(最高経営責任者)は言う。昨年からは、フィンランド国内でローストしたコオロギ入りのオリジナル昆虫食(約1300円)の販売も開始、既に数千食を売った。
(略)
 もちろん、課題はある。量産化の技術が確立しておらず、既存の食料と比べてコスト競争力が低い点は培養肉と同じだ。エントキューブのカーヤライネンCEOによると、現状のコオロギの飼育コストは1kg当たり25ユーロ。一方の豚は、2ユーロ程度と競争にならない。情報技術やロボット技術などを活用し、コスト競争力をいかに高めるかが大きな課題となる。


豚肉の10倍の価格のコオロギなんて
一般消費者は、安くなるまで考える必要ないな。