August 19, 2016

ママチャリを手に入れた

 自転車はもうかれこれ10年ぐらいスポーツ車しか乗ったことがなくて、軽快車こといわゆるママチャリには一生縁がないだろうと思っていたんだけど、身体を壊してちょっとハードコアなスポーツ車に乗るのが負担すぎる状況になって、でも自転車に乗りたいなと思った時、ママチャリはそうした欲求にとてもマッチする乗り物なことに気がついた。

 スポーツ車に標準的なダイヤモンドフレーム構造だとトップチューブのせいもあって乗り降りが脚を後ろに回す必要があるのだけど、それが今の身体状況だとかなりキツイ。で、ママチャリの前から脚をスッと抜いて乗り降りできるのがうれしいし、安全面でもこれが一番必須の条件。

 で、どうしようかなと考えていたら、自治体のリサイクル事業で放出品のママチャリを比較的安価に手に入れられる機会があった。当初の思惑では内装3段ぐらいの機能がついたやつが欲しかったのだけど、さすがにそういうのは人気があって手に入らず、固定ギアのもっともシンプルかつ典型的なものをピックアップ。それでもイマドキな前ハブにダイナモ内蔵の自動点灯ライト付きというのはそれなりにデラックスな仕様。

 とりあえず手に入れて最初にしたことは、シートポストの交換。最初からついていたのは25cmのステンレス製だったので、35cmぐらいの軽いアルミ製にしたかったけれど、最寄りの自転車屋数件を回って見つけることができたのは30cmの重たいステンレス製だけ。まずはこれでいいかと妥協して付け替えることに。やはりシートが高いのは漕ぐのが楽ちん。その代わり停止時はサドルに腰掛けたままだとちょっと地面までが遠いので、必然的にスポーツ車に乗る時と同じようにサドルから前に腰を下ろしてフレームをまたぐように立つ必要がある。これを面倒と思うかどうかだけど、サドル位置を低くすると漕ぐのがかなり辛いので、停止時の手間はこの際無視。この辺りは、普通のママチャリ乗る人とは感覚が完全にずれているのだろう(笑)。

 近所をのんびりふらふらポタリングするのはスポーツ車にはなかった楽しみだ。あとはなんといってもスタンドがあるのは超便利。思い立ったらすぐに自転車を止めて気になった店に寄ったりできる。スタンドの無いスポーツ車に乗っているときは、駐める際に安全性と盗難防止を考慮して場所を探す必要があったので街乗りではそれなりにストレスだった。あとは前カゴ付きなので、買い物してもポイポイと積めるのがうれしい。

 困ったのは、うちにある空気入れポンプはフレンチバルブ専用なので、ママチャリの英国式バルブには空気が入れられないこと。ツーリング用の携帯ポンプが汎用口だったので、これでなんとか空気を入れることができた。ママチャリのチューブはそれほど空気圧を高くしないので、携帯ポンプでも大して辛くないので助かる。一応、バルブは虫ゴム式からスーパーバルブに交換しておいた。

 それにしても、すでに太い鉄フレームの異様な重たさは負担になっていて、アルミ製高級ママチャリがとても気になってしまう。でも、雨に濡れて錆びたり倒れて傷ついても、また盗まれてもそれほど心が痛まないだろう今のママチャリをしばらくは愛用しようと思うけれど。  
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August 13, 2016

作ってみた:外部電源専用ギターエフェクターを無理矢理電池で動かすための変な道具

 イマドキのエレキギターな人達は最初から大きなペダルボードにエフェクターをずらっと並べて電源も専用パワーサプライからというのが常識だろうから、電池でエフェクターを動作させようなんて考えることはあまりないかもしれない。

 しかし、自分の場合は遊びでたまにギターを弾くだけなので、ペダルボードみたいな大袈裟なシステムを必要とすることはないし、気が向いたときに使いたいエフェクターを1つか2つ持ち出して使ったりするだけ。なので、とくに外でエフェクターを使うときは電源を心配するのが面倒なので電池動作に対応したエフェクターがうれしい。ところが、最近はエフェクターの小型化が進んで電池を内蔵できない大きさの製品も出てきたりと、もはやパワーサプライ付きのペダルボードで使われるのが前提の設計が当然の流れになってきた。そうすると自分の場合はかなり困る。

 そこで、電池で外部電源動作専用エフェクターを動かすために小道具を作ってみた。工程で面倒なのはジャックとスナップの接続は半田付けが必要というところ。

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 費用は電池ケースと電池スナップ、DC電源用プラグの3つで、秋葉原のパーツショップ辺りを物色すれば合計300円でおつりがきそうな感じ。この手の完成品を楽器店で買おうとすると、同じような3点セットが下手すると1000円ぐらいはするので、自作が苦でない人はパーツを手に入れて作るのが吉。

 エネループ6本で約9Vの電圧を確保。DSPをぶん回して空間エフェクトをガンガン効かせるようなエフェクターにつないでどれだけの時間持ちこたえられるのかは謎だけど、とりあえずちょっと使ってみたいという条件であれば動作も問題なかった。

 特殊な使い方としては、へたった006P 9Vのマンガン電池をとっておいて、ここぞというときにファズ的なアナログ回路の歪み系エフェクターに使う時なんかに便利かも。いちいちエフェクター内蔵の電池を出し入れしなくても、このスナップにへたった電池をつないでエフェクターの外部電源用DCジャックに刺せば、美味しい音色をすぐ試せる。まー、オリジナルのFuzz FaceとかはDCプラグ自体が無いのでそういう使い方も出来ない訳だけど(笑)。  
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August 05, 2016

USBノイズフィルター「ES-OT4」を試してみた

(※ 随分前に書きこんで公開したつもりがずっと下書き保存の状態になっていたので今さらで晒すことに。なぜ公開を保留していたのかその理由は全く思い出せない……)

 雑誌「Stereo 2015年1月号」付録のUSBノイズフィルター「ES-OT4」を手に入れたので、再生と録音の両条件でどんな効果があるのか試してみた。

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★特別付録
USBノイズフィルター

●特別企画
特別付録USBノイズフィルターを使いこなす
・USBノイズフィルターの使い方とその効果を探る
・USBノイズフィルターのベストな使いこなし
・付録が活きるアクセサリー紹介


 まずは音源再生のテスト。MacBookでAudirvanaからAIFFファイルを再生し、ES-OT4経由で、オラソニックのTW-D7IPで聴くというかなりお手軽な構成。MacBookからES-OT4への接続にはやはりStereoの付録で入手したSUPRAを使用(このケーブルについては過去記事参照のこと)。

 ES-OT4は、PCバスパワーデバイスと独立電源で動作するデバイスの両方に対応しているが、オラソニックのTW-D7IPはそのいずれの形でも動作するモデルなので、今回の試聴にはうってつけ。

 最初はバスパワー動作状態で比較してみたが、この時点でES-OT4の有無による差は明白。ES-OT4を装着した状態の方が好ましく、シンバルや生ギター等、特に高音の再現性が良くなったと感じた。

 続いて、TW-D7IPを専用電源アダプターで駆動し、やはり同じようにES-OT4の無い状態と装着した状態で比較試聴。結果は驚くほどに差が出た。ES-OT4を装着では、ドラムのキックやベースなどの存在感がこれまでに経験したことがないほどに明確となり、ここまでオラソニックのスピーカーは鳴るのかと驚いた。再生音全体のまとまりも良くなり、同じボリューム設定でも一回り大きな音像を楽しめる感じ。正直、これまでは、TW-D7IPを専用電源アダプターで動作させようが、バスパワーで動作させようが、音質そのものに根本的な差はなかった。しかし、ES-OT4を装着させた場合には、明らかに専用電源アダプター動作が優れており、音像の輪郭がハッキリとする。これは、おそらくES-OT4のフィルター効果が最大限に活かされているからだろう。  
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August 03, 2016

映画「シン・ゴジラ」を観た(注意:もろネタバレ)

 映画公開と共に多くの絶賛の声を聞いて、これはとりあえず観ておくかということで料金が割安になる映画の日(今は「ファーストデイ」と呼ぶらしい)に劇場へ。

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 最初出てきた怪獣がどう見ても自分の知っているゴジラとは似ても似つかない姿形なので、ははぁ、これは旧作「ゴジラの逆襲」のアンギラス的な位置づけの怪獣でこの後ゴジラと戦うことになるのだろうと思って期待していたら、そういうアンギラス対ゴジラのような展開は全然なくてガッカリ。というか、あれが変態してお馴染みのゴジラになる設定はちょっとずるいと思った(笑)。

 この映画、人によっては、311だったり911を思い出して複雑な気持ちになることもあるだろうけれど、自分の場合は初っ端で中央高速の笹子トンネル崩落事件を思い出した。そういう意味では、この映画は色々な過去に起きた災害をモチーフにしていると解釈してもそれほど不自然ではないし、そういう人々が記憶に持つ恐怖感や危機感に訴える要素がふんだんに散りばめられている。

 考えてみれば初代ゴジラは1954年という太平洋戦争終決から10年も経たないタイミングで公開された訳で、当時のこの映画を見た人達は一様に戦争を思い出して不安になっていたのかもしれない。そういうインパクトがあのゴジラという映画の評価に繋がっていたのだろうし、この新しいシン・ゴジラもそういう要素があっての高評価という可能性は感じる。

 劇中で個人的に一番強い印象を抱いたのは、米軍の精密爆撃を受けて怒ったゴジラが炎(?)を吹き出して、全ての飛行機を撃ち落とし東京の街を火の海にしたシーン。それまでそれなりに重要な役割を担っていたはずの首相や官房長官の一行もあっさりと殺されてしまい、現実であるとすれば相当にどん底な展開。もし自分があの場にいれば、それで人生おしまい。その後は色々と前向きな展開となって、皆の努力や幸運も重なってゴジラの活動を停止させるための作戦が展開される訳だけれど、あの流れはまるで「未来世紀ブラジル」のエンディングへのシーケンスと似てるなと感じた。つまり、東京が火の海に没して以降は現実には起こりえない夢物語でしかないよねという。そういう見方をする人はたぶん世の中で自分ぐらいしかいないのだろうけれど(笑)。なんというか、悲劇的なんだけれど相当にロマンチックな映画だなと思いつつで劇場を後にした。

 自分が行った劇場は新宿ピカデリーで、スクリーンの大きさ自体にはさほど不満を感じなかったけれど、音響についてはちょっと音量が小さくて物足りなかった。この映画は轟音で耳が痛いぐらいの感じで観るのが相応しいと思う。

B00ISOIVVKゴジラの逆襲 【60周年記念版】 [Blu-ray]
東宝 2014-07-16

大坂を舞台に、ゴジラと古代恐竜アンギラスの壮絶な戦いを描いた、傑作映画「ゴジラ」のシリーズ第2作。(作品紹介文より)
  
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July 10, 2016

津野海太郎「花森安治伝 日本の暮らしをかえた男」を読んだ

 自分がものごころついて初めて愛読した雑誌は「暮らしの手帖」だった。母親が定期購読していたおかげで家には暮らしの手帖のバックナンバーが手に取れるところに何冊もあって、最初は家族向けの童話のページみたいなところを読んでいたのだけど、そのついでの他のページも読んでみたら商品テストのコーナーがとても面白くて、以降欠かさず読むようになった。

 その雑誌が花森安治という人の手によって作られていたことを知ったのは随分後になってからで、おそらく氏が亡くなったときだと思う。で、そんな我が人生最初の愛読誌を作った人物の伝記があるということを知って手に取ってみた。

4101202818花森安治伝: 日本の暮しをかえた男(新潮文庫)
津野 海太郎
新潮社 2016-02-27

全盛期には100万部を超えた国民雑誌『暮しの手帖』。社長・大橋鎭子と共に会社を立ち上げた創刊編集長・花森安治は天才的な男だった。高校時代から発揮した斬新なデザイン術、会う人の度肝を抜く「女装」、家を一軒燃やした「商品テスト」。ひとつの雑誌が庶民の生活を変え、新しい時代をつくった。その裏には、花森のある決意が隠されていた—。66年の伝説的生涯に迫る渾身の評伝。(書籍紹介文より)

 読んで知ることが多くて驚いたけれど、花森安治は太平洋戦争中は大政翼賛会で働き、あのあまりに有名な「ぜいたくは敵だ!」という標語を作りだした張本人らしい。そして、戦後は戦争中の自分が為したことへの贖罪という意識もあって暮らしの手帖の編集活動に力を注いだという。

 暮らしの手帖という雑誌の背景にそんなことがあるなんて愛読していた当時は全く気付かなかったけれど、思い出してみれば、戦争中にどんな悲惨な食事をしていたかなんて話は暮らしの手帖を読んで知ったことだった。母親に戦争中のことをたずねて話すきっかけになったのも暮らしの手帖だったかもしれない。

 お気に入りだった「商品テスト」というのは、市場で一般に売られている製品を暮らしの手帖編集部が自らわざわざ購入して実際に使い込んで商品の性能をテストするというもので、ダメな商品はハッキリと具体的に何がダメなのかを明確に示してくれる記事だった。この商品テストのおかげで売れなくなった商品もあれば、良心的な製品を作っているのに無名のため全然売れずにいたのが突然大ヒット商品になって企業が倒産を免れたなんて逸話もあるらしい。日本の各メーカーは暮らしの手帖に取り入ろうとして画策したらしいけれど、少なくとも花森安治が生きている間はそれは適わぬことだったようだ。商品テストの記事を読んでそうした反骨心溢れる心意気を子供心に感じて育ってしまったが故に自分はDIYでパンクなダメ人間になってしまったのかもしれない(笑)。

 花森安治のエッセイ「見よぼくら一銭五厘の旗」から白眉の一節を以下に引用しておく。
民主々義の<民>は 庶民の民だ
ぼくらの暮らしを なによりも第一にする ということだ
ぼくらの暮らしと 企業の利益とが ぶつかったら 企業を倒す ということだ
ぼくらの暮らしと 政府の考え方が ぶつかったら 政府を倒す ということだ
  
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May 26, 2015

ミックスの練習:歌ってみた音源をミックスしてみた「忘却心中」

 蛋白さん(@_tanpaku)の歌ってみた音源をお借りしてミックスの練習。出来上がったのはこんな感じ。



 うーむ、完璧なミックスへの道は果てしなく遠い……。今回音源を自由に使わせてくれた蛋白さんには感謝です。ありがとうございました。

 完成したものを蛋白さんに聴いてもらったところ、ミックスのやり方を具体的に教えてほしいというリクエストをいただいたので、テキトーに解説してみることに。かなり怪しい部分もあるけれど、もしかしたら趣味でミックスやってる人達には少しは参考になるかも。

 で、ここから先はサンレコの記事を見習って「ですます」調で書いてみたりして(笑)。なお、DAW周りの用語については自分が使っているLogic Pro 9が基準です。

ミックスの下準備


 ニコニコ動画のボカロ人気曲はたいていの場合、歌ってみたなどの二次創作向けにオケが公開されているので、その公開されたオケをそのまま使わせてもらうことになります。今回の楽曲の場合は、公開データがMP3なので、これをDAW上で作業するためにWAV形式に変換する必要がありました。

 Logicの場合、サンプリングレートとビットレートが同一であれば、異なるフォーマットの音源データでも自動的に変換してくれるのですが、今回いただいたデータの場合は、オケが44.1kHz/16bitのMP3、ボーカルデータが48kHz/24bitのWAVだったため、そのままでは対応できません。そこでオケを単独でDAWに読み込み、48kHz/24bitに変換する形でバウンスしました。その際、DAWのステレオバスに「Gain」プラグインをインサートして、ザックリと-6dBほどレベルを落としています。これは、ボーカルとミックスする時点で必然的にDAW上にてオケデータのレベルを落として利用することになるので、最初から作業に必要となるレベルにまで最適化しておくのが目的です。また、この時点で出来ればオケのテンポ(BPM)をひろって設定しておきます。Logicはバウンスする際にテンポ情報も一緒に書き出してくれるので。歌ってみたのミックスではテンポ情報に対してそれほど神経質になる必要はありませんが、ボーカルにディレイをかけるときに曲全体のテンポが判っていれば、簡単に4分や8分のタイミングでかけられるのでその準備という感じです。

 バウンスしてフォーマットを変更したオケデータと、ボーカルデータを改めてDAWに読み込んで、タイミングのずれなどがないことを確認。これでミックスの下準備が完了です。

ボーカルのミックス


 まずは、ボーカルデータのみをソロで聴いて収録状態を確認します。外部ノイズや極端なリップノイズがある場合にはデータ毎に編集ツール等を使って適宜調整しますが、今回は特に問題は無かったのでやっていません。

 続いて、素のボーカルの音質で気になる帯域をLogic純正の「Channel EQ(以下、EQとだけ表記ある場合はこのChannel EQ)」で微調整します。これはマイクの特性や収録した部屋の鳴りなどから不要な帯域がブーストされてしまっているのをフラットに戻す方向での調整となります。あくまでもこれからコンプやEQで音を作り込んでいく前の下地作りなので、不要な低音部分(50Hzぐらいから下)のカットと、気になる帯域別で0.5dB程度の補正といった感じです。気になる帯域というのが判りにくいかもしれませんが、妙に鼻にかかったような鳴り方をしてる帯域があったら、そこをわずかに下げることでスッキリさせるといった要領です。このEQを行うことで、全体の音質を変化させることなく、ヌケの良いボーカル素材とすることができます。このEQ設定はコピペで、全てのボーカルトラックの一番最初にインサートします。このEQ設定が出来れば、あとはオケに対して適切な音量バランスをとれば基本的なミックスは終了ですが、さすがにこれでは色気も何もあったものじゃないので、ここから各種エフェクトをかけて、楽曲にあった世界観を作るあげていくことになります。

 この下地作りをするようになったのは、YouTubeに公開されているMixbusTvというチャンネルの「HOW TO MIX TRAP HIP HOP VOCALS ON A 2 TRACK INSTRUMENTAL」シリーズを見てその方法を知ったからです。興味のある人は是非見てみてください。残念ながら英語での解説になりますが非常に勉強になります。ここまで詳しくボーカルのミックスを無料で学べる機会はなかなか無いと思います。

 さて、今回の楽曲は、Aメロ、Bメロ、Cメロに展開する形式ですが、Aメロはやや特殊なエフェクトをかけるため、基本となる音作りはBメロから始めました。

 まず基本EQの次に使うエフェクトはコンプ。ボーカルの色づけを考えて、まずはオプト系のWAVES「CLA-2A」で軽く均しつつボーカルのつやを引き出してから、その後にWAVES「CLA-76」をインサートして反応の遅いCLA-2Aでは間に合わないようなアタックの早いフレーズに対応する形としました。CLA-76はよくありがちな潰して歪ませるようなものではなく、あくまでもCLA-2Aの補完的な使い方。この方法は、エンジニアの中村公輔さんから教えてもらった技を応用しました。コンプの使い方については、サンレコ2015年7月号でも中村さんの解説による特集記事「コンプは“動作タイプ”で使い分ける!」があってとても参考になります。

 コンプのあとにディエッサーをインサートして耳に痛い部分を補正したら、その後に若干の倍音を付け加えるためにサチュレーション系のKlanghelm「IVGI」、さらに味付け用EQとしてSonimus「SonEQ」を使って中高音部分をほんの気持ち程度強調しました。IVGIとSonEQはあくまでも派手なオケの中でボーカルが沈み込まないように少しゲタを履かせるといったニュアンスで、ハッキリとかけたのが判る感じではありません。

 ここまで音が出来たら、今度はオケの中でボーカルが馴染むようにAUXセンドを使って残響系のエフェクトを付け足します。今回は8分の短めのステレオディレイの後にホール系のリバーブを加えました。その後にLogic付属のコンプをインサートし「FET」で極端に短めのアタックとリリース、6:1ぐらいのレシオにして、サイドチェーンをボーカルにして、歌ってないときだけ残響音が鳴るような処置をしています。これによって歌詞がはっきり聞こえつつ、ボーカル全体にはなんとなく余韻を感じるような存在感を持たせました。これも先に紹介したYouTubeのMixbusTv動画で詳しい使い方を見られます。

 さらに、別のAUXセンドで送ったボーカルにvacuumsound「ADT」で擬似ダブリングさせた音に、Softube「Saturation Knob」で歪ませたものを、薄〜くミックスに混ぜて、ボーカルの線が気持ち太くなるようなニュアンスを狙っています。これは隠し味的なもので、お汁粉に塩をほんのちょっと入れると甘みが増すというのと同じ。ちょっと正確ではありませんが、このトラックだけソロで聴けば判るけれどミックスの中で聴くと判らないようなレベルと言うと通じるでしょうか。

 以上でBメロ部分の音作りは完成。この設定はそのままCメロでも使います。BメロとCメロの違いは、別のAUXセンドを付け足して、さらにホール系のリバーブで残響を増やしているところ。こちらのリバーブは、一旦WAVES「CLA-3A」を使って残響音を強調した後に、やはりLogicのコンプでサイドチェーンを使ってボーカルによって鳴り方を制御しています。

 Aメロは、基本EQの後にWAVES「CLA-76」の必殺ボタン全押し(笑)設定でボーカルを潰しています。その後にEQで100Hz以下と1.3kHz以上をバッサリとカットしつつ、中音部で不要と感じる帯域を抑える形に補正。この後にLogicの「Tremolo」を1/64のレートで強めにかけ、TSE AUDIO「TSE 808」で思い切り歪ませています。Sonimus「SonEQ」で全体の音をまとめた後、最後にもう一度WAVES「CLA-76」のボタン全押しでかけて、極端にフラットな音像に仕上げてます。しかし、これだけだとあまりにもデッドな音像になってしまうので、ここから隠し味を付けます。

 Bメロと同じようにAUXセンドでステレオディレイとリバーブを使いますが、今回は歌詞のノリが強調されるように4分と8分の大きな譜割のディレイにします。しかし、このままでミックスに戻すとキレのある感じになりません。そこで、ノイズゲートをかませ、ボーカルをキーにしたサイドチェーンで制御します。これによって、歌っている間だけディレイが聞こえ、歌詞が途切れるとディレイもバッサリ聞こえなくなるようにしました。オケの中で聴くとディレイ音はほとんど判らなくなりますが、微妙なノリが生まれてボーカルにグイグイくるような感触が加わります。

 ボーカル素材はこのほか、ハーモニーなどありますが、基本の音作りは上記のパターンを組み合わせることで調整しています。

 ボーカル素材全ての音が出来たら、次はオケに合わせてバランスを取ります。バランスをどうするかは人それぞれのセンスだと思いますが、Aメロ<Bメロ<Cメロと徐々にボーカルの存在感が大きくなるような形で全体の流れに合わせてフェーダーオートメーションを書きました。また、細かい部分の調整としては、オケのアレンジによって楽器の数が変化するなどしてレベルが極端に変わる箇所は、それに合わせてボーカルのレベルも微調整すると、全体の流れが自然に聞こえます。最終的には耳で聴いて音のバランスを揃えていくのがコツだと思います。

 ここまで出来たら、一旦オケをミュートして、ボーカルだけのミックスをバウンスします。この際、マスターバスにトータルコンプやリミッターはかけません。あくまでもボーカルのステムミックスを作る要領です。

全体のミックス&マスタリング


 新たにオケとボーカルステムミックスを読み込んで、その2つのバランスを取りながら同時にマスタリング的な処理を施します。

 まずはオケの音圧感を改めて確認します。これはオケをソロで最終的なレベルバランスにして再生しながらLogicの「MultiMeter」で一番音の大きな箇所のRMSを読み取ります。次にボーカルのステムミックスにWAVES「L2」をインサートして、ソロで再生しながらスレッショルドとシーリングを調整しつつ、最もレベルが大きくなる箇所のRMSが先ほどオケで確認した数値とほぼ同じようになるように調整します。なぜ、このようなことをするかというと、ニコニコ動画で公開されているオケ音源がほとんどの場合マキシマイズされてしまっているので、そのままボーカルをあてると音圧的に負けてしまうので、マキシマイズされているオケと同じような音圧にまでボーカル音源も個別にマキシマイズしてしまうことで、同じような音のあり方に揃えるためです。もし、公開されているオケ音源がマキシマイズされていなければ、こういったボーカルの特殊な処理は不要だと思います。

 ボーカルの聴感がオケのあり方と揃えた時点で、改めてボーカル側にディエッサーをインサートして耳に痛い部分を補正します。さらに、ディエッサーで甘くなりすぎた高音成分を補正するためPlugin Alliance「MAAG EQ4」で高音を若干ブーストしています。

 一方、オケの方は、Plugin Alliance「Brainworx bx_refinement」をインサートして、ほんの気持ちだけ高音を抑えるようにしました。

 改めてオケとボーカルのバランスをフェーダーで微調整した後、マスターバスにToneBoosters「TB_ReelBus」、Tokyo Dawn Labs「TDR Kotelnikov」、Plugin Alliance「Brainworx bx_digital」、vladg/sound「Limiter No6」をインサートして最終的な音質補正とリミッティングを行っています。味付けとしてはTB_ReelBusがかなり大きいかもしれません。

今回の反省点


 ニコニコ動画にアップして聴いてもらうという前提で仕上げていったので、最終的な音圧のあり方をRMS値で-10dB前途にくるようピーク設定したのですが、そのせいで繰り返し聞くとやはり耳が痛く、自分のミックスの技量の無さを思い知らされます。今後はもっと低めの音圧でもメリハリがあって気持ち良く聴けるレベルを目指したいです。  
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April 19, 2015

映画「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」を観た。(もしかしたらネタバレ)

 今回も本作がアカデミー賞を受賞したという程度の事前情報以外の予備知識はゼロで(そのアカデミー賞にしても一体何で賞を獲ったのか知らなかった)で映画館へ向かう。ただし、YouTubeか何かで予告編は見ていたおかげで、老いた主人公が再びヒーローとして返り咲き社会の悪と戦うという話に違いないというとんでもない勘違いをしていたことだけは正直に告白しておこう。

Birdman

 本作の原題は「Birdman: Or (The Unexpected Virtue of Ignorance)」という。邦題もしっかりと長ったらしいままでほぼ直訳している。最近の洋画としては珍しい。こんな見せ方したらイマドキの面倒臭いことが嫌いな客はそれだけでドン引きだろう。つまりは日本の配給会社もこの作品をキャッチーでバカ売れする商品として売ることはもう最初から諦めているに違いない。アカデミーで4冠受賞した作品の本邦初公開だというのに、自分が観に行った劇場(新規開店したばかりのTOHOシネマ新宿)では大きなスクリーンでかけることさえしていなかった。そういうことなのだ。

 一般受けはまずしないし、若いカップルのデートなぞには絶対おすすめできない。二昔ぐらい前ならシネマライズで単館上映されて、一部文化人が絶賛したおかげで勘違いした人々が押し寄せて予定よりも上映期間が延長されるといったような類の作品じゃないだろうか。しかし、今はそういう文化土壌もほとんど無くなってしまったから、おそらくは気がついたら上映がとっくの昔に終わっていて、ビデオレンタルもあまり回転することなく一部のマニア以外からは忘れ去られていくパターン。

 で、個人的にどうだったかというと、とても気に入った。この映画は生涯を通してオールタイムベストのかなり上位にランクされる作品だ。こんな映画らしい映画、言い方を変えるとロマンチックな映画は久しぶりに観たように思う。ちょっと違うのだけれど「虹を掴む男」のようでもあり、「未来世紀ブラジル」のようでもあった。自分はなぜか未来世紀ブラジルちっくな映画がすごく好きで、このバードマンという映画はエンディングも含めてとてもその路線に近しいものを感じた。ネタバレになるけれど、あの最後のシーンは果たされることがなかった夢の描写なのか、それとも現実なのか。そういうところがとてもブラジルに似ていた。そして残念ながら、そのなんとも曖昧模糊としたバッドエンディング、もしくはハッピーエンディングも、この作品を一般受けからは遠いものにしていそうな気配はある。

 この映画は時間の経過を表現する演出として「同ポジOL(同じ構図の絵をそのままオーバーラップして画面遷移する)」手法をずっと最初から最後まで貫き通していて、これもまたとても不思議な効果を醸しだしている。観ていると時間が変わったのかどうか一瞬判らない場合があったりして、それが一般的なカットつなぎで見せる映画とは異なった絶妙なタイムワープ感を与えてくれる。自分はとても面白いと思ったし、そうした時間の移り変わっていく様子を楽しんだけれど、あのノリに馴染めない人にとってはかなり居心地が悪いものかもしれない。

 音の面からの注目は、なんといっても全編を通じてほとんどの音楽がアントニオ・サンチェスとブライアン・ブレイドによるドラム演奏だけで構成されている点。このシンプルで大胆な音楽の起用が映画全体の緊張感を引き立てている。さらにドラム以外の楽器が入る瞬間はものすごいインパクトを与えることになる。この映画を観る時には、できればドラムの音が最高に良い音響システムのある劇場を選びたいところ。残念なことに、自分が観に行った出来たばかりのTOHOシネマズ新宿のスクリーン3は、ドラムの音に関しては今ひとつ良くないように感じた。あれは何なのだろう。音はきれいに鳴っているのだけど芯が無いような、そんな物足りない印象を覚えた。もっとも、当日は気圧が低くて自分の耳も本調子ではなかったので、もしかしたらそれが原因なのか……。

 ところで、バードマンとは全く関係がないのだけれど、本編が始まる前の予告編がどれも疲れる映像ばかりで辛かった。CGを使わざるをえないのは判るけれど、もう構図が下手くそで暑苦しいマンガにしか見えない。ああいう作風でないと客は入ってくれない時代なんだろうと思うけれど、色々な意味で劣化具合が激しいような。商業音楽における「音圧戦争」と同じようなことが、映画でもCG導入で起きているんだなと感じた。

B00NAXEAAKBirdman - Original Soundtrack
Antonio Sanchez
Milan Records 2014-10-13

  
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March 01, 2015

映画「アメリカン・スナイパー」を観た(たぶんネタバレ注意)

 本国ではこれまでに公開された戦争映画史上最高の興行収入額を実現しながらアカデミー賞を獲れなかったというなかなか曰わく付きの作品。国内では実際のところどうなのか知らないけれど、身近なところでは割と不評な感が強い。で、やはり不人気なのかどうかは知らないけれど、映画の日だというのに割と良い席を予約できたので観に行ってみた。

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 毎度のことながら、今回も作品に関する事前情報はほとんど知らずで臨む。ただし、映画がほぼ完成を迎えたタイミングで不幸にも主人公であるクリス・カイル本人が殺されてしまい、急遽ストーリーを一部変更したらしいことだけは知っていたし、それがどう反映されるのかは気になっていた。

 まず、先に結論を書いてしまうと、やはり意図しないエンディングを迎えてしまったクリス・カイルの死がこの映画作品に与えた影響は破格に大きくて、とても不幸な結果(つまり失敗作)になっていると思う。できれば、カイルの人生が違う形になっていれば、この映画の可能性はもっと大きかったのではないか。しかし実際には残念なことに「アメリカン・スナイパー」という映画は単なるアメリカンヒーローの冗長な追悼映画に堕してしまった。おそらくイーストウッドが望んだ形では全然ないだろう。けれど、あまりにも絶妙なタイミングによる事件のため、ああした終わり方しか出来なかったのだと想像する。

 で、ここから先は単なる妄想なのだけれど、この映画はマイケル・チミノの「ディア・ハンター」のリアル版としての戦争告発作品になるはずだったのではないだろうか。冒頭でカイルが父親と初めての狩猟に出かけるシーンがあり、映画の最後で今度はカイルが自分の息子と狩猟に出かけるシーンがある。本来であれば、あの後半の狩猟のシーンでもっと示唆的な何かがあったのではないだろうか。また、カイルが4度目の派兵で帰国した際のバーにいるシーンも本来はもっと色々なエピソードがあったのではないだろうか。あのシーンはあまりにも唐突で、なぜバーで一人ビールを飲んでいるのかが全く意味不明だった。

 これは不遜な物言いになってしまうのかもしれないけれど、カイル自身がこの「アメリカン・スナイパー」という映画の失敗には一番失望しているのではないだろうか。彼が本来求めたことは、戦争のヒーローをこうした悲劇でもって偶像化し賞賛することにはなかっただろうから。そういう意味でもとても後味の悪いエンディングだった。

 映画の音響に関しては、街中での銃撃で残響音が響くのが印象に残ったけれど、映画館の音響システムの問題なのか自分の耳の不調なのか、それとも映画の演出がそうなのか、今どきの派手な効果音満載の映画に慣れている身としては全体的にかなり地味な鳴り方だと感じた。しかし、それが実は逆にリアルであるのかもしれない。実際の銃撃や爆破の音というのは乾いた素っ気ないものだというから。なお、サントラでは1曲「Taya's Theme」をイーストウッド自身が作曲して提供している。

P.S. そういえば、イーストウッドの前作「ジャージー・ボーイズ」で大きなカギとなる楽曲が「Can't Take My Eyes Off You」なんだけれど、あの曲も「ディア・ハンター」の中で割と大きな意味を持っていたりする。で、ジャージー・ボーイズを観た直後にふとディア・ハンターを観たくなったりしたのだけれど、もしかしてイーストウッド本人もそんなことを考えたりしたのだろうか。それは考えすぎかな……。

B00QWF6AQUディア・ハンター(ユニバーサル思い出の復刻版 ブルーレイ)
NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン 2015/04/08

アメリカン・スナイパーを観ているのであれば、こちらの作品も一度は観てみることをおすすめ。やはり戦争によって心が蝕まれるとはどういうことかを描いた作品。
  
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February 07, 2015

最近のマグボトルは軽くて驚いた

長年象印製のマグボトルを愛用している。今まで使っていたのは内蓋がずいぶんくたびれて茶渋などの汚れもとれなくなってしまったのもあり、思い切って新しいのに買い換えた。

B00HYOGTTGZOJIRUSHI ステンレスマグ【0.48L】ブラック 軽量タイプ SM-SA48-BA
象印 2014/02/21

さらなる軽量化とコンパクト化を実現
使いやすく持ち運びしやすいので、オフィス使いにもお出かけにも、様々なシーンにオススメのマグ

今まで使っていたものとほぼ同じ0.48リットルサイズにしたけれど、持った感じがずいぶんと軽い。

調べてみると、古いモデル(SM-AF50)の重さが約250グラムなのに対して、新しいモデル(SM-SA48)は約205グラム。厳密には容量が従来よりも約0.02リットル減っているのでその分軽くなっているとしても、45グラムの軽量化はかなりのもの。技術の進歩はすごいなと感心した。  
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January 27, 2015

オカルト:電源ケーブルを換えるとオーディオの音も変わる

 オーディオ関連の話題というのは、一般的な日常感覚では納得しかねる話がゴロゴロ転がっているのだけど、電源ケーブルにまつわる話もその一つ。

 オーディオに興味が無い普通の人からすれば、電源ケーブルを変えるだけでオーディオの音質に影響が出るという話は、もうバカバカしくて聞いてられない類のものだろう。100歩譲って、電源周りの出来不出来が音質になんらかの影響を与えるだろうとしても、たかが電源ケーブルごときの違いで音質にそこまで差が出るとは思えない。実は自分も電源ケーブルに関してはそういう感覚でいた。

 で、たまたま、とあるオーディオ関連の記事を読んでいたら、電源プラグで3芯のものを2芯コンセントに接続するための変換アダプタを使うと音が悪くなるという話があった。これはうちにあるギターアンプとオーディオアンプの電源ケーブルがまさにそういう状態。どちらも本来は3芯接続でアースを落とすケーブルが付属しているのだけど、うちには3芯で受けられる電源コンセントが無いので、仕方なく変換アダプタを付けて使用している。やはり音が悪くなってるのだろうか。

 丁度、アースは結線してないけれど、3芯接続用の穴が開いた電源タップは持っているので、まずはこれにギターアンプの電源ケーブルを接続して、変換アダプタの有無で音に違いがあるか比較してみることにした。

 さて結果はというと、アダプタを外した方がヌケの良い音でアンプが鳴る。アダプタを付けると、ちょっとこもった芯のぼやけた音になる。こうした音の変化が出ることを全く予期してなかっただけにこれはかなり驚いた。アダプタは何らかの抵抗になって電圧や電流に影響を与え、それが結果的にアンプの音質にも変化をもたらすのだろうか?

 それはともかく、電源プラグの3芯から2芯への変換アダプタが音質にネガティブな影響を与えていることは間違いなさそうだ。当然、オーディオアンプの電源ケーブルでも同じことが起きていると推測される。

 ここで、真面目なオーディオマニア(?)であれば、変換アダプタ無しで接続できるように電源コンセント側を3芯受けできるように改造するのが正当なやり方だろう。しかし、電源コンセントに手を加えるのはアースのことなども含めてかなり厄介なので、ここは単純にアダプタ無しで使える2芯の電源ケーブルを作ることにした。

 どうせ作るなら、それなりには趣味の品らしいパーツを選ぼうということで、秋葉原まで出かけた。ただ、ハイエンドなものは最初から狙ってないので、それなりの普及品が手に入りそうな千石電商で見繕うことに。ケーブルは店の人が最近人気ありますよと教えてくれた塩田電線の「C-1011 PC-23」をピックアップ。プラグはパナソニック電工の「WF5018」で、これを選んだ理由はアース端子を取り外し可能だから。コネクターは普及品で太いケーブルに対応するものがないため、これだけ泣く泣く割高なFURUTECHのオーディオ用「FI-15 Plus (G)」をチョイス。

cable

 完成したケーブル、まずはギターアンプで試してみた。付属のケーブルに較べて、全体に太く滑らかな音になった。うーん、やっぱり電源ケーブルで音が変わるという事実は本当のようだ。そういう事実にうれしくなるよりも、オーディオ面倒くさいということでしばし暗澹たる気持ちになる。

 気を取り直して、オーディオアンプで試聴。機材チェックでいつも使うお決まりの音源をいくつか、ケーブルを元から付属しているやつと今回自作したやつで取っ替え引っ替えしながら聴き比べることに。やはり自作したケーブルの方が全体の鳴りが良い。「タクシー・ドライバー」サントラの1曲目「メイン・タイトル」でイントロのエレピのトレモロが左右に振れるのが明確に鳴るようになった。これは今までちょっと曖昧で不満だったところなのでかなりうれしい。で、中盤からテーマを演奏するトランペットの音がキンキンしたか細い音から、もっと楽器的なしっかりと芯のある鳴り方するようになって思わず「おぉ」とつぶやいてしまう。

 続いて、大瀧詠一「A LONG VACATION」の1曲目「君は天然色」のイントロのアンビエンスがこれまでにはなかった自然な余韻を聞かせてくれる。で、衝撃的だったのは、これまでうちのオーディオシステムではちゃんと鳴ってくれなかった弦楽器(生ギター?)のピチカートが、正にピチカートの音として鳴ってくれたこと。この音がしっかりしたシステムでは鳴るのことは知っていたが、うちではずっとデジタルクリップしたような音にしか鳴ってくれなかった。それが初めて普通に楽器の音として鳴ったのだ。いやー、電源ケーブルすごい。オカルト万歳としか言いようがない。ケーブル換えて音の差なんて微々たるものでブラインドテストしたら絶対判らないというような話よくあるけれど、少なくともうちの環境でこの音源なら、ブラインドテストで完璧に聞き分けられる自信あるぐらいに音が変わった。

 オーディオシステムの試聴用レファレンスとして人気が高いスティーリー・ダンの音源も、うちのシステムだと音がキンキンして好きじゃなかったのだけど、今回改めて聴き直したら素晴らしくて、あぁ、スティーリー・ダンがちゃんと鳴らないのはダメなオーディオだったのだなぁと思い知らされた。

 久々に自分の家のオーディオで音楽聴くのが素直に楽しくて驚くばかり。電源ケーブルすごい。

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