June 02, 2018

君塚洋一「選曲の社会史 『洋楽かぶれ』の系譜」を読んだ

 ツイッターのタイムラインに本書のエピローグタイトル「『洋楽』となった『邦楽』」が流れてきたことから興味を持って読んでみた。

4535587272選曲の社会史 「洋楽かぶれ」の系譜
君塚洋一
日本評論社 2018-03-30

「洋楽」はいかに受容され、日本に世界に広まったのか。「洋楽」を選びとり、聴かせ、語り、模倣した人たちの風景と足跡をたどる。(書籍紹介文より)

 著者は自分とかなり近い世代の人のようで、もしかしたら同じ空間にいたこともあるのではないかという親近感みたいなものを覚えつつ、筆者の音楽的志向性が自分のそれとは微妙にずれているせいもあって、音楽に対する思いや考えが重なることはあまり無いままに不思議な間合いを感じつつで最初から最後まで読むことになった。音楽についての教養みたいなものが自分には圧倒的に不足していることがもしかしたらネガティブな形で影響したのかもしれない…。

 それでも文句なく面白かったのはゴールデン・カップス周辺のことを記した第3章「横浜・本牧」と第7章「ゴールデン・カップス」で、60〜70年代のリアルタイムにこうした音楽シーンに飛び込んで自分もその場にいたかったと強く思わせるものがあった。もちろんタイムマシーンでもなければそれは永遠にかなうことのない夢想でしかないのだけれど。

 あとはYMO以前の細野晴臣の音楽活動を綴った第8章「『音楽の美食家」細野晴臣と消化されたアメリカ」が興味深かった。自分はいまだに細野晴臣という音楽家の作品はYMOも含めてちゃんと聴いたことが無いと言えるような状態なので、一度機会を作ってこの第8章に取り上げられているような音源は聴いてみたい。

 ごくごく個人的な思い出と重なった話としては、ブルー・ロンド・ア・ラ・タークのクリス・サリヴァンがファッションショーに出演したという話が出てくるのだけど、実はショーの舞台裏で彼のフィッティングを手伝っていた(笑)。今でもブルー・ロンド・ア・ラ・タークの「Me and Mr Sanchez」はお気に入りの1曲で12インチシングルは手放せないレコードの1枚だったりする。

  
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Clip to Evernote

May 25, 2018

中村公輔「名盤レコーディングから読み解くロックのウラ教科書」を読む

 とりあえず本日発売ということで早速入手。これから読みすすめることに。

4845632306名盤レコーディングから読み解くロックのウラ教科書 The Stories behind The Great Recordings (ギター・マガジン)
中村 公輔
リットーミュージック 2018-05-25

録音機材の進化と、破天荒なエンジニアが生み出したブレイクスルーを詳細に解説。
名盤をより深く聴くための、リスナー向け録音マニュアルがついに登場。
ロックのウラを知りたいあたなのための1冊です!(書籍紹介文より)


 まえがきになかなか刺激的なことが書かれているのでそのまま引用してみる。

もし日本で録音すると洋楽の音にならないのであれば、ディープ・パープルの『ライブ・イン・ジャパン』や、日本のソニーで録音されたハービー・ハンコックの諸作は邦楽のようなサウンドになっているはずですが、紛れもなく洋楽の香りがします。逆に、海外レコーディングされた日本のバンドが、日本で録音した時とほとんど違いない音になっているケースも見かけます。一体この違いはどこから出てきているのか?

 T-Rexの「20th Century Boy」のベーシックトラックも来日中に東芝のスタジオでレコーディングされているのだけど、イントロのギターの音からして紛れもなく洋楽の音。ミックスはイギリスに帰ってからトニー・ヴィスコンティのプロデュースで完成されているのでそのあたりがミソなのかもしれない。

 ということで、これから読みすすめていくのだけど、中村公輔という人は今の日本においてとても「洋楽」的なアプローチでサウンドを創り出すエンジニアの一人なので、この本は面白くないはずがない。サウンドプロデュース的なことに興味のある人にはかなりおすすめな本だと思う。  
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Clip to Evernote

February 24, 2018

どうでもいい話:「ストリート」って何?

 なぜか業界くん的な仕事をやる事態に巻き込まれる変な夢を見た。で、企画方針として「ストリート」なものを目指してほしいみたいなことを言われて、頭の中が「???」となったのだけど、考えてみればずいぶん昔から「ストリート」的な何かをイケてる価値観として推すみたいなことはずっと業界的な世界ではあるように思う。

 しかし「ストリート」って何なのだ?

 なんとなく自分が経験的に理解しているのは、大人(と書いてオッサンと読む。本当の性別は関係なくてオバサンもオッサンに含まれる)達が若者(と書いてコドモと読む。本当の物理的な年齢は関係なくてヤングな気持ちの情弱な人達全て)向けに何かを売りつけようとする時に、ストリートなセンスはとても重要だったりするよね。

 要は古い日本語に翻訳すると「ストリート」=「ツッパリ」なのかな? 「なめんなよ!」的な感じなのだろうか。その時点でかなりセンス悪いというか、業界の大人達が若者に向けて何かをでっち上げた時点で、本来の若者からすればなめんなよという感じなのだけど、なぜか皆ありがたがったりする訳で、そういう仕組みに荷担している自分は死にたくなるぐらい恥ずかしくて格好悪いのだけど、それを我慢して厚顔無恥な感じで堂々と売りつけるのが大人な仕事人という感じでもある。ストリートと言われた時点でやばい金の匂いはプンプンするので、そういう893な世界に憧れる者にとってはとても魅力的でもあるけれど。

 ちなみに英語では「street wise」という言い方もあるけれど、日本語の「ストリート」にはそういうセンスは感じないというか、ストリートをありがたいともてはやす時点で「street stupid」になってしまいそうだ。

 ストリートと言った時点でストリート感が100パーセントなくなるメタな状況というのが面白いとも思うけれど、なんだかなという脱力感は拭えない。

 まー、たまたま変な夢を見たのでこんなことをしばらく考えていたけれど、どうでもいい話だよね(笑)。  
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Clip to Evernote

December 16, 2017

後藤雅洋×村井康司×柳樂光隆「100年のジャズを聴く」を読んだ

 真っ当なジャズリスナーではない自分には用の無い本だろうと思っていたのだけど、手に取って冒頭をちらっと読んだら鼎談の切り口が面白そうだったので、すっかり全部読んでしまった。

4401645014100年のジャズを聴く
後藤雅洋 村井康司 柳樂光隆
シンコーミュージック 2017-11-16

初録音から100年。ジャズは、時代とともに生きてきた。30、50、70代—異なる世代を代表するジャズ評論家3人が、ジャズの過去と現在を往還し、未来を照射した、100年目の記念碑的ジャズ鼎談!(書籍紹介文より)

 後藤、村井、柳樂の三者三様なジャズ観に基づいて過去から現在に至るジャズの有り様みたいなものを掘り下げられていくのだけど、個人的には「ジャズ」という面倒くさい音楽ジャンルの話としてというよりは、音楽がどうやって進化していくかという側面をああでもないこうでもないとオッサン3人が楽しそうに(?)語りあっているのを横で「ははーなるほど」と盗み聞きしているみたいな感じだった。

 ジャズといえば普通は王道のパーカー、デイヴィス、コルトレーンあたりの話が延々と出てきて退屈するのだけど、この本はそのあたりがあまり出てこないのが新鮮(笑)。

 純粋で真面目な音楽リスナーとしての感覚が自分には欠けているので、はたしてこの本がそうした音楽リスナー的な人がこれからジャズを聴いてみようかと考える時に入門書として役立つのかどうかはよく判らないけれど、今の時代にミュージシャン、プレイヤー、アーティストとして新しい音楽のネタを探しているような人にとっては色々と新しい発見がありそうな気がするので、特に今の音楽シーンに飽きてこれからどうしようかと思っている人には読んでみることをお勧めしたいかも。時間が無いとか、本を読むのはカッタルイというなら、第3章「インターネットはジャズの世界も変えた。いいことだと思います」だけでも読むとかなり刺激的なのでは。特に206ページの「アドリブの時代からチーム戦の時代へ」というところあたりがとても面白い。  
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Clip to Evernote

November 05, 2017

ギター・ベース用クリップチューナー「TC Electronic UniTune Clip」がとても良い

 以前からクリップチューナーとしては評判が高かった「PolyTune Clip」だけど、値段もそれなりに高かったのでずっと様子見していたら、ポリフォニックチューナー機能を省略した「UniTune Clip」が新たに発売された。相変わらずクリップ式チューナーとしては他社製品よりも割高ながら、PolyTune Clipに比べればずいぶん敷居が低くなったので、思い切って購入してみた。



 で、使ってみた感想としては、これがすごく良い。

 これまでのクリップ式チューナーだと反応の遅さに合わせて仕方なくペグをゆっくり回す必要があったのだけれど、このUniTune Clipはそういうチューナーの性能にあわせた気遣いみたいなのが完全に不要。普通にペグを回せばチューナーのLED表示がしっかりとついてくる。これまではとくに反応が遅くて大変だったベースのチューニングもさくさくとできてしまう。LED表示の見せ方も工夫されていて状態がわかりやすい。今までのチューニングのたびに感じたイライラみたいなものがすっきりと解消されたおかげで値段の割高感はまったくナシ。素晴らしいの一言。

 一つだけ気になるのは、本体裏側にある電池を入れる部分のプラ製のフタが構造的に弱そうな点。何度か電池の入れ替えやると割れてしまいそうで不安。これだけは設計ミスなんじゃないだろうかと感じる。この一点を除けばとても気に入っている。他の人にもおすすめできる性能。

B075YPW2K7tc electronic UNITUNE CLIP クリップチューナー
tc electronic
  
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Clip to Evernote

May 28, 2017

スティーヴン・ウィット(関美和訳)「誰が音楽をタダにした?」を読んだ

 MP3の特許が切れたというタイミングで前から興味のあったこの本を読むことに。

4152096381誰が音楽をタダにした?──巨大産業をぶっ潰した男たち
スティーヴン・ウィット 関 美和
早川書房 2016-09-21

田舎の工場で発売前のCDを盗んでいた労働者、mp3を発明したオタク技術者、業界を牛耳る大手レコード会社のCEO。CDが売れない時代を作った張本人たちの強欲と悪知恵、才能と友情の物語がいま明らかになる。誰も語ろうとしなかった群像ノンフィクション。(書籍紹介文より)

 米国音楽業界の内実に興味があるという奇特な人なら必読の書。また、インターネット黎明期にIRCチャットに明け暮れウェアーズにはまりつつCDを買い漁っていたような中高年には懐かしくて涙が出そうになるような話がてんこ盛りでもあるので、そういう人にもおすすめ。でも、生まれてから金出して音楽ソフトを買ったことが一度もない若者なら今さら読む必要なんてない本でもあるのかも。

 本のタイトルがちょっと軽薄な印象も与えるけれど、内容そのものは丁寧な取材に基づくしっかりとしたノンフィクションで、翻訳も音楽系書籍にありがちなデタラメなものではなくてちゃんとした日本語の文章になっていてとても読みやすかった。

 原作が書かれたのは2015年と、ちょうどCDもMP3も終わりを迎えそうなタイミングで、その後にカセットやアナログ盤が市場でリバイバルすることになるあたりはさすがにその予感さえもなくて、音楽ビジネスの浮き沈みの激しさを改めて思い知らされるなど。

 個人的には、ダグ・モリスの話が一番面白かった。もし、ジョブズが病気になっていず元気いっぱいだったら音楽業界のその後もまたかなり違った展開になっていた可能性があったようにも読めた。  
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Clip to Evernote

April 16, 2017

映画「ラ・ラ・ランド」を観た(ネタバレあり)

 遅ればせながら、今年のアカデミー賞6部門を受賞した映画「ラ・ラ・ランド」を観た。
lalaland

 すでに色々と前評判やあらすじは知りつつで観たので、たとえば冒頭のビックリするような高速道路シーンも驚くことなくノンビリと「あー、これね」みたいな感じで観てたのだけれど、やはり最後のシーケンスはそれなりに「ほう、こう来るか」みたいには驚きつつで楽しく鑑賞できた。個人的には、プラネタリウムのシーンが好きだったけれど、そういう感想を知人に話したら「ロマンチストだねぇ」と言われてしまった。んー、ふわりと飛ぶシーンは普通に気持ち良いと思うんだけど……。

 で、映画が終わってから思ったのは、ここからネタバレになるのだけれど、ライアン・ゴズリング演じる主人公のセブがガールフレンドのミアの出て行った後にベッドで寝ていてケータイで起こされるシーン、あそこから先はもう全てがセブ、さらにはエマ・ストーン演じるミアも含めての、全員の果たされることなかった「夢」なんだろうなということ。まさにギリアムの名作「未来世紀ブラジル」のエンディングシーケンスと同じ展開であると考えれば、とても判りやすい。まぁ、そんな風に暗い解釈でこの映画を観ているのは、おそらく世界広しといえでも自分ぐらいしかいないのかもしれないけれど(笑)。

 ラ・ラ・ランド(La La Land)というのはLA、さらにはハリウッドのことを意味するわけで、あそこには夢を見つつその夢を叶えることができない人々が数限りなく住んでいる。そういう社会背景を考えると、このラ・ラ・ランドというのはかなり残酷な映画であり、まさに未来世紀ブラジルと同じなんだろうと思った訳で、そういう見方をしてない人は皆それなりに素直で幸せな人生を送っているんだなと羨ましく思ったりもする。

 あと、なかなかすごかったのはこの映画の中ではジャズはルーザーの趣味でもう終わってるよねという感じに表現されていて、このあたりは最近の新しく始まりつつあるリアルな音楽としてのジャズシーンとはもう完全に別の世界になっていて、違う意味でおとぎ話になっているのもジャズ界に喧嘩売っていて面白かった。ジャズの扱いについては、監督のデミアン・チャゼルは前作の「セッション(Whiplash)」もそうだったけれど、何か個人的に恨みがあるのかもしれないので、次回作はもっとジャズに喧嘩を華々しく売ってほしいと思ったり(笑)。

PS. 思い出したので追記。この映画、iPhoneとか出てくるのにSNSはおろか、メールやショートメッセージも使ってなくてかなり不自然だった。本当はケータイの無い時代を舞台にして脚本を考えてたんじゃないのかな。オーディションの連絡電話を受けてから遠くまで車でわざわざ迎えに行くのなんてのも今の時代だとあり得ない展開。その辺もファンタジーなんだろう。  
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Clip to Evernote

April 02, 2017

アコースティックギター用コンタクトピックアップを自作してみた(試奏音源あり)

 長い間放ったらかしにしていた古いヤイリのギターをなんとなく最近ポロポロとつま弾くことが増えた。

 試しにピックアップを付けられないか色々調べてみたら、サウンドホールの直径が89mmしかないのでいわゆるマグネットタイプはちょっと難しい。コンタクトピックアップをボディ内に貼り付ける形式が無難なようだけど、既製品はそれなりに高価だ。で、色々ネットを検索していたらコンタクトピックアップは自作が割と簡単らしい。主に参考にしたのは以下のページなど。

コンタクトPU自作実験
386煙アンプ アコギピックアップ研究編

 要は電子工作のブザー用などとして流通している圧電素子をスピーカーとしてではなくピックアップとして使うということらしい。

 秋葉原へ出かけていって秋月電子通商で2個入り100円のパッケージ「圧電スピーカー(圧電サウンダ)SPT08(2個入)」を入手。あとは、ギターのエンドピンから出力するためのエンドピンジャック「MONTREUX 0269 4 conductors endopin Jack Nickel」やケーブルなどを千石電商で入手。今回のピックアップでは専用品ということでエンドピンジャックが一番高くついてしまった。それでも合計で2000円はしないので、メーカー完成品を買うことを考えればその10分の1ぐらいの値段で材料は仕入れることができたので大変割安で済ませることができた。

 まずは、圧電素子をエレキギター用シールドにつなげてみて、適当に「ひっつき虫」でギターのボディに貼り付けてこれで本当に音が出るのかテストしてみた。当然ながら音が出て「おぉ〜!」という感動するのはお約束。ただ、アンプからエレキギターでよくあるアース不良時のかすかなノイズが出てくる。で、プラグの金属部分を手で触ると消えるので、普通のエレキギターと同じようにアースを落としてやる必要のあることを確認。この対策については以下のページが参考になった。

アコギの弦アース

 近所のホームセンターでアルミテープを入手。アースの結線は圧電素子のグランド側からブリッジ下のアルミテープへとつなぐことに。

 ピックアップの構造は、プリアンプなしのパッシブ型としてはもっとも評判が良さそうなK&K Soundの「Pure Mini」を真似ることにする。コンタクト部が3つあって、それぞれをギター内部からブリッジの1弦、3弦、6弦付近に貼り付けてバランスをとるという仕様。取り付け方についてはYouTubeにあった以下の動画を参考にしてボール紙でジグを作ったり、コンタクトピックアップの取り付け位置を推奨とは逆の場所にしたりといったアイディアを使わせてもらった。

K&K Pure Mini acoustic guitar pickup installation. How to install the K+K Pure Mini.

Luthier Tips du Jour Mailbag 33 - K&K Guitar pickup install


 実際の取り付けで一番不安だったのはエンドピンジャック用の穴を大きくする作業。これはもうギターがダメになる覚悟の元でリーマーを使ってグリグリやるしかなかったけれど、あまり精神衛生的は良いものでなかった(笑)。こちらは参考になりそうなページたくさんあるけれど、以下は判りやすい。

エンドピンジャックの穴開け・取り付け

 あとは個人的に工夫したのはケースから取り外した圧電素子については、ギターに接着する面の反対側はエポキシパテでカバーしておいた。これでほこりなどで痛むことは防止できそう。ピックアップの接着には「セメダイン3000ゴールド ゼリー状速硬化」を使った。

 実際の取り付けはそれなりに手間で面倒だったので、これはプロにお願いすればそれなりの手間賃がかかるのは仕方ない作業だなと感じた。とりあえず紆余曲折はあれど無事に完成して試奏してみたら、ギター内部でケーブルが動くとそれがそのままピックアップに拾われてノイズが出てしまうことが発覚。これはダイソーでコードフック粘着テープ式を買ってきて対応。なんとかケーブルのノイズが出なくなった。

 とういことで、適当に試奏した音をSoundCloudにあげてみた。EQやコンプなどの処理はなしで、ピックアップからDI経由でオーディオインタフェースへ直接拾った音をLogicで録音。バウンス時にレベル調整のためWaves L2を使っているけれど、基本的にはピークをそろえただけなので、ある程度は1個50円の圧電素子3つでどんな音を拾えるかは判るはず。



 なお、今回参考にしたK&K Soundの「Pure Mini」は国内で普通に購入可能。
B00LLP5Z4OK&K ケイアンドケイ ピックアップ Pure Mini ピュアミニ アコースティックギター用
K&K(ケイアンドケイ)

Pure Mini は3つのピエゾヘッドを持つピックアップで、アコースティックギターに内蔵して装着できるようにデザインされています。ブリッジ下に3つのヘッドを装着してピックアップすることでサウンドのバランスが取り易くなり、アコースティックギターに最適な周波数特性が得られます。(商品説明文より)
  
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Clip to Evernote

December 30, 2016

どうでもいい話:「渋谷系」という言葉についての個人的なメモランダム

 邦楽シーンにおいてなぜか周期的にやってくる流行の一つに「渋谷系」というなんだかモヤモヤした言葉がある。

 渋谷系というのは個人的にはとてもネガティブな形容という印象があって好きじゃない。でも、音楽好きの若者、特にあの妙ちくりんな90年代をリアルタイムで体験していない世代にとっては、多分にキラキラしたポジティブな魔法があるのだろう。そういう過去を過剰に過大評価するような都市伝説を熱く語る人々は確かに存在するし、当時をたまたま知るいい歳をしたオッサンやオバサンが昔話として語るネタには都合がいい。当然、ここでこんな文章を書いている自分もそうした老人の一人で、なんだかキモイ(笑)。

 で、90年代の当時、本当に「渋谷系」という言葉があったのかというと、あったのは確かで、おそらくは音楽雑誌あたりの中で使われることが多かったように思う。でも、少なくとも、音楽を発信する側にいるアーティスト/ミュージシャンや音楽制作現場にいるスタッフが、そういう呼称をポジティブな良い意味で使うことはまずなかったし、もしあったとすれば、それはどちらかというとネガティブなことを意味し、批判や揶揄、もしくは諧謔的なニュアンスしかなかったと思う。

 渋谷系と同じような言葉でもはや今は全く使われなくなった言葉に「外資系」というのがあって、こちらの方は間違いなくレコード会社の現場、それも特に営業に近い場所で使われていた。当時のレコード販売の主戦場は、それまでの町の個人経営のレコード店(いわゆるパパママ店)から、大手外資チェーンのタワーレコードやHMV、ヴァージンメガストアあたりへと大きく移り変わりつつあった。

 大手外資系レコードチェーン店で売れるCDの枚数は、個人経営レコード店で売れる枚数と較べて、桁が2つも3つも上回ったので、当然レコード会社の営業としてどこに力を入れて仕事をするかといえば、大手外資系レコードチェーンばかりになっていく。

 しかも、売れる音源カタログも、外資系チェーン店と町の個人経営レコード店ではその傾向に大きな違いが見えるようになった。特に都市部にある外資系チェーン店では、それまであまりまとめて売れることがなかった今で言うところの「渋谷系」的な垢抜けたポップスに人気が集まりだす。一方で、町の個人商店レコード店では昔ながらの歌謡曲や演歌が依然として強かった。

 その結果、レコード業界が一つの指針としてきたオリコンのチャートというのは、外資系チェーン店の売り上げを一切カウントしてなかったので、レコード会社の実際の売上傾向とオリコンチャートで上位に顔を出す楽曲が徐々に連動しなくなっていく。あまりに差が激しくなりだしレコード会社の営業サイドからもなんとかしてくれという声が大きくなり、オリコンとしては仕方なく外資系レコードチェーン店の売り上げだけで構成されたチャートを別途作ることになる。この結果、レコード会社は外資系レコード店チャートを重視しだすことになるのだけど、オリコンの発行する業界専門誌「オリジナルコンフィデンス」(書店で一般流通してない)は、主に町のレコード店経営者が買ってくれることで商売が成り立っていたので、どうしても外資系チャートを重視する姿勢を出すことは憚られたりした。そのあたりの各者の事情が微妙に噛み合わずにいたのが影響して、90年代の日本のレコード産業は不思議な感じのバランスで面白かったのかもしれない。

 まさかその後になって、日本から大手外資系レコードチェーン店が絶滅するなどとは、当時予想だにできなかった話でもあるけれど……。

 渋谷系に話を戻すと、なぜか当時の渋谷にはやたらとたくさんレコード店があったので、なんとなくファッションなら「原宿」という乱暴な決めつけがあったのと同じように音楽は「渋谷」みたいなノリがあって、それが地方から見ると判りやすい記号としてとらえられて、渋谷系という言葉が勝手に存在感を増していったんじゃないかと思ったりもする。

 日本全国に「なんとか銀座」があったり、地方ファッションビルのブランドとして「原宿」がありがたがられたのと同じで、実際に渋谷発だったかどうかよりも、お洒落な音楽は「渋谷」というイメージ作りが受けたのかなと。少なくとも、全国で情報を売らなければならなかった雑誌などにとって「渋谷」というブランドやジャンル名は、地方の読者にアピールする上で便利だったろうと思う。

 あまりに渋谷系というブランドが邦楽シーンで使われすぎた結果、椎名林檎あたりは確かデビュー時にわざわざ「新宿」というブランドを使って宣伝したりしてたのも懐かしい話。「池袋」系が無いのはおかしいからハードコア系でそう呼んで宣伝すれば売れるかもと冗談を言っていたような思い出もある。

 で、渋谷系というと多くの人にとっては邦楽だけと結びついているキーワードなのだろうけれど、個人的にはカーディガンズのアルバム「Life」こそがあの時代の日本のポップスシーンの最高峰だったという確信がある。今でも「カーニバル」という曲を聴くと渋谷のレコード店をあちこち漁り歩いたりした思い出が強烈にフラッシュバックするし、とにかくラジオや街角からあの曲が嫌と言うほど流れていた。



 まー、こんなことを今さら書いても誰も賛同してくれないぐらいに「渋谷系」という言葉は神格化・伝説化されてしまっていて、それがまたなんとも悔しいところではあるよね(笑)。

440164008X渋谷系
若杉 実
シンコーミュージック 2014-09-09

90年代カルチャーを牽引した「渋谷系」はどのように生まれ、なぜ衰退したのか。アーティストや関係者の証言をもとに文化・社会的な見地で検証した1冊。(書籍紹介文より)
  
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Clip to Evernote

November 13, 2016

佐賀純一「浅草博徒一代」を読んだ

 ボブ・ディランがノーベル文学賞の受賞が決まったことで色々と波紋が起きたけれど、そうした騒動の中で書かれた記事の一つが面白かった。

ノーベル文学賞 ボブ・ディランが歌詞の世界に取り込んだ幻の名作 舞台は浅草、主役はヤクザ

ついにノーベル文学賞を受け取ると明言したボブ・ディラン。ロックだけでなく、文学史にまで一石を投じた彼が、その表現を自らの歌詞に取り込んだ作品が日本にある。かつて盗作騒動も巻き起こった、その作品の名は「浅草博徒一代」(新潮文庫)。

 しかし、残念ながらここで話題に取り上げられている「浅草博徒一代」は文庫も含めて今のところ絶版状態。試しにアマゾンで検索してみたら文庫が2000円以上の値段に高騰していた。なので最寄りの図書館にないか調べたところ、幸運にも文庫が所蔵されていた。やはり図書館は素晴らしい。早速借り出して読んでみた。

 この本、すこぶる面白い。伊地知英治という一人のやくざが淡々と本人の人生を語るのを録音していたものを元に作者が書き起こしたいわばドキュメンタリー的な作品なのだけど、今は失われてしまった戦前から戦後すぐの日本の情景がとてもビビッドに描写されている。最近はどうも本を読むのがなかなか億劫になっていたのだけれど、この本は読み出したらもう他のことはどうでもよくなるほど引き込まれて一気に読んでしまった。作者と伊地知の出会いから始まり、エピローグとなる伊地知の最後の妻とのやりとりまで、読み飽きることが全然なかった。

 これほどの面白い本が絶版となっているのは惜しい話だと思う。ディランが自分の歌のネタにしたかもしれないというのは頷けるものがある。興味のある人はぜひ図書館などを利用して読んでみてほしい。

 ちなみに電子書籍であればKindleで購入可能だし、Kindle Unlimited対象となっているようだ。

B013PU6EAG浅草博徒一代: アウトローが見た日本の闇
佐賀純一
 時代は大正から昭和、移りゆく世相を背景に、浅草一帯に勢力を張った博徒の伊地知栄治が物語る愛と波乱の生涯。15歳で女を追って上京し、やくざの道に入った男が歩んだアウトロー人生。官憲の目を盗んで滑るもうろう船、足尾銅山の大反乱、恋と駆け落ち、焔の中を逃げまどった関東大震災、中国国境の兵役と脱走計画、そして大空襲と艦砲射撃下の博打。博徒同士の喧嘩で人を殺めて入った前橋と、覚醒剤の闇取引に巻き込まれて送られた雪の網走刑務所。所内で他の囚人たちから聞いた、知られざる事件の真相の数々。波乱に満ちた栄治の生涯は、人生の最後に出会った彼の主治医のために、永く世に語り継がれることになった。
 茨城県土浦市で40年以上開業医をしながら、患者の老人たちから聞き書きをして多くの著作を発表している佐賀純一は、老いた栄治の最期を看取るかたわら彼との会話を録音して、膨大な量のテープからこの小説を書き起こした。1989年に初版が発行され、1991年にはジョン・ベスターによって英訳された。そして現在は10カ国語に翻訳されて、全世界で読まれ続けているベストセラーである。
−“禅の美に代表される古風で清潔で品のあるステレオタイプなニッポン像を打ち壊す、残酷なまでに貧しかったかつての日本社会を紹介”(ヘラルドトリビューン紙 1991年12月12日)
−“著者がこの本で、殺人ややくざ同士の抗争といったセンセーショナルな事件ではなく、戦前の日本の社会や文化を伊地知の言葉を通して今に伝えることに重点をおいているのは明らかだ”(ワシントンポスト紙 1991年8月11日)
 国内ではすでに絶版となっているため、このたび電子書籍版として再販されることとなった。細かな加筆修正が加えられ、さらに著者の父が生前にこの作品のために描き下ろした挿絵十数点を加えて、浅草博徒一代の最終完成型となっている。(書籍紹介文より)
  
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Clip to Evernote