December 30, 2016

どうでもいい話:「渋谷系」という言葉についての個人的なメモランダム

 邦楽シーンにおいてなぜか周期的にやってくる流行の一つに「渋谷系」というなんだかモヤモヤした言葉がある。

 渋谷系というのは個人的にはとてもネガティブな形容という印象があって好きじゃない。でも、音楽好きの若者、特にあの妙ちくりんな90年代をリアルタイムで体験していない世代にとっては、多分にキラキラしたポジティブな魔法があるのだろう。そういう過去を過剰に過大評価するような都市伝説を熱く語る人々は確かに存在するし、当時をたまたま知るいい歳をしたオッサンやオバサンが昔話として語るネタには都合がいい。当然、ここでこんな文章を書いている自分もそうした老人の一人で、なんだかキモイ(笑)。

 で、90年代の当時、本当に「渋谷系」という言葉があったのかというと、あったのは確かで、おそらくは音楽雑誌あたりの中で使われることが多かったように思う。でも、少なくとも、音楽を発信する側にいるアーティスト/ミュージシャンや音楽制作現場にいるスタッフが、そういう呼称をポジティブな良い意味で使うことはまずなかったし、もしあったとすれば、それはどちらかというとネガティブなことを意味し、批判や揶揄、もしくは諧謔的なニュアンスしかなかったと思う。

 渋谷系と同じような言葉でもはや今は全く使われなくなった言葉に「外資系」というのがあって、こちらの方は間違いなくレコード会社の現場、それも特に営業に近い場所で使われていた。当時のレコード販売の主戦場は、それまでの町の個人経営のレコード店(いわゆるパパママ店)から、大手外資チェーンのタワーレコードやHMV、ヴァージンメガストアあたりへと大きく移り変わりつつあった。

 大手外資系レコードチェーン店で売れるCDの枚数は、個人経営レコード店で売れる枚数と較べて、桁が2つも3つも上回ったので、当然レコード会社の営業としてどこに力を入れて仕事をするかといえば、大手外資系レコードチェーンばかりになっていく。

 しかも、売れる音源カタログも、外資系チェーン店と町の個人経営レコード店ではその傾向に大きな違いが見えるようになった。特に都市部にある外資系チェーン店では、それまであまりまとめて売れることがなかった今で言うところの「渋谷系」的な垢抜けたポップスに人気が集まりだす。一方で、町の個人商店レコード店では昔ながらの歌謡曲や演歌が依然として強かった。

 その結果、レコード業界が一つの指針としてきたオリコンのチャートというのは、外資系チェーン店の売り上げを一切カウントしてなかったので、レコード会社の実際の売上傾向とオリコンチャートで上位に顔を出す楽曲が徐々に連動しなくなっていく。あまりに差が激しくなりだしレコード会社の営業サイドからもなんとかしてくれという声が大きくなり、オリコンとしては仕方なく外資系レコードチェーン店の売り上げだけで構成されたチャートを別途作ることになる。この結果、レコード会社は外資系レコード店チャートを重視しだすことになるのだけど、オリコンの発行する業界専門誌「オリジナルコンフィデンス」(書店で一般流通してない)は、主に町のレコード店経営者が買ってくれることで商売が成り立っていたので、どうしても外資系チャートを重視する姿勢を出すことは憚られたりした。そのあたりの各者の事情が微妙に噛み合わずにいたのが影響して、90年代の日本のレコード産業は不思議な感じのバランスで面白かったのかもしれない。

 まさかその後になって、日本から大手外資系レコードチェーン店が絶滅するなどとは、当時予想だにできなかった話でもあるけれど……。

 渋谷系に話を戻すと、なぜか当時の渋谷にはやたらとたくさんレコード店があったので、なんとなくファッションなら「原宿」という乱暴な決めつけがあったのと同じように音楽は「渋谷」みたいなノリがあって、それが地方から見ると判りやすい記号としてとらえられて、渋谷系という言葉が勝手に存在感を増していったんじゃないかと思ったりもする。

 日本全国に「なんとか銀座」があったり、地方ファッションビルのブランドとして「原宿」がありがたがられたのと同じで、実際に渋谷発だったかどうかよりも、お洒落な音楽は「渋谷」というイメージ作りが受けたのかなと。少なくとも、全国で情報を売らなければならなかった雑誌などにとって「渋谷」というブランドやジャンル名は、地方の読者にアピールする上で便利だったろうと思う。

 あまりに渋谷系というブランドが邦楽シーンで使われすぎた結果、椎名林檎あたりは確かデビュー時にわざわざ「新宿」というブランドを使って宣伝したりしてたのも懐かしい話。「池袋」系が無いのはおかしいからハードコア系でそう呼んで宣伝すれば売れるかもと冗談を言っていたような思い出もある。

 で、渋谷系というと多くの人にとっては邦楽だけと結びついているキーワードなのだろうけれど、個人的にはカーディガンズのアルバム「Life」こそがあの時代の日本のポップスシーンの最高峰だったという確信がある。今でも「カーニバル」という曲を聴くと渋谷のレコード店をあちこち漁り歩いたりした思い出が強烈にフラッシュバックするし、とにかくラジオや街角からあの曲が嫌と言うほど流れていた。



 まー、こんなことを今さら書いても誰も賛同してくれないぐらいに「渋谷系」という言葉は神格化・伝説化されてしまっていて、それがまたなんとも悔しいところではあるよね(笑)。

440164008X渋谷系
若杉 実
シンコーミュージック 2014-09-09

90年代カルチャーを牽引した「渋谷系」はどのように生まれ、なぜ衰退したのか。アーティストや関係者の証言をもとに文化・社会的な見地で検証した1冊。(書籍紹介文より)
  
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November 13, 2016

佐賀純一「浅草博徒一代」を読んだ

 ボブ・ディランがノーベル文学賞の受賞が決まったことで色々と波紋が起きたけれど、そうした騒動の中で書かれた記事の一つが面白かった。

ノーベル文学賞 ボブ・ディランが歌詞の世界に取り込んだ幻の名作 舞台は浅草、主役はヤクザ

ついにノーベル文学賞を受け取ると明言したボブ・ディラン。ロックだけでなく、文学史にまで一石を投じた彼が、その表現を自らの歌詞に取り込んだ作品が日本にある。かつて盗作騒動も巻き起こった、その作品の名は「浅草博徒一代」(新潮文庫)。

 しかし、残念ながらここで話題に取り上げられている「浅草博徒一代」は文庫も含めて今のところ絶版状態。試しにアマゾンで検索してみたら文庫が2000円以上の値段に高騰していた。なので最寄りの図書館にないか調べたところ、幸運にも文庫が所蔵されていた。やはり図書館は素晴らしい。早速借り出して読んでみた。

 この本、すこぶる面白い。伊地知英治という一人のやくざが淡々と本人の人生を語るのを録音していたものを元に作者が書き起こしたいわばドキュメンタリー的な作品なのだけど、今は失われてしまった戦前から戦後すぐの日本の情景がとてもビビッドに描写されている。最近はどうも本を読むのがなかなか億劫になっていたのだけれど、この本は読み出したらもう他のことはどうでもよくなるほど引き込まれて一気に読んでしまった。作者と伊地知の出会いから始まり、エピローグとなる伊地知の最後の妻とのやりとりまで、読み飽きることが全然なかった。

 これほどの面白い本が絶版となっているのは惜しい話だと思う。ディランが自分の歌のネタにしたかもしれないというのは頷けるものがある。興味のある人はぜひ図書館などを利用して読んでみてほしい。

 ちなみに電子書籍であればKindleで購入可能だし、Kindle Unlimited対象となっているようだ。

B013PU6EAG浅草博徒一代: アウトローが見た日本の闇
佐賀純一
 時代は大正から昭和、移りゆく世相を背景に、浅草一帯に勢力を張った博徒の伊地知栄治が物語る愛と波乱の生涯。15歳で女を追って上京し、やくざの道に入った男が歩んだアウトロー人生。官憲の目を盗んで滑るもうろう船、足尾銅山の大反乱、恋と駆け落ち、焔の中を逃げまどった関東大震災、中国国境の兵役と脱走計画、そして大空襲と艦砲射撃下の博打。博徒同士の喧嘩で人を殺めて入った前橋と、覚醒剤の闇取引に巻き込まれて送られた雪の網走刑務所。所内で他の囚人たちから聞いた、知られざる事件の真相の数々。波乱に満ちた栄治の生涯は、人生の最後に出会った彼の主治医のために、永く世に語り継がれることになった。
 茨城県土浦市で40年以上開業医をしながら、患者の老人たちから聞き書きをして多くの著作を発表している佐賀純一は、老いた栄治の最期を看取るかたわら彼との会話を録音して、膨大な量のテープからこの小説を書き起こした。1989年に初版が発行され、1991年にはジョン・ベスターによって英訳された。そして現在は10カ国語に翻訳されて、全世界で読まれ続けているベストセラーである。
−“禅の美に代表される古風で清潔で品のあるステレオタイプなニッポン像を打ち壊す、残酷なまでに貧しかったかつての日本社会を紹介”(ヘラルドトリビューン紙 1991年12月12日)
−“著者がこの本で、殺人ややくざ同士の抗争といったセンセーショナルな事件ではなく、戦前の日本の社会や文化を伊地知の言葉を通して今に伝えることに重点をおいているのは明らかだ”(ワシントンポスト紙 1991年8月11日)
 国内ではすでに絶版となっているため、このたび電子書籍版として再販されることとなった。細かな加筆修正が加えられ、さらに著者の父が生前にこの作品のために描き下ろした挿絵十数点を加えて、浅草博徒一代の最終完成型となっている。(書籍紹介文より)
  
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October 03, 2016

モニタースピーカー「JBL LSR305」を使ってみての感想

 入門クラス価格帯モデルのモニタースピーカーとして国内外でかなり評判の良い「JBL LSR305」がずっと気になっていたのだけど、遂に思い切って手に入れたので簡単な所感をメモ。

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B00DUKP37C【国内正規品】JBL 2-Way パワード・モニター・スピーカー LSR305
JBL

大型スタジオモニターの最上位機種“M2"のために開発した“イメージコントロールウェーブガイド"を搭載。音像の再現に優れ、スピーカーの外側に延びるほどの広いステレオ音場を再生します。中央の音像はこれまでになく明確になり、音場の奥行きや音像の大きさを的確に把握できます。細部の描写能力も高まり、高密度のミックスの中でも音源の微妙な変化や音場の空気感をエンジニアに伝えます。
リスニングポイントが広いため、スピーカーの軸外でも音質やバランスを正確に決定可能。ミキシングルームの音響特性やエンジニアのモニター位置に神経質にならずに、創造的な作業に集中できます。(製品紹介文より)

 普段オーディオセットに接続しているのはオーディオ機器としてはもはや相当クラシックな部類に入るRogers LS3/5A。そのLS3/5Aに較べると、LSR305は低音の再生がとても得意で、とくにヒップホップやテクノ系のキックやベースがハッキリと判るようになった。まぁ、LS3/5Aにそういう音源再生を期待するほうが無理というか、そういうブリブリな音でいじめるのが嫌だったので、イマドキのモニターが欲しかった訳だから、今回のチョイスは大正解。

 James Blakeの独特な音場はLS3/5Aだと低音がぼんやりしてかなり厳しかったけれど、LSR305ならそのあたりはシャープに描写してくれる。ただし、70年代のクラシックな音源だとLSR305はかなり物足りない。LS3/5Aで聞き慣れたMichael Franksの「Sleeping Gypsy」などはあまりの平べったさにかなりガッカリした。ただし、各楽器のポジションや演奏状態を確認するにはLSR305でも十分で、このあたりはモニタースピーカーとしての仕事をしっかりこなしていると評価できる。

 色々な音源を聴いて感じたのは、生楽器の倍音の再現においてLSR305はLS3/5Aに劣るようだということ。人の声や管楽器、生ドラムのシンバル、自然な残響音に含まれる倍音の気持ちよさがLSR305には無い。モニタースピーカー然とした、素っ気ない感じになってしまう。もっとも、LS3/5Aもモニタースピーカーなので、一般的な音楽鑑賞用スピーカーに較べればかなりつまらない音ではあるのだけれど。このあたりの倍音再生の差は単純にスピーカーの性能や性質の違いということになるのだろう。価格差を考えれば仕方ない部分もあるだろうし、この辺りはもしかしたらいわゆる「エージング」が進むと印象が変わるのかもしれないけれど、それほど大きく変わることは期待していない。

 いずれにしろ、LSR305で音楽を聴くという行為は、音楽鑑賞とはちょっと違ってまさにモニターするということ。DAWのミックス作業において音の質感やポジショニングが正確に再生されれば十分であり、そうした役割においてはLSR305は価格以上の性能を発揮しているように思う。試しに昔作った音源をDAWで立ち上げてキックやベースのEQやコンプをいじってみたけれど、LS3/5Aではイマイチよく判らなかったこういう低音の調整が非常に判りやくなったのはとてもうれしい。

 今後は、低音再生が重要なイマドキの音源の再生やDAW作業にはLSR305、生楽器メインの音源再生にはLS3/5Aと使い分けていく予定。

 LSR305をお勧めなのは、DAWで音源をいじる人、楽器演奏を各種音源から聞き取ってコピーしたい人など。単純に音楽鑑賞だけの用途にはちょっと音がシビアすぎて疲れるだろうから向いてないと思う。  
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August 19, 2016

ママチャリを手に入れた

 自転車はもうかれこれ10年ぐらいスポーツ車しか乗ったことがなくて、軽快車こといわゆるママチャリには一生縁がないだろうと思っていたんだけど、身体を壊してちょっとハードコアなスポーツ車に乗るのが負担すぎる状況になって、でも自転車に乗りたいなと思った時、ママチャリはそうした欲求にとてもマッチする乗り物なことに気がついた。

 スポーツ車に標準的なダイヤモンドフレーム構造だとトップチューブのせいもあって乗り降りが脚を後ろに回す必要があるのだけど、それが今の身体状況だとかなりキツイ。で、ママチャリの前から脚をスッと抜いて乗り降りできるのがうれしいし、安全面でもこれが一番必須の条件。

 で、どうしようかなと考えていたら、自治体のリサイクル事業で放出品のママチャリを比較的安価に手に入れられる機会があった。当初の思惑では内装3段ぐらいの機能がついたやつが欲しかったのだけど、さすがにそういうのは人気があって手に入らず、固定ギアのもっともシンプルかつ典型的なものをピックアップ。それでもイマドキな前ハブにダイナモ内蔵の自動点灯ライト付きというのはそれなりにデラックスな仕様。

 とりあえず手に入れて最初にしたことは、シートポストの交換。最初からついていたのは25cmのステンレス製だったので、35cmぐらいの軽いアルミ製にしたかったけれど、最寄りの自転車屋数件を回って見つけることができたのは30cmの重たいステンレス製だけ。まずはこれでいいかと妥協して付け替えることに。やはりシートが高いのは漕ぐのが楽ちん。その代わり停止時はサドルに腰掛けたままだとちょっと地面までが遠いので、必然的にスポーツ車に乗る時と同じようにサドルから前に腰を下ろしてフレームをまたぐように立つ必要がある。これを面倒と思うかどうかだけど、サドル位置を低くすると漕ぐのがかなり辛いので、停止時の手間はこの際無視。この辺りは、普通のママチャリ乗る人とは感覚が完全にずれているのだろう(笑)。

 近所をのんびりふらふらポタリングするのはスポーツ車にはなかった楽しみだ。あとはなんといってもスタンドがあるのは超便利。思い立ったらすぐに自転車を止めて気になった店に寄ったりできる。スタンドの無いスポーツ車に乗っているときは、駐める際に安全性と盗難防止を考慮して場所を探す必要があったので街乗りではそれなりにストレスだった。あとは前カゴ付きなので、買い物してもポイポイと積めるのがうれしい。

 困ったのは、うちにある空気入れポンプはフレンチバルブ専用なので、ママチャリの英国式バルブには空気が入れられないこと。ツーリング用の携帯ポンプが汎用口だったので、これでなんとか空気を入れることができた。ママチャリのチューブはそれほど空気圧を高くしないので、携帯ポンプでも大して辛くないので助かる。一応、バルブは虫ゴム式からスーパーバルブに交換しておいた。

 それにしても、すでに太い鉄フレームの異様な重たさは負担になっていて、アルミ製高級ママチャリがとても気になってしまう。でも、雨に濡れて錆びたり倒れて傷ついても、また盗まれてもそれほど心が痛まないだろう今のママチャリをしばらくは愛用しようと思うけれど。  
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August 13, 2016

作ってみた:外部電源専用ギターエフェクターを無理矢理電池で動かすための変な道具

 イマドキのエレキギターな人達は最初から大きなペダルボードにエフェクターをずらっと並べて電源も専用パワーサプライからというのが常識だろうから、電池でエフェクターを動作させようなんて考えることはあまりないかもしれない。

 しかし、自分の場合は遊びでたまにギターを弾くだけなので、ペダルボードみたいな大袈裟なシステムを必要とすることはないし、気が向いたときに使いたいエフェクターを1つか2つ持ち出して使ったりするだけ。なので、とくに外でエフェクターを使うときは電源を心配するのが面倒なので電池動作に対応したエフェクターがうれしい。ところが、最近はエフェクターの小型化が進んで電池を内蔵できない大きさの製品も出てきたりと、もはやパワーサプライ付きのペダルボードで使われるのが前提の設計が当然の流れになってきた。そうすると自分の場合はかなり困る。

 そこで、電池で外部電源動作専用エフェクターを動かすために小道具を作ってみた。工程で面倒なのはジャックとスナップの接続は半田付けが必要というところ。

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 費用は電池ケースと電池スナップ、DC電源用プラグの3つで、秋葉原のパーツショップ辺りを物色すれば合計300円でおつりがきそうな感じ。この手の完成品を楽器店で買おうとすると、同じような3点セットが下手すると1000円ぐらいはするので、自作が苦でない人はパーツを手に入れて作るのが吉。

 エネループ6本で約9Vの電圧を確保。DSPをぶん回して空間エフェクトをガンガン効かせるようなエフェクターにつないでどれだけの時間持ちこたえられるのかは謎だけど、とりあえずちょっと使ってみたいという条件であれば動作も問題なかった。

 特殊な使い方としては、へたった006P 9Vのマンガン電池をとっておいて、ここぞというときにファズ的なアナログ回路の歪み系エフェクターに使う時なんかに便利かも。いちいちエフェクター内蔵の電池を出し入れしなくても、このスナップにへたった電池をつないでエフェクターの外部電源用DCジャックに刺せば、美味しい音色をすぐ試せる。まー、オリジナルのFuzz FaceとかはDCプラグ自体が無いのでそういう使い方も出来ない訳だけど(笑)。  
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August 05, 2016

USBノイズフィルター「ES-OT4」を試してみた

(※ 随分前に書きこんで公開したつもりがずっと下書き保存の状態になっていたので今さらで晒すことに。なぜ公開を保留していたのかその理由は全く思い出せない……)

 雑誌「Stereo 2015年1月号」付録のUSBノイズフィルター「ES-OT4」を手に入れたので、再生と録音の両条件でどんな効果があるのか試してみた。

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★特別付録
USBノイズフィルター

●特別企画
特別付録USBノイズフィルターを使いこなす
・USBノイズフィルターの使い方とその効果を探る
・USBノイズフィルターのベストな使いこなし
・付録が活きるアクセサリー紹介


 まずは音源再生のテスト。MacBookでAudirvanaからAIFFファイルを再生し、ES-OT4経由で、オラソニックのTW-D7IPで聴くというかなりお手軽な構成。MacBookからES-OT4への接続にはやはりStereoの付録で入手したSUPRAを使用(このケーブルについては過去記事参照のこと)。

 ES-OT4は、PCバスパワーデバイスと独立電源で動作するデバイスの両方に対応しているが、オラソニックのTW-D7IPはそのいずれの形でも動作するモデルなので、今回の試聴にはうってつけ。

 最初はバスパワー動作状態で比較してみたが、この時点でES-OT4の有無による差は明白。ES-OT4を装着した状態の方が好ましく、シンバルや生ギター等、特に高音の再現性が良くなったと感じた。

 続いて、TW-D7IPを専用電源アダプターで駆動し、やはり同じようにES-OT4の無い状態と装着した状態で比較試聴。結果は驚くほどに差が出た。ES-OT4を装着では、ドラムのキックやベースなどの存在感がこれまでに経験したことがないほどに明確となり、ここまでオラソニックのスピーカーは鳴るのかと驚いた。再生音全体のまとまりも良くなり、同じボリューム設定でも一回り大きな音像を楽しめる感じ。正直、これまでは、TW-D7IPを専用電源アダプターで動作させようが、バスパワーで動作させようが、音質そのものに根本的な差はなかった。しかし、ES-OT4を装着させた場合には、明らかに専用電源アダプター動作が優れており、音像の輪郭がハッキリとする。これは、おそらくES-OT4のフィルター効果が最大限に活かされているからだろう。  
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August 03, 2016

映画「シン・ゴジラ」を観た(注意:もろネタバレ)

 映画公開と共に多くの絶賛の声を聞いて、これはとりあえず観ておくかということで料金が割安になる映画の日(今は「ファーストデイ」と呼ぶらしい)に劇場へ。

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 最初出てきた怪獣がどう見ても自分の知っているゴジラとは似ても似つかない姿形なので、ははぁ、これは旧作「ゴジラの逆襲」のアンギラス的な位置づけの怪獣でこの後ゴジラと戦うことになるのだろうと思って期待していたら、そういうアンギラス対ゴジラのような展開は全然なくてガッカリ。というか、あれが変態してお馴染みのゴジラになる設定はちょっとずるいと思った(笑)。

 この映画、人によっては、311だったり911を思い出して複雑な気持ちになることもあるだろうけれど、自分の場合は初っ端で中央高速の笹子トンネル崩落事件を思い出した。そういう意味では、この映画は色々な過去に起きた災害をモチーフにしていると解釈してもそれほど不自然ではないし、そういう人々が記憶に持つ恐怖感や危機感に訴える要素がふんだんに散りばめられている。

 考えてみれば初代ゴジラは1954年という太平洋戦争終決から10年も経たないタイミングで公開された訳で、当時のこの映画を見た人達は一様に戦争を思い出して不安になっていたのかもしれない。そういうインパクトがあのゴジラという映画の評価に繋がっていたのだろうし、この新しいシン・ゴジラもそういう要素があっての高評価という可能性は感じる。

 劇中で個人的に一番強い印象を抱いたのは、米軍の精密爆撃を受けて怒ったゴジラが炎(?)を吹き出して、全ての飛行機を撃ち落とし東京の街を火の海にしたシーン。それまでそれなりに重要な役割を担っていたはずの首相や官房長官の一行もあっさりと殺されてしまい、現実であるとすれば相当にどん底な展開。もし自分があの場にいれば、それで人生おしまい。その後は色々と前向きな展開となって、皆の努力や幸運も重なってゴジラの活動を停止させるための作戦が展開される訳だけれど、あの流れはまるで「未来世紀ブラジル」のエンディングへのシーケンスと似てるなと感じた。つまり、東京が火の海に没して以降は現実には起こりえない夢物語でしかないよねという。そういう見方をする人はたぶん世の中で自分ぐらいしかいないのだろうけれど(笑)。なんというか、悲劇的なんだけれど相当にロマンチックな映画だなと思いつつで劇場を後にした。

 自分が行った劇場は新宿ピカデリーで、スクリーンの大きさ自体にはさほど不満を感じなかったけれど、音響についてはちょっと音量が小さくて物足りなかった。この映画は轟音で耳が痛いぐらいの感じで観るのが相応しいと思う。

B00ISOIVVKゴジラの逆襲 【60周年記念版】 [Blu-ray]
東宝 2014-07-16

大坂を舞台に、ゴジラと古代恐竜アンギラスの壮絶な戦いを描いた、傑作映画「ゴジラ」のシリーズ第2作。(作品紹介文より)
  
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July 10, 2016

津野海太郎「花森安治伝 日本の暮らしをかえた男」を読んだ

 自分がものごころついて初めて愛読した雑誌は「暮らしの手帖」だった。母親が定期購読していたおかげで家には暮らしの手帖のバックナンバーが手に取れるところに何冊もあって、最初は家族向けの童話のページみたいなところを読んでいたのだけど、そのついでの他のページも読んでみたら商品テストのコーナーがとても面白くて、以降欠かさず読むようになった。

 その雑誌が花森安治という人の手によって作られていたことを知ったのは随分後になってからで、おそらく氏が亡くなったときだと思う。で、そんな我が人生最初の愛読誌を作った人物の伝記があるということを知って手に取ってみた。

4101202818花森安治伝: 日本の暮しをかえた男(新潮文庫)
津野 海太郎
新潮社 2016-02-27

全盛期には100万部を超えた国民雑誌『暮しの手帖』。社長・大橋鎭子と共に会社を立ち上げた創刊編集長・花森安治は天才的な男だった。高校時代から発揮した斬新なデザイン術、会う人の度肝を抜く「女装」、家を一軒燃やした「商品テスト」。ひとつの雑誌が庶民の生活を変え、新しい時代をつくった。その裏には、花森のある決意が隠されていた—。66年の伝説的生涯に迫る渾身の評伝。(書籍紹介文より)

 読んで知ることが多くて驚いたけれど、花森安治は太平洋戦争中は大政翼賛会で働き、あのあまりに有名な「ぜいたくは敵だ!」という標語を作りだした張本人らしい。そして、戦後は戦争中の自分が為したことへの贖罪という意識もあって暮らしの手帖の編集活動に力を注いだという。

 暮らしの手帖という雑誌の背景にそんなことがあるなんて愛読していた当時は全く気付かなかったけれど、思い出してみれば、戦争中にどんな悲惨な食事をしていたかなんて話は暮らしの手帖を読んで知ったことだった。母親に戦争中のことをたずねて話すきっかけになったのも暮らしの手帖だったかもしれない。

 お気に入りだった「商品テスト」というのは、市場で一般に売られている製品を暮らしの手帖編集部が自らわざわざ購入して実際に使い込んで商品の性能をテストするというもので、ダメな商品はハッキリと具体的に何がダメなのかを明確に示してくれる記事だった。この商品テストのおかげで売れなくなった商品もあれば、良心的な製品を作っているのに無名のため全然売れずにいたのが突然大ヒット商品になって企業が倒産を免れたなんて逸話もあるらしい。日本の各メーカーは暮らしの手帖に取り入ろうとして画策したらしいけれど、少なくとも花森安治が生きている間はそれは適わぬことだったようだ。商品テストの記事を読んでそうした反骨心溢れる心意気を子供心に感じて育ってしまったが故に自分はDIYでパンクなダメ人間になってしまったのかもしれない(笑)。

 花森安治のエッセイ「見よぼくら一銭五厘の旗」から白眉の一節を以下に引用しておく。
民主々義の<民>は 庶民の民だ
ぼくらの暮らしを なによりも第一にする ということだ
ぼくらの暮らしと 企業の利益とが ぶつかったら 企業を倒す ということだ
ぼくらの暮らしと 政府の考え方が ぶつかったら 政府を倒す ということだ
  
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May 26, 2015

ミックスの練習:歌ってみた音源をミックスしてみた「忘却心中」

 蛋白さん(@_tanpaku)の歌ってみた音源をお借りしてミックスの練習。出来上がったのはこんな感じ。



 うーむ、完璧なミックスへの道は果てしなく遠い……。今回音源を自由に使わせてくれた蛋白さんには感謝です。ありがとうございました。

 完成したものを蛋白さんに聴いてもらったところ、ミックスのやり方を具体的に教えてほしいというリクエストをいただいたので、テキトーに解説してみることに。かなり怪しい部分もあるけれど、もしかしたら趣味でミックスやってる人達には少しは参考になるかも。

 で、ここから先はサンレコの記事を見習って「ですます」調で書いてみたりして(笑)。なお、DAW周りの用語については自分が使っているLogic Pro 9が基準です。

ミックスの下準備


 ニコニコ動画のボカロ人気曲はたいていの場合、歌ってみたなどの二次創作向けにオケが公開されているので、その公開されたオケをそのまま使わせてもらうことになります。今回の楽曲の場合は、公開データがMP3なので、これをDAW上で作業するためにWAV形式に変換する必要がありました。

 Logicの場合、サンプリングレートとビットレートが同一であれば、異なるフォーマットの音源データでも自動的に変換してくれるのですが、今回いただいたデータの場合は、オケが44.1kHz/16bitのMP3、ボーカルデータが48kHz/24bitのWAVだったため、そのままでは対応できません。そこでオケを単独でDAWに読み込み、48kHz/24bitに変換する形でバウンスしました。その際、DAWのステレオバスに「Gain」プラグインをインサートして、ザックリと-6dBほどレベルを落としています。これは、ボーカルとミックスする時点で必然的にDAW上にてオケデータのレベルを落として利用することになるので、最初から作業に必要となるレベルにまで最適化しておくのが目的です。また、この時点で出来ればオケのテンポ(BPM)をひろって設定しておきます。Logicはバウンスする際にテンポ情報も一緒に書き出してくれるので。歌ってみたのミックスではテンポ情報に対してそれほど神経質になる必要はありませんが、ボーカルにディレイをかけるときに曲全体のテンポが判っていれば、簡単に4分や8分のタイミングでかけられるのでその準備という感じです。

 バウンスしてフォーマットを変更したオケデータと、ボーカルデータを改めてDAWに読み込んで、タイミングのずれなどがないことを確認。これでミックスの下準備が完了です。

ボーカルのミックス


 まずは、ボーカルデータのみをソロで聴いて収録状態を確認します。外部ノイズや極端なリップノイズがある場合にはデータ毎に編集ツール等を使って適宜調整しますが、今回は特に問題は無かったのでやっていません。

 続いて、素のボーカルの音質で気になる帯域をLogic純正の「Channel EQ(以下、EQとだけ表記ある場合はこのChannel EQ)」で微調整します。これはマイクの特性や収録した部屋の鳴りなどから不要な帯域がブーストされてしまっているのをフラットに戻す方向での調整となります。あくまでもこれからコンプやEQで音を作り込んでいく前の下地作りなので、不要な低音部分(50Hzぐらいから下)のカットと、気になる帯域別で0.5dB程度の補正といった感じです。気になる帯域というのが判りにくいかもしれませんが、妙に鼻にかかったような鳴り方をしてる帯域があったら、そこをわずかに下げることでスッキリさせるといった要領です。このEQを行うことで、全体の音質を変化させることなく、ヌケの良いボーカル素材とすることができます。このEQ設定はコピペで、全てのボーカルトラックの一番最初にインサートします。このEQ設定が出来れば、あとはオケに対して適切な音量バランスをとれば基本的なミックスは終了ですが、さすがにこれでは色気も何もあったものじゃないので、ここから各種エフェクトをかけて、楽曲にあった世界観を作るあげていくことになります。

 この下地作りをするようになったのは、YouTubeに公開されているMixbusTvというチャンネルの「HOW TO MIX TRAP HIP HOP VOCALS ON A 2 TRACK INSTRUMENTAL」シリーズを見てその方法を知ったからです。興味のある人は是非見てみてください。残念ながら英語での解説になりますが非常に勉強になります。ここまで詳しくボーカルのミックスを無料で学べる機会はなかなか無いと思います。

 さて、今回の楽曲は、Aメロ、Bメロ、Cメロに展開する形式ですが、Aメロはやや特殊なエフェクトをかけるため、基本となる音作りはBメロから始めました。

 まず基本EQの次に使うエフェクトはコンプ。ボーカルの色づけを考えて、まずはオプト系のWAVES「CLA-2A」で軽く均しつつボーカルのつやを引き出してから、その後にWAVES「CLA-76」をインサートして反応の遅いCLA-2Aでは間に合わないようなアタックの早いフレーズに対応する形としました。CLA-76はよくありがちな潰して歪ませるようなものではなく、あくまでもCLA-2Aの補完的な使い方。この方法は、エンジニアの中村公輔さんから教えてもらった技を応用しました。コンプの使い方については、サンレコ2015年7月号でも中村さんの解説による特集記事「コンプは“動作タイプ”で使い分ける!」があってとても参考になります。

 コンプのあとにディエッサーをインサートして耳に痛い部分を補正したら、その後に若干の倍音を付け加えるためにサチュレーション系のKlanghelm「IVGI」、さらに味付け用EQとしてSonimus「SonEQ」を使って中高音部分をほんの気持ち程度強調しました。IVGIとSonEQはあくまでも派手なオケの中でボーカルが沈み込まないように少しゲタを履かせるといったニュアンスで、ハッキリとかけたのが判る感じではありません。

 ここまで音が出来たら、今度はオケの中でボーカルが馴染むようにAUXセンドを使って残響系のエフェクトを付け足します。今回は8分の短めのステレオディレイの後にホール系のリバーブを加えました。その後にLogic付属のコンプをインサートし「FET」で極端に短めのアタックとリリース、6:1ぐらいのレシオにして、サイドチェーンをボーカルにして、歌ってないときだけ残響音が鳴るような処置をしています。これによって歌詞がはっきり聞こえつつ、ボーカル全体にはなんとなく余韻を感じるような存在感を持たせました。これも先に紹介したYouTubeのMixbusTv動画で詳しい使い方を見られます。

 さらに、別のAUXセンドで送ったボーカルにvacuumsound「ADT」で擬似ダブリングさせた音に、Softube「Saturation Knob」で歪ませたものを、薄〜くミックスに混ぜて、ボーカルの線が気持ち太くなるようなニュアンスを狙っています。これは隠し味的なもので、お汁粉に塩をほんのちょっと入れると甘みが増すというのと同じ。ちょっと正確ではありませんが、このトラックだけソロで聴けば判るけれどミックスの中で聴くと判らないようなレベルと言うと通じるでしょうか。

 以上でBメロ部分の音作りは完成。この設定はそのままCメロでも使います。BメロとCメロの違いは、別のAUXセンドを付け足して、さらにホール系のリバーブで残響を増やしているところ。こちらのリバーブは、一旦WAVES「CLA-3A」を使って残響音を強調した後に、やはりLogicのコンプでサイドチェーンを使ってボーカルによって鳴り方を制御しています。

 Aメロは、基本EQの後にWAVES「CLA-76」の必殺ボタン全押し(笑)設定でボーカルを潰しています。その後にEQで100Hz以下と1.3kHz以上をバッサリとカットしつつ、中音部で不要と感じる帯域を抑える形に補正。この後にLogicの「Tremolo」を1/64のレートで強めにかけ、TSE AUDIO「TSE 808」で思い切り歪ませています。Sonimus「SonEQ」で全体の音をまとめた後、最後にもう一度WAVES「CLA-76」のボタン全押しでかけて、極端にフラットな音像に仕上げてます。しかし、これだけだとあまりにもデッドな音像になってしまうので、ここから隠し味を付けます。

 Bメロと同じようにAUXセンドでステレオディレイとリバーブを使いますが、今回は歌詞のノリが強調されるように4分と8分の大きな譜割のディレイにします。しかし、このままでミックスに戻すとキレのある感じになりません。そこで、ノイズゲートをかませ、ボーカルをキーにしたサイドチェーンで制御します。これによって、歌っている間だけディレイが聞こえ、歌詞が途切れるとディレイもバッサリ聞こえなくなるようにしました。オケの中で聴くとディレイ音はほとんど判らなくなりますが、微妙なノリが生まれてボーカルにグイグイくるような感触が加わります。

 ボーカル素材はこのほか、ハーモニーなどありますが、基本の音作りは上記のパターンを組み合わせることで調整しています。

 ボーカル素材全ての音が出来たら、次はオケに合わせてバランスを取ります。バランスをどうするかは人それぞれのセンスだと思いますが、Aメロ<Bメロ<Cメロと徐々にボーカルの存在感が大きくなるような形で全体の流れに合わせてフェーダーオートメーションを書きました。また、細かい部分の調整としては、オケのアレンジによって楽器の数が変化するなどしてレベルが極端に変わる箇所は、それに合わせてボーカルのレベルも微調整すると、全体の流れが自然に聞こえます。最終的には耳で聴いて音のバランスを揃えていくのがコツだと思います。

 ここまで出来たら、一旦オケをミュートして、ボーカルだけのミックスをバウンスします。この際、マスターバスにトータルコンプやリミッターはかけません。あくまでもボーカルのステムミックスを作る要領です。

全体のミックス&マスタリング


 新たにオケとボーカルステムミックスを読み込んで、その2つのバランスを取りながら同時にマスタリング的な処理を施します。

 まずはオケの音圧感を改めて確認します。これはオケをソロで最終的なレベルバランスにして再生しながらLogicの「MultiMeter」で一番音の大きな箇所のRMSを読み取ります。次にボーカルのステムミックスにWAVES「L2」をインサートして、ソロで再生しながらスレッショルドとシーリングを調整しつつ、最もレベルが大きくなる箇所のRMSが先ほどオケで確認した数値とほぼ同じようになるように調整します。なぜ、このようなことをするかというと、ニコニコ動画で公開されているオケ音源がほとんどの場合マキシマイズされてしまっているので、そのままボーカルをあてると音圧的に負けてしまうので、マキシマイズされているオケと同じような音圧にまでボーカル音源も個別にマキシマイズしてしまうことで、同じような音のあり方に揃えるためです。もし、公開されているオケ音源がマキシマイズされていなければ、こういったボーカルの特殊な処理は不要だと思います。

 ボーカルの聴感がオケのあり方と揃えた時点で、改めてボーカル側にディエッサーをインサートして耳に痛い部分を補正します。さらに、ディエッサーで甘くなりすぎた高音成分を補正するためPlugin Alliance「MAAG EQ4」で高音を若干ブーストしています。

 一方、オケの方は、Plugin Alliance「Brainworx bx_refinement」をインサートして、ほんの気持ちだけ高音を抑えるようにしました。

 改めてオケとボーカルのバランスをフェーダーで微調整した後、マスターバスにToneBoosters「TB_ReelBus」、Tokyo Dawn Labs「TDR Kotelnikov」、Plugin Alliance「Brainworx bx_digital」、vladg/sound「Limiter No6」をインサートして最終的な音質補正とリミッティングを行っています。味付けとしてはTB_ReelBusがかなり大きいかもしれません。

今回の反省点


 ニコニコ動画にアップして聴いてもらうという前提で仕上げていったので、最終的な音圧のあり方をRMS値で-10dB前途にくるようピーク設定したのですが、そのせいで繰り返し聞くとやはり耳が痛く、自分のミックスの技量の無さを思い知らされます。今後はもっと低めの音圧でもメリハリがあって気持ち良く聴けるレベルを目指したいです。  
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April 19, 2015

映画「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」を観た。(もしかしたらネタバレ)

 今回も本作がアカデミー賞を受賞したという程度の事前情報以外の予備知識はゼロで(そのアカデミー賞にしても一体何で賞を獲ったのか知らなかった)で映画館へ向かう。ただし、YouTubeか何かで予告編は見ていたおかげで、老いた主人公が再びヒーローとして返り咲き社会の悪と戦うという話に違いないというとんでもない勘違いをしていたことだけは正直に告白しておこう。

Birdman

 本作の原題は「Birdman: Or (The Unexpected Virtue of Ignorance)」という。邦題もしっかりと長ったらしいままでほぼ直訳している。最近の洋画としては珍しい。こんな見せ方したらイマドキの面倒臭いことが嫌いな客はそれだけでドン引きだろう。つまりは日本の配給会社もこの作品をキャッチーでバカ売れする商品として売ることはもう最初から諦めているに違いない。アカデミーで4冠受賞した作品の本邦初公開だというのに、自分が観に行った劇場(新規開店したばかりのTOHOシネマ新宿)では大きなスクリーンでかけることさえしていなかった。そういうことなのだ。

 一般受けはまずしないし、若いカップルのデートなぞには絶対おすすめできない。二昔ぐらい前ならシネマライズで単館上映されて、一部文化人が絶賛したおかげで勘違いした人々が押し寄せて予定よりも上映期間が延長されるといったような類の作品じゃないだろうか。しかし、今はそういう文化土壌もほとんど無くなってしまったから、おそらくは気がついたら上映がとっくの昔に終わっていて、ビデオレンタルもあまり回転することなく一部のマニア以外からは忘れ去られていくパターン。

 で、個人的にどうだったかというと、とても気に入った。この映画は生涯を通してオールタイムベストのかなり上位にランクされる作品だ。こんな映画らしい映画、言い方を変えるとロマンチックな映画は久しぶりに観たように思う。ちょっと違うのだけれど「虹を掴む男」のようでもあり、「未来世紀ブラジル」のようでもあった。自分はなぜか未来世紀ブラジルちっくな映画がすごく好きで、このバードマンという映画はエンディングも含めてとてもその路線に近しいものを感じた。ネタバレになるけれど、あの最後のシーンは果たされることがなかった夢の描写なのか、それとも現実なのか。そういうところがとてもブラジルに似ていた。そして残念ながら、そのなんとも曖昧模糊としたバッドエンディング、もしくはハッピーエンディングも、この作品を一般受けからは遠いものにしていそうな気配はある。

 この映画は時間の経過を表現する演出として「同ポジOL(同じ構図の絵をそのままオーバーラップして画面遷移する)」手法をずっと最初から最後まで貫き通していて、これもまたとても不思議な効果を醸しだしている。観ていると時間が変わったのかどうか一瞬判らない場合があったりして、それが一般的なカットつなぎで見せる映画とは異なった絶妙なタイムワープ感を与えてくれる。自分はとても面白いと思ったし、そうした時間の移り変わっていく様子を楽しんだけれど、あのノリに馴染めない人にとってはかなり居心地が悪いものかもしれない。

 音の面からの注目は、なんといっても全編を通じてほとんどの音楽がアントニオ・サンチェスとブライアン・ブレイドによるドラム演奏だけで構成されている点。このシンプルで大胆な音楽の起用が映画全体の緊張感を引き立てている。さらにドラム以外の楽器が入る瞬間はものすごいインパクトを与えることになる。この映画を観る時には、できればドラムの音が最高に良い音響システムのある劇場を選びたいところ。残念なことに、自分が観に行った出来たばかりのTOHOシネマズ新宿のスクリーン3は、ドラムの音に関しては今ひとつ良くないように感じた。あれは何なのだろう。音はきれいに鳴っているのだけど芯が無いような、そんな物足りない印象を覚えた。もっとも、当日は気圧が低くて自分の耳も本調子ではなかったので、もしかしたらそれが原因なのか……。

 ところで、バードマンとは全く関係がないのだけれど、本編が始まる前の予告編がどれも疲れる映像ばかりで辛かった。CGを使わざるをえないのは判るけれど、もう構図が下手くそで暑苦しいマンガにしか見えない。ああいう作風でないと客は入ってくれない時代なんだろうと思うけれど、色々な意味で劣化具合が激しいような。商業音楽における「音圧戦争」と同じようなことが、映画でもCG導入で起きているんだなと感じた。

B00NAXEAAKBirdman - Original Soundtrack
Antonio Sanchez
Milan Records 2014-10-13

  
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