浦和と越谷と福田

back to 03.07.18



6月某日。福田正博引退試合。
タイトルがかかった公式戦でも、海外メジャークラブの招待試合でもない一選手の引退試合。
埼玉スタジアムはこの日、50000を超える赤い塊を飲み込んだ。
そして、その中には私の姿もあった。

私はいつからこのミスター・レッズを愛しているのだろう? 
たぶん私は、レッズサポーターではない。レッズのためになにかをしたいと思ったことはないし、実際になにかをしたこともない。

そもそも、私のJリーグ覚醒は99年である。福田の全盛期をこの目は記憶していないし、浦和10年の歴史を共に歩んだりもしていない。

それなのに、それでもなお、「ミスター・レッズ引退試合」という言葉は、埼玉人でサッカー好きというだけの男の足をスタジアムに向けさせるだけの力、いや魔力を持っていた。

私が知るJリーグ、そしてレッズの歴史というものは過去のデータをすくい取ったものでしかなく、思い出を伴っていない。

福田01
福田正博。日本人初のリーグ得点王。
見ていない。
屈辱のJ2落ち。
見ていない。
一年での熱狂的復活。
もちろん、見ていない。
初のナビスコカップファイナル。
これは見た。

つまりに、そのぐらい私とレッズの付き合いは浅い。


なぜ、あの日埼玉スタジアムに私の姿があったのだろうか?
しかもである。初めての生観戦だったりする。
生まれて初めて、スタジアムに足を運び、その身体で直接に空気を感じ、叫びを聞き、試合を見た。
私にとってのそれは「福田正博引退試合」となった。


浦和との個人的接点が全く存在しないわけではない。父親は浦和生まれの浦和育ち。私にとって「田舎」は浦和になる。しかし、父親は生粋の巨人ファン。サッカーのサの字を初めて知ったのは日韓ワールドカップだった。
田舎は居心地がいい場所ではあるが、親の居場所であって、私の居場所ではない。

たぶん、これしかないだろうという答えはある。サッカーに取り憑かれてしまった埼玉人にとって、日本でそれを現すものはなにをどうしたって浦和レッズなのだ。私が大宮人であればアルティージャになれたのかもしれないが、私は越谷人だ。

大宮にも浦和にもえこひいきがなく、埼玉へのえこひいきは存分にある。

そうすると、どうしてもレッズを愛さずにはいられない。
おそらく、きっと、たぶん、そういうことなんだろう。


スタジアムのS席。斜め前に座る三人家族。母親に抱えられながら5歳ほどの少女が両手を掲げて

「げっとごーる ふきゅだっ!」
と叫んでいる。

隣では、福田を愛し続けた友人の瞳が濡れていた。

ゴール裏から迸るエネルギーの嵐は、それらすべてを受け止め、包み込み、なおかつ弾き飛ばす。主役は誰だ? 50000の絶叫を一身に集めるミスター・レッズなのか。あるいはその絶叫そのものなのか。


スタジアムは非現実へと誘う異空間なのだと誰かが言った。私が見ている景色はさらにもっと特殊で、異質なものだろう。

越谷には当然ながらプロサッカーチームは存在しない。
JFLにも存在しない。

ならば、関東リーグなら? 関東2部に「埼玉SC」というチームは存在するが、これは残念ながら草加が本拠地である。越谷人が思いを込める余地はない。

こうなると、もう一つ下に潜らなくてはいけない。埼玉県社会人リーグ。
いた。

埼玉県社会人リーグ1部にはっきりと「越谷FC」の名が刻まれている。
遠い。果てしなく遠いが、つながっていないわけではない。

実質はJ3と言われるJFLだが、加盟や資格や設備や資金の問題で、J2とJFLのチームが入れ替わるシステムは採用されていない。しかし、JFLから地域リーグまではかぼそいながらも、確かに繋がっている。

私がスポーツを愛するのは、「最高峰に魅せられたい」からであって、その枠に入るのはぎりぎりでJ2までである。埼玉1部のチームを見るために足を運ぶことはまずないだろう。

しかし、果てしなく遠く霞む道の果てにこの越谷FCが辿り着くことがあったら……
その時はじめて、私の中の一番が浦和レッズではなくなるのだろう。


埼玉スタジアムで背番号9を背負って叫んでいた少女が思い浮かぶ。あの少女がサッカーを忘れずに育っていったら、彼女にとってレッズとは、福田とはどんな存在になるのだろうか?

その瞳が濡れるのをはじめて見た友人を鑑みる。彼が愛したのはレッズではなくただ福田だった。この先彼にとって浦和とは価値あるものとなるのだろうか?

福田02


福田正博。レッズでもっとも愛された男。
彼はこの日、現役を終えた。





浦和レッズ。日本でももっとも熱狂的に愛されるといわれるサッカークラブ。
進化はきっと止まらないのだろう。

さて。
越谷はどこへ向かう? サッカーを抱くか、否か?


素材提供 Sothei

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