ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

法王の狙いは神の祝福の大衆化?

  南米出身のフランシスコ法王は来月5日から19日まで特別シノドス(世界司教会議)を開催する。「福音宣教からみた家庭司牧の挑戦」という標語を掲げた同シノドスには世界の司教会議議長、高位聖職者、専門家、学者らが参加し、家庭問題を主要テーマとして話し合う。

 フランシスコ法王は昨年4月、8人の枢機卿から構成された提言グループ(C8)を創設し、法王庁の改革<使徒憲章=Paster Bonusの改正>に取り組んできた。世界の司教会議はフランシスコ法王の要請を受け、「家庭と教会の性モラル」(避妊、同性婚、離婚などの諸問題)に関して信者たちにアンケート調査を実施してきた。各国司教会議はその結果を持ち寄って10月5日からバチカンで開催される特別シノドスで協議する。家庭問題に焦点を合わせた特別シノドスの開催は初めてだけに、その成果と成り行きが注目されるわけだ。

 シノドス開催を2週間後に控え、離婚、再婚者への聖体拝領問題で改革派と保守派の戦いが始まっている。保守派の筆頭ミューラー教理省長官ら5人の枢機卿は離婚・再婚者への聖体拝領に反対を明記した論文集を来月1日、イタリアと米国で出版する。出版日がシノドス開催直前のことから、「シノドスを意識した反改革派の攻勢」と受け取られているほどだ。
 カトリック教会ではアウグスティヌス(古代キリスト教神学者、354〜430年)が夫婦の永遠の絆という教えを作り上げて以来、離婚、再婚は認められていない。正式に教会婚姻を受けた信者だけが神の祝福(サクラメント)を受ける資格があるというわけだ。

 5人の枢機卿の一人、イタリアのベラシオ・デ・パオリス枢機卿は「われわれは教会の教理と実践が乖離することを懸念しているだけだ。離婚・再婚者にはサクラメントを与えないというのが教会の教理だ。それを改正することなく、実践の場で教理に反することはできない」と説明し、教理を変えるか、教理に従った実践をキープするかの選択を改革派に迫っている。

 それに対し、改革派のヴァルター・カスパー枢機卿(前キリスト教一致推進評議会議長)は「教理の是非を協議しているのではない、複雑な状況下で教会の教理をどのように適応するかが問われているのだ」と指摘している。

  フランシスコ法王は昨年11月28日、使徒的勧告「エヴァンジェリ・ガウディウム」(福音の喜び)を発表し、信仰生活の喜びを強調したが、カスパー枢機卿は「教会の教えと信者たちの現実には大きな亀裂があることを正直に認めざるを得ない。教会の教えは今日、多くの信者たちにとって現実と生活から遠くかけ離れている。家庭の福音は負担ではなく、喜びの福音であり、光と力だ」と述べている。ローマ法王を含む改革派は離婚・再婚者への聖体拝領問題では容認方向にある。換言すれば、神の祝福(サクラメント)の大衆化を目指しているわけだ。

 ちなみに、フランシスコ法王は今月20日、婚姻無効手続に関する簡易化を協議する特別委員会を設置している。教会では婚姻無効表明手続きまで長い年月がかかるうえ、2つの教会審査を全会一致で乗り越えない限り、婚姻無効表明はできないことになっている。2012年、世界のカトリック教会では約5万件の婚姻が無効表明されている。

 なお、バチカンは特別シノドス後、来年10月には通常シノドスを開き、そこで協議を継続し、家庭問題に対する教会の基本方針を決定する意向だ。

ローマ法王は狙われていたのか

 ローマ・カトリック教会最高指導者フランシスコは21日、欧州の最貧国だったアルバニアを訪問した。フランシスコ法王にとってはイタリア国内以外では初めての欧州訪問となった。

 アルバニアは冷戦時代、ホッジャ労働党政権(共産政権)が1967年、世界で初めて「無神国家」を宣言した国だ。同国は1990年、民主化に乗り出した後、宗教の自由は再び公認された。同国では国民の間で宗教に関する関心が高まってきている反面、長い共産主義教育の影響は社会の各方面で見られる。
 同国ではイスラム教が主要宗教で人口の約60%、そしてアルバニア正教徒とローマ・カトリック教会、プロテスタント教会と続く。なお、カトリック教徒数は約45万人だ。フランシスコ法王はティラナ訪問ではイスラム教徒ら他宗教との会談を積極的に行った。

 ところで、フランシスコ法王のティラナ訪問は訪問直前まで国内ではほとんど報じられなかった。同国のメディアは前日になって初めてローマ法王のアルバニア訪問を大きく報じたほどだ。アルバニア政府がフランシスコ法王へのテロを恐れ、情報を抑えていたといわれる。

 バチカン放送によると、アルバニア警察は法王訪問前、約50人の過激派活動家を拘束している。国内だけではなく、モンテネグロ、コソボ、マケドニアなど隣国居住の過激派に対しても拘束しているほどだ。法王の安全のためアルバニア当局は約2500人の警察隊を動員した。

 それだけではない。フランシスコ法王のティラナ滞在中は携帯電話が使用できないようにしている。法王が記念礼拝をするマザー・テレサ広場でテロリストが爆弾を仕掛け、それを携帯電話で爆発させる危険性があるからだ。アルバニア側の法王へのテロ警戒は非常に現実的であり、深刻だった。多分、西側情報機関筋からティラナ側に「法王が危ない」といった情報が入っていたのかもしれない。

 シリアやイラクで蛮行を繰り返すイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)に対して フランシスコ法王は先日、欧米の対IS空爆を容認する発言をして注目されたが、ISはローマ法王への報復を表明しているという。

 
 南米初のローマ法王に就任したフランシスコ法王にはこれまでも暗殺情報が何度も流れてきた。それもメディアの憶測情報ではなく、高位聖職者からの情報だ。バチカン法王庁の抜本的改革を表明してきたフランシスコ法王が狙われているというのだ(今年4月27日に聖人となったヨハネ・パウロ2世は1981年5月13日、サンピエトロ広場でアリ・アジャの銃撃を受け、大負傷を負ったことがある)。 

 幸い、11時間余りの短時間のアルバニア訪問は無事終わり、ティラナ市内の記念礼拝を終えたフランシスコ法王は同日夜、ローマに戻った。

夫婦の絆を身をもって示した政治家

 中国の海外反体制派メディア「大紀元」日本語版に19日、カンボジアの陸軍病院で不法な臓器移植をしていた医者関係者が逮捕されたこと、その背後に、反体制派活動家たちの臓器を組織的に不法摘出してきた中国側の関与が疑われているという記事が掲載されていた。

 このコラム欄で数回、中国当局が拘束した気功集団の法輪功メンバーから生きたままで臓器を摘出し、それを業者などを通じて売買していた犯罪行為を報じた(「中国の610公室」2006年12月19日参考)。2000年から08年の間で法輪功メンバー約6万人が臓器を摘出された後、放り出されて死去したというデータがある。ちなみに、江沢民前国家主席(当時)は1999年6月10日、法輪功メンバーを監視する機関、通称「610公室」を設置し、法輪功関係者を徹底的に弾圧し、メンバーの臓器摘出とその売買を命じた張本人だ。
http://blog.livedoor.jp/wien2006/archives/50459254.html
 カンボジアの陸軍病院の場合、臓器移植提供者にそれなりの報酬が与えられていたというが、中国の場合、臓器提供者は放置され、家族関係者にも連絡されないというのだ。

 ところで、臓器を他の人に提供するという行為は本来、自分の一部を他者を生かすために提供するものであり、その動機は尊い。当方はその政治信条は別として2人の政治家を尊敬している。一人は10年間、オーストリア首相(1987〜97年)を務めてきたフランツ・フラ二ツキ氏だ。もう一人はドイツ与党社会民主党で現外相を務めるフランク・ヴァルター・シュタインマイヤー氏だ。両者とも妻の病気のためにその臓器(腎臓)を提供した政治家だ。シュタインマイヤー氏は臓器摘出とその後の療養のために政治活動をしばらく休んでいる。離婚する政治家が増えている今日、2人の政治家は身をもって夫婦の絆の大切さを示してくれたわけだ。

 病に伏せる妻に自身の臓器の一部を提供した政治家は愛妻家だ。臓器を提供すれば自身もその後、支障をきたすかもしれないし、さまざまな後遺症も考えられる。それにもかかわらず、2人の政治家は自身の臓器を妻に供した。自分にできる最大限のこと、 自分の一部を提供することで妻を救うことができた彼らは幸せだったろう。自分の命を他に与える行為ほど愛の行為はない。

 世界では数多くの移植手術が行われている。提供者が現れるのを長い間待つ心臓病の患者たちも多い。通常、移植の場合、提供者と受ける側の間で了解がある。もちろん、アジアの一部では、経済的理由から自身の臓器を売る人々もいる。悲しいことだが、われわれの時代の現実だろう。

 繰り返すが、カンボジアや中国の不法臓器売買はその本来神聖な臓器移植を汚すものだ。特に、中国共産党政権下の不法臓器摘出とその売買は非人道的な行為といわざるを得ない。

スコットランド人は踊らず

 英北部スコットランドの独立を問う住民投票が18日実施され、即日開票された。英BBC放送によると、独立反対派が過半数を制し、スコットランドの英国からの分離・独立は否決された。300年以上、イングランドの支配下にあったスコットランド人の独立の夢は実現されなかった。

 スコットランドが独立した場合、スペインのバスク州、カタルーニャ州、イタリアの南チロル州など欧州の少数民族の独立運動が鼓舞され、欧州の政情を不安定にするのではないか、といった懸念の声も聞かれた。それだけに、その結果が注視されていた。独立反対派が予想外の大差で勝利したことから、欧州の少数民族の独立運動は鎮静化するものと受け取られている。

 ところで、スコットランドの独立を問う住民投票が実施された18日は、フランス革命とナポレオン戦争後の欧州の政治体制を再構築したウィーン会議が始まった日だ(1814年9月18日)。ウィーン会議開催200年目に当たる同日、スコットランドの独立を問う住民投票が行われたというわけだ。

 ウィーン会議の進行は遅滞し、英国、ロシア、オーストリア、プロイセンの大国4か国の利害が激しく対立(議長オーストリアのメッテルニヒ)した。その一方、政治家たちは夜な夜なダンスに興じていたことから、後世の人々から「会議は踊る、されど会議は進まず」と揶揄され、映画化されたほどだ。ウィーン会議は最後まで全体会合は開催されず、翌年6月9日、ウィーン体制と呼ばれる国際秩序を明記した最終議定書が採択され、幕を閉じた。

 ウィーン会議は革命前の状況復帰(正統主義)と大国の既成権限の定着化を狙ったものだ。あれから2世紀が経過したが、その時に決定された国境線が今も継続されている地域がある一方、第1次、第2次の世界大戦後は紛争回避が最優先され、少数民族の独立問題は該当民族の意思が重要視されるようになっていった。そして冷戦後、新しい国家が次々と誕生していったことは周知のことだ。

 ウィーン会議開催200年が経過した欧州では現在、欧州連合(EU)主導の統合が促進されている。いずれにしても、スコットランド人は今回、パブで飲みすぎることもなく、分離・独立のプラスとマイナスを冷静に判断して決定したのだろう。スコットランド人は踊らなかったのだ。

ダライ・ラマ14世と「輪廻転生」

 チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世は7日、ドイツ紙ヴェルト日曜版とのインタビューの中で、「後継者は不要」の意向を明らかにした。それに対し、中国共産党政権は「ダライ・ラマ14世が輪廻転生制度を廃止する資格はない」と批判しているという(「大紀元」日本語版9月12日)。

 独紙によると、ダライ・ラマ14世は「自分が最後のダライ・ラマとなる。ダライ・ラマ15世が生まれて、継承されてきた伝統的な制度の名誉を傷つけるようなことになるなら、むしろ今のうちに終わりにすべきだ」と述べたという。ダライ・ラマ14世の今回の発言は中国政権を意識したものだろう。北京当局は既にポスト・ダライ・ラマ14世を視野に入れて、次期ラマ15世を準備しているといわれているからだ。

 ダライ・ラマ14世の「輪廻転生の廃止」発言の背景と狙いについてはチベット仏教関係者に譲るべきだろう。ここではダライ・ラマ14世の言及した「輪廻転生思想」について、当方の考えを述べてみたい。

 ダライ・ラマ14世は4歳の時、ダライ・ラマ13世の転生として認定され、1940年に即位した。ダライ・ラマ法王日本代表部事務所のHPによると、「全ての生きとし生けるものは輪廻転生すると考えられている。輪廻転生とは、一時的に肉体は滅びても、魂は滅びることなく永遠に継続することである。我々のような一般人は、今度死んだら次も今と同じように人間に生まれ変わるとは限らない。我々が行ってきた行為の良し悪しによって、六道輪廻(神・人間・非神・地獄・餓鬼・畜生)のいずれかの世界に生まれ変わらなければならないのである。例えば現在、人間に生まれていても、次の生は昆虫・動物・鳥などの形に生まれ変わるかもしれない。しかし、悟りを開いた一部の菩薩は、次も人間に生まれ変わり、全ての生きとし生けるものの為に働き続けると信じられている。ダライ・ラマ法王もその一人である。ダライ・ラマ法王は観音菩薩の化身であり、チベットの人々を救済するために生まれ変わったとチベットの人々は信じている」という。

 前世紀に生きていた人間が現在の人間に出てきて、「私は昔……だった」と証言する話は聞くことがある。輪廻転生では、前世紀の人間が現代に生まれてきたと受け取られるが、前世代の人間と現代の人間は別個体であり、本来は同一体ではない。前世代の人間が霊的に復活して現在生きている人間に協助する場合、外的には前世代の人間の生まれ変わりのように受け取られやすい。

 ただし、繰り返すが、現代人に憑依した前世代の人間はまったく別の存在だ。自身の血統、性質、気質、環境圏に酷似している人間が存在すれば、その人間に憑依するケースはよくあることだ。すなわち、輪廻転生は実際は霊的復活現象と見るべきだろう。釈尊がいうように、われわれ一人ひとりは、天上天下唯我独尊の存在だ。輪廻転生説はあくまでも人間の使命からみて継承者という意味があるが、個体は別だ。ダライ・ラマ14世はその使命からみれば、ダライ・ラマ13世の後継者だが、両者の個体はまったく別だ。

 聖書から例を挙げてみよう。イエスが指摘したように、洗礼ヨハネは旧約時代の預言者エリアの再臨(マタイ福音書第17章)だが、両者は別個の人間だ。預言者エリヤは洗礼ヨハネに共助し、その使命を成就しようとした。イエスの再臨問題では、「肉身再臨」と「霊的再臨」で神学者の意見が分かれている。2000年前のイエスが再び肉体をもって降臨すると信じている信者(肉体再臨)と、十字架にかかったイエスが霊的に再臨するだけだと信じる霊的再臨論がある。イエスの再臨の場合、洗礼ヨハネと同様、イエスの使命を継承した別の人間が肉体をもって降臨すると考えるべきだろう。

ISのリクルートを阻止せよ

 シリアやイラクでテロ活動を繰り返すイスラム教スンニ派過激派組織「イスラム国」(IS)は国際社会の包囲網にもかかわらず、依然その勢力を拡大している。ISの総兵力は1万5000人から3万人と推測されているが、2000人から3000人の欧米人がISの“ジハード”に参戦しているといわれる。彼らは出身国内でIS参戦帰国者や過激なイスラム教徒からリクルートされている。西側情報機関筋によると、「20代にもならない女性たちがシリアやイラクのジハードに参戦するケースが最近、増えている」という。

 そこで欧米諸国は、ジハード参戦後、帰国した過激派の監視を強化する一方、関連法の強化に乗り出してきた。ドイツではデメジエール内相が12日、「ISのドイツ国内での活動はわが国の公共の安全にとって脅威となる」として、IS関連の活動を禁止すると発表したばかりだ。


 欧米からISの「聖戦」に参加する数はフランスが約900人で最も多く、それに次いで約500人が英国人、そしてドイツ人の400人と続く。当方が住むオーストリアからも約140人が参戦していることが判明している。ウィーンの15歳、16歳の少女が今年に入り、突然、トルコ経由でシリア入りしたことが判明し、大きな衝撃を投じたばかりだ。普通の女の子が突然、「アラーのために命を捧げる」と決意したということに、国民は驚いたわけだ。

 そして先月18日、イスラムの聖戦に参戦するためシリアに向かおうとした10人(17歳から32歳)がケルンテン州とブルゲンランド州国境でオーストリア連邦憲法保護・テロ対策局(BVT)と内務省特別部隊(コブラ)によって拘束された。チェチェン人の難民8人と1人はトルコ系のオーストリア人だ。残り1人は未成年(17歳)のためすぐに釈放された。

 オーストリア内務省と法務省は15日、ISのリクルート防止法(通称・新ジハード法)の草案を公表している。具体的には、2015年1月施行を目指して7項目の関連法修正案を検討している。。稗咾筌▲襯イダなど18テロ組織のシンボル(旗、ロゴ)禁止、■化店饑劼鮟衢するIS参戦者はオーストリア国籍を剥奪、N梢討竜可なくして未成年者の欧州連合(EU)域外旅行を禁止、ぃ贈孱圓離謄軅賁膕函⊃靴燭烹横或涌蘋、ダ霪虻瓩僚だ機↓Π質なケースではデータ保存規制を見直し、Ф技奸学生、父兄会の対応強化などだ。

 ちなみに、7点の修正案の中で,裡稗咾離轡鵐椒襪龍愡澆砲弔い董▲ぅ好薀犇鬼愀玄圓ら「通常のイスラム教グループでもよく似たシンボルを使用することがある」と指摘、シンボルの禁止に抵抗の声が聞かれる。

 ヴォルフガング・ブランドシュテッター司法相は記者会見で、「ISを支援し、暴力を拡大する者は今後、厳しく処される。それに関連して扇動罪も強化される予定だ」と説明している(エステライヒ紙16日付)。

北の外交は日朝改善を至上目標に

 北朝鮮の朝鮮労働党国際問題担当の姜錫柱(カン・ソクチュ)書記がドイツ、ベルギー、スイス、イタリアの欧州4カ国訪問を終えた。
 韓国の聯合ニュースが16日、米国海外放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)の情報として報じたところによると、姜錫柱党委書記は6日から16日まで10日間あまり欧州を歴訪したが、スイス以外、高官との接触は実現せず、期待外れだったことが明らかになった(朝鮮中央通信=KCNAは6日、同書記が欧州4カ国のほか、モンゴルを訪問すると報じている)。


 姜錫柱書記は訪問国最後のスイスでイヴ・ロシエ外務次官と会談したほかは、欧州連合(EU)の本部があるベルギーで欧州議会外交委員長のエルマー・ブロック氏、EU人権問題特別代表のスタブロス・ランブリニディス氏と会ったが、ドイツでは8日、与党社会民主党のニールス・アンネン(Niels Annen)国際委員長らの政党関係者と会談しただけに留まった(KCNA)。

 韓国政府関係者は「北の外交を牛耳る姜錫柱書記が10日間余り欧州を訪問するのは異例だ。政党関係者との交流だけではなく、政府間の対話を狙ったものだろう」と予想し、その動向を注視してきた。
 今月末には李洙墉(リ・スヨン)外相が国連総会に出席するためにニューヨークに出発するなど、核実験後、国際社会から孤立してきた北が再び積極的な外交を展開するのではないかと推測されていたが、同書記の欧州歴訪は成果の乏しいものとなった。

 聯合ニュースによると、姜錫柱書記の欧州歴訪前、同書記が冷えている中朝関係の突破のため北京で中国高官と会談するのではないかと予想される一方、スイス・ジュネーブで日本政府が拉致問題を含む北朝鮮の人権侵害に関するシンポジウムを開催することもあって日朝高官級接触の可能性すら指摘されていたほどだ。


 欧州の西側情報機関筋は「冷戦後、北朝鮮の欧州拠点はウィーンからイタリア、フランス、英国に移動してきている。 姜錫柱書記がイタリアで政府関係者と会談できなかったことは少々予想外だった。スイスは今も昔も北とは友好関係があるから、外務次官が会談したとしても不思議ではない」と分析している。

 なお、北の消息に詳しい筋は「核問題を抱えている以上、北が欧州諸国と近い将来、関係を改善することは期待できない。金正恩第1書記は国際社会への突破口として拉致問題を抱えている日本との関係改善を狙っているだろう。北と現在、深刻に外交交渉を進めたいと考えている国は世界中をみても日本しかない」と指摘し、「北も日本との関係改善のため拉致問題で大胆な譲歩を示す可能性がある」と受け取っている。

独ジハード参戦者のプロフィール

 デメジエール独内相は12日、イスラム教スンニ派過激派組織「イスラム国(IS)のドイツ国内での活動はわが国の公共の安全にとって脅威となる」として、IS関連の活動を禁止すると発表した。

 同内相によれば、ドイツから約400人がシリアやイラク国内のISの戦闘に参加し、 100人以上が帰国している。彼らの多くはインターネットやサイトを通じて過激派から勧誘を受け、シリア、イラク入りしている。ドイツ当局が警戒しているのは、「聖戦」から帰国した者がドイツ国内で過激なテロ活動を計画することだ。 

 欧州からシリア、イラクの内戦に参戦している人数は約3000人と推定されている。最大の「聖戦」参加者数はフランス国籍を有する欧州人で、その数は約900人だ。それに次いで約500人が英国人、そしてドイツ人の400人と続く(欧州連合内のテロ対策機関)。       



 ところで、独連邦憲法保護局はこのほど「ジハード」に参戦した独国民のプロフィールを分析し、その結果を公表している。対象は2012年中旬からシリア、イラクの「聖戦」に参加した378人だ。それによると、ドイツの「ジハード」参戦者の言動の過激化はサラフィスト・グループ時代に始まっている。彼らのほぼ90%は男性であり、60%はドイツ生まれだ。そして30%以上が前科を有していた。また、参戦した240人はイスラム教の家庭に生まれ、54人はドイツ国内で他宗教からイスラム教へ改宗している(「ホームグロウン・テロリストの脅威」2013年9月12日参考)。

 ちなみに、サラフィストは初期イスラム教への回帰思想であり、聖典コーランを文字通りそのまま信じ、その解釈を拒否し、欧米社会との統合を拒否する。国際テロ組織アルカイダに近く、イスラム教内では超保守派のワッハープ派の思想潮流をいう。

 当方は「なぜ、彼らは戦地に向かうのか」(2014年8月22日参考)というコラムの中で、「彼らは社会に統合できないで苦しんできた。言語問題だけではない。仕事も見つからず、劣等感に悩まされるイスラム系青年も少なくない。そこで聖戦のために命を懸けるべきだというイデオロギーに接した場合、彼らはそれに急速に傾斜していく」と分析する社会学者の意見を紹介したが、それだけではないだろう。

 キャメロン英首相は14日、ISが英国人の人道支援団体メンバーを虐殺したことに対し、「ISはイスラム教とは全く関係ない。彼らは化け物だ」と批判したばかりだ。それに対し、独政治学者、ハマド・アブデル・サマド氏は「イスラム教の教えの中に暴力性、排他性がある。それらは21世紀の社会では異質のものだ。ISの残虐性はそれを端的に示している」と説明、イスラム教の教義的問題点を指摘している、といった具合だ(「唯一神教の『潜在的な暴力性』とは」2012年6月5日参考)。

ロシアは中国のガソリンスタンド?

 ハーバード大学の国際政治学者ジョセフ・ナイ教授は、「ロシアは将来、中国にガスや原油を供給するガソリンスタンドの存在に過ぎなくなるだろう」と予想している。同教授が言いたい点は、ロシアが抜本的な経済改革を実施しない限り、同国は先端技術の生産・開発力を失い、原油とガスの輸出依存の未開発国の地位に留まるというのだ。

 ウクライナ情勢に関連した欧州連合(EU)の対ロシア制裁はロシアの国民経済を確実に弱体化させている。ルーブルの下落、外国投資・資本の流出などは既に現実化している。
 EUは12日、対ロシア追加制裁を発動した。ロスネフチなど国営石油関連会社、防衛関連会社に対し、資金調達の道を制限した。それに対して、プーチン大統領は報復制裁を検討中という。具体的には、欧米諸国の民間旅客機のロシア上空通過禁止や欧州へのガス供給ストップなどだ。それらが実施されれば、ロシア側にも大きな経済的ダメージが生じることは必至だろう。

 一方、ロシア国民は今のところプーチン大統領の政策を支持し、愛国主義的だ。国内の世論調査によると、約80%の国民がプーチン氏を支持しているが、その支持はいつまで続くだろうか。再選を狙うプーチン氏は国内の反プーチン派への弾圧を強めるかもしれない。そうなれば、ロシアの政情は揺れ動き、その影響は欧州全土に広がることが考えられる。


  ちなみに、プーチン大統領は上海協力機構(SCO)にインドを加盟させ、欧米主導の政治に対し、中国とともに対抗姿勢を示しているが、どこまで実行力のある政策が取れるかは不明だ。特に、ロシアと中国の両国は領土問題を抱え、国益でも相違があるから、中国との連帯といっても限界がある。

 ボディブローを受け続けてきたボクサーのように、ロシアの国民経済は今後、衰退していく可能性が考えられる。その時、プーチン大統領がその帝国主義的な政策を撤回し、欧米諸国との連携を模索する政策に修正するか、欧米との衝突を躊躇せず、突っ走るかの選択を強いられることになる。プーチン・ロシアが中国のガソリンスタンドになり下がったとしても、ロシアは依然、軍事大国だ。欧米側は後者のシナリオをも慎重に検討しておくべきだろう。

再生医学の未来をかけた「移植」

 朗報が届いた。網膜細胞が傷つく目の難病「加齢黄斑(おうはん)変性」を患う70歳代女性に、人工多能性幹細胞(iPS細胞)が世界で初めて移植され、これまでのところ手術後の結果は順調というのだ。読売新聞電子版の記事(13日付)には「周りが明るく見える」というタイトル付で患者のコメントが紹介されていた。

 当方は7月23日、網膜剥離で手術を受けたばかりだったので、「iPSが眼の難病患者に世界初、移植された」というニュースを自分のことのように嬉しく感じた。当方は剥離した網膜を再び網膜上皮に付着するために六フッ化硫黄ガス(SF6)というガスを注入された。手術から50日以上が経過した。網膜は今のところ付着している。神戸の患者の視力が回復し、iPS細胞の実用化に弾みをつけてくれることを願う。

 ところで、移植された患者は「網膜剥離などが起きないように、うつ伏せになって眠らなければならなかったことがしんどかった」(読売新聞)と述べている。当方も手術後、一週間余りうつ伏せを強いられたので患者の辛さは良く分かる。入院生活で最も辛かったのは手術ではなく、この「うつ伏せ」だ。当方より高齢の患者にはもっと辛かったのではないかと推測する。

 iPS細胞の生みの親、山中伸弥・京都大教授は2012年、ノーベル生理学・医学賞を受賞した直後、「iPS細胞が早く実用化され、不治の病に悩む人々を救いたいと願っています」と語っている。再生医学は人類に大きな恩恵をもたらす潜在性を秘めているからだ。


 当方は「万能細胞が甦らせた『再生』への願い」(2014年3月14日)というコラムの中で、「再生医学が人間の世界観、人生観にも多くの影響を与える」と確信していると書いた。病に侵された細胞を再生し、病を患う前の状況に戻す、細胞の初期化を意味する。この“初期化”という概念はコンピューターの世界だけではなく、人間の生き方にも適応できると思うからだ。

 iPS細胞を含む再生医学は未来の医学だ。これまで考えられなかったことが可能となる。まさにSF世界で描かれてきた世界が現実となる日が近づいているわけだ。もちろん、そこまでいくためには多くの実験と安全の確認などの課題をクリアしなければならない。再生医学の発展に尽力を投入されている医学関係者、研究者の方々の健闘を心より祈りたいものだ。
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