ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

もっとリンゴを食べて

 ロシアのプーチン大統領は今月6日、欧米諸国の対ロシア制裁に対抗し、5か国・地域の農産物などを1年間禁輸する大統領令を公布したが、ロシアに農産物を輸出している欧州の農業国の生産業者から 欧州連合(EU)の本部ブリュッセルに対し、「制裁による損害を補填してほしい」という声が高まってきている。

 当方が住むオーストリアでも農産物生産業者から次第に深刻な声が聞かれだした。オーストリアの対ロシア輸出総額は約2億4000万ユーロだが そのうち農産物関係の対ロシア輸出額総額は約1億ユーロだ。だから制裁で失う約1億ユーロをどのようにカバーするかが 同国のアンドレ・ルップレヒター農業相の急務の課題となっている。
 同相は18日「国民が1週間に1個多くリンゴを食べてくれれば問題は解決する」と国民に訴えた。農業相の奇抜なアイデアに対して同国日刊紙プレッセは“消費愛国主義”と呼んでいる。

 ちなみに、EU28か国のリンゴ総収穫量は約1200万トンと推定されている。特に今年は よく雨が降ったこともあって収穫高は増加した。例えばオーストリアでは今年21万7000トンの収穫があった。これは2013年に比べて20パーセントの急増だ。

 食物繊維やビタミンC、ミネラルが豊富なリンゴは健康に良く リンゴを欠かさず毎日食べることは国民にとってもいいことだが 今まで1日2個リンゴを食べていた国民が3個食べたところで対ロシア制裁の補填が本当に可能だろうか。農業相は、職員食堂を抱える大企業や 大学の食堂などの関係者にリンゴを大量に使ってほしいと懸命にアピールする一方、将来の農産物の輸出先として中国、中東諸国、北アフリカ諸国への市場開発に乗り出している。

 モスクワ発のニュースによると、ロシアでは欧米からの肉類、農産物が来ないため 農産物不足と価格の急騰が出てきているという。いずれにしても、農産物の制裁は 輸出国と消費国双方の国民の腹具合に変調をもたらし、懐を一層痛めるものだ。制裁が科せられる契機となった問題の早期解決が願われる。

バチカンが「武力行使」を容認

 独福音主義教会(EKD)元議長のマルゴット・ケスマン女史は同国週刊誌シュピーゲル(8月11日号)とのインタビューの中で、「武力で紛争を解決することには賛成できない」と主張し、「正義の戦争は存在しない」という従来の持論を展開させている。それに対し、世界に12億人の信者を有する世界最大キリスト教会、ローマ・カトリック教会のフランシスコ法王は18日、訪韓からローマに向かう機内で、「少数宗派を抹殺するイスラム教スン二派過激テロ組織『イスラム国』(IS)に対する国際社会の戦闘は合法的だ」と表明して話題を呼んでいる。バチカン法王庁(ローマ・カトリック教会総本山)は過去、いかなる紛争も対話で解決すべきだという平和路線をとってきた。その意味で、フランシスコ法王の武力行使容認論は非常に画期的だ。

 バチカンは平和路線から決別したのだろうか。それともISへの戦闘容認はあくまでも例外的対応に過ぎないのか。ISがシリア、イラク国内の少数宗派のキリスト教徒やクルド系民族宗教の信者たちを迫害し、虐殺を繰り返していることに、バチカンはこれまで強く批判してきたが、ここにきて「イラク軍・米軍の軍事攻勢」を「ISを阻止する手段として合法的だ」と表明したわけだ。それに先立ち、スンニ派指導者はISの蛮行に明確に距離を置くことを表明している。

 ところで、「正しい戦争」は存在するのだろうか。もし存在するとすれば、誰が「その戦争は正しい」と認知できるのだろうか、といった問題が出てくる。一神教のユダヤ教、イスラム教、キリスト教の歴史では武力行使や戦争は珍しくない。旧約聖書を読めば、神は選民が異教徒を滅ぼすことを求め、攻撃を躊躇すれば、処罰すら下している。旧約時代、神には「正しい戦争」があったわけだ。それは、神側の民族が常に正しく、それに対抗する勢力や民族は敵とみなされ、その敵を下すことが正しいというはっきりととした判断基準があったからだ。

 しかし新約時代を経た今日、いかなる戦争も回避すべきだ、といった風潮が強くなってきた。特に、第1次、第2次の大戦で多くの犠牲を出した世界は平和志向となり、帝国拡大主義、植民地政策は否定され、大国も小国も同じ権利を有するという世界観が広がってきた。特に、第2次世界大戦で敗北を喫した日本は戦後、平和憲法を盾に平和主義の道を走ってきた。ゆえに武力行使を伴う国際危機に対してどのように関与すべきかでいつも議論を呼んできた。

 そこにISが登場してきた。異教者の首をはね、その流血のシーンを世界に流すISの蛮行に対し、世界はショックを受け、初めて「武力でISを阻止すべきだ」という声が高まってきたのだ。これまでなかった現象だ。
 国際紛争の解決を目指すべき国連安保常任理事会は過去、ロシア・中国に対し米英仏の3国が対立する構造を抜け出すことができない状況が続いてきた。だから、国際社会が全員一致で紛争の対応にあたるということは少なかった。それがISに対しては、国際社会は一致してきているのだ。ISは世界を敵に回しているわけだ。もちろん、ISの背後には資金と武器を供給する勢力や一部の国が暗躍しているが、彼らも世界に向かって「ISを支持する」と堂々と宣言はできない状況下にある。

 フランシスコ法王の「ISに対する国際社会の戦いは合法的だ」という見解は、スンニ派指導者の「ISの蛮行は容認できない」という表明とともに、勇気ある発言として評価される。

法王の訪韓はアジア重視の始まり」

 ローマ・カトリック教会最高指導者ローマ法王フランシスコは18日午前、訪韓最後の日程、ソウルの明洞聖堂で約1000人のゲストを迎え記念ミサを挙行した後、4日半の訪韓全日程を終え、ローマへ帰国の途に就いた。バチカン放送独語電子版からフランシスコ法王の最初のアジア訪問時のハイライトをまとめてみた。

 ローマ法王は16日、ソウルの光化門広場で韓国教会の殉教者124人の列福式を行った。17日には、「第6回アジア青年大会」に参加し、アジア22か国から集まった約6000人の若者たちを前に「未来は君たちのものだ。イエスの復音を宣べ伝えよ」と激励した。
 バチカン関係者は法王の訪韓の意義について、「政治的な性格はなく、宗教的な観点から評価すべきだ」と強調している。フランシスコ法王は16日のアジア司教団との会談では、対話の重要性を強調し、バチカンが外交関係を有していない中国、ベトナム、北朝鮮との関係改善に意欲を示した。フランシスコ法王の訪韓では北朝鮮の教会聖職者も招待されたが、北側当局が参加を拒否した経緯がある。中国側も一部、代表の参加が北京当局によって拒否されている。

 フランシスコ法王の訪韓のハイライトは最終日のミサだろう。法王は韓国国民に向かって、「和解」をキーワードとした説教をしている。法王は「和解は先ず、自らその過ちを認めることから始まる」と強調し「猜疑、対立、競争心といったメンタリティを捨て、福音と韓国民族の高貴な伝統からなる文化を生み出すべきだ」と主張している。そして、「和解、統合、平和は神の恵みだ。それらは心の生まれ変わりを求めている」と語っている。法王が強調する「和解」は南北間の統合問題と関連するというより、貧富の格差、世俗化した消費文化が席巻する韓国社会の再生を促したものと受け取られている。

 明洞聖堂のミサには韓国政府女性家族省が招待した元慰安婦関係者が最前列に座っていた。バチカン放送独語電子版によると、フランシスコ法王は彼らに近づき、その手を握ったという。それに対し、元慰安婦は蝶形のバッチを法王に渡した。バチカン放送を読む限りでは、法王は元慰安婦に何も話しかけてはいない。ただし、同放送は慰安婦問題について「日本の植民地化時代に売春を強いられた元慰安婦たちは日本側に謝罪を要求している」と説明をつけ加えている。また、フランシスコ法王は17日朝、今年4月に発生した旅客船「セウォル号」沈没事故で息子を失った父親(56)の洗礼願いを受けいれ、ソウルのバチカン大使館内で父親に洗礼を施している。

 バチカン放送は「訪韓はフランシスコ法王にとって最初のアジア司牧だったが、来年1月には法王はフィリピンとスリランカを訪問する予定だ」と報じ、訪韓がフランシスコ法王のアジア重視路線の幕開けを告げるものだとその意義を述べている。

「人生は美しい」

 独週刊誌シュピーゲル(8月11日号)によると、ドイツで2012年、精神的心理的な病のため仕事を休んだ国民の欠勤総日数は6150万日だった。2001年はその数は3360万日だったから、11年間でほぼ倍加したことになる。急増の原因として、職場のデジタル化、競争激化が挙げられていた。

 当方が住むオーストリアでも精神的病、特にうつ病にかかる国民が急増、国民病といわれる。近い将来、うつ病にかかる国民は80万人になると予想されているというから大変だ。人口850万人のオーストリアで将来、10人に1人がうつ病に悩まされるという計算になるからだ。心理的・精神的病になる国民が急増すれば、国の健康保険予算への圧迫が高まり、国の健康管理体制を崩壊させる危険も出てくるといわれているほどだ。

 ハンガリー系カナダ人の生理学者ハンス・セリエが1936年 「ストレス学説」を発表し、心理的、精神的ストレスが様々な病気を誘発することを明らかにした。ストレスは昔、マネージャー病といわれ、管理職の人間にみられるものだったが、社会がグロ−バル化され民主化されるにつれ、ストレスも民主化され、上層部から底辺の人間にまでストレスによる病が拡大してきている。


 最近、亡くなった米俳優のロビン・ウイリアムさんが久しくうつ病に悩まされていたという。独連邦サッカーリーグの監督が突然、バーンアウトに陥り、前線から撤退する一方、ゴールキーパーが自殺したこともあった。当方の身近にもうつに悩まされている知人がいる。一見しただけでは普通にみえるから、外部の人間には深刻なうつ状態にあるとは分からない。

 ところで、人はなぜ、うつに陥るのだろうか。うつの発病には遺伝的な気質、環境的、経済的また健康的な理由までさまざまな要因が考えられる。当方はうつの人に限りなく同情する。ひそかに鞄から薬を取り出して飲んでいた友人もいた。彼には環境のストレスとその本人の気質もあったのだろう。
 人間は生まれた後、死に向かって歩みだす。ある人は速いスピードで、ある人はゆっくりと歩んでいく。釈尊は、人間の人生は4つの苦(生、老、病、死)に取り巻かれていると説明している。人生にはどうしても苦が付きまとう。

 イタリア映画で第71回アカデミー賞を受賞した「人生は美しい」(監督・主演 ロベルト・ベニーニ)を観られた読者も多いだろう。当方も感動して観た一人だ。ナチス・ドイツ軍の強制収容所で死を待つユダヤ人たちの姿を描いた映画だ。死ぬまで過酷な強制労働の日々を生きるユダヤ人収容者の中でも、息子のために苦しさを明るさに変えて励ましていく父親の姿を描くことで監督は「人生は本来美しいものだ」という結論を引き出している。どのような環境下にあっても、自身の人生に意義がある、という確信を捨てず歩む人間の姿は美しく、感動を与えるものだ。

 ストレスの克服やうつへの医療的治療などは専門家のアドバイスに耳を傾けていただきたい。かつて「人生は美しい」と感じた瞬間や体験があったならば、それらの記憶を大切にして生きてほしいのだ。

入院生活の情景

 久しぶりに先月、病院に入院(眼科病棟)した。入院生活は決して楽しいものではないが、取り立てて大変ということはない。簡単に言えば、忍耐の日々だ。限られた空間で行動も束縛される一方、病の進展が気になるから、心は穏やかではない。

 さて当方は夕食が午後5時前後と極端に早いことが困った。夕食後の夜の時間が長すぎる。16年前の入院生活(泌尿器科病棟)は少々長かったが、その食事メニューは今回より豊かだった記憶がある。朝食7時、昼食12時、夕食が5時前後だ。昼食が1日のメインだ。今回の入院生活の昼食メニューを紹介すると、ウイーナーシュニッツエルとジャガイモ、それにプリン。別の日はフィアカー・グラーシュにスープ、それに1本バナナがついていた。昼食はまあまあだが、朝と夕はセメル2個にバターとジャムだけだ。前の入院では、朝食にヨーグルトがついていたが、今回ヨーグルトの姿を見なかったところをみると、病院側も節約路線を強いられているようだ。

 部屋は16年前と同様、4人部屋だった。当時の病棟ではがん患者が多かったので、回復の見通しのない患者と快方に向かっている患者では明暗がはっきりしていた。今回は眼科病棟だったので、がん患者のような深刻な雰囲気はなかったが、網膜剥離で失明する恐れもあることから、患者の心理は複雑だ。がん病棟と眼科病棟の両方を体験した当方にとってはがんも大変だが、目がやられると全てのオリエンテーションがなくなるから、これまた大変だ。普段の生活に支障が出てくる。

 当方ががん病棟にいたとき、ベットから離れたくないので看護人に「食事をベットまで持ってきてほしい」と頼んでみたが、「ベットから立ち上がって自分の足で食事を運びなさい」と厳しく注意されたことを覚えている。手術直後の患者をできる限り、動かすことで早く床離れさせるためだ。一方、眼科病棟では看護人が食事を必ず運んでくれる。体力があっても目が不自由だからだ。当方の場合、手術で右目にガスを注入していた。だから、視界が見えない。肝心の左目も視界が良くないので、歩行もままならない状況だった。

 入院生活で忘れることができない思い出は、16年前の手術後のこと。集中治療室に運ばれたが前日から何も食べていなかったので、根が食いしん坊の当方は夜中、空腹に悩まされた。すると、担当看護婦が「特別よ」といって一口サンドイッチを運んでくれたのだ。思いがけない差し入れの美味しかったこと、その看護婦が天使のように見えたものだ。

 病気になると、患者は「ダンケ、ダンケシェーン」(ありがとう)という機会が増える。医者や看護婦に助けてもらう度に「ダンケ」が出る。患者は彼らの助けなくしては生きていけないから頼ることしかできない。病気になって初めて他人の親切が身に染みて有難く感じられる。病気は人を謙虚にするものだ。それが病を体験することの効用かもしれない。

中東の少数宗派をテロから守れ

 当方は先月の末このテーマでコラムを書く予定だったが、突然の入院のため、まとめることができなかった。気になっていた。中東の少数宗派の状況は ここにきて一層悪化してきているのだ。

 シリア、イラクに侵攻し、イラク北西部で進撃を続けるイスラム教スンニ派過激テロ組織「イスラム国」(IS)はイラク国内の少数宗派のキリスト信者やクルド系民族宗教ヤズィーディー教信者たちを迫害し、虐殺を繰り返している。中東の少数宗派は その存続の危機に直面している。
 イラクでは2003年のイラク戦争前までは約100万人いたキリスト信者は現在、「まったく存在しなくなった」といわれるほどだ。イラクのキリスト教の拠点だった同国北部のモスル市では、「キリスト信者は50家庭が残っているだけだ」(バチカン放送)という。大多数の信者たちはISが侵攻する前に逃げたが、IS側のテロの犠牲となったと見られている。

 バチカン放送によると、ISはモスル市に侵攻すると、異教徒のキリスト信者たちに「イスラム教に改宗するか、人頭税を払え。1人当たり250ドルで夫婦で500ドル」と要求。同時に、同市の司教邸などキリスト教関連施設を破壊した。また、キリスト信者の家には「この住民は異教徒だ」という意味の印を住居前に表示して回ったという証言もある。

 ローマ法王フランシスコは先月の一般謁見後の説教の中で、「中東の教会は世界のキリスト教の発展に大きな貢献をしてきたが、現在、イラク教会の兄弟姉妹は迫害され、虐殺されている」と指摘、国際社会に少数宗派の権利の保護のため行動をおこすよう訴えた。バチカン関係者によると、「イラクで進行中のキリスト信者への迫害は2000年のキリスト教史の中でも最悪の状況だ」という。

 イラク北部にはまた、クルド系民族宗教ヤズィーディー教を信じる住民が住んでいいるが、彼らもISの迫害を受けている。同宗は紀元前2000年にでき、西暦後、キリスト教とイスラム教の影響を受けながら発展してきた。一神教であり、特に天使を崇拝する。その7天使の中でも孔雀の天使を崇拝する。孔雀はイスラム教の聖典コーランでは「堕落した天使」を意味することから、イスラム教徒からは「悪魔を崇拝する異教徒」としてこれまでも蔑視されてきた歴史がある。
 世界に60万人から75万人の信者がいるものと推定されている。当方が住むオーストリアにも約700人の信者が住んでいるが、その一人は同国日刊紙プレッセとの会見(14日付)の中で「これまでわが宗教の迫害に全く関心がなかった国際社会もISの進撃を受けて、関心をはらうようになってきた」と説明する一方、「多くの信者がISの迫害を受けて行方が分からなくなっている」という。オバマ米政権がISの空爆を実施することを決定した直接の契機は、イラク北西部でISの迫害を受け、山に逃げたヤズィーディー教信者を守る狙いがあったという。

 少数宗派の危機はイラクだけではない。シリア、エジプトなどイスラム教国でもみられる。ISの非情な迫害に直面し、国際社会は中東の少数宗派の現状にようやく気がつき始めたわけだ。ISの暴虐に対し、イスラムのスンニ派からも「彼らはテロ組織であって、イスラム教とは全く関係ない」という声が高まってきている。

「イスラム国」の快進撃の理由

 シリア、イラク北部に侵攻し、キリスト教徒やクルド系民族民族宗教ヤズィーディ信者など少数派民族を虐待するなどの暴挙を繰り返しているイスラム教スンニ派過激派テロ組織「イスラム国」(IS)はシャリアを標榜するイスラム国家建設を宣言し、イラク北西部で快進撃を続けている。西側メディアによれば、ISの兵力は推定1万5000人から2万人とみられているが、イラク国軍やクルド自治軍も苦戦を余儀なくされている。オバマ米政権は少数民族の保護を理由にISへの空爆を繰り返しているが、「ISの軍侵攻を阻止できたかは分からない」(ワシントン大統領府報道官))と受け取られている。

 なぜ、ISは強いのか。オーストリア日刊紙プレッセは13日、「ISの快進撃の理由」というタイトルの記事を掲載し、ISの強さの理由を3点挙げている。以下、紹介する。

  。稗咾論衫里靴臣楼茲両数派民族やシーア系住民の首をはね、そのシーンをビデオに撮って世界に流している。そのため、イラク国民もISがいかに残虐か知り、恐怖を感じている。だから、「ISが侵攻してきた」と聞けば、住民は真っ先に逃げ出していく。ISがイラクの大都市モスルを進攻した時、イラク軍人はISと戦うのではなく、軍服を私服に着かえ、武器を置いて逃げ出したという。それほど、ISはイラク国民ばかりか、国軍内でも怖れられている。すなわち、残虐なシーンを公開することで敵陣の戦闘意欲を喪失させる心理作戦が成功しているわけだ。

 ◆。稗咾魯轡螢△任魯▲汽廟権の軍から武器を奪い、イラクのモスル市ではイラク国軍が放置した最新米国製武器を大量に手に入れた。西側メディアの推定では、約150億ユーロ推定の米国製武器がISの手に落ちたといわれている。イラク北部のクルド人勢力はISに対抗したが、勇敢な兵士を多く抱えているクルド人勢力もISの米国製武器の前では敗走を余儀なくされている。

  ISには戦争経験の豊富なベテラン兵士が多い。アフガニスタン戦争を体験し、チェチェン紛争でロシア軍と戦った兵士がISに加わっている。彼らは戦略に長けている。同時に、自爆テロを決して躊躇しない。彼らは死んだら天国に行けると固く信じているからだ。

 すなわち、イラクは今日、米国製の最新武器で武装し、戦闘意欲が高く、心理作戦、戦略にも長けているイスラム過激テロ部隊と対峙しているわけだ。

 イラクの首都バクダッドではシーア派マリキ政権が政権維持に腐心し、政権争いを行ってきた。アバディ国民議会第1副議長を首相とする民族統合政権がようやく発足する見通しとなったばかりだ。その間にISはその強さを如何なく発揮し、占領地を拡大させてきているのだ。

 イラクでは民族統合政権が発足できたとしても、ISの軍事侵攻を自力で阻止できるか不明だ。原油産出国のイラクが過激派テロ組織のISに完全に掌握されるといったシナリオも排除できない。欧州連合(EU)は15日、臨時外相理事会を開催し、ISと戦闘を繰り返すクルド人勢力への武器供給問題などを話し合う予定だ。ISが快進撃を続けるようだと米軍の再投入も考えられる。イラク情勢には早急な対応が願われている。

ローマ法王の訪韓に期待すること

 ローマ、カトリック教会の最高指導者ローマ法王フランシスコは14日、就任3回目の海外の訪問先、韓国を訪問する。5日間の日程の同訪問では、大田や忠清南道一帯で開かれる「第6回アジア青年大会」に参加するほか、韓国教会の殉教者124人の列福式など行なう。法王の訪韓は、1984年と1989年のヨハネ・パウロ2世以来で、3回目だ。

 今年に入って、旅客船「セウォル号」沈没事故で300人余りの死傷者が出るなど、韓国社会は厳しい内外の問題に直面している。それだけに多くの国民はローマ法王の訪韓に精神的癒しを期待している。当方もその一人だ。韓国に今必要なことは、経済的繁栄以上に国民の間の絆を強くする精神的覚醒だからだ。
 韓国は終戦後、日本と同じように経済的復興に邁進してきた。先行する日本を追い付き追い越せ、といった一念で韓国民は頑張ってきた。サムスンや現代自動車など一部の韓国企業は今や世界的企業へと発展してきた。その一方、韓国は現在、一握りの勝利者と大多数の敗北者を生み出す激しい競争社会になっている。

 以下、韓国聯合ニュースの記事(2014年3月6日)を紹介する。

「韓国の自殺死亡率が20年間で3倍以上に拡大したことが6日、統計庁の調べで分かった。死亡原因統計によると、2012年の人口10万人当たりの自殺者(自殺死亡率)は28.1人だった。経済協力開発機構(OECD)の基準で算定すると、2012年の韓国の自殺死亡率は29.1人でOECD加盟国のうち最も高い。加盟国平均(12.5人)の2.3倍にあたる。警察庁が同年に自殺死亡者の遺書や周りの話を基に分析した結果、経済的な苦しみから命を絶った人が約2割だった。専門家の間では、社会的なセーフティーネットが十分でなく、生活苦にあえぐ社会的弱者層が放置されているとの指摘もある」

 上記の記事を読んでも分かるように、韓国社会は病んでいる。当方がローマ法王に期待するところは、共生、共栄、共義主義の社会建設へのアドバイスだ。韓国がアジアの真の指導的国家になっていくためにも、韓国国民はもう一度生まれ変わらなければならない。ローマ法王の訪韓で杞憂する点は、朴政権が日本の歴史問題に関して、ローマ法王から何らかの言質を取ろうとする試みだ。ローマ法王の訪韓を自国の政治目的に利用してはならない。

 フランシスコ法王は4月、韓国の珍島沖で起きた旅客船「セウォル号」沈没事故について、「韓国民すべてに深い哀悼を表す。若者に会いに行く訪韓を控え、多くの若い生命の犠牲を非常に残念に 思う。韓国民がこの事故をきっかけに倫理的・霊的に生まれ変わることを望む」と強調している(「ローマ法王の『韓国国民への伝言』2014年4月29日参考)。ローマ法王の訪韓が実りあるものとなることを期待する。

許せ、愛せ、団結せよ

 ウォーターゲート事件により、当時のニクソン大統領が辞任してから、今年8月で40年を迎えた。当時のニクソン政権が民主党本部を盗聴していたことが発覚して、ニクソン大統領自身が退陣に追い込まれた事件だ。米国内ではニクソン大統領の即退陣を要求する声が吹き荒れていた。ニクソン大統領自身は最後まで拒否していたが 家族の説得を受けて辞任を決意した。 

 当時ニクソン大統領を擁護した宗教指導者がいた。米国内で宣教活動をしていた世界基督教統一神霊協会(通称統一教会)の創設者、文鮮明師だ。文師はニクソン大統領退陣を要求する米国民に対し「許せ、愛せ、団結せよ」と呼びかけた。四面楚歌の状態にあったニクソン大統領は同師の支援に感動し、ホワイトハウスに招いたほどだ。文師は、勢力を拡大する共産主義の脅威から米国を守るためには反共政治家、ニクソン氏が必要だと考えていたといわれる。

 当方は 文師の「許せ、愛せ、団結せよ」のメッセージを初めて聞いた時、大きな感動を覚えた。当時、ニクソン大統領を支援することは 米国民全体を敵に回すといった雰囲気が強かった。にもかかわらず文師はニクソン氏の支援を表明したのだ。

 
 
 当方はローマ・カトリック教会バチカン法王庁の超教派担当の司教と会見したことがある。同司教は「文師が世界基督教統一神霊協会という看板から基督教という名称を除くならば バチカンは文師と対話する用意がある」と答えている。文師はそれに対して「私の教えはキリスト教神学を土台として展開されているので、呼称から基督教を省くことができない」と説明している。文師は反対や批判を恐れない。同師の言動を見ていると、イエスの「私は平和をもたらすためにきたのではなく、剣を投げ込むために来たのである」(マタイ福音書10章)といった言葉を思い出す。それゆえに、文師もイエスと同様、生前多くの中傷と誹謗を受けざるを得なかったのだろう。
 

 ソウルからの報道によれば、12日、文鮮明師の死後(教会用語で聖和式)2周年の追悼集会が行われた。その集会のタイトルの一つに「許せ、愛せ、団結せよ」というメッセージが掲げられていたという。それを聞いて当方は昔感じた感動を思い出した。文師のこのメッセージには、イスラエル・パレスチナ紛争、ウクライナ内戦、南北統一問題ばかりか 日中、日韓の歴史問題をも解く普遍的な真理が含まれていると信じる。
 40年前の「許せ、愛せ、団結せよ」の文師のメッセージが私たちの前に再び蘇ってきたことを歓迎する。

「妬む神」を拝する唯一神教の問題点

 オバマ米政権は8日、イラクで勢力を拡大するイスラム教スンニ派の過激派組織「イスラム国」(IS)に対して空爆を実施した。ISは先月、イスラム国の建設(シャリア)を宣言し、イラクでその勢力を拡大している。一方、ナイジェリアではテロ組織「ボコ・ハラム」(西洋の教育は罪)は少数宗派への虐殺を繰り返している。ISもボコ・ハラムも異教徒に対しての残虐行為を躊躇しない。拘束した異教徒の首を跳ねるシーンをビデオに撮って世界に流しているほどだ。その非情な言動に対して、西欧諸国はショックを隠せない。21世紀の現代に突然、数世紀前の暴徒が飛び出してきた、といった驚きだ。

 神学者ヤン・アスマン教授は、「「唯一の神への信仰( Monotheismus) には潜在的な暴力性が内包されている。絶対的な唯一の神を信じる者は他の唯一神教を信じる者を容認できない。そこで暴力で打ち負かそうとする」と説明し、実例として「イスラム教過激派テロ」を挙げる。国際テロ組織アルカイダの行動にも唯一神教のイスラム教のもつ潜在的暴力性が反映しているというのだ。同教授は「イスラム教に見られる暴力性はその教えの非政治化が遅れているからだ。他の唯一神教のユダヤ教やキリスト教は久しく非政治化(政治と宗教の分離)を実施してきた」と指摘し、イスラム教の暴力性を排除するためには抜本的な非政治化コンセプトの確立が急務と主張している。

 ISやボコ・ハラムの暴力性をみると、アスマン教授の説の正しさを感じる。イスラム根本テロ組織は剣を振り回しながら、神の敵を処罰しなければならないといった使命感で暴走する。それに対し、同じアブラハムを信仰の祖と仰ぐユダヤ教とキリスト教にはその暴力性が見られないという。アスマン教授は「ユダヤ教やキリスト教は唯一神教の政治的な要素を排除するプロセスを既に経過してきた。ユダヤ教の場合、メシア主義(Messianismus)だ。救い主の降臨への期待だ。キリスト教の場合、地上天国と天上天国の相違を強調することで、教えの中に内包する暴力性を排除してきた」と説明する。

 ところで、非政治化がなされたというユダヤ教にその潜在的暴力性が見られ出してきた。エルサレムのヘブライ大学のエバ・イルス教授(社会学者)は独週刊誌シュピーゲルとのインタビューの中で、「イスラエル社会では今日、ユダヤ教の伝統的価値観が尊ばれてきた。イスラエルは自国の安全を最優先し、パレスチナ民族の痛みや苦悩に対して不感症となってきている。イスラエルの各家庭はほぼ一人の軍人を抱えている。イスラエル社会は非常に軍事的となってきた」と分析する。旧約聖書を読むと、ユダヤ民族の神は「妬む神」(出エジプト記20章)という。ユダヤ民族は過去、その神の願いに従って異教徒を打ち負かしてきた歴史を持っている。ちなみに、唯一神教の中でも、ユダヤ教だけは「宣教」をしない。なぜならば、彼らは神の選民だという意識があるからだ。

 一方、キリスト教は中世時代、十字軍の遠征などを見てもわかるように、その暴力性を如何なく発揮してきたが、啓蒙思想などを体験し、暴力性を削除、政治と宗教の分割を実施してきた。しかし、キリスト教、特に世界に約12億人の信者を有するローマ・カトリック教会には、「イエスの教えを継承する唯一、普遍的なキリスト教会」という「教会論」が依然、強い。俗に言うと、「真理を独占している」という宣言だ。元ローマ法王ヨハネ・パウロ2世が公表した「ドミヌス・イエズス」(2000年)の中にも記述されている。宗教の歴史は絶対的真理と他の絶対的真理との戦いだった。教義的には、カトリック教会は依然、真理を独占していると豪語し、異教徒に対して優位感を感じている。すなわち、カトリック教は教義的には依然、潜在的な暴力性を有しているといえるわけだ。そのカトリック教会はここにきて福音の再宣布を表明し、再び宣教に乗り出す気配を示してきている。北上するイスラム教の脅威を感じ出しているからだ。宣教に乗り出したキリスト教がイスラム教と正面衝突する危険性も排除できなくなってきた。

 いずれにしても、アブラハムから派生したユダヤ教、キリスト教、そしてイスラム教の3大唯一神教には教義的にも潜在的な暴力性がみられることは否定できないだろう。われわれは「妬む神」から脱し、「愛の神」を至急発見しなければならない。
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