ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

「死刑」と共に「終身刑」も廃止?

 バチカン放送独語電子版をみていると、興味深い記事に出会った。ローマ法王フランシスコが23日、バチカンで国際刑事裁判官協会の使節団の表敬訪問を受けたが、その際、法王は「死刑を完全に廃止するだけではない。終身刑も廃止すべきだ。終身刑は死刑の変形に過ぎなく、非人道的だ」と語ったという。

 バチカンは熱心な死刑廃止論者であることはよく知られているが、フランシスコ法王はそれだけで満足せず、終身刑の廃止まで要求したのだ。そのうえ、法王は未決の拘留にも異議を唱えているのだ。

 要するに、フランシスコ法王は死刑、終身刑の廃止を要求し、未決拘留の慎重な適応を求めているわけだ。ローマ法王に就任して以来、何度か刑務所を訪問するなど、南米出身の法王は“囚人の人権”に非常に熱心だ。

 なぜだろうか。ローマ法王は売春婦や囚人を愛したイエスの歩みを慕っているからだろう。イエスは「私は罪びとを救うために来た。健康な人ではなく、病に苦しむ人のためにきた」と述べている。「医者と患者」論だ。
 同じように、フランシスコ法王は囚人の救済に心が行く。その前提は「人は変わる」ということだ。悪いことを繰り返す重犯罪人もいつか悔い改めてよき人間に変わることができるという確信があるからだろう。

 繰り返すが、それでは人は変わるだろうか。DNA、遺伝子によって、人の生涯の輪郭は決定されているといった現代版「完全予定説」が勢いをもっている時代だ。
 フランシスコ法王は人は神に出合えば変わると信じている。実際、悪人が善人に生まれ変わった例は無数ある。フランシスコ法王の名前、アシッジの聖フランチェスコも神に出会う前までは放蕩を繰り返し、好き放題の人生を送っていた青年だった。それが“貧者の聖人”と呼ばれるほどに変わっていった話は有名だ。


 一方、死刑廃止反対者は「死刑制度は犯罪防止の効果がある」と主張し、犯罪防止に貢献するという。「神がいなければ全てが許される」と豪語したイワンの台詞(ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」)に倣い、「死刑がなければ、世界の至る所で犯罪が発生する」と脅迫する。換言すれば、死刑制度が神の代役を果たしているというわけだ。


 だから、死刑廃止論者はその主張に説得力を与えるために早急に神の存在を証明しなければならない。証明できれば、死刑制度を廃止できるからだ。しかし、死刑、終身刑の廃止を主張するフランシスコ法王の足元の教会で聖職者の未成年者への性的虐待事件が多発している。神の名で多くの犯罪が行われている。ローマ法王の死刑・終身刑廃止論は残念ながら空論と揶揄されても仕方がない。

 フランシスコ法王は「われわれは全て罪びとだ。他者を審判する資格を有している人間はいない」と主張し、罪びとが他の罪びとを殺す死刑制度に反対する。しかし、神を失ってしまった現代社会で神の代行(審判)を果たしてきた死刑制度が廃止されればどうなるだろうか。神が再発見されるまで、死刑制度は必要悪として容認せざるを得ない。

寛容と慈愛が招いた教会の“戸惑い”

 世界に12億人以上の信者を有するローマ・カトリック教会は5日から19日、特別世界司教会議(シノドス)を開催し、「福音宣教からみた家庭司牧の挑戦」という標題を掲げ、家庭問題について集中的協議を行い、最終報告書を賛成多数の支持を得て採択した。同報告書は来年10月開催予定の通常シノドスの協議のたたき台となる。

 世界から191カ国の司教会議議長、専門家たちが2週間、「オープンな雰囲気で話し合われた」テーマは離婚、再婚者への聖体拝領問題、同性婚、純潔、避妊などだ。特に、離婚・再婚者の聖体拝領問題と同性婚に対する教会の姿勢については、高位聖職者の間で最後まで意見が分かれたという。

 離婚・再婚者への聖体拝領を認めるかどうかは、来年10月まで協議を重ねていくことになった。継続審議だ。同性愛者問題は、中間報告書の段階では「兄弟姉妹として同性愛者を迎える」という声が強かったが、最終報告書ではそれらのパラグラフは見つからなかった。そのため、欧米メディアは「保守派勢力が巻き返しを図った結果」と分析し、フランシスコ法王が進める教会刷新は後退を余儀なくされたと解説する記事が多く見られた。

 シノドスの報告書のまとめ役だった3人の枢機卿は18日、記者会見を開き、そこで最終報告書の概要を説明した。枢機卿たちは、「教会は全ての人々に開かれた家だ。キリスト者たちは自分の教会が常に開かれて、誰をも排除しない家であることを願っている」と述べ、同性愛者に対しても、「教会は彼らを歓迎する」と答えている。ここで注意しなければならない点は「歓迎する」とは、同性愛者を容認することを意味しないことだ。真意はその逆だ。

 先ず、教会の教え(ドグマ)を振り返ってみよう。再婚・離婚者の聖体拝領の是非問題について教会の答えは明らかだ。イエスが述べたように、神の名で結びつけられた者を分つことはできない。だから、聖体拝領は神の教えを破った離婚者、再婚者には本来、与えることができないのだ。
 同性愛者の公認問題でも教会の教えは明らかだ。夫婦は男性と女性の間の婚姻を意味する。同性愛者は神の願いに反しているから、夫婦として認めることは出来ない。


 それではなぜ、教会はここにきて教義で明確な問題を議論し、その是非を問いかけるのだろうか。その答えも明確だ。欧米社会では2組に1組の夫婦が離婚し、再婚するケースがほとんどだ。欧米では同性婚者を夫婦として公認する国が増えてきている。われわれが生きている21世紀の社会がそのようになりつつあるからだ。

 教会は久しく、神の世界に閉じこもり、「カイザルのものはカイザルに」と世俗社会とは一定の距離を置いてきた。それが第2バチカン公会議後(1962〜65年)、教会の近代化が促進され、開かれた教会が合言葉となってきた。そして時間の経過とともに、離婚、再婚者の聖体問題が課題となり、同性愛者に対する教会の対応が問われだしてきた。教会が「教えではこうなっている」と主張すれば済んだ時代は過ぎてしまったのだ。

 信者たちの現実と教会の教えの間に乖離が広がり、信者の教会離れが急速に進んできた。そこで教会は現実問題への対応を強いられてきた。教会が選んだ解決策は「寛容と慈愛」という魔法の言葉だ。教会の教えでは絶対に受け入れられない問題についても、「寛容と慈愛」で取り組んでいこうというのだ。換言すれば、教会のポピュラリズムだ。その最先頭で走っているのが南米出身のローマ法王フランシスコだ。法王は「イエスは罪びとをも愛したように、われわれも寛容と慈愛の精神で全ての人々を迎え入れるべきだ」と、新しい宣教時代の到来を告げている。「教会は全ての人々に開かれた家」という先述した枢機卿の言葉は法王の意向を反映させているわけだ。

 ところで、「開かれたハウス」にはさまざまな人々が入ってくる。離婚者、再婚者、同性愛者の人々も教会の門を叩く。教会側は「寛容」と「慈愛」で彼らを「兄弟姉妹」として迎え入れていこうと努力する。問題は、教会の教えが変わらない限り、同性愛者、離婚者は教会では“2等市民”信者の立場を味わざるを得ないことだ。一方、教会側も新しいゲストを迎え入れ戸惑いを隠せない。すなわち、両者とも幸せな状況とは言い難いわけだ。

 教会の教えだけを絶対と信じることができた社会は消滅し、価値の相対主義が支配する世界が訪れてきた。ドイツの前法王べネディクト16世が恐れ、警告を発してきた世界が現実化してきたわけだ。ちなみに、教義の番人、バチカン教理省長官のゲルハルト・ミュラー枢機卿がシノドスで同性婚の承認や離婚・再婚者の聖体拝領の容認に強く反対したのは偶然ではない。ミュラー枢機卿はべネディクト16世が法王時代、ドイツから招いた聖職者だ。

 フランシスコ法王は昨年11月28日、使徒的勧告「エヴァンジェリ・ガウディウム」(福音の喜び)を発表し、信仰生活の喜びを強調した。同法王は「教会の教えは今日、多くの信者たちにとって現実と生活から遠くかけ離れている。家庭の福音は負担ではなく、喜びの福音でなければならない」と主張している。
 教会の教えが信者たちにとって負担ではなく、喜びとなるために教会はどうしたらいいのか……、フランシスコ法王の悩みはそこにあるわけだが、不思議な点は、教会の教えが信者たちに喜びの福音となれない理由について、法王は何も明らかにしていないことだ。

 いずれにしても、シノドスで展開された議論は、改革派聖職者とそれに抵抗する保守派間の路線の戦いではない。なぜならば、大多数の聖職者は教会の教えを死守する一方、「寛容と慈愛」を取り入れていくべきだと考えているからだ。異なるのは、教会の教えと「寛容と慈愛」間の割合だけだ。ある司教は前者が、別の司教は後者の割合がより多い、といった具合だ。特別、シノドスで見られた司教たちの揺れは、教会の教えを変えず、「寛容と慈愛」を取り入れることが如何に難しい問題かがより一層明らかになったからだろう。

韓国は「言論の自由」を遵守すべし

 ウィーンに本部を持つ国際新聞編集者協会(IPI)の言論自由マネージャー、バーバラ・トリオンフィ女史は22日、当方とのインタビューに応じ、産経新聞前ソウル支局長の在宅起訴問題と朝日新聞の慰安婦報道の誤報について、その見解を明らかにした。

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▲インタビューに応じるIPIのトリオンフィ女史(2014年10月22日、IPI事務所で撮影)

 ソウル中央地検が8日、韓国の朴槿恵大統領に関するコラムをめぐる問題で、産経新聞の加藤達也前ソウル支局長を名誉毀損で在宅起訴したことに対し、同女史は「言論の自由を著しく傷つけている。加藤氏に対し刑罰上の名誉毀損(criminal defamation)を適用することは国際法の基準を逸脱している。政府関係者や公人は批判に対して寛容であるべきだ」と述べ、韓国当局は加藤氏への全ての処罰を即撤回すべきだと要求した。

 イタリア人の同女史は「「『言論と表現の自由』に関する2002年の国連特別審査官の共同宣言、欧州安全保障協力機構(OSCE)や米州機構(OAS)の特別報告書は『刑罰上の名誉毀損』を表現の自由の制限に適応することは正当ではないと明記している。産経新聞の場合、朴大統領が自身の名誉が毀損されたと感じたならば、民事法の名誉毀損(civil defamation)を訴えるべきだ。産経新聞のジャーナリストが起訴された背景には、険悪な日韓関係が多分影響を与えているのかもしれない」と語った。

 一方、朝日新聞の慰安婦問題に関する誤報について、同女史はメディアの「責任問題」に言及し、「メディアが誤報をした場合、2つの対応が不可欠だ。一つは誤報記事に対する正式謝罪だ。2つ目は誤報関連の全記事リストを公開することだ」と指摘した。


 朝日新聞の場合、社長が謝罪を表明し、誤報記事の背景を検証する委員会を設置したが、朝日新聞の慰安婦報道は国内だけではなく、海外のメディアにも大きな影響を与えている。安倍晋三首相は「朝日の慰安婦報道の誤報は日本の名誉を傷つけた」と主張しているほどだ。
 トリオンフィ女史は「国や公共機関はメディアの誤報に対し、賠償請求はできない。国は誤報による被害総額を計算できないからだ。ただし、読者が連帯して朝日の誤報に対し被害賠償を請求することは可能だろう」と説明した。

 
  IPIは1950年10月、創設された機関で、言論の自由を促進し、世界の言論の自由を検証した年次報告を発表している。 120カ国以上が参加している。

モスクワの不動産業者の「宣伝文句」

 “この別荘を購入した人にはヘリコプター1機プレゼント”
 こんな宣伝文句を聞いたことがあるだろうか。モスクワ郊外の不動産の広告だ。けっして子供たちのレゴ遊びではない。

 モスクワ郊外に大きな敷地にある別荘を購入するためにはもちろん巨額の資金がいる。ヘリコプターもその大きさによってコストは違うだろうが、けっして安くないはずだ。その両者がセットとなって今、モスクワで売り出されているというのだ。少なくとも欧州社会では聞いたことがない規模のデカい不動産ビジネスだ。

 ロシア富豪たちの生活は桁が違うとよく言われる。ロシア富豪の生活ぶりはこのコラムでも数回紹介した。ウィーンの日本レストランにロシア富豪の家族が食べに来た時の話だ。その注文する量と食べ方は通常ではない。ロシア人は寿司や刺身が好きだから、大量に注文する。食べ残すほどだ。そしてお勘定の時、大札のチップを気前よく振る舞う。チップで気前のいい米国旅行者もロシア人のチップには勝てない。食べ方は行儀良くはないが、チップはいい、ということでレストラン側もロシア客を大歓迎する。


 冬になればチャーター機でザルツブルクやチロルのスキー場ーに家族で来る。チロルではロシア語ができる人を雇っているホテルもあるほどだ。採算が合うからだ。スキー・シーズンになればモスクワ発のチャーター機でザルツブルクやインスブルックの飛行機場は一杯となる。

 ロシア富豪の一部はウクライナ紛争に関連した欧米諸国の制裁で渡航禁止リストに載っているから、この冬はスキー休暇を見合わせなければならないかもしれないが、大多数の富豪たちは今年もスキーを楽しむだろう。オバマ米大統領がゴルフ狂のように、ロシアの富豪たちはスキーが大好きなのだ。

 ところで、ロシアの富豪たちはどうして西側の人々も羨むほどお金持ちとなったのだろうか。答えは簡単だ。ガス、原油、地下鉱物資源の輸出だ。すなわち、クレムリンの権力者と巧みに手を組んで一山を当てた人々だ。ロシア語で「オリガルヒ」と呼ばれている人々だ。もちろん、全ての富豪たちがそうだとはいえないが、スーパー・リッチと呼ばれる人々は例外なくそのような人物たちだ。

 ハーバード大学の国際政治学者ジョセフ・ナイ教授は、「ロシアは将来、中国にガスや原油を供給するガソリンスタンドの存在に過ぎなくなるだろう」と予想している。ロシアが抜本的な経済改革を実施しない限り、同国は先端技術の生産・開発力を失い、原油とガスの輸出依存の未開発国の地位に留まるというのだ。

 欧米諸国の対ロシア制裁はロシアの国民経済を確実に弱体化させている。ルーブルの下落、外国投資・資本の流出などは既に現実化している。モスクワのスーパーではこれまで西側から輸入してきた農産物や商品が姿を消し、ロシア産の農産物だけとなってきた。富豪者向けのスーパーだけは依然、西側からの輸入農産物が売られている。モスクワの多くの年金者は貧困ライン以下の生活を余儀なくされている。

 ロシアの国民経済は厳しい冬を間近に控えているが、ロシアの富豪たちはどこ吹く風といったように、欧米社会のショーウインドーを覗いては、財布のひもを緩めている。

サウジ主導の宗派間対話は本物か

 ウィーンに事務局を置く国際機関「宗教・文化対話促進の国際センター」(KAICIID)のクラウディア・バンディオン・オルトナー事務次長(オーストリア元司法相)への批判が高まってきた。直接の契機は、オーストリア週刊誌プロフィール最新号とのインタビューの中で、事務次長はサウジの少数派への弾圧、公開死刑、女性の人権蹂躙などに対する批判に対し、反論するどころか、擁護したからだ。

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▲オルトナー事務次長(KAICIIDのHPから)

 サウジアラビアは今年に入り既に60人が毎金曜日に死刑されたが、事務次長は「毎金曜日ではない」と答え、欧州社会の死刑廃止論を完全に無視、女性の権利については、「自分はサウジを訪問したが、女性だからといって差別されたことはなかった」と述べている。オーストリアのメディアばかりか、人権団体から激しいブーイングが飛び出したわけだ。オルトナー事務次長自身は司法相時代、死刑反対論者として知られていた。

 同国際センターは昨年11月26日、サウジのアブドラ国王の提唱に基づき設立された機関で、キリスト教、イスラム教、仏教、ユダヤ教、ヒンズー教の世界5大宗教の代表を中心に、他の宗教、非政府機関代表たちが集まり、相互の理解促進や紛争解決のために話し合う世界的なフォーラムだ。昨年11月の設立祝賀会には日本から立正佼成会の庭野光帖次代会長が出席した。


 サウジ主導の同機関に対しては、設立当初から批判の声が挙がっていた。サウジのイスラム教は戒律の厳しいワッハーブ派だ。実際、米国内多発テロ事件の19人のイスラム過激派テロリストのうち15人がサウジ出身者だった。同国ではまた、少数宗派の権利、女性の人権が蹂躙されていることもあって、人権団体やリベラルなイスラム派グループから「国際センターの創設はサウジのプロパガンダに過ぎない。KAICIIDを閉鎖すべきだ」という声も出ている。

 2年前の設立祝賀会では、サウジのファイサル外相が「さまざまな宗派が結集するセンターは歴史的な役割を果たしていくだろう」と期待を表明。ゲスト参加した国連の潘基文事務総長は「宗教リーダーが紛争解決で重要な役割を担っている」と激励したことはまだ記憶に新しい。

 ちなみに、サウジはここにきてイスラム教スンニ派過激テロ組織「イスラム国」(IS)に対して批判し出したが、シリア内戦では反アサド政権グループで戦っていたISを支援していたことは周知の事実だ。

 いずれにしても、オルトナー事務次長は司法相を務めた人物だ、その事務次長がサウジの反体制派への弾圧、女性の権利蹂躙に対して何も言わないことから、「高給ポストを失いたくないため、サウジ側に媚を売っている」といった批判まで聞かれる有様だ(事務局長はサウジのファイサル前文部次官)。オーストリアのクルツ外相は、メディア、人権団体のKAICIID批判の高まりを懸念し、沈静化に乗り出す構えだ。

 なお、KAICIIDの報道官は当方の電話質問に応え、「事務次長の発言はKAICIIDの公式見解ではない。あくまで個人的見解だ」と説明した。

韓国人とイタリア人は似ているか

 韓国の朴槿恵大統領は14日、アジア欧州会議(ASEM)に出席するためイタリアのミラノに到着後、積極的な首脳会談をこなした。韓国聯合ニュースを読んでいると、面白いことに気が付いた。韓国とASEMのホスト国イタリア両国は地理的には離れているが、国民のメンタリティは似ている点がある、ということだ。
 産経新聞ソウル駐在特別記者兼論説委員の黒田勝弘氏はその著書の中で韓国人とイタリア人の類似性を指摘されていると聞いた。残念ながら、当方はその著書を読んでいないので詳細な点は分からない。そこで偏見と独断を恐れず、当方が感じる、両国民の類似性について書いてみた。

 ミラノから車で1時間ほど行くと、ベルガモに着く。そこに住む友人のカルロ夫妻宅を訪問したことがある。カルロ夫妻は市内を案内してくれたが、数時間のガイド時間で4、5回、レストランや喫茶店に入った。当方がよほど空腹に悩まされていると考えたわけではないだろうが、カルロ夫妻はとにかく食べることに拘る。カルロは当方が洒落た喫茶店を覗いていると「入ってコーヒーでも飲もう」と誘う。昼食を食べて1時間もたっていないのに、「あそこで休憩しよう」といって、レストランを指さす、といった具合だ。カルロの奥さんは海の幸を巧みに利用したパスタを出してくれた。

 韓国人は友人や知人に会えば直ぐに「ご飯を食べたか」と聞くという。「ご飯を食べたか」は韓国では「元気か」と同じ意味合いの挨拶言葉だそうだ。日本人は割り勘するが、韓国人は絶対、割り勘には応じない。食事代は自分が払うと言い張る。韓国人もイタリア人に負けないほど食事に執着心が強い。


 両国の類似性では、_板蹐励が強い、∋匐々イ、などが良く指摘されるが、イタリアの場合、家庭の絆は依然強いが、欧州でも少子化が最も進んでいる国だ。イタリア北部の町では子供の数より犬の数が多いところもある。その意味で、イタリアは変わりつつある。韓国も同じだろう。少子化は次第に社会問題となりつつある。

 イタリアは昔、世界を支配していた大国だった。「世界の道はローマに通じる」といわれた。イタリア経済は現在、厳しい試練を受けているが、欧州連合(EU)の主要経済国だ。一方、韓国は過去、大国の支配を受け続けてきたが、現在はアジアの経済国だ。付け加えると、両国とも南北問題を抱えていることだ。イタリアの場合、豊かな北部と貧しい南部の格差は大きな政治問題だ。韓国の場合、独裁国家・北朝鮮と対峙している。

 朴大統領は17日、イタリアのレンツィ首相と首脳会談を行い、両国関係を「創造経済パートナーシップ」として強化することで合意したという(聯合ニュース)。具体的には、文化、ファッション、デザイン、IT、保健などの分野で経済パートナーシップを築いていくという。

 ところで、イタリアはファッションの国だ。外見に拘る。一方、韓国人も外見に力を入れる。整形王国といわれるほどだ。未成年者の整形手術が増加し、社会問題となってきた、という記事を読んだ。盧武鉉大統領(任期2003〜08年)が二重瞼の手術を受けたと聞いた時、「へェー、韓国では大統領になった人物もその外見に拘るのだな」と驚いたことを思い出す。ちなみに、サムスンや現代自動車は本体の開発以上に、世界的デザイナーを雇って外形で斬新なイメージを創造することに力を入れることで知られている。
 まとめると、両国の歴史や背景は異なるが、食べることに拘り、外見を重視する2点で両国民は確かに似ているわけだ。

 なお、聯合ニュースによると、今年は韓国とイタリアの国交樹立130周年にあたり、両国は政治、経済、文化などさまざまな分野で記念行事を開催中という。

「教会は同性愛者を歓迎する」

 今月5日から開催中のローマ・カトリック教会の特別世界司教会議(シノドス)は18日、参加者の発言などを総括した最終報告書をまとめ、2週間の協議日程を終えた。世界から191カ国の司教会議議長や専門家たちが結集して、家庭に関連した様々なテーマ、離婚、再婚、避妊、純潔、同性婚などについて話し合ってきた。シノドスの最終報告書は議決権を有する174人の参加者のうち158人が支持、賛成多数で承認された。ジャンフランコ・ラバシ枢機卿ら3人の枢機卿が同日、記者会見で明らかにした。

 バチカン放送独語電子版によると、報告書では、シノドス参加者は家庭が現在直面しているさまざまな挑戦を真摯に受け取り、「教会は全ての人々に開かれた家」と明記している。

 「キリスト者たちは自分の教会が常に開かれて、誰をも排除しない家であることを願っている。それゆえに、家庭の問題を共に考え、痛みを共に分かち合う牧会者、信者たち、共同体の人々に感謝する」

 シノドスの焦点の一つであった離婚・再婚者の聖体拝領問題については、「関係者は次期シノドス(来年10月開催予定)まで共同の解決策を見つけていこう」と呼びかけている。同性愛者については、「教会は同性愛者を歓迎する」という。

 ちなみに、シノドス開催中、オーストリアのカトリック教会最高責任者のシェーンボルン枢機卿はイタリア日刊紙コリエーレ・デラ・セラとのインタビューに応じ、同性婚について「自分はウィーの同性婚者を知っている。彼らは重い病気を抱えているが、互いに助け合って生活している。私は彼らに尊敬を払っている」と述べている。同枢機卿の発言は保守派聖職者たちに驚きをもって受け取られたばかりだ。

 参考までに、教会の教理の番人、バチカン教理省長官のゲルハルト・ミュラー枢機卿は「イエスは罪びとをも愛した、その教えは不変であり、慈愛は重要だが、あくまでも真理と一致したものでなければならない」と指摘し、同性婚は神の計画とは一致しないから、容認されることではないという立場を主張している。

 最終報告書を読む限りでは、枢機卿の間で同性愛問題について従来の批判的な姿勢は影を薄めてきたことが分かる。中間報告書の中に記述されていたように、「教会は同性婚者を夫婦と見なすことはできないが、兄弟姉妹として受け入れることは可能」といった立場だろう。離婚・再婚者への聖体拝領問題に対しても同じだ。婚姻は決して解消できないが、離婚・再婚者に対して拒絶するのではなく、慈愛の立場で対応していく、といった流れだろう。

 世界に12億人以上の信者を抱えるローマ・カトリック教会は今日、教え(ドグマ)を懸命に死守する一方、世俗社会からの要請にこれまで以上に柔軟に対応していく方針に軌道修正中、というのが現状だろう。

 特別シノドスの最終文書(Relatio Sinodi)は来年10月の通常シノドスの協議の柱となる。

日本がUNIDOを脱退する日

 ウィーンに本部を置く国連工業開発機関(UNIDO)の様相がさらに悪化してきた。懸念されていたことだが、最大分担金国の日本と自国の事務局長を抱える中国間の日中衝突だ。ウィーンの国連職員の知人から聞いた話を紹介する。

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▲加盟国から事務局長当選の祝辞を受ける李勇氏(2013年6月24日、撮影 )

 「先週、在ウィーン国際機関日本政府代表部の北野充特命全権大使と李勇事務局長が会談したが、そこで北野大使はUNIDOの現状に強く不満を表明し、『UNIDOが本来の使命を履行できないようだと、日本も考えざるを得ない』と述べ、脱退の意思を示唆した」という。

 知人は少し興奮しながら、「日本がUNIDOから脱退の可能性を示唆したのは今回が初めてだ」と繰り返し強調した。事実とすれば、大変だ。
 そこで、「日本はどうして脱退を考え出したのかね」と聞くと、知人は「UNIDOの腐敗体質、履行能力の欠如などのほか、日本側もUNIDO内のポスト配分で不満があるようだね」という。

 加盟国の脱退自体はUNIDOではもはや珍しくない。先進諸国でUNIDOに留まっている国のほうが少数派だ。UNIDOから脱退した国は、カナダ、米国、オーストラリア、ニュージーランド、英国、フランス、オランダ、ポルトガルなどだ。それに脱退予備軍としてスペイン、ギリシャ、イタリア、ベルギーの名前が挙がっている。スペインは今回、日本と同様、脱退の意思をちらつかせている。いずれにしても、日本の脱退は国連関係者にはショックかもしれないが、「日本の脱退は少々遅すぎた」という声が聞かれるのも事実だ。

 ちなみに、日本がUNIDO脱退をこれまで控えてきた背景には、国連機関の脱退は日本の願いである国連安保常任理事国入りの障害となること、開発途上国の反発が予想されたことなどの理由があると考えられる。

 脱退国の増加でUNIDOの予算は縮小され、機関の運営は難しい。経費の88%は人件費と維持費だ。活動に投入できる予算は残りの12%に過ぎない。換言すれば、UNIDOは生き残るために存在し、開発途上国の開発支援という本来の使命は二の次だ(日本はUNIDO最大の分担金負担国で約19%、約1299万ユーロ。UNIDOは日本、ドイツ、中国の3カ国で支えられている)。

 UNIDOの事務局長に中国人の李勇氏が就任して以来、国連外交関係者の間で呟かれてきたことは、UNIDOを舞台にした日本と中国の外交戦だ。中国の反日活動が激化すれば、日本側も分担金の支払遅滞などの外交カードを駆使して中国人事務局長に圧力をかけてくると予想する声も聞かれるほどだ。
 日本が脱退でもすれば、UNIDOの存続は難しくなる。そうなれば、UNIDOはニューヨークの国連開発計画(UNDP)に吸収される可能性が高まる。

 なお、日本のUNIDO脱退の可能性について、在ウィーン国際機関日本政府代表部のUNIDO担当外交官は当方の電話インタビューに応え、「わが国は現在、厳しい財政状況下にある。国際機関の加盟・脱退問題はそのメリット、デメリットを慎重に分析して決定されなければならない」と説明し、UNIDOの今後の運営を注視していく意向を明らかにしている。

北の若き独裁者と「人工衛星」の話

  北朝鮮の朝鮮中央通信は14日、金正恩第1書記が「衛星科学者住宅地区」を現地指導したと報じた。金第1書記の動静としては9月4日以来だ。健康悪化説から死亡説まで流れていた同第1書記は9月中旬にフランスの医師から両足首の関節の手術を受けたという。同氏は杖を引きながら、人民軍の黄炳瑞総政治局長らを同行させて視察した。労働新聞は、上機嫌な正恩氏の写真を大きく掲載した。

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▲宇宙監視中央センター(2013年1月14日、北大使館の写真展示ケースから接写)

 好奇心だけは依然旺盛な当方は「なぜ、衛星科学者住宅地区を視察したのだろうか」と考えた。そこで、北朝鮮と人工衛星打ち上げの歴史を少し振り返ってみた。

 北は1998年8月、最初の試験衛星「光明星1号」を打ち上げ、宇宙軌道に乗せたと主張したが、同衛星から信号がキャッチできないこともあって、国際社会は「北朝鮮初の人工衛星」と認知しなかった。2009年に入り、北は再び人工衛星「光明星2号」の打ち上げに成功したと表明し、宇宙から革命讃歌「金日成将軍の歌」や「金正日将軍の歌」が流れていると述べた。しかし国際機関が北の人工衛星を必死に探したが、見つからなかった。人工衛星から発信される信号をキャッチできない場合、その人工衛星は墜落したか、軌道に乗らなかったことになる。人工衛星が軌道に乗らず、地球上を勝手に周回している、なんてことは通常、考えられない。

 日米韓の3国は当時、「北朝鮮の人工衛星は失敗した」と表明したが、北の「労働新聞」は「光明星2号は軌道を周回中」として「歴史的偉業」と豪語したことはまだ記憶に新しいことだ。
 ただし、北の人工衛星科学者は人工衛星が失敗したことを知っていた。科学者である以上、実証できなければ、成功していないことになることを学んで知っているからだ。そこで科学者たちは昼夜を問わず、人工衛星の打ち上げ成功を夢見て奮闘してきたはずだ。

 そして2012年12月12日、銀河3号で光明星3号2号機が打ち上げられ、衛星軌道への投入に成功し、同国初の人工衛星となった(ただし、人工衛星の運用には失敗)。人工衛星打ち上げ成功は最高指導者に就任したばかりの正恩氏の初の国家的実績と受け取られた。

 平壌郊外に建設された衛星科学者住宅は、人工衛星打ち上げを記念するものであり、衛星科学者を鼓舞し、奨励するために建設されたのだろう。

 40日間余り療養生活を強いられきた正恩氏の再デビューの視察先として、人工衛星科学者住宅地区が選ばれた理由を読者の皆さんはもう理解されたと思う。若き独裁者にとって「人工衛星科学者住宅地区」は最高の“書割”だったからだ。

エボラ出血熱の迅速な診断を

 反原発を主張する人々は原子力発電事故が如何に怖いか、放射線の汚染からテロ襲撃の危険まで挙げて説明する。そして、脱原発、再生可能エネルギーの促進を要求する。それは一つの見解だが、原発開発、それに伴う核関連技術の発展はがん治療など様々な医療分野で人類の福祉に大きな貢献をしてきていることを忘れてはならないだろう(「IAEAのHPが変った」2010年6月19日参考)。

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▲エボラ出血熱対策で貢献するIAEA

 核エネルギーの平和的利用を促進する国際原子力機関(IAEA)がアフリカなど開発途上国に対し、マラリア対策からがん治療までその核エネルギーを利用した医療技術で支援している。天野之弥事務局長は「IAEAの仕事はイラン、北朝鮮などの核保障協定(セーフガード)とその検証問題だけではない、がん対策でも大きな貢献をしている」と指摘し、核エネルギーの平和利用の実態に対する国際社会の認識不足を嘆いている。

 
 IAEAは14日、プレスリリースを発信し、「IAEAが西アフリカのシエラレオネに猛威を振るっているエボラ出血熱(EVD)の迅速な診断を下せる逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)関連技術の利用促進を支援していく」という。
(ウィキぺディアによると、RT−PCRとは、リボ核酸(RNA)を鋳型に逆転写を行い、生成された相補的DNAに対してポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行う方法をいう)

 その直後、世界保健機関(WHO)は14日、西アフリカで猛威を振るっているエボラ出血熱について「感染者の数が今後急増し、1週間あたり1千人から、12月上旬には5000人〜1万人と拡大していく恐れがある」と警告したばかりだ。

 IAEAと国連食糧農業機関(FAO)は連携して核関連技術を利用したRT−PCRの開発に努力してきた。この技術を利用すればエボラ出血熱のウイルスの有無を数時間で診断できるという。従来のやりかたでは診断が下されるまで数日間がかかった。迅速に診断できるようになれば、感染者の生存率を改善し、もちろん犠牲者の増加を防止できる。

 エボラ出血熱が拡大するシエラレオネや西アフリカ諸国の医療関係者は一部RT−PCRを利用しているが、「診断装備や医療器材不足に悩まされ、迅速な診断が難しく、誤診にもつながっている」(IAEAのプレスリリース)という。そこでIAEAは、RT−PCR機械、冷却システム、生物安全機材、診断装備などをシエラレオネなど感染国に供給していく予定だ。

 天野事務局長は「核関連技術の平和利用はIAEAの主要職務だ。その目的のため加盟国と連携して努力してきた。今回の支援はささやかなものだが、エボラ出血熱対策で効果的な貢献を果たすと期待している」と述べている。
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