ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

韓国は「言論の自由」を遵守すべし

 ウィーンに本部を持つ国際新聞編集者協会(IPI)の言論自由マネージャー、バーバラ・トリオンフィ女史は22日、当方とのインタビューに応じ、産経新聞前ソウル支局長の在宅起訴問題と朝日新聞の慰安婦報道の誤報について、その見解を明らかにした。

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▲インタビューに応じるIPIのトリオンフィ女史(2014年10月22日、IPI事務所で撮影)

 ソウル中央地検が8日、韓国の朴槿恵大統領に関するコラムをめぐる問題で、産経新聞の加藤達也前ソウル支局長を名誉毀損で在宅起訴したことに対し、同女史は「言論の自由を著しく傷つけている。加藤氏に対し刑罰上の名誉毀損(criminal defamation)を適用することは国際法の基準を逸脱している。政府関係者や公人は批判に対して寛容であるべきだ」と述べ、韓国当局は加藤氏への全ての処罰を即撤回すべきだと要求した。

 イタリア人の同女史は「「『言論と表現の自由』に関する2002年の国連特別審査官の共同宣言、欧州安全保障協力機構(OSCE)や米州機構(OAS)の特別報告書は『刑罰上の名誉毀損』を表現の自由の制限に適応することは正当ではないと明記している。産経新聞の場合、朴大統領が自身の名誉が毀損されたと感じたならば、民事法の名誉毀損(civil defamation)を訴えるべきだ。産経新聞のジャーナリストが起訴された背景には、険悪な日韓関係が多分影響を与えているのかもしれない」と語った。

 一方、朝日新聞の慰安婦問題に関する誤報について、同女史はメディアの「責任問題」に言及し、「メディアが誤報をした場合、2つの対応が不可欠だ。一つは誤報記事に対する正式謝罪だ。2つ目は誤報関連の全記事リストを公開することだ」と指摘した。


 朝日新聞の場合、社長が謝罪を表明し、誤報記事の背景を検証する委員会を設置したが、朝日新聞の慰安婦報道は国内だけではなく、海外のメディアにも大きな影響を与えている。安倍晋三首相は「朝日の慰安婦報道の誤報は日本の名誉を傷つけた」と主張しているほどだ。
 トリオンフィ女史は「国や公共機関はメディアの誤報に対し、賠償請求はできない。国は誤報による被害総額を計算できないからだ。ただし、読者が連帯して朝日の誤報に対し被害賠償を請求することは可能だろう」と説明した。

 
  IPIは1950年10月、創設された機関で、言論の自由を促進し、世界の言論の自由を検証した年次報告を発表している。 120カ国以上が参加している。

モスクワの不動産業者の「宣伝文句」

 “この別荘を購入した人にはヘリコプター1機プレゼント”
 こんな宣伝文句を聞いたことがあるだろうか。モスクワ郊外の不動産の広告だ。けっして子供たちのレゴ遊びではない。

 モスクワ郊外に大きな敷地にある別荘を購入するためにはもちろん巨額の資金がいる。ヘリコプターもその大きさによってコストは違うだろうが、けっして安くないはずだ。その両者がセットとなって今、モスクワで売り出されているというのだ。少なくとも欧州社会では聞いたことがない規模のデカい不動産ビジネスだ。

 ロシア富豪たちの生活は桁が違うとよく言われる。ロシア富豪の生活ぶりはこのコラムでも数回紹介した。ウィーンの日本レストランにロシア富豪の家族が食べに来た時の話だ。その注文する量と食べ方は通常ではない。ロシア人は寿司や刺身が好きだから、大量に注文する。食べ残すほどだ。そしてお勘定の時、大札のチップを気前よく振る舞う。チップで気前のいい米国旅行者もロシア人のチップには勝てない。食べ方は行儀良くはないが、チップはいい、ということでレストラン側もロシア客を大歓迎する。


 冬になればチャーター機でザルツブルクやチロルのスキー場ーに家族で来る。チロルではロシア語ができる人を雇っているホテルもあるほどだ。採算が合うからだ。スキー・シーズンになればモスクワ発のチャーター機でザルツブルクやインスブルックの飛行機場は一杯となる。

 ロシア富豪の一部はウクライナ紛争に関連した欧米諸国の制裁で渡航禁止リストに載っているから、この冬はスキー休暇を見合わせなければならないかもしれないが、大多数の富豪たちは今年もスキーを楽しむだろう。オバマ米大統領がゴルフ狂のように、ロシアの富豪たちはスキーが大好きなのだ。

 ところで、ロシアの富豪たちはどうして西側の人々も羨むほどお金持ちとなったのだろうか。答えは簡単だ。ガス、原油、地下鉱物資源の輸出だ。すなわち、クレムリンの権力者と巧みに手を組んで一山を当てた人々だ。ロシア語で「オリガルヒ」と呼ばれている人々だ。もちろん、全ての富豪たちがそうだとはいえないが、スーパー・リッチと呼ばれる人々は例外なくそのような人物たちだ。

 ハーバード大学の国際政治学者ジョセフ・ナイ教授は、「ロシアは将来、中国にガスや原油を供給するガソリンスタンドの存在に過ぎなくなるだろう」と予想している。ロシアが抜本的な経済改革を実施しない限り、同国は先端技術の生産・開発力を失い、原油とガスの輸出依存の未開発国の地位に留まるというのだ。

 欧米諸国の対ロシア制裁はロシアの国民経済を確実に弱体化させている。ルーブルの下落、外国投資・資本の流出などは既に現実化している。モスクワのスーパーではこれまで西側から輸入してきた農産物や商品が姿を消し、ロシア産の農産物だけとなってきた。富豪者向けのスーパーだけは依然、西側からの輸入農産物が売られている。モスクワの多くの年金者は貧困ライン以下の生活を余儀なくされている。

 ロシアの国民経済は厳しい冬を間近に控えているが、ロシアの富豪たちはどこ吹く風といったように、欧米社会のショーウインドーを覗いては、財布のひもを緩めている。

サウジ主導の宗派間対話は本物か

 ウィーンに事務局を置く国際機関「宗教・文化対話促進の国際センター」(KAICIID)のクラウディア・バンディオン・オルトナー事務次長(オーストリア元司法相)への批判が高まってきた。直接の契機は、オーストリア週刊誌プロフィール最新号とのインタビューの中で、事務次長はサウジの少数派への弾圧、公開死刑、女性の人権蹂躙などに対する批判に対し、反論するどころか、擁護したからだ。

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▲オルトナー事務次長(KAICIIDのHPから)

 サウジアラビアは今年に入り既に60人が毎金曜日に死刑されたが、事務次長は「毎金曜日ではない」と答え、欧州社会の死刑廃止論を完全に無視、女性の権利については、「自分はサウジを訪問したが、女性だからといって差別されたことはなかった」と述べている。オーストリアのメディアばかりか、人権団体から激しいブーイングが飛び出したわけだ。オルトナー事務次長自身は司法相時代、死刑反対論者として知られていた。

 同国際センターは昨年11月26日、サウジのアブドラ国王の提唱に基づき設立された機関で、キリスト教、イスラム教、仏教、ユダヤ教、ヒンズー教の世界5大宗教の代表を中心に、他の宗教、非政府機関代表たちが集まり、相互の理解促進や紛争解決のために話し合う世界的なフォーラムだ。昨年11月の設立祝賀会には日本から立正佼成会の庭野光帖次代会長が出席した。


 サウジ主導の同機関に対しては、設立当初から批判の声が挙がっていた。サウジのイスラム教は戒律の厳しいワッハーブ派だ。実際、米国内多発テロ事件の19人のイスラム過激派テロリストのうち15人がサウジ出身者だった。同国ではまた、少数宗派の権利、女性の人権が蹂躙されていることもあって、人権団体やリベラルなイスラム派グループから「国際センターの創設はサウジのプロパガンダに過ぎない。KAICIIDを閉鎖すべきだ」という声も出ている。

 2年前の設立祝賀会では、サウジのファイサル外相が「さまざまな宗派が結集するセンターは歴史的な役割を果たしていくだろう」と期待を表明。ゲスト参加した国連の潘基文事務総長は「宗教リーダーが紛争解決で重要な役割を担っている」と激励したことはまだ記憶に新しい。

 ちなみに、サウジはここにきてイスラム教スンニ派過激テロ組織「イスラム国」(IS)に対して批判し出したが、シリア内戦では反アサド政権グループで戦っていたISを支援していたことは周知の事実だ。

 いずれにしても、オルトナー事務次長は司法相を務めた人物だ、その事務次長がサウジの反体制派への弾圧、女性の権利蹂躙に対して何も言わないことから、「高給ポストを失いたくないため、サウジ側に媚を売っている」といった批判まで聞かれる有様だ(事務局長はサウジのファイサル前文部次官)。オーストリアのクルツ外相は、メディア、人権団体のKAICIID批判の高まりを懸念し、沈静化に乗り出す構えだ。

 なお、KAICIIDの報道官は当方の電話質問に応え、「事務次長の発言はKAICIIDの公式見解ではない。あくまで個人的見解だ」と説明した。

韓国人とイタリア人は似ているか

 韓国の朴槿恵大統領は14日、アジア欧州会議(ASEM)に出席するためイタリアのミラノに到着後、積極的な首脳会談をこなした。韓国聯合ニュースを読んでいると、面白いことに気が付いた。韓国とASEMのホスト国イタリア両国は地理的には離れているが、国民のメンタリティは似ている点がある、ということだ。
 産経新聞ソウル駐在特別記者兼論説委員の黒田勝弘氏はその著書の中で韓国人とイタリア人の類似性を指摘されていると聞いた。残念ながら、当方はその著書を読んでいないので詳細な点は分からない。そこで偏見と独断を恐れず、当方が感じる、両国民の類似性について書いてみた。

 ミラノから車で1時間ほど行くと、ベルガモに着く。そこに住む友人のカルロ夫妻宅を訪問したことがある。カルロ夫妻は市内を案内してくれたが、数時間のガイド時間で4、5回、レストランや喫茶店に入った。当方がよほど空腹に悩まされていると考えたわけではないだろうが、カルロ夫妻はとにかく食べることに拘る。カルロは当方が洒落た喫茶店を覗いていると「入ってコーヒーでも飲もう」と誘う。昼食を食べて1時間もたっていないのに、「あそこで休憩しよう」といって、レストランを指さす、といった具合だ。カルロの奥さんは海の幸を巧みに利用したパスタを出してくれた。

 韓国人は友人や知人に会えば直ぐに「ご飯を食べたか」と聞くという。「ご飯を食べたか」は韓国では「元気か」と同じ意味合いの挨拶言葉だそうだ。日本人は割り勘するが、韓国人は絶対、割り勘には応じない。食事代は自分が払うと言い張る。韓国人もイタリア人に負けないほど食事に執着心が強い。


 両国の類似性では、_板蹐励が強い、∋匐々イ、などが良く指摘されるが、イタリアの場合、家庭の絆は依然強いが、欧州でも少子化が最も進んでいる国だ。イタリア北部の町では子供の数より犬の数が多いところもある。その意味で、イタリアは変わりつつある。韓国も同じだろう。少子化は次第に社会問題となりつつある。

 イタリアは昔、世界を支配していた大国だった。「世界の道はローマに通じる」といわれた。イタリア経済は現在、厳しい試練を受けているが、欧州連合(EU)の主要経済国だ。一方、韓国は過去、大国の支配を受け続けてきたが、現在はアジアの経済国だ。付け加えると、両国とも南北問題を抱えていることだ。イタリアの場合、豊かな北部と貧しい南部の格差は大きな政治問題だ。韓国の場合、独裁国家・北朝鮮と対峙している。

 朴大統領は17日、イタリアのレンツィ首相と首脳会談を行い、両国関係を「創造経済パートナーシップ」として強化することで合意したという(聯合ニュース)。具体的には、文化、ファッション、デザイン、IT、保健などの分野で経済パートナーシップを築いていくという。

 ところで、イタリアはファッションの国だ。外見に拘る。一方、韓国人も外見に力を入れる。整形王国といわれるほどだ。未成年者の整形手術が増加し、社会問題となってきた、という記事を読んだ。盧武鉉大統領(任期2003〜08年)が二重瞼の手術を受けたと聞いた時、「へェー、韓国では大統領になった人物もその外見に拘るのだな」と驚いたことを思い出す。ちなみに、サムスンや現代自動車は本体の開発以上に、世界的デザイナーを雇って外形で斬新なイメージを創造することに力を入れることで知られている。
 まとめると、両国の歴史や背景は異なるが、食べることに拘り、外見を重視する2点で両国民は確かに似ているわけだ。

 なお、聯合ニュースによると、今年は韓国とイタリアの国交樹立130周年にあたり、両国は政治、経済、文化などさまざまな分野で記念行事を開催中という。

「教会は同性愛者を歓迎する」

 今月5日から開催中のローマ・カトリック教会の特別世界司教会議(シノドス)は18日、参加者の発言などを総括した最終報告書をまとめ、2週間の協議日程を終えた。世界から191カ国の司教会議議長や専門家たちが結集して、家庭に関連した様々なテーマ、離婚、再婚、避妊、純潔、同性婚などについて話し合ってきた。シノドスの最終報告書は議決権を有する174人の参加者のうち158人が支持、賛成多数で承認された。ジャンフランコ・ラバシ枢機卿ら3人の枢機卿が同日、記者会見で明らかにした。

 バチカン放送独語電子版によると、報告書では、シノドス参加者は家庭が現在直面しているさまざまな挑戦を真摯に受け取り、「教会は全ての人々に開かれた家」と明記している。

 「キリスト者たちは自分の教会が常に開かれて、誰をも排除しない家であることを願っている。それゆえに、家庭の問題を共に考え、痛みを共に分かち合う牧会者、信者たち、共同体の人々に感謝する」

 シノドスの焦点の一つであった離婚・再婚者の聖体拝領問題については、「関係者は次期シノドス(来年10月開催予定)まで共同の解決策を見つけていこう」と呼びかけている。同性愛者については、「教会は同性愛者を歓迎する」という。

 ちなみに、シノドス開催中、オーストリアのカトリック教会最高責任者のシェーンボルン枢機卿はイタリア日刊紙コリエーレ・デラ・セラとのインタビューに応じ、同性婚について「自分はウィーの同性婚者を知っている。彼らは重い病気を抱えているが、互いに助け合って生活している。私は彼らに尊敬を払っている」と述べている。同枢機卿の発言は保守派聖職者たちに驚きをもって受け取られたばかりだ。

 参考までに、教会の教理の番人、バチカン教理省長官のゲルハルト・ミュラー枢機卿は「イエスは罪びとをも愛した、その教えは不変であり、慈愛は重要だが、あくまでも真理と一致したものでなければならない」と指摘し、同性婚は神の計画とは一致しないから、容認されることではないという立場を主張している。

 最終報告書を読む限りでは、枢機卿の間で同性愛問題について従来の批判的な姿勢は影を薄めてきたことが分かる。中間報告書の中に記述されていたように、「教会は同性婚者を夫婦と見なすことはできないが、兄弟姉妹として受け入れることは可能」といった立場だろう。離婚・再婚者への聖体拝領問題に対しても同じだ。婚姻は決して解消できないが、離婚・再婚者に対して拒絶するのではなく、慈愛の立場で対応していく、といった流れだろう。

 世界に12億人以上の信者を抱えるローマ・カトリック教会は今日、教え(ドグマ)を懸命に死守する一方、世俗社会からの要請にこれまで以上に柔軟に対応していく方針に軌道修正中、というのが現状だろう。

 特別シノドスの最終文書(Relatio Sinodi)は来年10月の通常シノドスの協議の柱となる。

日本がUNIDOを脱退する日

 ウィーンに本部を置く国連工業開発機関(UNIDO)の様相がさらに悪化してきた。懸念されていたことだが、最大分担金国の日本と自国の事務局長を抱える中国間の日中衝突だ。ウィーンの国連職員の知人から聞いた話を紹介する。

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▲加盟国から事務局長当選の祝辞を受ける李勇氏(2013年6月24日、撮影 )

 「先週、在ウィーン国際機関日本政府代表部の北野充特命全権大使と李勇事務局長が会談したが、そこで北野大使はUNIDOの現状に強く不満を表明し、『UNIDOが本来の使命を履行できないようだと、日本も考えざるを得ない』と述べ、脱退の意思を示唆した」という。

 知人は少し興奮しながら、「日本がUNIDOから脱退の可能性を示唆したのは今回が初めてだ」と繰り返し強調した。事実とすれば、大変だ。
 そこで、「日本はどうして脱退を考え出したのかね」と聞くと、知人は「UNIDOの腐敗体質、履行能力の欠如などのほか、日本側もUNIDO内のポスト配分で不満があるようだね」という。

 加盟国の脱退自体はUNIDOではもはや珍しくない。先進諸国でUNIDOに留まっている国のほうが少数派だ。UNIDOから脱退した国は、カナダ、米国、オーストラリア、ニュージーランド、英国、フランス、オランダ、ポルトガルなどだ。それに脱退予備軍としてスペイン、ギリシャ、イタリア、ベルギーの名前が挙がっている。スペインは今回、日本と同様、脱退の意思をちらつかせている。いずれにしても、日本の脱退は国連関係者にはショックかもしれないが、「日本の脱退は少々遅すぎた」という声が聞かれるのも事実だ。

 ちなみに、日本がUNIDO脱退をこれまで控えてきた背景には、国連機関の脱退は日本の願いである国連安保常任理事国入りの障害となること、開発途上国の反発が予想されたことなどの理由があると考えられる。

 脱退国の増加でUNIDOの予算は縮小され、機関の運営は難しい。経費の88%は人件費と維持費だ。活動に投入できる予算は残りの12%に過ぎない。換言すれば、UNIDOは生き残るために存在し、開発途上国の開発支援という本来の使命は二の次だ(日本はUNIDO最大の分担金負担国で約19%、約1299万ユーロ。UNIDOは日本、ドイツ、中国の3カ国で支えられている)。

 UNIDOの事務局長に中国人の李勇氏が就任して以来、国連外交関係者の間で呟かれてきたことは、UNIDOを舞台にした日本と中国の外交戦だ。中国の反日活動が激化すれば、日本側も分担金の支払遅滞などの外交カードを駆使して中国人事務局長に圧力をかけてくると予想する声も聞かれるほどだ。
 日本が脱退でもすれば、UNIDOの存続は難しくなる。そうなれば、UNIDOはニューヨークの国連開発計画(UNDP)に吸収される可能性が高まる。

 なお、日本のUNIDO脱退の可能性について、在ウィーン国際機関日本政府代表部のUNIDO担当外交官は当方の電話インタビューに応え、「わが国は現在、厳しい財政状況下にある。国際機関の加盟・脱退問題はそのメリット、デメリットを慎重に分析して決定されなければならない」と説明し、UNIDOの今後の運営を注視していく意向を明らかにしている。

北の若き独裁者と「人工衛星」の話

  北朝鮮の朝鮮中央通信は14日、金正恩第1書記が「衛星科学者住宅地区」を現地指導したと報じた。金第1書記の動静としては9月4日以来だ。健康悪化説から死亡説まで流れていた同第1書記は9月中旬にフランスの医師から両足首の関節の手術を受けたという。同氏は杖を引きながら、人民軍の黄炳瑞総政治局長らを同行させて視察した。労働新聞は、上機嫌な正恩氏の写真を大きく掲載した。

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▲宇宙監視中央センター(2013年1月14日、北大使館の写真展示ケースから接写)

 好奇心だけは依然旺盛な当方は「なぜ、衛星科学者住宅地区を視察したのだろうか」と考えた。そこで、北朝鮮と人工衛星打ち上げの歴史を少し振り返ってみた。

 北は1998年8月、最初の試験衛星「光明星1号」を打ち上げ、宇宙軌道に乗せたと主張したが、同衛星から信号がキャッチできないこともあって、国際社会は「北朝鮮初の人工衛星」と認知しなかった。2009年に入り、北は再び人工衛星「光明星2号」の打ち上げに成功したと表明し、宇宙から革命讃歌「金日成将軍の歌」や「金正日将軍の歌」が流れていると述べた。しかし国際機関が北の人工衛星を必死に探したが、見つからなかった。人工衛星から発信される信号をキャッチできない場合、その人工衛星は墜落したか、軌道に乗らなかったことになる。人工衛星が軌道に乗らず、地球上を勝手に周回している、なんてことは通常、考えられない。

 日米韓の3国は当時、「北朝鮮の人工衛星は失敗した」と表明したが、北の「労働新聞」は「光明星2号は軌道を周回中」として「歴史的偉業」と豪語したことはまだ記憶に新しいことだ。
 ただし、北の人工衛星科学者は人工衛星が失敗したことを知っていた。科学者である以上、実証できなければ、成功していないことになることを学んで知っているからだ。そこで科学者たちは昼夜を問わず、人工衛星の打ち上げ成功を夢見て奮闘してきたはずだ。

 そして2012年12月12日、銀河3号で光明星3号2号機が打ち上げられ、衛星軌道への投入に成功し、同国初の人工衛星となった(ただし、人工衛星の運用には失敗)。人工衛星打ち上げ成功は最高指導者に就任したばかりの正恩氏の初の国家的実績と受け取られた。

 平壌郊外に建設された衛星科学者住宅は、人工衛星打ち上げを記念するものであり、衛星科学者を鼓舞し、奨励するために建設されたのだろう。

 40日間余り療養生活を強いられきた正恩氏の再デビューの視察先として、人工衛星科学者住宅地区が選ばれた理由を読者の皆さんはもう理解されたと思う。若き独裁者にとって「人工衛星科学者住宅地区」は最高の“書割”だったからだ。

エボラ出血熱の迅速な診断を

 反原発を主張する人々は原子力発電事故が如何に怖いか、放射線の汚染からテロ襲撃の危険まで挙げて説明する。そして、脱原発、再生可能エネルギーの促進を要求する。それは一つの見解だが、原発開発、それに伴う核関連技術の発展はがん治療など様々な医療分野で人類の福祉に大きな貢献をしてきていることを忘れてはならないだろう(「IAEAのHPが変った」2010年6月19日参考)。

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▲エボラ出血熱対策で貢献するIAEA

 核エネルギーの平和的利用を促進する国際原子力機関(IAEA)がアフリカなど開発途上国に対し、マラリア対策からがん治療までその核エネルギーを利用した医療技術で支援している。天野之弥事務局長は「IAEAの仕事はイラン、北朝鮮などの核保障協定(セーフガード)とその検証問題だけではない、がん対策でも大きな貢献をしている」と指摘し、核エネルギーの平和利用の実態に対する国際社会の認識不足を嘆いている。

 
 IAEAは14日、プレスリリースを発信し、「IAEAが西アフリカのシエラレオネに猛威を振るっているエボラ出血熱(EVD)の迅速な診断を下せる逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)関連技術の利用促進を支援していく」という。
(ウィキぺディアによると、RT−PCRとは、リボ核酸(RNA)を鋳型に逆転写を行い、生成された相補的DNAに対してポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行う方法をいう)

 その直後、世界保健機関(WHO)は14日、西アフリカで猛威を振るっているエボラ出血熱について「感染者の数が今後急増し、1週間あたり1千人から、12月上旬には5000人〜1万人と拡大していく恐れがある」と警告したばかりだ。

 IAEAと国連食糧農業機関(FAO)は連携して核関連技術を利用したRT−PCRの開発に努力してきた。この技術を利用すればエボラ出血熱のウイルスの有無を数時間で診断できるという。従来のやりかたでは診断が下されるまで数日間がかかった。迅速に診断できるようになれば、感染者の生存率を改善し、もちろん犠牲者の増加を防止できる。

 エボラ出血熱が拡大するシエラレオネや西アフリカ諸国の医療関係者は一部RT−PCRを利用しているが、「診断装備や医療器材不足に悩まされ、迅速な診断が難しく、誤診にもつながっている」(IAEAのプレスリリース)という。そこでIAEAは、RT−PCR機械、冷却システム、生物安全機材、診断装備などをシエラレオネなど感染国に供給していく予定だ。

 天野事務局長は「核関連技術の平和利用はIAEAの主要職務だ。その目的のため加盟国と連携して努力してきた。今回の支援はささやかなものだが、エボラ出血熱対策で効果的な貢献を果たすと期待している」と述べている。

同性婚に対する教会の教えは不変

 世界に12億人以上の信者を抱えるローマ・カトリック教会は5日、特別世界司教会議(シノドス)を開幕した。19日まで2週間の日程で「福音宣教からみた家庭司牧の挑戦」という標題を掲げ、家庭問題と牧会について191人の司教会議議長、62人の専門家らが話し合う。

 バチカン放送独語電子版によると、「会合には第2バチカン公会議(1962〜65年)のような雰囲気が漂っていた」という。換言すれば、教会の近代化を決定した第2バチカン公会議のように、司教たちの間で教会刷新の機運が満ちている、というのだ、バチカン放送も13日、シノドスの第1週の中間報告(relatio post disceptationem)として「勇気ある牧会への決定の必要性」というタイトルでまとめているほどだ。

 シノドスでは「社会の細胞としての家庭」と「家庭が現在直面している危機」という2つの観点から協議が進められていったという。具体的には、_板蹐慮充臓↓▲ぅ┘垢諒_擦ら捉えた家庭、社会と教会は家庭のために何が出来るか、という3点だ。

 世俗化が進む現代社会で家庭はさまざまな観点から攻撃にさらされている。離婚、再婚、堕胎、純潔、同性婚などの諸問題に対して、イエスの教えを標榜する教会は守勢を余儀なくされ、対応できずにいる。どの一つの問題を取っても、教会の対応次第では信者たちの信仰生活に大きな影響を与える厄介なテーマだ。
 夫婦の2組に1組が離婚する欧米社会では離婚・再婚者の聖体拝領問題は大きな課題だ。教会では婚姻は解消できないという教えがあるが、多くの信者たちは離婚し、再婚するケースが増えている。だから、離婚・再婚した信者たちに対しても聖体拝領を許すかどうかで議論を呼んでいる。
 現場を担当する司教たちの間でも聖体拝領を認める者と拒否する者とに分かれている。その意味で、教会の方針が正式に決まれば、信者たちだけではなく、現場の聖職者にとっても悩みから解放されるわけだ。

 シノドス第1週の中間報告書では、同性愛問題について従来の批判的な発言は影を薄め、新しい視点から捉えていくべきだといった声が聞かれる。具体的には、「教会は同性婚者を夫婦と見ることはできないが、兄弟姉妹として受け入れることは可能ではないか」といった問いかけだ。
 ただし、報告書を冷静に読む限り、教会の同性婚への見方には変化はなく、「同性婚は通常の夫婦ではない」とはっきりと釘を刺している。中間報告書の同性愛者に対する「兄弟姉妹的関係」という表現は、教会の教えを否定せず、時代の要請に応じるための妥協の産物といえるかもしれない。

 フランシスコ法王は昨年11月28日、使徒的勧告「エヴァンジェリ・ガウディウム」(福音の喜び)を発表し、信仰生活の喜びを強調した。同法王は「教会の教えは今日、多くの信者たちにとって現実と生活から遠くかけ離れている。家庭の福音は負担ではなく、喜びの福音でなければならない」と主張している。教会の教えが信者たちにとって負担ではなく、喜びとなるために教会はどうしたらいいのか……、フランシスコ法王の悩みはそこにあるわけだ。

 なお、特別シノドスで協議された内容は来年10月開催予定の通常シナドスで継続して話し合われ、教会の最終方針がまとめられる予定だ。

倦むことなく和平の努力を続けよ

 エジプトの首都カイロで12日、パレスチナ自治ガザ区を実質的に統治するイスラム教根本主義勢力ハマスとイスラエル軍の間の戦闘で破壊された建物などを復興する支援国会合が開催され、総額43億ドルの支援が参加国から表明された。ノルウェーのブレンデ外相が記者会見で明らかにした。
 同会合はエジプトとノルウエー両国のイニシャティブで開かれたもので、日本を含む約30カ国の外相、地域・国際組織代表らが参加した。アラブ諸国参加の障害とならないように、カイロの会合にはイスラエルは招かれなかった。

 カイロ会合では、欧州連合(EU)は4億5000万ユーロ、米国は1億6800万ユーロの支援をそれぞれ約束している。ドイツはパレスチナとの2か国間支援として5000万ユーロの追加支援を表明した。

 イスラエル軍とハマス間の戦闘(7月と8月)でガザ区の病院、橋梁、学校などが破壊された。独週刊誌シュピーゲル電子版によると、2カ月間余りの戦闘でイスラエル軍は約5000個所に空爆や攻撃を加えた一方、ハマスは約4500のロケット弾をイスラエル側に打ち込んだ。そして2100人以上のパレスチナ人、70人以上のイスラエル人が犠牲となった。国連側の発表ではガザ区では1万8000戸の建物が破壊されたという。以上、外電を中心にまとめた情報だ。

 7、8月のイスラエルとパレスチナの衝突は、イスラエルの3人の青年が拉致され、死体で発見されたことが発端となった。ハマス側は関与を否定したが、イスラエル側は「ハマスの仕業」として報復を宣言。その直後、今度は1人のパレスチナ人の青年の死体が見つかった。イスラエル側は「パレスチナ人青年殺害には関係してない」と弁明したが、パレスチナ側は「イスラエル側の報復」と確信し、イスラエル領土に向かってミサイルを発射する一方、地下トンネルを通じてイスラエル内に侵攻し、奇襲作戦を展開させていった。

 パレスチナ自治政府側によると、ガザ地区の復興費は約32億ユーロと見積もっている。その額はパレスチナ自治区のGDPの約3分の1に相当する。「建設しては破壊し、そして復興のため国際社会が資金を払う」といったパターンはこれまでも何度か繰り返されてきた。シュタインマイヤー独外相は「われわれは破壊するために金を払っているのではない」と指摘、パレスチナとイスラエル両者間に和平交渉に取り組むように強く要請。潘基文国連事務総長も「建設し、破壊し、そして再建のために復興支援会合を開催する。これらの一連のプロセスは決して儀式として行われてはならないことだ」と警告を発しているほどだ。

 ガザ復興支援会合では、ホスト国エジプト側が和平案を提示している。その内容は、イスラエルは1967年の6日間戦争で占領した領土を返還すると共に、パレスチナ難民に対して公平な解決案を提示するならば、アラブ諸国はイスラエルの国家を容認するという2002年の和平案だ。ちなみに、イスラエル側は当時、既に同案を拒否している。

 当方は「中東・やりきれない繰り返し」(2008年12月30日参考)というコラムの中で「ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の共通の聖地エルサレムから遠くないパレスチナのガザ地区で多数の血が流されている。しかし、これが初めてではない。やりきれない繰り返しに和平への気力が萎えてくることもあるが、国際社会は目を閉じるわけにはいかない」と書いた。国際社会はイスラエルとパレスチナ人の和解実現のため知恵を絞って支援すべきだ。
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