ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

2007年01月

「ハメネイ師後」への対応

 イランの精神的指導者アリ・ホセイン・ハメネイ師(67)の健康状況が優れない。腰などが悪く長期間、立っての演説はもはや出来ない。直ぐ、椅子が必要となる。目も悪く、昔、政敵に襲撃されて右腕を失っている。年齢的には高齢過ぎるとはいえないが、同師の肢体は満身創痍といった状況だ。
 ここにきて、同師の健康問題が表面化してきている。公式行事への出席回数が急減しているからだ。実際、昨年末から公の場にほとんど姿を見せていない。そのため、同師の死亡説が一時期、流れたほどだ。
 ハメネイ師に何かがあった場合、後継者問題が表面化するが、最高指導者を選出する専門家会議では明確な後継者がいない。そのため、最高指導者が空席といった「権力の空白」が生じる危険性もあるわけだ。ちなみに、専門家会議は86人(任期8年)から構成され、全員が聖職者だ。
 イラン革命の祖ホメイニ師が1989年6月亡くなると、専門家会議は大統領だったハメネイ師を素早く後継者に選出できたが、今回ばかりは人材不足というより、飛びぬけた有力候補者がいないのが実情だ。
 ラフサンジャ二師は前大統領の改革派の前大統領ハタミ師を推しているが、反対が強いから、ハタミ師の選出は現実的でない。
 一方、ラフサンジャニ師自身が選出される可能性は完全には排除できない。同師の強みは資金力だ。本人は「私は貧しい聖職者に過ぎない」といっているが、原油輸出などで膨大な資金を持っていることはイラン国民ならば良く知っている。潜在的な有力候補としては、司法府長官のハシェミ・シャハルーディ師の名が挙げられるが、同師の弱点はイラク出身という出生地問題がある。
 イランの政治構造は複雑だ。反イスラエルを声高に叫んでいるアハマディネジャド大統領は議会と共に直接選挙で選出されたが、実質的な政治権力はない。最高指導者ハメネイ師との関係が悪くなれば、大統領の政治生命は終わりに近くなる。現に、アハマディネジャド大統領は国民ばかりか、核問題の対応の失敗で国連制裁を課せられた事に対して、ハメネイ師からも批判を受けている。
 大多数の国民は国連制裁で厳しい生活を余儀なくされ、政治には関心が少ない。その一方、大統領は核問題で強硬政策を実施、愛国心を訴えることで国民の結束を図っているが、国民の支持は久しく大統領から離れている。最高指導者ハメネイ師はどうかといったら、先述したように、健康問題を抱えている、といった具合だ。イランの現状は爆発寸前の火山のような状況だ。
 欧米諸国は、「イスラエルを世界の地図から抹殺すべきだ」といったアハマデイネジャド大統領のメディア受けする発言に関心を集中する余り、イラン国内で静かに進行中の「ハメネイ師後」への対応が遅れているのではないか、と危惧している。

中国語学んでいた前ローマ法王

 ポーランドのローマ・カトリック教会クラクフ大司教のスタニスラフ・ジヴィシ枢機卿(67)は前ローマ法王ヨハネ・パウロ2世との思い出を綴った著書「カロルとの日々」(仮称)の中で、「ヨハネ・パウロ2世は中国語を学ぶ意欲を示していた」と証をしている。
 その話を聞いて、当方はビックリすると共に久しぶりに感動した。相手側の言葉を学ぶということは、相手側に敬意を表する最大級の行為の1つと思うからだ。
 「ラジオ・バチカン」放送との会見の中で、ジヴィシ枢機卿は「法王はいつも苦悩する人々の傍に立っていた。法王は中国の歴史や現代の出来事を正確にフォローしていた。中国との関係を正常化したいという強い意思があったからだ。中国国民に対しても親しみを感じていたはずだ」と述懐している。
  ローマ法王ぐらいになれば、中国語を流暢に話す聖職者を通訳に付ければ済むことだが、相手を本当に理解したいために、相手側の言葉を学ぶという姿勢には頭が下がる。愛の実践とは具体的だ。高齢のヨハネ・パウロ2世が中国語をマスターして中国要人と中国語で話せるようになったかどうか分からないが、前法王が中国との関係化正常化に驚きべき熱意を持っていたことだけ確かだろう。
 そこでバチカンとの関係正常化に意欲を持つ中国共産党指導者に聞きたい。「前法王はあなた方を理解する為にあなた方の言葉を学ぼうとしたように、あなた方は法王の考えを理解する為にその著書や説教を読んだことがあるのか」と。
 関係正常化には相互の努力が不可欠だ。北京は関係正常化の為に、‖耋僂箸旅餮鮹農筺↓内政に干渉しないこと、など前提条件を挙げることに腐心しないで、自国の正常化への努力が十分か否かを自問すべきではないか。例えば、「信仰の自由」の完全な保証だ。
 なお、ローマ・カトリック教会総本山バチカン法王庁は1月19日、20日間の2日間、国務省長官タルチジオ・ベルトーネ枢機卿を中心にしてバチカンの認可なくして司教を叙階した中国官製聖職者組織「カトリック愛国会」への対応について緊急協議を開き、「中国当局との過去の緊迫した関係を克服する為に、相互尊重と建設的対話を促進していく。中国国民の幸せと世界の平和実現のために、バチカンはさまざまなレベルで対話を進めていく」という内容の声明文を公表した。次は、中国共産党政権が正常化への真摯な対応を示す番だ。

ニセ懺悔(ざんげ)の波紋

 イタリアのローマ・カトリック教会聖職者たちは、同国週刊誌記者が教会の聴罪室に行って神父に偽の懺悔をして、聖職者がどのように反応するかを試み、その調査結果を記事にしていたことが明らかになって、怒りを爆発させている。
 問題の週刊誌記者は、通常の信者のように装って聴罪室に行き、聖職者がバチカン法王庁(ローマ・カトリック教会総本山)の路線に忠実か、それとも教会の路線に反して、免罪などしていなかなどを調べ、その結果を記事にしていたわけだ。
 同国カトリック教会司教会議のべトリ事務局長は「宗教感情を深く傷つける行為だ。記者は教会の中枢部、神聖な告解を侮辱したのだ」と強く批判した。バチカン日刊紙「オッセルバトーレ・ロマーノ」も社説の中で週刊誌記者の行動を厳しく追及している。「ラジオ・バチカン」放送も28日、「ニセ懺悔へ怒り」と報じている、といった具合だ。
 教会や教会メディア側の批判は当然だ。「言論の自由」は詐欺行為をけっして認めてはいない。特に、教会で神聖視されている秘蹟を悪用して聖職者の反応を探る、といった行為はどのようない理由があっても許されるものではない。
 ちなみに、ニセ懺悔問題の背後には、同性愛問題や安楽死問題などで同国国民の意見が分かれているばかりか、教会内でも保守的聖職者と改革派聖職者間で見解の相違があるため、聖職者がそれらのテーマをどのように考えているかが大きな話題となるという社会背景がある。
 フランスのロワイヤル大統領候補がカナダのケベック州首相を装った男からニセ電話を受け、そこで重要な政治的発言(ケベック州の独立問題)をしたことが明らかになったばかりだ。数年前には、英国のバッキンガム宮殿職員となって王室の実相を暴露しようとしたジャーナリストもいた。
 ニセ懺悔、ニセ電話、ニセ王室職員も相手を騙して相手の本音、実相を聞き出そうとするものだ。それは人間間の対話が信頼関係の上で初めて成り立つという基本的な原則を破る行為に等しい。「社会の木鐸」を目指す以上、ジャーナリストは正統な手段で勝負すべきだ。
 なお、ローマ法王べネディクト16世は作家やジャーナリストの守護聖者、聖フランシスコ・サレジオの記念日(1月24日)に、メデイア関係者に「社会に責任を担うためにも倫理的基準を持つべきだ」と注文をつけている。

大統領からのプレゼント

 冷戦時代、インタビューに応じてくれた政治家や要人にちょっとした小さなプレゼントをお礼代わりに渡していたことがある。浮世絵が描かれた紙入れだ。日本円にすれば当時、100円ぐらいだろうか。当方はウィーンの日本ショップで大量に購入し、会見してくれた東欧の政治家などにプレゼント用として利用していた。会見相手から「ホー、日本の伝統的な浮世絵ですね」といわれて喜ばれると、こちらの方が恐縮したものだ。
 ところが、会見した政治家からプレゼントをもらったことが過去、1度だけある。スロベニアのミラン・クーチャン大統領(当時)と会見した時だ。旧ユーゴスラビア連邦から独立後のスロベニアの見通しについて、リュブリャナの大統領府で会見した。大統領は当時、国民から最も愛された政治家だった。会見は30分ぐらいだった。
 会見が終わり、当方が「大統領、インタビュー、ありがとうございました」とお礼をいって立ち上がった時だ。大統領は「ちょっと待ってくださいね」といって、執務室の隅にあった箱からワインを1本取り出してきて、「スロベニアのワインです。会見の思い出です」といって当方にプレゼントしてくれたのだ。
 会見相手の政治家から贈物をもらったことがない当方がどれだけビックリしたか、想像してもらいたい。当方は「ありがとうございます」とお礼をいうのも忘れるほどだった。政治家が会見したジャーナリストにプレゼントするということは通常、考えられないことだ。それだけに、当方が大統領からプレゼントを頂くことは想定外だったのだ。
 残念ながら、当方はアルコール類を飲まないので、大統領からもらったワインをウィーンの知人にあげたが、この時ばかりは、「あげようか、記念として家に置いておくか」と考えたものだ。
 申し訳ないが、大統領との会見内容はほぼ忘れたが、大統領からもらったワインの事だけは今も鮮明に記憶している。

国連改革への“草の根”議論

 冬の夜、クルト・ワルトハイム元国連事務総長の娘、リーゼロッテさん宅でホットな議論が交わされていた。その夜のテーマは「機能しない現国連機関に代わる機関の創設について」だったという。2、3の大使、ウィーン国連機関の高官を含む約10名の紳士淑女が夕食を挟みながら4時間余り語り合った。
 参加者の顔ぶれもそうだが、議論のテーマに関心があったので、その夜の討議に招待された1人の紳士に後日、討議の内容について聞いてみた。
 アフリカ出身の紳士は「討議では非政府機関(NGO)をいかに活用するかでいろいろなアイデアが出された。例えば、人権問題や宗教の自由を扱うNGO機関の連携強化の必要性だ」という。
 ワルトハイム氏は10年間、国連事務総長を勤めた人物であり、国連機関の改革の必要性を誰よりも知っている。その娘リーゼロッテさんは現在、平和活動のNGOの責任者だ。その私邸で国連改革の私的な討議が行われたわけだ。先の紳士は「これは決して公式の討議とかいったものではない。あくまでも国連改革に関心がある人々の“草の根”議論に過ぎない」と説明した。だから、ジャーナリストは招待されなかったわけだ。
 日本の大島賢三国連大使は今月、日本の安保理常任理事国入りについて、「向こう数カ月が勝負の時だ」と述べ、今夏までに安保理拡大論議に決着を付けたいと述べたが、国連改革は安保理常任理事国問題だけではない。国連機関そのものの抜本的な改革が控えている。
 20年以上国連機関に勤務し、昨年末退職した1人の国連職員が当方に言った言葉を忘れることができない。
 「残念ながら、国連機関は平和を実現できる機関ではない。国連内には腐敗が充満している。だから、国連機関の職員が紛争調停の名目でわが国に進出してきたら、自分は政府に『国連機関を真っ先に追放すべきだ』と進言するよ」
 国連が加盟国間の国益の対立の舞台となって久しい。それをどのように改革して、国連憲章が明記しているように、世界の平和実現に貢献できる機関とするか。大きな問題だ。ワルトハイム元国連事務総長の娘さん宅で開かれた“草の根”議論がもっともっと広がるべきだろう。

アフガニスタンの2大輸出品

 「わが国は世界的な輸出品を有している。1つはアヘン、もう1つはテロだ。これがアフガニスタンの2大輸出品だ。」
 アフガニスタンの国連記者は自嘲気味にいう。世界最大のアヘン生産国であり、そのアヘンはイラン経由で欧州に密輸されている。欧州に拡大する麻薬犯罪の多くはアフガニスタン産の麻薬が絡んでいることは周知の事実だ。昨年度のアヘン生産量は6000トンを超えるなど、不法なアヘン栽培は再び急増してきている。
 一方、米国内多発テロ事件(2001年)の国際テロ組織「アルカイダ」の指導者ウサマ・ビンラディンは今日、アフガニスタンとパキスタン国境周辺に潜伏し、世界のテロ・グループに激を飛ばしている、といった具合だ。
 北大西洋条約機構(NATO)主導の国際治安支援部隊(ISAF)が駐留しているが、国内の治安情勢は不安定だ。中央政権の行政権は首都カブールを一歩、外に出て行けば、部族社会の壁に出くわす。
 先の国連記者は「アフガニスタン国民の最大の関心事は金と仕事だ。大多数の国民は両方とも持っていない。正式な経済統計などは存在しないが、80%以上の国民は安定した仕事をもっていない。家にあるのは、冷戦時代に対ソ連戦争で使用した武器だけだ。その武器をもって狩り(略奪)に出るか、武器を売る国民も出てくるわけだ」という。
 「国際支援はどうしたのか」と聞くと、「昔はそれぞれの国が主体的にわが国を支援していたが、カルザイ政権の要求で国際支援は全て中央政府が管理することになった。それ以来、政府要人の腐敗は後を絶えない」と説明し、「大多数の国民は国際社会の支援などといっても理解できないのではないか」という。
 アフガニスタンはイラン、パキスタンと国境を接している。そのため、昔からイラン情勢やパキスタンとの関係が決定的な影響を与える。両国の政情安定がない限り、アフガニスタンの安定も望めないわけだ。そのような中で、タリバン前政権が今春、新たな攻勢を計画しているという。

「北の異変情報を追え」

 「北朝鮮最高指導者・金正日労働党総書記の身辺で異変が起きたのではないか、軟禁情報も」――時事通信社が25日、韓国の北朝鮮消息筋として報じたが、その情報の信頼性について、日・米・韓の情報機関が一斉に確認に乗り出してきた。情報が正しいとすれば、北朝鮮の金ファミリー独裁体制の終焉が差し迫っていることにもなるだけに、情報機関の反応は当然のことだ。
 今年に入って、日本の日刊紙が「今年2月16日の金正日総書記の誕生日祝賀会が開催されない可能性がある」と報じている。この情報が事実とすれば、金総書記の権力基盤に何か異変が生じたことも考えられる。そして今回の時事通信社の報道だ。両情報とも「金体制に亀裂が入ってきた」ということを強く示唆している。興味を引く点は、両情報とも日本のメディア機関が流したということだ。
 北朝鮮関連情報戦では韓国メディアが通常、さまざまのソースから平壌政界の内部情報を流してきたが、今回ばかりは「日本メディア」が一歩先行しているわけだ。「ひょっとしたら、両ニュースのソースが同じなのではないか」「韓国の北朝鮮消息筋となっているが、実際は日本の公安筋からきた情報ではないか」「北朝鮮政権に揺さぶりをかけるための意図的なリーク情報ではないか」など、さまざまな推測が既に聞かれた。
 そこで、当方も「異変説」の信頼性について、考えられる限りの確認作業を始めてみた。知人の韓国外交官は「異変を裏付ける情報は聞いていない。憶測に基づく、いつもの誤報だろう」と、かなり自信をもって主張する。韓国政府も「異変説」には懐疑的な見解を既に表明している。次に、駐オーストリアの金光燮・北朝鮮大使(同国最高指導者・金正日労働党総書記の義弟)に電話した。幸いに、大使と繋がったので早速、聞いてみた。
 「自分は何も聞いていない。そんな話は君から初めて聞いた。どこのメディアが報じているのかね」
 「日本のメディア機関です」
 「はっきり分かっていることは、今年も金総書記の誕生日祝賀会を開催するということだ。自分はそれ以外のことは知らないね」
 「ということは、オーストリアでも昨年のように、祝賀会を開かれるのですね」
 「そのつもりだ。とにかく今忙しいから、質問はそこまでにしてくれたまえ」
 当方が接触した南北両国外交官はこのように「異変説」には否定的であった。しかし、金総書記周辺に異変が生じた可能性は依然、完全には排除できないはずだ。歴史は独裁政権が永遠には続かないことを教えているからだ。
 そうこう考えている時に、東京から「聯合ニュース(韓国)がコトの“真相”を報じている」との連絡を受けた。すなわち、「金正日軟禁説は書籍広告が発端で、明らかに誤報だった」という。
 昔、「駐ポーランドの金平一・北朝鮮大使(金総書記の異母兄弟)が西側の政治亡命か」という情報が流れたことがある。当方も当時、必死にその情報の是非を追ったが、「誤報だった」ことが判明した。北朝鮮関連情報は確認が難しいだけに、誤報は避けられない面もあるが、情報確認の為に右往左往させられるメディア機関も大変だ。
 「あー、疲れた」

越首相、バチカンを訪問

 ローマ法王べネディクト16世は25日、バチカン法王庁内でベトナムのグエン・タン・ズン首相と会談した。ベトナム政府関係者のバチカン訪問は1975年の共産党の政権掌握以来、初めて。バチカンとベトナム両国は関係正常化に向けて一歩を踏み出した。
 「ラジオ・バチカン」放送が同日報じたところによれば、ズン首相は閣僚、宗教問題担当委員会責任者など多数を随伴し、べネディクト16世のほか、国務省長官のタルチジオ・ベルトーネ枢機卿、外務局長のドミニク・マンベルティ大司教らと会談した(ズン首相のバチカン訪問延期情報が流れていたが、ハノイ側が日程を再調整し、予定通りバチカン訪問を実現した)。
 バチカンは会談後、「ベトナム首相の訪問は両国関係の正常化への新しい、重要な一歩である。ベトナムでは過去、カトリック教信者は信仰の自由を一層享受してきた」と評価する報道向け声明文を発表した。
 会議では、両国間の未解決問題については「今後、対話を通じて解決していく」ことで合意。同時に、「国家と教会は、々餡箸諒〇禪上特に若い世代に対し道徳的価値観の促進D貶佞亮匆饒悗慙帯と支援実施―などで実りある連携をしていく」ことで一致した。
 バチカンとベトナムの両国関係は過去、険悪な関係だったが、ここきて急速に改善してきた。同国のグエン・ミン・チェット国家主席は昨年10月、ベトナム司教協議会メンバーと会談し、国内の活動状況や国交問題について意見の交換をしている。国営ベトナム通信によると、国家主席は「共産党と政府は今後、国民の信仰、宗教の自由を尊重する」と確約したという。ベトナムでは過去、キリスト教会の活動は厳しく制限され、聖職者への迫害は絶えなかったが、同国共産党中央委員会がここ数年、国民の宗教生活に関心を示し、信仰の自由を次第に尊重する政策に軌道修正してきた経緯がある。
 なお、ベトナムのジョセフ・グエン・チ・リン司教は「ラジオ・バチカン」放送との会見の中で、「宗教の自由の定義で政府当局とカトリック教会との間で著しい相違がある」と指摘、同国で信仰の自由実践で依然、制限があることを示唆している。

北朝鮮大使、UNODCと会談

 駐国連機関代表の金光燮・北朝鮮大使(同国最高指導者・金正日労働党総書記の義弟)が先週、ウィーンの国連薬物犯罪事務所(UNODC)本部を訪問し、アントニオ・マリア・コスタ事務局長と会談していたことが、このほど明らかになった。訪問目的は、昨年の国際麻薬統制委員会(INCB)使節団訪朝のフォローアップと見られる。
 INCB使節団は昨年6月末、北朝鮮を3日間訪問し、関係省担当官と国内の麻薬問題や国際麻薬条約への加盟問題について協議した。INCB関係者によれば、北朝鮮当局は国際麻薬関連条約への加盟の一歩として、国内の法体制の整備に乗り出したい旨を伝えたという。金大使は当方の電話取材に答え、「平壌の協議に基づいてUNODCに技術支援を要請した」と語った。
 INCBは過去、1992年と2003年の2度、北朝鮮に使節団を派遣、麻薬関連の国際条約に加盟するように北朝鮮に要求してきた。北朝鮮は,「麻薬一般に関する憲章」(1961年)、「同修正条約」(71年)、「麻薬および向精神薬の不正取引に関する国際条約」(88年)の3つの国際条約のいずれにも加盟していない。ちなみに、北朝鮮は昨年3月、麻薬関連の国内法を一部改正、不法麻薬取引などへの刑罰を強化するなど、麻薬対策で国際社会の要望に呼応する動きを示したことがある。
 国家レベルで不法な麻薬密売の関与が疑われている北朝鮮当局が果たして真摯に麻薬対策に取り組むだろうか、といった懐疑的な見方が依然強い中、金大使のUNODC訪問は、北朝鮮が国際麻薬関連条約の加盟に向け一歩踏み出したものとして、注目される。
 興味を引く点は、UNODCやINCBが過去、北朝鮮の麻薬問題でイ二シャティブを発揮する度に難色を示してきた米国が今回は沈黙を守っていることだ。核問題と共に北朝鮮の麻薬犯罪を厳しく追及してきた米国のこの変化に、国連外交筋ではさまざまな憶測が流れている。
 なお、INCBは今春、慣例の年次報告を発表するが、地域別報告の中で北朝鮮の訪朝結果を報告している。

ファティマ第3予言、暗殺でない

 ポーランドのローマ・カトリック教会クラクフ大司教のスタニスラフ・ジヴィシ枢機卿(67)は前ローマ法王ヨハネ・パウロ2世との思い出を綴った著書「カロルとの日々」(仮称)を発表する。カロルとは、クラクフ大司教時代のヨハネ・パウロ2世の本名「カロル・ボイチワ」を指す。
 同大司教は、1960年代のポーランド教会時代から亡くなるまでヨハネ・パウロ2世の個人秘書を勤めてきた聖職者だ。同大司教以上に前法王を知っている人物は聖職者の中にはいないだろう。その人物が前法王との日々を記述しているのだ。ローマ・カトリック教会信者でなくても、一度は読んでみたい本だろう。「カロルとの日々」はポーランド語の本だ。英語などに翻訳されるまで読む事はできないが、幸い、「ラジオ・バチカン」が24日、その著書の概要を紹介している。
 著書は、故ヨハネ・パウロ2世が1981年、暗殺未遂事件に遭遇して重体となった時の状況を詳細に記述する一方、法王が回復後、拘束中の犯人アリ・アジャ服役囚を訪問した時、アジャは許しを請うのではなく、「どうしてうまく射殺できなかったか」を説明するのに腐心していたという。問題は次だ。「ヨハネ・パウロ2世は最初、自分の暗殺未遂事件をファティマの第3予言と関連して受け取っていなかった」と述懐しているのだ。ファティマの予言とは、聖母マリアが1917年、ポルトガルのファティマに再臨して、羊飼いに託した内容を意味する。
 教理省長官であったヨゼフ・ラツィンガー枢機卿(現ローマ法王べネデイクト16世)は西暦2000年、「第3の予言はヨハネ・パウロ2世の暗殺を予言したものであった」と公表し、「ファティマの予言」問題に幕を閉じたことを思い出してほしい。しかし、肝心のヨハネ・パウロ2世は当時、自分への暗殺事件と第3予言との関連に何の特別の感慨も持っていなかった、ということが明らかになったのだ。
 「ファティマの第3予言」の内容を知っていた聖職者は当時、2人いた。1人はヨハネ・パウロ2世であり、もう1人はラツィンガー枢機卿だ。その教理省長官が説明するように、第3予言の内容がローマ法王暗殺を指していたとすれば、暗殺未遂事件直後、ヨハネ・パウロ2世はその意味内容を誰よりも理解できる立場にいたはずだ。しかし、ヨハネ・パウロ2世は当時、暗殺事件と第3予言の関連に何も言及していないのだ。これは何を意味するのだろうか(故ヨハネ・パウロ2世自身は著書「記憶とアイデンティティー」の中で、81年の暗殺未遂事件の黒幕を「共産主義国」と示唆している)。
 繰り返すが、ジヴィシ大司教は前法王の言動を誰よりも熟知していた聖職者だ。その大司教が「ヨハン・パウロ2世が暗殺未遂事件をファティマの第3予言との関連性から捉えていなかった」と証言する以上、「第3予言」はまったく別の内容であった可能性が出てくるわけだ。それでは何故、バチカン法王庁は「ローマ法王暗殺事件を予言していた」と発表することで「第3予言」問題に終止符を打とうとしたのだろうか。ファティマの「第3の予言」は依然、封印されていると見て、間違いないのではないか。
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