ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

2007年02月

順調な旧ソ連・東欧経済

 旧ソ連・東欧諸国の経済分析で世界的に評価の高い「ウィーン国際比較経済研究所」(WIIW)は22日、2007年度・08年度両年の旧ソ連・東欧諸国の経済予測を公表した。概要を説明すると、内需の拡大、輸出の拡大などでポーランド、スロバキア、チェコなど東欧諸国の国民経済は今後2年間、高成長が期待できる。
 例外は緊縮政策を実施中のハンガリーだ。同国は冷戦時代のカダル政権時代から民主改革直後までは旧ソ連・東欧諸国の経済改革の優等生を誇示してきたが、他の東欧諸国がその国民経済を回復してきたのとは好対照的に、劣等生に落ちてしまったわけだ。同国の07年度GDPは2・7%、08年度3・1%に留まっている。ちなみに、チェコは07年、08年度はいずれも5%の成長率が予想されている。
 一方、バルカン諸国でも欧州連合加盟候補国クロアチア、マケドニア、アルバニア、モンテネグロ、セルビアの国民経済も順調に伸びてきた。ロシア、ウクライナでも5%以上の高成長が予測される。旧ソ連・東欧の労働市場は改善され、外国投資も増加している。
 WIIWの予測によれば、今年1月から欧州連合(EU)に加盟したルーマニア、ブルガリア両国の経済成長はルーマニアが07年度6・5%、08年度6%、ブルガリアがそれぞれ6%、5・5%と、いずれも高成長率が予測されている。ちなみに、ブルガリアの国民平均所得はEU平均値の32%、ルーマニアが36%に留まっている。参考までに紹介すると、EU27カ国の総GDPは旧加盟国15カ国が全体の88%を占め、04年度加盟した10カ国が9%、そしてブルガリア、ルーマニア2カ国が全体の3%を占めているのに過ぎない。
 国民経済の発展で懸念される点は、国内の政情だ。特にハンガリー、ポーランド、チェコの3国は政情の安定化が経済成長の前提条件だ。また、コソボ自治州(セルビア共和国帰属)の最終地位交渉がいよいよ最終局面を迎えてきたが、その行方次第ではバルカンの政情が急速に悪化することが十分考えられる。一方、労働力不足(例ポーランド、チェコ)も問題化してきている。ポーランドでは若い技術士が雇用市場をオープンとした英国に大量流出したことで、国内で専門技師の不足が深刻化している。

平壌で評判悪いエルバラダイ氏

 国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長が来月にも北朝鮮を訪問する予定だが、平壌指導部がIAEA事務局長をどのように見ているかを少し紹介する。訪朝が実りあるものとなるかどうかは、招請側との人間関係が大きな影響を与えると考えるからだ。
 北朝鮮の第1次核危機は、同国がIAEA側の特別査察実施要求を拒否したことから生じたが、その特別査察の核保障措置協定(核査察)の法的整備を構築した張本人が当時IAEAの法律顧問を努めていたエルバラダイ事務局長であったという事実を想起すべきだろう。
 1990年代のIAEA担当北朝鮮外交官のユン・ホジン参事官が当時、「あいつ(エルバラダイ事務局長)はわが国に特別査察を要求した責任者だ。わが国があいつにどのような思いを持っているか分かるだろう」と述べ、エルバラダイ事務局長に不快感を露わにしたことを今でも鮮明に憶えている。
 IAEAには1人の北朝鮮人査察官が働いていた。金石季氏だ。同氏は2003年に定年を迎えIAEAを退職した。金査察官は「エルバラダイ事務局長は北朝鮮職員を雇用する意思はもはやない」と述べていたが、その通りとなった。金査察官の退職後、北朝鮮とIAEAを繋ぐパイプは消滅した。それに先立ち、北朝鮮は02年12月、寧辺の核関連施設を査察してきたIAEA査察官を国外退去している。
 ちなみに、北朝鮮が03年、核拡散防止条約(NPT)とIAEAから脱退した後、駐国連機関担当の北朝鮮外交官とIAEA査察局アジア部のチトンボー部長はIAEA本部で不定期的に会い、コーヒーを飲みながら意見の交換を重ねてきたが、それは政府代表とIAEA間の非公式協議といった性格ではなかった。
 6カ国協議の合意文書の履行という大義を掲げて訪朝する今回、エルバラダイ事務局長には北朝鮮での評判の悪さにとらわれず、平壌指導部に核放棄に向けた「初期段階の措置」の真摯な履行を強く要求してもらいたいものだ。

外交官の人事

 海外駐在の外交官は任期を終えて帰国する際、赴任中に知り合った他国の外交官を招いてお別れ会を開く。当方も過去、何度か知人の外交官の離任パーティに招かれたことがある。帰国をする外交官の間にも、「十分仕事をやり遂げた」という満足組から、「もう少し海外で仕事をしたかった」といった残念組まで、いろいろある。
 外交官の任期は国によって多少異なるが、通常3年前後だ。中東諸国の外交官には、4年、5年、それ以上といった長期滞在組も結構多い。駐オーストリアの北朝鮮大使を努める金光燮氏(金正日労働党総書記の義弟)のように、1993年3月から赴任し続けている外交官は例外中の例外だ。ただし、北朝鮮外交官では決して珍しいケースではない。駐スイス大使の李哲氏(金総書記の海外資産管理人)は金光燮大使より長期間、海外滞在している。多分、金正日政権が継続する限り、両大使は海外に滞在し続けるだろう。
 外交官人事でも、「上がり人事」で退職前の最後のご奉公として大使、ないしは公使に赴任する場合と、「上へステップするための肩鳴らし」的な人事がある。前者の場合、海外滞在をエンジョイする傾向が強い一方、後者の場合、滞在期間は一般的に短く、赴任中は仕事に没頭する外交官が多い。
 例えば、国連事務総長に選出された潘基文氏(前韓国外交通商相)は駐オーストリア大使時代、深夜の2時、3時まで執務室で働くのが日常茶飯事だった。そのため、大使専属運転手はいつ呼び出されるか分からない為、家に帰ることも出来なかった、という話が伝わっているほど、職務没頭型外交官だった。新国連事務総長にとって、駐オーストリア大使はあくまで「更なる上へ」のステップに過ぎなかったわけだ。
 米国の大使人事も特長がある。米大統領が大統領選で資金を提供してくれた富豪実業家を大使として任命することが多いことだ。駐オーストリアの歴代米国大使は、富豪ビジネスマン出身者で占められてきた。「大使としてしばらく『音楽の都ウィーン』を満喫して下さい」といった典型的な「論功行賞人事」だ。この場合、外交官としての能力やキャリアは問われない。
 ところで、北朝鮮外交官は帰国する時、帰任パーティを開かないし、挨拶もなく、突然姿を消す事が多い。そのため、他国の外交官が後日、北朝鮮外交官の帰国を知る、といったケースが少なくない。南・北外交官間の相違は、韓国外交官が任期が終われば、親族が待っている祖国に帰国できる事を「喜ぶ」のに対し、北朝鮮外交官は外国滞在という特権を失いたくない為、「出来れば帰国したくない」といった思いが強いことだ。

日本外交官の首相批判

 海外で生活している者にとって、たとえ正鵠を射ても、母国(日本)の批判を耳にすると内心、快いものではない。その批判が母国外交官から出てきた場合、驚く以上に、怒りすら感じることがある。そんな経験を最近した。
 駐オーストリアの日本外交官たちが先日、ある集会で「安倍さんは首相になりたかっただけで、何の明確なビジョンをも有していない」「首相ポストが上がりで、それ以上の願望がないから、首相になっても何もできないんだ」等の首相批判を口にしたのだ。
 当方が驚いたのは、安倍晋三首相の人気低迷が国内ばかりか、海外赴任の外交官にまで及んできたからではない。母国の首相を堂々と批判して憚らない日本外交官の感覚だ。
 外交官が同僚と母国の政情で批判的な意見を交換することはあるだろう。私的な時間では外交官といえども1人の人間だ。どのような見解や意見をもっていても批判されることではない。しかし、同時に外交官は国の代表であり、その国益と政策を背負っている立場だ。その意味で、海外赴任中の外交官は母国の政権批判を口にすべきではないだろう。
 ウィーンでは過去、同じようなことが起きたことがある。社会党と自民党連合政権時代の1995年、駐オーストリアの黒川剛大使(当時)が民間政治懇談会「リベラル・クラブ」の招きで「世界政治と日本」というテーマで講演したが、そこで連合政権パートナーの社会党を徹底的に批判し、「社会党はこれまで安保反対、国旗、自衛隊の存在を否定してきた政党ですが、政権入りするとコロッと変身し、全てを承認してしまいました」と述べ、与党社会党の節操のなさを酷評したのだ。国の代表として赴任した大使が自国政府、それも首相が属する与党の政治姿勢を批判することは考えられないことだが、実際あった話だ。
 黒川大使の場合、野合政権と揶揄された連合政権に宮仕えした外務省高官の怒りの爆発とも理解できなくはない。それに比べると、「安倍首相」批判を口にした外交官たちには、外交官としての“軽さ”を感じる。

国連特使の深層心理分析

 セルビア共和国に帰属するコソボ自治州の最終地位交渉がいよいよ大詰めを迎えた。ウィーンでは21日からアハティサーリ国連特使(前フィンランド大統領)がまとめた仲介草案をめぐり、セルビア側とコソボ自治州側代表が最後の協議に入った。
 それに先立ち、アハティサーリ国連特使は同日、オーストリア国際会議場で記者会見を開き、協議の見通しについて語ったが、その時だ。「今回の協議がいつまで続くかは現時点では不明だ。今週から来週にかけて」というべき個所を、「今週から来年にかけて」といってしまったのだ。国連特使は笑いながら、「もちろん(来年ではなく)来週にかけてだ」と修正するという場面があった。いい間違いは誰にでもあることだ。だから、国連特使のいい間違いを取り立ててここで非難する考えはない。
 しかし、コソボ自治州地位交渉をフォローしてきた記者の1人として、当方は国連特使のいい間違いは非常に深い背景がある、と確信している。その間違い発言の深層心理を分析することで、コソボ問題の複雑さ、難しさが読者にも自然に伝わるのではないだろうか。
 90%の住民がアルバニア系で占められているコソボ自治州では、共和国からの離脱を要求する声が強い。その中で過去、武装闘争が生じ、多数の住民が犠牲となってきた経緯がある。セルビア側は「コソボはセルビア文化の核だ」としてコソボの離脱を絶対に認めないからだ。
 一昨年11月からウィーンでスタートした自治州の地位交渉はこれまで50回以上の協議を重なてきた。その成果を踏まえ、国連特使が今月2日、仲介案をまとめベオグラードとプリシュティナに説明してきた。
 仲介案では、「独立」という言葉は使用されていないが、コソボ側に独自憲法の保有を認め、国際機関への加盟や国際条約締結の権利を付与するなど、独立国家の形態が認められている。そのため、セルビア側は強く反発し、議会は今月14日、仲介案に反対する決議を採択している。
 一方、コソボ自治州でも、主権の制限など完全な独立国家からは程遠い内容として批判の声が挙がり、不満をもった住民が今月10日、国連警察と衝突したばかりだ。すなわち、セルビア側とコソボ側のポジションはまったく異なり、妥協の余地がないわけだ。
 しかし、国連特使は紛争双方を交渉テーブルに呼び、妥協を模索しなければならない役割がある。交渉を何日間続けたら解決されるという問題ではないことを国連特使自身が最も良く知っているはずだ。だから、国連特使のいい間違い発言は「協議を来年まで続けても妥協は難しいよ」という本音が思わず飛び出したのではないか。これが当方の国連特使間違い発言の深層心理分析だ。

聖公会との和解報道を否定

 ローマ・カトリック教会総本山バチカン法王庁の「統一とミッションのための国際聖公会・カトリック教委員会」(IARCCM)は20日、英国国教会(聖公会)とローマ・カトリック教会の歴史的な和解が近いと報じた英紙タイムズ(19日付)の報道を否定する声明文を公表した。
 聖公会はここ数年、保守派とリベラル派で内部分裂を深めてきている。タンザニアで今月19日まで開催された聖公会指導者会議(世界聖公会信者数は約7800万人)では、女性聖職者を任命し、同性愛者を公認する米国聖公会(信者数約230万人)のリベラル派聖職者に対し、保守派指導者が「6カ月以内に従来のリベラルな路線から決別しなければない」という決議案を採択して最後通牒を突きつけたばかりだ。
 米聖公会では昨年11月、ワシントンで、同性愛者を公認する女性聖職者キャサリン・ジェファーツショリ主教の第26代首座主教認証式が挙行されたが、そのリベラルな路線に反発する保守派聖職者との間で亀裂が表面化し、分離教会が続出し、資産分割問題で法的闘争が行われるなど、内部分裂が一層深まってきている。
 それで「聖公会の保守派聖職者がローマ法王の権威を認知してローマ・カトリック教会と和解する可能性が出てきた」という声が聞かれ出したのだ。それを受ける形で、英紙タイムズは「聖公会とカトリック教会は和解に向けた提案を年内に行う」と報じたというわけだ。
 ちなみに、英国国王ヘンリー8世が1534年、離婚を認めないローマ法王から決別して独自教会(聖公会)を創設して以来、カトリック教会と関係を断って来た経緯がある。
 バチカン法王庁が「聖公会との歴史的な和解」報道をあっさり否定した背景には、世界のローマ・カトリック教会内に程度の差こそあれ同性愛支持者の聖職者や女性聖職者任命を支持する聖職者がいるからだ。リベラルな聖公会聖職者を切り離して保守派聖職者を吸収するような和解はカトリック教会内にも大きな波紋を及ぼす事は必至だ。そのため、バチカン側が異例と思えるほど迅速に対応し、英紙報道を否定する声明文を公表した、というのが舞台裏ではないだろうか。
 ローマ・カトリック教会の最高指導者、ローマ法王べネディクト16世は先月23日、「キリスト教の統合は長く、困難な旅だ」と述べたが、残念ながらその旅はここ暫くは続くだろう。

ブルータス、お前もか

 スロバキアのローマ・カトリック教会がいま、震撼している。同国教会最高指導者のヤン・ソコル大司教(ブラチスラバ教区)が共産政権時代、情報機関と手を組んで働いていたという容疑が表面化したからだ。肝心のソコル大司教は1月中旬、手術を受けたばかりで、これまで容疑については公式に反論できない状況が続いている。
 同じくカトリック教国ポーランドでも先月、ワルシャワ教区のスタニスラフ・ウィールグス大司教が共産政権の秘密警察の協力者であるとの批判を受け、「聖職実践が難しくなった」との判断から、ワルシャワ大司教のポスト(昨年12月に任命)を辞任したばかりだ。
 共産政権時代の協力者容疑で聖職を辞任した聖職者はウィールグス大司教が初めてではない。ポーランド教会では過去、多くの聖職者が共産政権の情報提供者として告発されてきた。健康上の理由で辞任を表明した同国最高指導者のヨーゼフ・グレンプ枢機卿も一時、同じような容疑を受けたことがある。
 その意味で、ソコル大司教の容疑は「ブルータスよ、お前もか」(シェイクスピアの「ジュリアス・シーザー」のカエサル暗殺時のせりふ)といった衝撃をスロバキア国民に投じているわけだ。
 「ラジオ・バチカン放送」によれば、ソコル大司教の容疑は1987年から88年にかけて共産政権への情報提供者であったというものだ。ちなみに、同大司教は1988年5月に司教に任命されている。
 ローマ・カトリック教会最高指導者、ローマ法王べネディクト16世はポーランド教会に対し、「許し、和解、相互信頼」を求める一方、信者たちには「聖職者の神性」のために祈祷を捧げるように異例の呼びかけをしたばかりだ。欧州カトリック教会の中心の1つ、ポーランド教会の混乱が他のカトリック国に波及することを恐れているからだ。しかし、法王の懸念は現実化してきたわけだ。
 当方は先月、「聖職者とスパイ」という題のコラムの中で「信者たちと自由に接触でき、尊敬も受け、時には家庭生活の状況まで知り得る立場の聖職者はスパイとなれる全ての条件を満たしている」と書いた。冷戦時代は過ぎたが、「聖職者のスパイ容疑問題」はここ暫くは絶えないだろう。

国家のプライド

 どの国にもプライド(誇り)がある。そのプライドを失うような危機に陥ると、パニック現象が生じる事がある。プライドを守るために戦争が生じることだって過去、あった。それほど、国のプライドは大切なものだ。
 アルプスの小国オーストリアにもプライドがある。“ウィンター・スポーツの国”というのがそれだ。1956年冬季五輪大会のアルペンスキー3冠王(回転、大回転、滑降)で日本にもファンが多数いるトニー・ザイラーから、最近では4度のW杯総合優勝者ヘルマン・マイヤーまでスキー選手の英雄は同国では事欠かない。
 そのオーストリア・チームがスウェーデンのオーレで開催されたアルペンスキー世界選手権ではなかなか金メダルが取れなかったのだ。スーパー複合でも昨年W杯総合優勝者べンヤミン・ライヒ選手が銀メダルに終わるなど、有望選手が次々と期待を裏切っていった。
 「今日こそは金メダルを」と期待して忍耐してきた同国のメディアも選手の不甲斐なさに「どうしたのだ」といった厳しい批判が飛び出してきた。女子大回転で二コル・ホスプ選手が同国初の金メダルを取ると、メディアの批判の目は男子選手に集中。そのような中で行われた男子滑降では、なんとマリオ・シャイバー選手の8位が最高。大回転でもマイヤー選手の21位が最高で他の選手はそれ以下、という歴史的な屈辱を味わったのだ。
 その落胆ぶりは、サッカー王国ブラジル・チームがW杯で決勝トーナメントに進出できず、グループリーグで敗退したようなショック―と考えていただいていいだろう。スポーツ欄のコラムでは「言い訳はもう聞きたくない」といった叫びに近い糾弾が目立ったほどだ。
 そして世界選手権10日目、マリオ・マット選手が男子回転で念願の金メダルを取ると、同国メディアは前日までの批判や嘆き節を忘れ、「オーストリアの男子アルペンスキーの名誉を救ってくれた」という見出しでマット選手を持ち上げるなど、選手と一緒になって大はしゃぎ。そして選手権最終日の18日、国別競争(スーパー回転と回転の総合)でも見事、その選手層の厚さを証明して金メダルを獲得、3個の金メダルを含め合計9個のメダルで、国別メダル数でも第1位となった。同国アルペンスキーのハンス・プム会長も「わが国の名誉は守られた」と大喜びを表したことは言うまでもない。
 アルペンスキーの国オーストリアは最初から開催国スウェーデンの勢いに推されていたが、選手権最後の2日間で金メダルを2個取り、ようやくそのプライドを守りきったわけだ。「終わりよければ全て良し」だが、個人でも国でも、そのプライドを守るということは並大抵の事ではない。

元気な親北組織の会報メール

 創設30周年を迎えた北朝鮮の欧州最大フロント組織「朝鮮再統一・平和のための国際連絡委員会」(CILRECO、本部パリ)から19日、新しい会報メールが届いたから、読者の皆さんと分かち合いたい。
 会報の最初の出足には、太字で「コリアの独立再統一への国際連帯のためにコリア民族の愛国的統合への主導的なアピール」といった内容の激文が掲載されている。そして「国の再統一はコリア民族の死活問題だ」と強調して、「このプロセスは2000年6月15日の南北共同宣言のお陰で歴史的に新しい段階に入った」と説明している、といった具合だ。
 とにかく、元気のいい文章が続く。もちろん、CILRECOの会報メールの内容はほどんどが北朝鮮労働新聞のリライティングだ。その意味で、新しい内容はないが、行間に本音がちっらと垣間見えることがあるから、CILRECO会報メールを直ぐ「ゴミ箱」に捨てるわけにはいかないのだ。
 会報では最重要ポイントとして、「南北は1つだ。北なくして国はなく、南なくしても長く存在できる国とならない。南北分断は民族の国益に合致しない」と記述している。そこには、1980年代にみられた、赤裸々な北朝鮮の韓国吸収論はない。民族の愛国心を鼓舞することで南北の再統一を実現する、といったソフトな政策が前面に出てきている。だから、「朝鮮半島での武装闘争を回避しなければならない」と訴え、「国内ばかりか海外居住の全てのコリアンは南北共同宣言を支持し、死守しなければならない」と呼びかけているわけだ。その上で、「コリア民族の独立再統合の最大障害であり、朝鮮半島の紛争の主因である、韓国駐留の全米軍の撤退」を何時ものように要求する、といった具合だ。
 当方は昨年末、「北朝鮮最高指導者の金正日労働党総書記が来年、65歳を迎えるから、世界のフロント組織が総動員されて、活発なプロパガンダが展開されるだろう」と予想するコラムを書いたが、欧州の北朝鮮フロント組織CILRECOは早速、その任務を忠実に果たしているわけだ。
 昨年10月の核実験で自信を深めた金正日労働党総書記は今年を「核保有国認知」元年として位置付け、活発な外交・メディア政策を展開していくことが予想される。それに呼応するように、CILRECO会報メールは益々、“元気良くなり”饒舌となっていくだろう。

金正男氏の勝ち馬チャンス

 北朝鮮最高指導者の金正日労働党総書記の後継者問題を競馬レースに例えれば、長男の金正男氏(36)はレースを制して勝ち馬となるチャンスがまだあるのだろうか。正男氏が2001年5月、日本に不法入国したことが発覚して、父親正日総書記の怒りをかって以来、後継者レースで勝利のチャンスはなくなったと巷では言われ続けてきたからだ。正男氏はつい最近もマカオから北京に姿を現した時、付き人は1人もなく、単身で動いていた。これは正男氏が後継者レースから完全に離脱した証拠だ、と解釈されたばかりだ。正男氏に代わって後継者最有力と見られている正哲氏(26)が欧州に姿を現した時、多数の付き人、警備員を伴っていたのとは好対照というわけだ。
 ところが、最近、欧州居住の北朝鮮消息筋が「金正男氏の後継者の目は完全には消滅していない」というではないか。その発言の背景には、他の馬、すなわち二男の正哲氏と三男の正雲氏(24)がまだ20代と非常に若く、後継者の選出には時期尚早であることから、30代半ばを迎えた正男氏にはまだ逆転できる時間がある、という読みがあるのかもしれない。
 先の消息筋は「明確な点は、後継者レースは3人の息子たちの争いだ。ファミリー以外の対抗馬は今の所見当たらない。3人の中で正男氏が大きく遅れをとっているとは思えない。正男氏がある日、他の2人を押しのけて後継者に選ばれる可能性はある」と指摘し、「欧州には正男氏の資金管理を担当している人物がいる」と示唆した。すなわち、「正男氏は自由に使えるかなりの資金を欧州の銀行に預けている」というのだ。
 米国の大統領選挙を見ても分かるが、選挙資金をどれだけ有しているかは当選の重要な用件だ。資金なくしては、選挙用TVスポットも広告も出せない。もちろん、北朝鮮の後継者争いは米大統領選と違うが、当選する為には資金が必要という点で大きな相違はないのではないか。正男氏が本当に巨額の資金を欧州の銀行に保管しているとすれば、後継者争いの決定的な時、その資金を投入できるわけだ。
 金正日総書記の一声で後継者が選出される場合(通常)、正男氏の資金は大きな役割を果たす機会が少ない。しかし、金総書記が単独で後継者を選べない場合(「健康の悪化」や「軍部の台頭」など)、この時こそ、正男氏の海外資金が効果をもたらすのではないか。正男氏の欧州資金が武器売買からの収益金か、それとも個人資金かは大きな問題ではない。
 いずれにしても、「正男氏の後継者選出のチャンスはまだある」と見ていた方が無難かもしれない。
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