ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

2007年12月

北朝鮮人を装う中国不法移住者

 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によれば、英国で今年、245人の北朝鮮人が難民申請をしたという。これが事実だったら、大事件だ。脱北者が北朝鮮から中国経由で欧州入りし、海峡を越えて英国大陸にたどり着いたことになる。その逃避行は地球半分ほどの距離にもなる。
 しかし、英国当局は冷静だ。なぜならば、ロンドン側は正式には表明していないが、自称・北朝鮮難民を本当の北朝鮮国民とは受け取っていないからだ。脱北者が英国まで逃亡するためには資金と支援者がなくては不可能であり、通常の脱北者では実現できなことだ。その代わり、英国側が考えていることは、中国系人身売買業者の手を借りて欧州入りした中国人不法移住者ではないか、ということだ。
 当方が住むオーストリアでも今年に入って2人の自称・北朝鮮人が難民申請中だ。彼らは「北朝鮮国籍を名乗っている」という。そこで当方はオーストリア内務省関係者に確認したところ、「難民を申請した人物は北朝鮮から政治亡命してきたと主張しているが、われわれは中国人と見ている。彼らの中には北朝鮮旅券を保有している場合もあるが、その旅券の真偽は不明だ」と説明する一方、「われわれは彼らの身元を確認できる情報を有していないから、難民判定は非常に難しい」と嘆く。同関係者によると、内務省が雇ったコリア語通訳者が自称・北朝鮮難民にインタビューしたが、コリア語がまったく喋れず、嘘がバレたというケースもあったという。
 明らかなことは、ここ数年、北朝鮮国籍を名乗る難民が欧州各地で難民申請するケースが増えてきていることだ。ジュネーブ難民協定に基づいて政治亡命者の資格を獲得できるチャンスは北朝鮮国籍者の場合、高いからだ。
 ちなみに、欧州、中東各地でかなりの数の北朝鮮労働者が働いている。彼らの一部が難民申請をするケースもあるが、その数は非常に限られている。平壌から派遣された治安関係者の監視が強いからだ。

クレムリンの主人とロシア正教

 ロシア正教は今年1年間で首都モスクワで100以上の新しい教会、会堂などを開いた。昨年末までモスクワには730の正教建物、会堂があったが、その数は今年末現在、851に拡大したという。これはロシア正教の最高指導者アレクシー2世がこのたび明らかにした数字だ。ロシア正教がプーチン大統領時代に入って、急速に勢力を拡大し、それに伴い政治的影響力をも回復してきたことが教会数でも明らかになったわけだ。
 バチカン放送によれば、1917年のロシア革命前は、ロシア正教は全土で97000の教会、修道院1500、57の神学校があったというから、ロシア正教は依然、革命前の勢力からは程遠いのであるが。
 興味深い状況は、ロシア正教の勢力圏拡大時期とプーチン大統領政権時代の8年間が重なることだ。プーチン大統領はロシア正教を積極的に支援し、国民の愛国心教育にも活用してきた。実際、プーチン大統領は教会の祝日や記念日には必ず顔を出し、敬虔な正教徒として振る舞ってきた。
 そのプーチン大統領が12月、メドベージェフ第1副首相を後継者に推薦すると、真っ先に支持声明を表明したのはアレクシー2世だった。そして同副首相が「プーチン大統領の政治手腕をロシア国民のために生かしたい」として、同大統領を首相に選出する意向を公表すると、アレクシー2世は「プーチン大統領とミドベージェフ副首相のコンビはロシアの祝福だ。これでプーチン大統領の政治が今後とも継続されることになる」と全面的な支援を約束しているほどだ。
 考えてもらえばいい。ローマ・カトリック教会最高指導者ローマ法王ベネディクト16世が出身国ドイツの政治やバチカン法王庁のあるイタリアの政界について、アレクシー2世のように特定の政治家を支持声明することはない。同2世の支援声明は宗教指導者としてはまったく異例のことだ。それだけ、ロシア正教指導者はプーチン大統領に入れ込んでいるわけだ。ロシア正教指導者とクレムリンの主人は現在、失った大国復活を目指して運命共同体の状況ともいえる。

自爆テロリストの改心への道

 パキスタンの野党指導者、ベナジル・ブット元首相が27日、自爆テロリストによって暗殺された。冥福を祈る。
 ここでは自爆テロについて、少々、当方の所感を述べたい。自爆テロリストは、少なくとも「死後の世界」を信じている。自爆で無に帰すのではなく、「自身の行為は死後、必ず報われる」と信じている。その信念を支えているのが、「至上目的のために自分を犠牲にする」といった高揚した殉教精神だろう。
 さて、自爆テロリストの「死後の世界」への信仰は過ちではない。正しいのだ。人間は肉体生活だけではなく、肉体生活を終えた後に訪れる「死後の世界」は、人間の霊的生活の始まりを意味するからだ。次に、「死後、自身の行為(自爆テロ)は報われる」という信念は、どのように解釈を試みようが、大きな過ちだ。他者ばかりか、自分をも殺害する行為は、イスラム教の教えだけではなく、どの宗教の教えを駆使したとしても、受け入れられない蛮行に過ぎない。
 すなわち、自爆テロリストたちは、世俗社会が久しく失った「死後の世界」への篤い信仰を有している一方、誤った教えとイデオロギーによって自爆を強いられているわけだ(ただし、われわれが自爆テロに言い知れないショックを受けるのは、後者が理由ではなく、前者、「死後の世界」への信仰を有する人間に対して「恐れ」と「違和感」を感じるからだ)。
 自爆テロリストに対し、「死後の世界」への信仰も「殉教精神」も過ちだ、と批判したとしても効果がない。その批判が全て正しいわけではないからだ。自爆テロリストたちから、「アラー、神の教えを知らない無知なる人間」と冷笑を買うだけだ。換言すれば、「死後の世界」を信じない人間や社会から批判されたとしても、自爆テロリストの心は動かされないのだ。その意味で、世俗社会は自爆テロリストに対し、非常に無力だ。
 自爆テロリストを改心させる道は、「あなたの自爆行為は死後の世界でも糾弾される」と冷静に説明することだ。その「説明責任」を担うのは宗教指導者たちだ。

日韓外交官、金正男氏を追う

 クリスマス休暇に入る直前、北朝鮮問題を担当する韓国人外交官と公安出身の日本人外交官がウィーン市内のレストランで会食した。
 ソウルと東京の首都を舞台としたトップ交流だけではなく、海外駐在地でも必要に応じて両国外交官が接触し、情報を交換することはある。
 ところで、日韓外交官の会食の場で北朝鮮最高指導者・金正日労働党総書記の長男、金正男氏が話題に挙がったという。
 「金正男が欧州を度々訪問しているという情報がありますが、韓国側ではどのように見ていますか」
 「こちらでも、正男の動きは注目していますが、これまでのところ特別な情報は入手していないですね」
 といった会話が交わされたらしい。
 金正男氏が最近、フランスのパリに現れ、日本のテレビ局が正男氏を目撃している。その前にも、正男氏は度々フランス入りしていることが確認されている。もちろん、正男氏だけではない。金総書記の故高英姫夫人も治療の為に何度もパリを訪問していた。正男氏は2004年11月には、パリからホテルの運転手を雇ってミラノ経由でウィーンまで足を伸ばしている。
 興味を引く点は、金正男氏が頻繁に欧州入りすることから、欧州駐在の日韓外交官は同氏の動きをマークするように上司から指令を受けているということだ。
 一般的に、北朝鮮指導部の動きに関する情報は韓国側が豊富だが、金正男氏に関しては日本側が一歩、先行している、ともいわれる。正男氏が2001年5月、日本への不法入国で拘束された際、正男氏の指紋は日本の公安側によって取られた。日本が入手した正男氏の指紋はこれまで同氏の身元確認の最大の武器となってきた。なぜならば、旅券は簡単に偽造できるし、写真も完全ではないが、指紋は騙すことができないからだ。
 正男氏がパリ入りした時、フランス当局は日本側から提供された正男氏の指紋で身元を確認する。そのお返しとして、日本側はフランスの治安機関から正男氏のパリ入りを韓国当局より早い段階で知らされる、といった恩恵を受けているはずだ。
 なお、金正男氏の欧州の親戚関係者によれば、正男氏は現在、欧州にはいない。

米政権、対北政策を修正?

 ブッシュ米政権はここにきて北朝鮮の核問題に対しては強硬姿勢が目立つ一方、ウラン濃縮活動を継続するイランの核問題では妥協を模索する動きすら見せてきている。
 まず、北朝鮮の核問題だ。米国は6カ国協議の合意に基づき、北の核関連施設の無能力化を推進し、北朝鮮に対して人道的、エネルギー支援などを積極的に実施する一方、ニューヨーク・フィルハーモニーの平壌公演を進めるなど、米朝関係の正常化を視野に入れた外交政策を展開させてきた。
 それがここにきて、北朝鮮から受け取ったアルミ管から、濃縮ウランの痕跡が検出されたという情報をメディアに流す一方、日本の拉致問題の解決までテロ支援国リストの削除に消極的な動きすらホワイトハウスから聞こえ出してきた。もちろん、その背後には、北朝鮮が核施設の完全な申告を躊躇していることに対し、ブッシュ政権が圧力を強めているだけで、路線の変更ではない、と受け止めることも可能だ。
 一方、米国はウラン濃縮活動を停止しないイランに対して第3の安保理決議の採決を目指してテヘランに政治的、軍事的圧力を高めてきたが、そこに米国家情報評価(NIE)のイラン報告が公表され、「イランが2003年に核兵器製造計画を断念した」という内容が明らかになった。それを受け、欧米の対イラン安保理決議への熱意は冷える一方、イランのアハマディネジャド大統領は今月5日、NIEの報告を「イランの勝利だ」と豪語したほどだ。自信を深めたイラン側は今日、プシェール原子力発電所への核燃料の供給計画を推進する一方、ウラン濃縮活動の継続を表明している。
 これらの動きを振り返ると、任期をあと1年余りを残すだけのブッシュ政権が対北、対イラン政策で最後の調整に乗り出してきた可能性が考えられるのだ。すなわち、ブッシュ政権が対イラン政策では一方的な強硬政策を緩和する一方、対北政策では以前の強硬路線に復帰する気配が見えてきたのだ。
 そこで考えられることは、イラク情勢が色濃く反映しているのではないか、ということだ。すなわち、ブッシュ米政権はイランとの間でイラクの治安問題で何らかの合意を実現したのではないか、という推測が浮上してくる。その見方が正しいとすれば、ブッシュ米政権は、イラク情勢をイランに人質にされていた時とは異なり、対北政策で本来の強硬路線に復帰できる余裕が出てくるわけだ。

クリスマスとローマ法王

 世界に約11億人の信者を抱えるローマ・カトリック教会の最高指導者、ローマ法王ベネディクト16世は19日、今年最後の一般謁見で「信仰のないクリスマスは空虚であり、内容がない」と語った。なんと明快な指摘だろうか。
 ドイツ出身の学者法王ベネディクト16世は今年5月のブラジル訪問時にも、聖母マリアの巡礼地アパレシーダで開催された第5回南米・カリブ地域司教会議で「世俗主義」「快楽主義」「変節主義」などに警告を発した後、「もし神を知っているならば、全ての問題は解決できる」と強調した。なんとクールな発言だろうか。
 「欧州のエリート教会」出身の法王にとって、南米教会が直面する中絶問題や貧困問題も「神を知ったら」解決できるという強い信念がある。それは間違いなく、正しい。しかし、理路整然としたローマ法王の演説が果たして「貧者の教会」の代表、南米教会の聖職者や信者たちの心まで届いたか、どうか分からない。ベネディクト16世にとって、少なくとも「知る」ことは即「救い」を意味するのだろう。
 ベネディクト16世は「現代人はキリスト教の中核、神の子の生誕とその秘蹟を理解することは難しいだろう」と説明する一方、「しかし、神の子イエスへの信仰なくしてクリスマスを祝ったとしても、どのような価値があるだろうか」と問い掛ける。
 法王の「もし神を知ったら」と「神の子イエスへの信仰がなければ」の発言で共通している点は、反論の余地のない論理性があることだ。
 一方、それらの発言を聞く平信者たちの反応はどうだろうか。全て納得できる信者は少ないはずだ。多くの平信者たちは「どうしたら、神を知り、どうしたら、イエスへの信仰を培うことができるのか」といった具体的な処方箋を求めているのではないだろうか。
 もう少し突っ込んでいえば、「神は実存するか」「イエスの十字架の意味」「なぜ、神を信じても救われないのか」「死後の世界」等の疑問に対する明確な返答を提示せずに、「神を知れ」「イエスへの信仰を持て」と繰り返したとしても、クリスマスのショッピングに奔走する人々の耳には届かないのではないか、といった懸念を覚える。


プーチン大統領の3本の柱

 物が安定するためには1本の支えでも、2本の支えでも十分ではない。それでは左右、前後に揺れ動き、風が強い日には倒れてしまう。物が安定する為には最低、3本の支え、柱が必要となる。
 この真理は物だけに当てはまるのではない。人間がその権力を維持したり、その教えを広く述べ伝えるためにも、3人の支えとなる人物や何らかの対象が必要となる。話は少し飛躍するが、イエスには3弟子がいたし、神ですら、天地創造の際には、3人(?)のルーシェル、ガブリエル、ミカエルの3天使長が仕えていたではないか。
 前口上が長くなった。来年5月に最高権力者の座から降りるロシアのプーチン大統領は、その権力を維持し、2012年の大統領選で再びカムバックするために、これまで心を砕いてきた、といわれる。当方はこのブログで「江沢民前総書記に倣え」というタイトルで、「プーチン大統領は第17回中国共産党大会で中央政治局常務委の人事権を掌握した江沢民前総書記の政治手腕を熱心に研究中だ」と書いたことがある。
 そのプーチン大統領がメドベージェフ第1副首相を大統領に推薦する一方、同副首相から「プーチン大統領の政治手腕をロシア国民の為に生かしたい」という要請を受けて首相に就任することに決まったばかりだ。この人事について、「メドベージェフ副首相がサンクトペテルブルク大学法学部の後輩であり、先輩プーチン大統領のもとで17年間忠誠を尽くしてきた人物だから、後継者に任命された」という分析が主流だ。
 確かに、忠誠心のある副首相を大統領とすることで、何時でも首を据え返ることができる一方、自身が首相に就任して大統領を監視しながら、国民に向かって顔を売ることができる。しかし、これでは2本の柱に過ぎない。先に書いたように、安定する為には3本の柱が必要だ。忠誠心のある人物を大統領にし、自身は首相に就任するだけでは決して磐石ではない。なぜならば、権力闘争は熾烈であり、権力の味を一度味わった人物が「はい、分かりました」といってそのポストを譲る、と考えるのは余りにも世間知らずだからだ。
 しかし、賢明なプーチン大統領は3本目の柱を既に準備中だ。すなわち、国営天然ガス独占企業ガスプロム会長のポストだ。大統領職を離れる前までには、同ポストはプーチン大統領に握られているだろう。メドベージェフ副首相が2002年6月以降から就いていたガスプロム会長職を握る事で、プーチン大統領は今後もエネルギーを外交武器として自由に駆使することができる。
 このようにして、プーチン大統領は、忠誠心のある大統領、首相就任、国営天然ガス独占企業ガスプロム会長という「3本の柱」を巧みに操りながら権力基盤を維持する考えであろう。

コソボ独立はセルビアに恩恵

 セルビア共和国帰属のコソボ自治州は来年初めにも独立宣言する意向だが、同自治州の独立はセルビア経済に大きな恩恵をもたらすだろう。ウィーン国際比較経済研究所(WIIW)の旧ユーゴスラビア連邦経済専門家のウラジーミル・グリゴロフ教授は当方との会見の中でこのように説明しながら、「皮肉なことだが、政治的観点からは容認できないコソボの独立も、経済的側面からみれば、セルビア経済の発展に大きな恩恵となる」と主張するのだ。
 教授によれば、「コソボ経済が回復し、中小企業が活発化すれば、その最大の恩恵を受けるのはセルビア経済だ。コソボには地下資源、特に褐炭が豊富であり、セルビア側もその利点を利用できる。セルビアはコソボ最大の貿易国となるだろう」という。
 セルビア共和国とコソボ自治州は過去1年間以上、自治州の最終地位問題で直接交渉を重ねてきたが、コソボは「独立」を、セルビア側は「自治権拡大OK、独立反対」の立場を固守し、交渉ではいかなる合意も実現できずに終わった経緯がある。
 ところで、教授が懸念する点は、欧州連合(EU)がコソボの独立を容認した場合、セルビア側はその後、EUとの関係が難しくなるのではないか、ということだ。EUがコソボ独立承認の代償として、セルビアの欧州統合プロセスの促進を約束したとしても、セルビア側にその善意が通じるかどうかは分からないからだ。
 セルビアでは来年、大統領選、地方自治体選が実施されるが、EUとの関係問題が選挙の大きな争点となることは必至だ。民族派政党がアンチEU路線を有権者に訴えて支持を獲得する可能性だって十分考えられる。だから、グリゴロフ教授は「セルビアは来年、将来の方向について重要な政治決断を強いられることになる」とみている。
 いずれにしても、バルカンの政情安定はEUの発展にとっても不可欠な条件だ。そのバルカンの盟主・セルビアの動向は、それゆえに、欧州の発展の死活を握っている、ともいえるだろう。

2枚の報道写真

 欧州連合(EU)の域内外の境界線を規定したシェンゲン協定が21日零時から拡大された。24カ国、約4億人が出入国審査を受けずに自由に往来できるようになった。喜ばしいことだ。欧州のメディアでは、今回の出来事を1989年の冷戦時代の“鉄のカーテン”の撤廃と比較する論調が目立つ。すなわち、第2の鉄のカーテンが無くなった日、というわけだろう。
 ところで、第1の“鉄のカーテン”が撤廃された瞬間、当方もその現場にいた。オーストリアは冷戦時代、旧東欧諸国と国境線で対峙してきた。そのオーストリアとハンガリー間の“鉄のカーテン”が撤廃されることになった。当方はオーストリア外務省が準備した取材バスに乗って、両国間の国境まで出かけた。そしてオーストリアのモック外相とハンガリーのホルン外相(いずれも当時)が両国間に張り巡らされていた鉄条網をカッターで切った瞬間の写真を撮影したのだ。
 当方は写真記者ではないので、自慢できる報道写真を撮った思い出が少ない。しかし、当方にも忘れる事ができない2枚の報道写真がある。1枚目は巨人の王貞治選手(当時)が世界記録となるホームランを打った瞬間を一塁ベース側から撮影した写真だ。2枚目は、先の“鉄のカーテン”が撤廃された瞬間の写真だ。プロの写真記者からみたら、角度や光の濃度で完全ではないだろうが、当方にとっては記念すべき報道写真となった。
 王選手の時は、モーター付き連写カメラで撮った。その中の1枚が掲載された。完全ではないが、十分使用可能な写真だったと思っている。当方は通常、会見相手の顔写真以外はロイター通信やAP通信の報道写真任せだったが、鉄のカーテンの場合、何故か自分で現場を撮影したいと思い、普段使用しない重いカメラ・バックを抱えて外務省の取材バスに乗り込んだのだ。
 素晴らしい報道写真は読者に数百行の関連記事よりも大きなインパクトを与える。歴史的瞬間を撮った報道写真を見るたびに、写真記者には脱帽だな、と思わされる。

域外境界線の撤廃の光と影

 欧州連合(EU)内の域外境界線を決めたシェンゲン協定の範囲の拡大に伴い、今月21日零時から24カ国、約4億人の欧州国民は出入国審査を受けずに域内を自由に往来できるようになった(陸路だけ。空路は来年春以降)。オーストリアのオトマル・カラス欧州議会議員は20日、ウィーンでの記者会見で、「18年目前にオーストリア・ハンガリー間の“鉄のカーテン”が撤廃されたが、第2の鉄のカーテンというべきシェンゲン協定の域外国境線、対ハンガリー、対チェコ、対スロベニア、対スロバキアの境界線(総距離約1300キロ)が撤廃され、自由に往来出来るようになった。シェンゲン協定の拡大は国民に自由と喜びを与える歴史的な日だ」と少々、興奮しながら語り、「スイスとリヒテンシュタインがシェンゲンに加盟した日には、オーストリアの域外国境線はなくなり、わが国は文字通りに欧州の中心に位置することになる」と説明した。
 もちろん、「自由な人、ものの移動」は素晴らしいことだ。経済的にも、域外境界線の監視のために配置してきた警備員を国内の警備強化に配置移動できる。また、境界線での出入国管理がなくなれば、待ち時間もなく、自動車が放出するCO2も減少するだろう。
 このように書けば、全てが好い事ばかり、といった印象を与えるが、そうではない。太陽が出れば、影も出てくるように、境界線の往来が自由化すれば、それだけ治安問題や不法移住者問題が更に深刻化することが予想されるからだ。実際、オーストリア国民の過半数は「治安の悪化」を懸念している。これまで域外境界線であったオーストリアのブルゲンラント州南部では、急増する犯罪に対応する為に自衛用の武器を購入する住民が増えてきた、という情報もあるほどだ。
 カラス議員は「組織犯罪グループが境界線の撤廃を悪用する危険性はある。自由は危険も伴うからだ。そのために、シェンゲン情報システムが重要となる。幸い、同システムは機能している。犯罪者の動向は即時、全ての加盟国に通達できる体制を敷いている」と述べた。
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