ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

2008年05月

中朝の「ギブ・アンド・テイク」

 中国の共産党、政府の現役官僚たちが北朝鮮情勢を分析した「対北朝鮮・中国機密ファイル」(欧陽善著、文藝春秋)を読んでいたら、「中国は道義上から、また、経済的にも軍事的にも朝鮮をずっと援助し続けてきたのだが……、この50年間余りの中朝間を見る限り、中国からのギブはあってもテイクはないという関係が続いてきたといって間違いないだろう」と記述されている。そして、このような一方的な関係に対し、中国内で不満の声が高まっているという。
 中国官僚たちの不満は理解できる。よりによって、自主独立を建前とする主体思想を国是とする北朝鮮が、中国からの支援頼みである現状は異常だからだ。与える側(中国)が時間の経過と共に「与え疲れる」のは当然かもしれない。もちろん、著者が指摘しているように、中国を無視した北朝鮮の「ミサイル発射」と核実験が中国指導部を激怒させ、より「与え疲れ」現象を増幅させていったわけだ。
 ちなみに、北朝鮮が国是の主体思想を決定的に放棄するようになった契機は、皮肉にも韓国の金大中元大統領が始めた太陽政策だ。そして、韓国側の過去10年間の太陽政策は北朝鮮の主体思想を完全に形骸化していった。歴史家は後日、太陽政策の歴史的意義としてその点を指摘するはずだ。
 ところで、北朝鮮を弁護する訳ではないが、金正日労働党総書記は中国に「ギブ」している。最近では、北朝鮮は中国・四川大地震からの復興を助けるため、中国に10万ドルの資金を提供している。それだけではない。「憎き日帝」の日本に対しても1995年の阪神淡路大震災の際には、北朝鮮は被災した朝鮮住民のため支援している。北の支援額とその内容はあくまでも象徴的な水準だが、同国は時には「テイク」だけではなく、「ギブ」しているわけだ。
 なお、「与え疲れた」中国側を慰労するとすれば、新約聖書「ルカによる福音書」第6章38節のイエスの言葉だ。「与えよ。そうすれば、自分にも与えられるであろう」と。人間にとって、「与えて忘れる」ことは容易ではない。国家でも同様だろう。それゆえに「与える」ことの価値があるわけだ。
 少し付け加えるならば、「与え、そして与えながら、忘れられることが多い国」もある。それは日本だ。日本は国連に20%余りの分担金を支払い、国際機関を通じてさまざま財政・金融支援を行っているが、国際社会からはそれ相応の評価を受けられないでいる。

金総書記用の高速ボート輸入?

 当方は4月、オーストリア商工会議所が公表した同国の2006年度対北朝鮮貿易データーを紹介したが、同国の2007年度対北貿易統計(暫定報告)を入手したので、読者に最新情報を報告する。
 オーストリアの2006年度対北貿易総額は約292万ユーロ、輸出総額は192万ユーロ、輸入総額は98万ユーロであったが、昨年度は対北輸出総額が246万ユーロと前年度比で約27・8%、輸入総額は約140万ユーロと前年度比で42・5%と、それぞれ大幅に増加したことが判明した。
 当方は前回のコラムで、「オーストリアにとって北朝鮮は147番目の貿易パートナーだ。同国企業にとって、北朝鮮市場はまだ未開拓地、といったところだろう」と書いたが、低水準ながらも両国貿易は昨年度、拡大したことが明らかになったわけだ。
 ところで、貿易統計を詳細に見ると、対北輸出が急増したのは、水上用乗物、簡単に言えば、ボートとその関連品(約98万2900ユーロ相当)が平壌に輸出されたからだ、ということが分かった。ボート関連の輸出が2007年度の対北輸出総額を引き上げたわけだ。
 恒常的な食糧危機に直面している北朝鮮が昨年度、不足する日常品や医療関係品を前年度比より大量に輸入した、というのではなく、贅沢品のボートとその部品購入の為に100万ユーロ余りを出費していたということになる。その目的は明確だ。北朝鮮国民にボートの楽しさを教えるためではなく、同国最高指導者・金正日労働党総書記の為だ。
 北朝鮮は過去、金総書記の誕生日プレゼントのためにオーストリアのボート製造会社から高速ボートを購入したことがある。そこで北朝鮮に高速ボートを輸出した実績のあるウィーン市のボート製造会社に電話して確認してみた。会社の責任者曰く、「わが社は知らない。貿易統計が間違っているのではないか」という。
 そういえば、同会社が北朝鮮に高速ボートを輸出した時も、こちらが電話で確認を取ろうとしたら、「商の内容をメディア関係者に公表する必要はない」と言われ、断れたことがあったけ。
 最後に、駐オーストリアの北朝鮮大使館パク商務官にボート関連輸入について聞いた。同商務官曰く「わが国はボート類を輸入できる国力がある。それも100万ユーロ以下のビジネスではないか」と説明し、ボート関連輸入を「スモール・ビジネス」と呼んだ。

ホワイト・ライ(白い嘘)

 社会経験をある程度積むと、「嘘はダメ」では人間関係がスムーズにいかないこともある、と理解できる。ここでは「嘘」の市民権を主張しているのではない。人生を生きるうえで「嘘」が潤滑油のような機能を果たすこともある、という事実を再確認しているだけだ。
 しかし、「建前」と「本音」が交差する政界では、「嘘」が発覚すると、嘘を言った政治家の政治生命が途絶えることもある。海千山千の集まりである政界の舞台裏では通常、「嘘」や権謀術策が幅を効かしているが、建前上は「嘘」はダメ、ということになっているからだ。
 最近では、ハンガリーのジュルチャー二首相の嘘発言がある。同首相は2006年5月の党会合で「自分は国民に嘘を言ってきた」と発言、その内容がメディアに流れたため、国内で反政府デモが起きたほどだ。同首相は同年4月の総選挙で「減税はしない」「社会福祉の強化」などを繰り返し主張し、勝利を勝ち取ったが、第2次ジュルチャー二政権は選挙後、国家財政の巨額の赤字を立て直すために緊縮政策に取り組まざるを得ず、増税も必要となってきた。そのため、「国民を騙し続けてきた」という首相の告白発言となったわけだ。どの国の政治家も選挙になると有権者の支持を得る為に理性を失い、有権者の前では平気で嘘をいうものだ。「嘘つき」はハンガリー首相だけではない。
 一方、過去の聖人、預言者は決して「嘘」をつかなかったか、というと、どうやらそうでもない。例えば、イエスだ。新約聖書のマタイ福音書16章28節やヨハネ福音書21章18節を読むと、十字架から復活したイエスは弟子たちに「再臨」を約束し、黙示録22章20節では使徒ヨハネに「しかし、わたしは直ぐに来る」と語ったが、イエスがその直後、「再臨した」とは聞かない。
 しかし、イエスの嘘(「「直ぐに来る」)に励まされた多くのクリスチャンたちは自分の生きている時代にイエスが再臨すると思い、激しい迫害を乗り越えていったわけだ(余りにも待たされた結果、多くのクリスチャンたちは今日、もはやイエスの再臨に関心がなくなってきた。世界最大のキリスト教、ローマ・カトリック教会の総本山バチカン法王庁も「再臨問題」については多くを語らなくなった)。
 ところで、イエスの「嘘」は英語では「ホワイト・ライ」(White Lie)となる。すなわち、使徒たちが困難を克服して伝道に励む事が出来るように信仰を鼓舞する目的で出た、善意の「嘘」を意味するからだ。ちなみに、悪意の嘘を「ブラック・ライ」と呼ぶ。人間関係の潤滑油的な役割をする「嘘」は、多くの場合、前者だ。

ユーロ2008の経済効果

 欧州サッカー選手権(ユーロ2008)の開催が差し迫ってきた。最近まで「娘24年間監禁性虐待事件」、その直後起きた「5人家族虐殺事件」の報道で忙しかったオーストリア・メディアもここにきてユーロ2008一色となってきた。
 「わが国が開催地となったスポーツ・イベントとしては最大級のユーロ2008は国民経済に大きな恵を与える」と予想され、取らぬ狸の皮算用と笑われることを覚悟で「ユーロ2008」の経済効果が話題となっている。ちなみに、オーストリアでは4カ所の競技場で17試合が開催され、約60万人のサッカー・ファンが会場に足を向けると予想されている。
 オーストリアでの報道によると、ユーロ2008の経済効果は売上総額11億3200万ユーロ、同年度の国内総生産(GDP)を0・21%引き上げると予測している。ユーロ2008の恩恵を受けるのは主に観光業者と小売業者たちだ。同国商工会議者によると、総宿泊日数は198万日と計算し、フランス、ドイツ、イタリアの観光客は滞在平均4日間、1日平均250ユーロを出費すると計算している。同時に、雇用市場にもいい影響を及ぼし、13389人の追加雇用(主に、観光業分野)が生み出されるという。
 経済効果だけではない。イメージ・アップも計り知れない。特に、アムシュテッテン市の「娘24年間監禁性虐待事件」、その直後発生した「5人家族虐殺事件」で、アルプスの小国のイメージは急速に悪化傾向にあった矢先だ。ユーロ2008で暗雲を払拭したいところだろう。
 ところで、ユーロ2008の開催を苦々しく思っている観光業者もいる。例えば、ウィーン市内の5星ホテル経営者だ。ユーロ2008期間、他の国際会議がオーストリアで開催されない為、6月の5星ホテルの予約率は良くないのだ(サッカー・ファンが宿泊するホテルは通常、国際会議参加者が利用する5星ホテルではなく、民宿や3星以下のホテルが中心だ)。また、通常の観光客もユーロ2008で混乱するウィーン市を避けるケースが増えているという。
 なお、同国内務省は、過激なサッカー・ファンへの対応やテロ対策の為に、27000人の警備隊員を総動員して安全対策に当たる予定だ。

北の男たち、ダンスを学ぼう

 北朝鮮最高指導者・金正日労働党総書記が数年前、同国の美しい女性たち(通称「喜ばせ組」)をウィーンに派遣し、そこで本場のワルツを学ばせていたことがあったが、北朝鮮の若い女性たちが通ったダンス学校は、約35校あるダンス学校の中でもウィーン市1区の最高級ダンス学校「エルマイヤー・ダンス学校」だった。その学長、トーマス・エルマイヤー教授はオーストリア国営放送の高視聴率番組「ダンシング・スターズ」の審査員としても有名な人物だ。数多くあるダンス学校からエルマイヤー・ダンス学校を選んだ金総書記の眼識の高さは認めざるを得ないだろう。
 同学校のHPをみると、舞踏会でダンスをするために紳士淑女たちのダンス・コースが開かれている。ところで、年間、千人を越える生徒を抱える同学校にも悩みがある。大多数の生徒は若い女性たちだ。彼女たちは舞踏会でワルツを踊り、将来の伴侶となる王子様探しに必死だ。当然だが、ワルツは1人では踊れない。練習相手の男性が必要だが、同学校ではパートナー相手となる男性生徒の数が少ないのだ。
 ダンスの場合、男性と女性では足の配置が違う。女性同士では練習にならない。もちろん、エルマイヤー教授が全ての女性生徒たちを教えるわけにもいかない。そこで考え出されたのは、男性の大学生やギムナジウムの学生に無料でダンスを教える代わりに、女性のダンス・パートナーとなる、という案だ。
 知人の息子がエルマイヤー学校でダンスを学んでいると聞いた時、「学費は高いだろう」と心配していたら、知人は笑いながら「息子はタダでダンスを学んでいるよ。週に数回、ダンス学校に行き、そこで若い女性のワルツ相手をしているよ」という。
 そこで、当方は「金総書記は今度、若い女性たちではなく、若い男性たちをエルマイヤー・ダンス学校に派遣したらいどうだろうか」と考えた次第だ。エルマイヤー・ダンス学校としては男性の数を確保できる一方、金総書記は自国の青年たちに無料で最高水準のワルツを学ばす事ができるわけだ。両者にとって、いい話ではないか。もちろん、そのためには、エルマイヤー教授と金総書記の間で打ち合わせが必要だが、実現可能なジョイント・ベンチャーと信じている。

共産主義の残滓

 ローマ・カトリック教会最高指導者、ローマ法王べネディクト16世は23日、バチカン法王庁でアルバニア教会の司教団の謁見を受けた際、「われわれは共産主義の残滓と戦い、祖国の再建に貢献しなければならない」と訴えている。
 アルバニアのホッジャ労働党政権(共産政権)は1967年、世界で初めて「無神国家」を宣言したが、同国が1990年、民主化に乗り出した後、宗教の自由は再び公認された。その後、同国では国民の間で宗教に関する関心が高まってきている反面、長い共産主義教育の影響は社会の各方面で見られる。
 当方は信教の自由が施行された直後、同国の首都ティラナを訪問し、共産政権下で25年間、収容所に監禁されていたゼフ・ブルミー神父と会見したことがある。神父は「アルバニア人は現世の生活が全てではなく、死後の世界が存在することを肌で感じている一方、若者たちの心を神に向けることは容易ではない。共産主義社会を体験した世代は唯物主義の恐ろしさを知っているが、若い世代は知らないからだ。だから、幼少時代からの宗教教育が必要だ」と熱っぽく語ってくれたものだ。ちなみに、同国では、主要宗派はイスラム教、それにアルバニア正教とカトリック教会が続く。数では、カトリック教会は約10%で少数派だ。
 民主世界は冷戦時代、共産圏と戦いを繰り返したが、旧ソ連・東欧共産政権の崩壊とその民主化を受けて、「共産主義は終焉した」と一応、受け取られてきた。しかし、実際は、共産主義の残滓はアルバニアだけはなく、旧ソ連・東欧諸国はもちろんのこと、冷戦の勝利国側の欧米民主諸国でも見られる。欧米や日本でも拡大するジェンダー・フリー運動やダーウィン進化論もその例だろう。
 政治・思想運動だけではない。政教分離と世俗化で宗教の影響が後退する一方、われわれの生活で物質主義的価値観が広がってきている。すなわち、共産主義はイデオロギーとしては依然、終焉していないのだ。共産主義の「敗北宣言」を聞く前に、われわれは一方的に「勝利宣言」をしてしまったのかもしれない。
 「欧州に今、亡霊が徘徊している。共産主義という亡霊が」(マルクス・エンゲルス共著「共産党宣言」)という言葉を思い出すが、われわれが「神」を見出さない限り、共産主義の残滓は払拭されず、その亡霊はいつまでもわれわれにまとわり続けるのではないか。

死んだ人々と「われわれ」

 人間の五感では認知できない世界、「目に見えない世界」が存在するかどうか、意見が分かれるところだが、当方はその世界の実在を信じている。われわれは、いい悪いは別として、その世界から影響を受けているが、認識できない場合が多い。逆にいえば、その世界の実相が分かれば、多くの謎が解明できると信じる。
 ウィーン市のケーキの老舗「ザッハー家」は久しく「自殺の家系」といわれてきた。同家では代々、自殺者が出た。そのため、同家の関係者は「自殺はわが家の疾患だ」と嘆いていた。「目に見えない世界」からいえば、その「家庭の過去」に問題が潜んでいるはずだ。
  また、ある限られた地域に自殺者が多いという現象がある。オーストリア、ハンガリー両国では昔から自殺者が多いことから、社会学者から「自殺エリア」と呼ばれていたほどだ。その「場所(地域)の過去」が問題となる例だ。その「過去」を解明して、適切な対応を取らない限り、問題は未解決のまま、何世代にも及ぶことになるわけだ。
 「目に見えない世界」が生きている人間世界に影響を与える、ということは、「死者も生きた存在」であることを証明している。亡くなった祖父母や両親は消滅したのではなく、「目に見えない世界」に移動しただけだ。その「目に見えない世界」からさまざまな信号が発信されるため、われわれは時には不可解な現象や謎に直面する(米国では心霊研究が進んでいる。同研究には、一線の科学者が取り組んでいる)。
 ここで看過できない点は、生まれて死ぬまで幸福だった人は一人もいない、という事実だ。すなわち、「目に見えない世界」の住民の多くは幸福な人々ではないのだ。悲しみ、恨み、欲望がそのまま続く世界だ。彼等は「過去の負債」から解放され、幸福になりたいため、われわれに影響を及ぼしてくる(仏教が「先祖供養」の重要性を説くのはその為だ)。
 「目に見えない世界」に定住できず、肉体の死後も地上世界で浮遊している人々は数え切れないほどだ。そして、地上で多くの問題を起こすのは、「目に見えない世界」に定着した人々ではなく、地上世界で浮遊している「死んだ人々」だ。
 当方が好きな米国TV番組に「Ghost Whisperer」という番組がある。主人公の女性はこの「死んだ人々」と交信できる。彼女は死んだ人々の悲しみ、恨みを聞き、それを解き明かすことで、彼等を所定の霊界に送る、というストーリーだ。
 「目に見えない世界」が分かり、絡んだ歴史が解明されれば、われわれも「死んだ人々」と交流ができ、互いに許し、愛する事が出来る道が必ず切り開かれるはずだ。

FIFAランク101番の意地

 スイスとオーストリア両国共催で開催される欧州サッカー選手権(ユーロ2008)まで「あと15日」を残すのみとなった。欧州選手権はワールドカップ(W杯)に次ぐサッカーの大イベントだ。オーストリアではウィーン、インスブルック、ザルツブルク、クラーゲンフルトの4市で開催され、最終日の決勝戦(6月29日)はウィーンのエルンスト・ハッベル競技場で行われる。
 参加国は16カ国だ。英国チームが予選落ちしただけで、欧州のサッカー強豪国はいずれも出場する。欧州サッカー・ファンでなくても、今から心がうきうきしてくる。
 ウィーン市内では大会の旗やポスターが各地で貼られている。ユーロ2008関連の記者会見がほぼ連日、開かれ、雰囲気は否応なく加熱してきた。ウィーン市庁舎広場には電子掲示板が「あと何日」を示し、大会スポンサーの会社はこことばかり、到る所で宣伝に余念がない。
 例えば、スポンサーの一つ、トイレット・ペーパー会社はサッカー選手とボールを印刷したトイレットペーパーを売り出し中だ。同社の紙を使用している市民は毎朝、これまた否応なく「ユーロ2008開催」を思い出す、といった仕掛けだ。
 いずれにしても、国際会議開催のプロを自他と共に認めるホスト国・オーストリアの大会準備には隙間がない。先日は市内から競技場まで地下鉄が延長されたばかりだ。こんなことは朝飯前だ。
 ところで、問題は、主催国の特権として大会に参加するオーストリア・チームの実力だ。FIFAが定期的に公表するランキングによると、今年4月段階で同国はなんと101番目だ。サッカー後進国のリビア(90)、シリア(97)、タイ(96)よりも低い。同国と共催するスイスでも48番目だ。欧州サッカー選手権ホスト国のFIFAランキングが100以下ということは、これまでなかったことだ。
 だから、大会運営ではまったく心配していないFIFA関係者も、同国チームの実力には密かに懸念している(同国チームは昨年1年間、1度しか勝っていない)。1部リーグ戦に2部リーグのチームが参加するようなものだからだ。
 同国サッカー協会関係者の心配はもっと深刻だ。グループ戦をクリアすれば、各選手に5万ユーロ、準決勝まできたら、監督には10万ユーロのボーナスを与えるなど、監督、選手に人参をちらつかせ、懸命に鼓舞しているところだ。
 オーストリアに長い間お世話になっている手前、当方はもちろん、オーストリア・ファンだ。FIFAランキング101番という嘲笑に負けず、同国チームがその意地を見せ、W杯のドイツ・チームのように、“ウィーンの奇跡”が起きる事を期待している。

政治家の私生活

 「政治家のプライバシー」について考えてみた。政治家も一人の人間として、その私生活は尊重されなければならないが、「どこまで私的で、どこから公的か」で議論が分かれるところだ。欧州では、サルコジ仏大統領とカーラ・ブルーニさん(元ファッション・モデル、歌手)の私生活が一時賑わい、政治家の私生活問題が話題となったばかりだ。
 ところで、独首相を務めたゲアハルト・シュレーダー氏は4回の結婚歴があるが、それを初めて聞いた時、正直言って驚いた。首相時代には、4度目の夫人(元ジャーナリスト)を随伴させながら、公式訪問をこなしていた。オーストリアのグーゼンバウアー首相は結婚していないが、長年付き合った女性と同居中で、両者の間に1人娘がいる。同国のブッフィンガー社会相は、夫人とは別居中で、現在、若い女性と同棲している、といった具合だ。身近な政治家の私生活を振り返っただけでも、結婚回数、同居形態まで、さまざまなパターンがあるわけだ。
 興味ある事実は、結婚と離婚を繰り返したシュレーダー氏が当時、国民の間で結構人気があったということだ。プレイボーイという理由から支持率が減少した、ということは現職中にはなかった。また、オーストリア社会相は、国民の政治家人気ランキングを見ると、閣僚の中でも人気が高い。同国メディアや国民から「道徳心の欠けた政治家」といった批判を聞いたことがない(グーゼンバウアー首相の人気ランキングは低いが、正式に結婚していないから、というより、その政策履行能力に対する不満があるからだ)。
 欧州社会では、離婚は当たり前、同棲はもはや珍しくなくなった。政治家も決して例外ではない。是非は別として、ブッフィンガー社会相などは最もナウなトレンドを体現化した政治家といえる。
 テーマに戻る。政治家の私生活は尊重すべきだが、政治家である限り、その私生活は国民の目に晒され、その影響は一個人の域を越え社会全般に及ぼす。人気歌手や俳優の麻薬問題や同性愛宣言が青少年に大きな影響を及ぼすのと同じだ。結婚・離婚を繰り返す政治家がどうして「家庭の重要性」を主張できるだろうか。
 その意味から、「政治家は公私両面で国民の模範とならなければならない」と言いたいところだが、政治家へのハードルが高すぎると、政治家になれる人物がいなくなる恐れがある。だから、「政治家の先生、心を引き締めて、公務に励んで下さい」とだけ言っておこう。

教会経営不振のさまざまな理由

 欧米キリスト教会では教会経営の不振で破産や身売りに追い込まれるところが出てきたが、その主因は欧米間で明らかに異なっている。米国カトリック教会ではここ数年、破産宣言をする教会が出てきたが、その理由は信者の急減というより、聖職者の性犯罪、それに伴う裁判コストと賠償金支払いが教会の会計を苦しめているのだ。例えば、米カトリック教会では2004年、ポートランド大司教区、アリゾナ州ツーソン教区、ワシントン州スポーケン教区が次々と破産宣言を強いられた。その破産原因は大司教や神父たちが子供たちに性犯罪を犯したことが発覚し、被害者との和解で巨額な損害賠償を払うことになったからだ。例えば、ロサンゼルス大司教区は聖職者たちが信者の子供たちに犯した性犯罪に対する賠償訴訟で約6億6千万ドルの和解金の支払いを強いられている。被害者総数は約570人にも及ぶという。教区側は教会関連施設などを売却して和解金を捻出する、といった有様だ。
 ベネディクト16世は先月の訪米時、米国聖職者に性問題の対応を厳しく要請しているが、当然だろう。訴訟社会の米国で聖職者の性犯罪に絡む訴訟件数を1件どころか数百件も抱えれば、教会は文字通り“支払い不能”となるのは目に見えている。福音を伝えるどころの話ではなくなってしまうからだ。
 一方、ローマ・カトリック教会最高指導者、ローマ法王ベネディクト16世の出身地、ドイツ教会では信者離れ、それに伴う教会税収入の減少が教会運営を厳しくしている。だから、教会資産の切り売りなどに追い込まれる教会が出てきたわけだ(ドイツ教会を含む欧州教会でも聖職者の性犯罪は生じているが、それに伴う財政負担は米国教会ほどではない)。
 「世界キリスト教情報」が独立系IPS通信の情報として伝えたところによると、ドイツ教会の2000年度の教会収入は総額88億ユーロだったが、04年度には70億ユーロに減少。信者数もカトリック教会の場合、1990年度比で約200万人が減少したという。経営不振から教会がレストランに看板を変えたところまで出てきたという。「霊の糧」から「肉の糧」を売る場所に変身しただけだ、と冗談をいっている場合ではない。
 当方はコラム「2つの『世俗主義』のルーツ」の中で、米国の世俗主義と欧州のそれとは根本的に異なると指摘したが、同じ「教会破産」現象でも、欧米間の世俗主義の相違が色濃く反映しているわけだ。
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