ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

2008年06月

ラップトップが盗まれる時

 オーストリア日刊紙オーストライヒが今月26日、報じたところによると、2005年から07年の3年間でラップトップが180台、携帯電話209台、PC32台など、計447台の情報通信関連機材が盗まれたり、無くなったりしたという。どこかの企業の窃盗被害統計ではない。アルプスの小国・オーストリア政府閣僚省での被害統計なのだ。
 被害統計の各省の内訳をみると、なんと内務省が最大の被害を被っているのだ。同省では過去3年間、23台のラップトップ、98台の携帯電話など、情報管理機材121台が窃盗されたり、無くなっているのだ。それを追って、財務省では65台のラップトップ、1台のPC、外務省では9台のラップトップ、41台の携帯電話、経済省では14台のラップトップ、9台の携帯電話、4台のPC、14台のUSBメモリー、国防省では10台のラップトップ、4台の携帯電話、9台のPC、5つのUSBメモリーがそれぞれ盗まれたり、無くなったりしているのだ。最近では、アンドレア・クドルスキ厚生・家庭問題相のラップトップが盗まれている。
 情報時代の今日、政府各省の職員はPCやラップトップで情報を整理、管理する。情報の中には個人情報から国家の安全問題に関る極秘情報まで含まれる。特に、内務省や国防省のラップトップが盗まれれば、盗んだ側がそれを悪用することが十分考えられる。国の安全問題にも関わる重大問題だ。ところが、オーストリア政府関係者は「ラップトップには国家機密は管理されていなかった」といった弁明で終始し、調査委員会を設置して追求すべきだといった動きはまったくない。
 英情報機関が作成した国際テロ組織アルカイダなどに関する極秘資料が電車の座席に置き忘れられ、乗客がそれを見つけて英BBCに届けたというニュースが流れたばかりだ。英国政府は杜撰な情報管理を野党側から激しく追及されている。一方、中立主義を国是としてきたオーストリアでは、国家の安全と情報の管理に関して他人任せの体質が抜ききれない面がある。繰り返すが、政府の各省で過去、3年間、180台のラップトップが盗まれたり、無くなったりしたのだ。不祥事が起きる前に、政府は情報管理の抜本的な改革に乗り出すべきだろう。

シリアが“第2のリビア”となる日

 シリアが北朝鮮の核技術支援を受けて建設中だった原子炉をイスラエル空軍が昨年9月、空爆したが、米情報機関は今年4月、建設中の原子炉の衛星写真を公表し、シリアで建設中の原子炉は北朝鮮の寧辺で操業していた黒鉛減速型原子炉と酷似していたとして、「シリアが北朝鮮から核技術支援を受けていたことを裏付けている」と分析している。
 ところで、国際原子力機関(IAEA)の3人の調査団は今月22日、シリアを訪問し、空爆された現地アルキバルまで足を伸ばして視察したが、「IAEAは土壌サンプルを採取したが、何も検証できないだろう」と予想されている。ちなみに、シリアは「空爆された施設は原子炉ではなく、軍事施設だった」と説明し、未申告の核活動ではないと否定している。以上、メディアが既に報道してきた内容だ。
 ここからは少々違ってくる。米国、英国、フランスはシリアの核問題をこれ以上追及する考えはないという。欧米とシリア間で既に合意が出来上がっている可能性があるのだ。具体的には、欧米側はダマスカスの核問題をこれ以上糾弾しない一方、シリア側は核開発計画を放棄し、レバノンのヒズボラ支援を停止すること。それらが実施されれば、欧米は同国の国際社会復帰を支援し、経済・金融制裁を解除するといったものだ。
 ここまで説明すれば、リビアを想起するだろう。リビアは2003年3月頃に英米との交渉を始め、化学・生物・核兵器関連の計画についての情報を両国に提供し、同年12月、核開発計画の放棄を発表した。それと引き換えに、欧米側はリビアの国際社会復帰を支援してきたわけだ。同じように、シリアのアサド大統領は英米らと秘密交渉を行ない、りビアのカダフィ大佐が歩んだ道を密かに歩み出したというのだ。
 このシナリオが正しいとすれば、レバノン問題の解決は現実的となり、パレスチナ人問題を含む中東問題で大きな変革が生じる可能性が考えられる。その結果、イスラエルとシリア間の接近が始まる一方、イランの孤立化が一層進むわけだ。
 ただし、先述したシナリオの問題点は、シリアが、イランが提供する原油支援を断念し、国の将来を欧米の強国に委ねることが出来るかだ。リビアは原油輸出国であり、他国からのエネルギー支援を必要としていなかったが、シリアはイランのエネルギー支援に依存しているからだ。

政治家のアルツハイマー

 北朝鮮最高指導者・金正日労働党総書記が認知症に悩んでいる、というニュースが流れたことがあった。昨年10月の韓国・盧武鉉大統領(当時)との南北首脳会談の初日、金総書記が憮然とした表情で笑顔を見せなかったことから、「金総書記は大統領に近づき、『あなたは誰でしたかね』と聞いた」といったジョークが流れたほどだ。また、初日の歓迎式の会場が「祖国統一三大憲章記念塔」から「人民文化宮殿」に急遽変更になったり、首脳会談1日延長案などは、総書記が演出した小さなサプライズではなく、「金総書記は会場先や首脳会議の日程などを“一瞬”忘れていたのではないか」といった半分、冗談のような話が流れたほどだ。
 ところで、認知症は政治家の間で伝染する病気のようだ。認知症は金総書記の専売特許ではなく、ブッシュ米大統領にも伝染している。米国は26日、北朝鮮の核申告書の提出後、テロ支援国リストから北朝鮮を削除すると公表した。ブッシュ大統領は過去、「金総書記は世界最悪の独裁者だ。北朝鮮指導者とは如何なる合意も考えられない」と豪語してきた。その大統領が同日、北朝鮮をテロ支援国リストから削除し、敵国通商法の適用の除外も宣言したのだ。ライス国務長官も「北朝鮮が国際条約を守らない国であることを知っている」と表明していながら、今回は「北朝鮮との合意に基づいて」という理由で「テロ支援国リストから削除した」と述べた。「知能指数が高い」という評判のライス国務長官をして、この有様だ。政治家を襲うアルツハイマーはかなり悪性だ。ブッシュ大統領の言葉を信じてきた日本人政治家などは、アルツハイマーの犠牲者だろう。だから、ブッシュ大統領が「拉致問題を決して忘れない」と述べたとしても、それをもはや信じられない日本人政治家が出てきても不思議ではない。
 認知症は欧州のアルプスの小国オーストリアにも波及してきた気配がある。グーゼンバウアー首相は26日、「欧州連合(EU)の新基本条約(リスボン条約)に改正があった場合、わが国は住民投票を実施してその是非を決定する」と発言したのだ。同首相は数カ月前、議会で「リスボン条約は国民の代表である議会で批准する。国民投票を実施する必要はない」と説明し、批准したばかりだ。
 グーゼンバウアー首相のこの発言に最もショックを受けたのは親EUの政権パートナー国民党だ。「殿!お気を確かに」といったところだろう。国民党議員からは早速、「連立政権の合意違反だ」といった批判が出ている。グーゼンバウアー首相の突然の変心について、同国の日刊紙オーストライヒの社説は「政治的なアルツハイマーか」という見出しをつけているほどだ。いずれにしても、アルツハイマーは政治家の職業病なのかもしれない。

聖職者たちの肥満対策

 米国のローマ・カトリック教会といえば、聖職者の性犯罪の増加とそれに伴う被害者への賠償金支払い問題を抱え、破産に瀕している教会が出てきたとは聞いていたが、イエス・キリストの福音を伝える聖職者たちが米国民の平均よりかなり太り気味と判明し、教会指導者が「聖職者の肥満対策」で頭を痛めているとは知らなかった。これは「カトリック・ニュース・サービス」が先日、伝えたものだ。
 2500人以上の聖職者を対象とした調査結果によると、聖職者の76%が太り気味、ないしは肥満であり、米国の平均値より15ポイント高かった。昔は「教会のネズミは痩せている」といわれたものだが、現在は「ネズミだけではなく、その主人の聖職者も太ってきた」というわけだ。
 そこで、教区の司教たちは神父たちに「もっとスポーツを」とアピールしている。教区によっては、聖職者専用のスポーツ・センターを開いたり、スポーツ・クラブを作るなど、あらゆる知恵を駆使して「聖職者の肥満対策」に乗り出しているわけだ。
 聖職者の日課は通常、早朝の祈祷を終えると、朝食、その後は聖職に励み、シスターたちが準備してくれた昼食と夕食を食べ、夕拝で終わる。礼拝の日はその準備をする一方、信者たちとの会合に顔を出したりする。聖職者の日課は結構、多忙だが、口を使う機会が多い割には体全体を動かし汗をかく機会は非常に少ない。その結果、中年を過ぎると聖職者たちは次第に肥満となっていく傾向にある。若い聖職者の方が中年、老年の聖職者より健康なライフ・スタイルを維持しているという。
 欧州教会の一部では、聖職者希望の神学生に対して一種の心理審査が実施されている。同性愛者の聖職者任命を回避する狙いがあるからだ。しかし今後、心理審査だけではなく、体力測定を定期的に実施すべき時かもしれない。昔から「健全な精神(魂)は健全な身体(肉体)に宿る」というではないか。

普遍的条約、されど発効せず

 案外知られていない事実がある。ウィーンに暫定技術事務局を構える包括的核実験禁止機構(CTBTO)の署名国数が178カ国にもなり、条約は既に普遍的条約のレベルに達しているということだ。批准国(加盟国に相当)数でも国際原子力機関(IAEA)の加盟国数と同数の144カ国だ。もう一つは、イスラエルは核拡散防止条約(NPT)に加盟していないが、CTBTOの署名国だ。そのため、CTBTOは、核兵器200基を保有すると推測されているイスラエルと非核拡散問題で協議できる数少ない国際外交の枠組みといえる。
 しかし、残念ながら、1996年9月の国連総会で署名開始されたCTBT条約は今日まで発効していない。「条約14条」があるからだ。すなわち、研究用、発電用の原子炉を保有する国44カ国の署名・批准を条約発効の条件としているのだ。
 条約署名開始から12年目を迎えたが、44カ国中、9カ国が依然、批准を完了していない。北朝鮮、インド、パキスタンの3国は未署名国だ。5カ国の核保有国では米国と中国が未批准国に留まっている。
 条約の早期発効を実現する為に条約14条の改正案も聞かれたが、条約を改正した場合、署名・批准プロセスのやり直しが要求される。そのため、「未批准国を説得して批准させる方が時間の節約だ」(批准国関係者)という声が強い。
 条約発効のカギを握っているのはやはり、米国だ。米国が条約を批准すれば、ワシントンの出方を注視してきた中国の批准は問題ない。第30会期開催中のCTBT準備委員会のハンス・ルンドボルク議長(スウェーデン大使)は25日の記者会見で、「次期米大統領選の2人の候補者、民主党のオバマ上院議員はCTBTを支持すると表明しているし、共和党のマケイン上院議員も好意的に受け取っている。政治家の中でCTBTに理解が増えてきている」と説明し、条約の早期発効プロセスに自信を示した。
 CTBTOの最大の魅力は世界の全地域を網羅する「国際監視システム」(IMS)だ。IMSは単に、核実験監視の目的だけではなく、津波早期警報体制など地球環境問題の監視ネットとして利用できるからだ。米国がCTBTOを完全に放棄できない点はそこにある、といわれる。

オーストリア・韓国、国交45周年

 オーストリア・韓国両国が外交関係を樹立して今年で45周年を迎えた。それを記念する行事が両国の各地で挙行されている。ウィーン市では24日夜、市立公演会場で韓国の伝統的な民族ダンスが紹介されたばかりだ。
 オーストリアとコリア両国は1892年、友好貿易協定を締結したが、その後、オーストリアは帝国時代の終焉、2度の世界大戦を経験する一方、コリアは日本の植民地化時代、世界対戦後、韓国動乱後の分断という試練を経て今日に到っている。
 南北分断後、オーストリアは1963年5月、韓国と外交関係を樹立し、その11年後の1974年12月、北朝鮮と外交関係を結んでいる。今年12月で34周年目を迎えるわけだ。
 欧州連合(EU)の貿易統計によると、オーストリアの昨年度対韓輸出総額は約5億9700万ユーロ、対輸入総額は4億8600万ユーロだ。韓国企業の対オーストリア投資額は2006年、8400万ドル、オーストリア企業の対韓投資額は3800万ドルだった。ちなみに、同国の対北輸出総額は昨年度、246万ユーロ、輸入総額は約140万ユーロと小規模に留まっている。
 両国関係は文化・芸術分野でも急速に拡大してきた。特に、1972年には「ウィーン少年合唱団」が初めて韓国で公演を開くと、世界的な韓国少女民族舞踏団「リトル・エンジェルス」がウィーンで答礼公演を開いている。音楽の都・ウィーン市で音楽を学ぶ韓国学生は約2000人にもなる。その数は日本の音楽学生数を上回っているほどだ。
 オーストリアの首都ウィーンは冷戦時代、東西両欧州の掛け橋的な役割を果たしてきたが、同時に南北コリアの“東西38度線”的な位置を占めてきた。北朝鮮はウィーンに欧州唯一の同国銀行「金星銀行」(2004年6月閉鎖)を開設し、欧州での経済活動の拠点を構えていた。
 両国関係史を振るかえる時、コリアの初代大統領・李承晩大統領の夫人がウィーン出身のフランチェスカ・ドナー夫人であった、ということを忘れることが出来ない。両者は1934年、ジュネーブで知り合い、同年、結婚している。アルプスの小国オーストリアと極東アジアのコリアは不思議な縁で結ばれているのかもしれない。

「アルフレッド少年の夢」の終わり

 「僕は大きくなったら、政治家になって首相になるんだ」と大志を抱いていたアルフレッド少年は後日、念願の首相になったが、それも束の間、2年も経過しないうちに、そのポストを去らなければならない雲行きとなってきた。
 何の話かというと、アルプスの小国オーストリアのアルフレッド・グーゼンバウアー首相(社会民主党)のことだ。2006年10月の総選挙で社民党は得票率を減らしたが、ライバルの政党(国民党)がそれ以上に支持率を下げた結果、社民党主導の大連立政権が発足し、念願の首相の座に就任したのが昨年1月11日だった。大統領府での政権認定式に臨むグーゼンバウアー首相の嬉しそうな顔を今でも鮮明に思い出す。「やったぞ」といった少年の声が聞こえてくるような、政治家らしくない屈託のない笑顔を見せていた。
 しかし、グーゼンバウアー首相は政権発足直後から厳しい試練の連続だった。国民の批判が急速に高まっていったからだ。特に、社民党の支持基盤であった労組や左派知識人からは「公約違反」を追求する声が強まっていった。当然だ。選挙戦では、大学生の学費廃止から健康医療改革まで、有権者の耳に快く響く公約を掲げてきたが、政権樹立後、政権パートナーの国民党の反対もあって、何一つとして実現できなかったからだ。
 国民の支持を失った首相(党首)を抱える社民党からは「このままでは州選挙に勝てない」といった危惧が日増しに高まっていった。その懸念が現実化したのだ今月初めに実施されたチロル州選挙だ。同選挙で社民党は10%ポイント以上得票率を下げる歴史的な敗北を喫し、新党「リスト・フィリッツ・ディンクハウザー」にも抜かれて第3党に後退したのだ。
 その数日後、社民党の緊急幹部会が開かれた。首相と党首の解任を恐れたグーゼンバウアー首相は党首ポストを譲ることで首相の座を守る妥協案を提示した。同案は一応、党幹部会で容認されたが、「党首と首相の分離」は何の解決策にもならない、といった反発が依然、党内では支配的だ。党幹部会からは遂に「党首ポストだけではなく、首相の座も引き渡すべき時だ」という最後通牒が発せらたという(同国のメディア情報によれば、グーゼンバウアー首相は7月7日、首相のポストを新党首のヴェルナー・ファイマン運輸相に引き渡す予定という)。
 「アルフレッド少年の夢」は実現されたが、その首相ポストを2年弱で降りなければならなくなってきた。グーゼンバウアー首相(48歳)としては想定外のことかもしれないが、短期間だったとしても「首相の座」に就いたことで良しとすべきだろう。

バチカン法王庁の国益外交

 ローマ・カトリック教会総本山、バチカン法王庁は独立宣言を表明したコソボの国家承認に難色を示している(世界に約11億人の信者を抱えるバチカンは国連でオブザーバーの資格を有する国家であり、国務省長官など閣僚が任命されている)。
 バチカンの「キリスト教一致推進評議会」議長のヴァルター・カスパー枢機卿は5月末、ロシアを訪問し、ロシア正教会の最高指導者アレクシー2世と会談した。そこでコソボ問題が重要テーマとなったが、同枢機卿は「バチカンとしては近い将来、コソボを国家認知する計画はない」と述べ、コソボの独立宣言に強く反発する正教会の立場を支持している。
 バチカンがコソボの国家認知を拒否する理由は、「歴史的に見ても、コソボはセルビア正教の揺籃の地であり、正教徒の権利は尊重されなければならない」というものだ。ちなみに、セルビア共和国に帰属してきたコソボでは住民の90%以上がアルバニア系イスラム教徒であり、正教徒は少数派に過ぎない。
 今年2月17日のコソボ独立宣言後、コソボを国家として認知した数は現在、40カ国と伸び悩んでいる。その背後には、独立国家認知の基となる国連安保理決議が採択されていないため、多くの加盟国がコソボ独立の認知に抵抗を覚えているからだ。特に、セルビアの主張を支持するロシアがコソボ独立に反対している今日、安保理決議が採択される見通しはまったくない。
 ところで、バチカンは現在、バルカン地域の教区体制の刷新に乗り出している。セルビアのシュジェムをジャコボから切り離して独立教区として司教を任命する一方、クロアチアでもザグレブ教区に所属してきた地域を独立させて新司教区を新設している。正教、イスラム教が支配的なバルカン地域でカトリック教会がその体制強化を図っているわけだ。
 コソボの独立認知を拒否する一方、多民族、多宗派が交差するバルカン地域で勢力拡大を目指すバチカンの外交は、宗教の自由、少数派民族の権利擁護など綺麗な標語が常に伴うが、実際は、米国や他の国と同様、国益外交といえる。すなわち、バチカンのバルカン政策は、正教と連携してイスラム教の北上を阻止するという狙いがあるのだ。

世界一離婚率が高いウィーン市

 当方は昨年6月、「驚くべき現実」というタイトルのコラムを書き、そこでオーストリア統計局が公表した同国2006年度の離婚率を紹介した。2007年度の離婚率が先日、発表されたので、ここで続報を紹介する。なぜならば、これまた「驚くべき現実」だからだ。
 同国昨年度の離婚率は49・5%だった。2006年度は48・9%だったから、更に0・9ポイント上昇したことになる。この数字は2組に1組が離婚したことを意味する。数としては2万516組の夫婦が離婚した。
 もう少し詳細にみると、離婚した夫婦の結婚平均年数は9・2年。結婚初年に離婚した夫婦は全体の1・4%だった。過去20年間で離婚率は29・5%(1988年)から2007年の49・5%と急上昇している。
 もっと「驚くべき現実」は、“音楽の都”と呼ばれ世界から愛されている首都ウィーンの離婚率はなんと64・2%だったのだ。2006年度の同市の離婚率が65・85%だから、微減したことになるが、それでも100組の夫婦のうち、64組が離婚した計算になる。もちろん、ウィーン市の離婚率はダントツで世界一だ。米国や日本でも「家庭の崩壊」が叫ばれて久しいが、ウィーン市の離婚率からみたら、「まだまだ大丈夫」といった印象すら感じてしまうほどだ。ちなみに、フランスやオランダでも離婚率は40%を越えていない。
 当方は以前、欧州の少子化問題の取材のためにイタリア・ローマに行ったことがある。家庭の絆がまだ強いと見られてきたイタリアでも少子化現象は急速に進み、同国北部の村では犬の数が子供の数より多い。「結婚が遅くなり、少子化が進み、やっと結婚したかと思えば、離婚する」といった具合だ。その悲しむべきトレンドの最先端を走っているのが、残念ながらオーストリアであり、首都ウィーンだ。これこそ「驚くべき現実」だ。
 問題は、「どうしてオーストリアでは離婚が多いのか」という点だ。社会学者は、女性の社会進出と、それに伴う女性の自立性の拡大など、さまざまな理由を挙げるが、それらはオーストリア1国だけに見られる社会現象ではないはずだ。オーストリア固有の理由はあるのだろうか。早急な結論を下さず、じっくりと考えていきたいテーマだ。

エルバラダイ氏、4選出馬断念か

 ついに決断が下されたようだ。国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長に近い関係者は「ブッシュ米政権から最近、事務局長の4選出馬は絶対に承認しないとの警告が届いたばかりだ。事務局長は米国の意向を無視すればどのような問題が生じるか知っているから、4選出馬を断念したと聞いている」と語った。
 エルバラダイ事務局長の3選出馬の際も米国からは強い反発が起きた。特に、事務局長が米国の対イラク政策を批判してきたこともあって、3選反対の嵐がワシントンから吹くつけてきたものだ。それに対し、事務局長は当時、「IAEAは通常の国連機関ではなく、専門機関だ。トップの2選止まりの規約はIAEAには該当しない」と反論。最終的には、非同盟理事国らの支持と米国の妥協があって3選した経緯がある。
 エルバラダイ事務局長には心強い前例がある。すなわち、前任事務局長のハンス・ブリクス氏は4期、16年間(1981〜97年)、IAEA事務局長ポストに就任していたという事実だ。その意味で、エルバラダイ事務局長もあと1期、IAEAのトップを務める可能性は完全には除去できないわけだ。
 先の関係者は「事務局長は米国の政策を嫌っている。もちろん、ブッシュ米政権は来年初めで終わるが、どの候補者が米大統領に選出されたとしても、米政権の背後にはイスラエルがいるから同じだ」と説明、エルバラダイ事務局長の4選出馬の目は消えた、との認識を明らかにした。
 今秋の年次総会後に開催されるIAEA理事会で後任事務局長の選出問題が公式議題に取り上げられる予定だが、エルバラダイ事務局長が4選を断念したとすれば、新たな候補者探しが始まるわけだ。
 IAEA担当の外交筋によると、駐国連機関担当日本代表部の天野之弥大使は昨年末、アジア地域の理事国関係者にエルバラダイ事務局長の後任に立候補する意思を早々と表明し、支持を求めたという。ちなみに、天野大使の事務局長選出について、イランなど数カ国は「支持するとは現時点では表明できない」(イランのソルタニエイ・IAEA担当大使)との立場を取っている。
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