ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

2009年02月

朝日のIAEA報告書“横流し”事件

 ウィーンに本部を置く国際原子力機関(IAEA)は創設されて早や50年以上が過ぎ、2005年にはその活動が評価されノーベル平和賞が与えられた。多くある国連専門機関の中でも花形だ。そのIAEAの外部への窓口が広報部。IAEAを取材するジャーナリストの最初の取材先でもある。
 ところで、人間でも50年以上生きていると、良し悪しは別としてさまざまな体験を重ねるが、IAEA広報部も例外ではない。その中でもチェルノブイリ原発事故報告書の「横流し事件」は広報部の「汚点」として今も語り継がれている。
 読者のために同事件を少し説明する。チェルノブイリ原発事故発生(1986年)後、IAEAから事故の詳細な報告書の提出を要請されたソ連政府(当時)はウィーンに報告書を送付したが、朝日新聞がIAEA広報部長(当時)から同事故報告書を入手し、その内容をいち早く報道したのだ。朝日新聞社は当時、「世界的スクープ」と豪語したものだ。
 しかし、真相は公文書の窃盗事件だった。朝日新聞本社は事前にロシア語翻訳のためにロシア語専門の学者たちを本社に待機させ、ウィーンから報告書が届くと即訳し、報じたのだ。報告書を朝日に横流しした広報部長は当時、「朝日だからあのような離れ業ができたのだ。他社だったら、送られてきたロシア語の報告書の訳に手間取ったはずだ」と告白していることから、この公文書窃盗事件は朝日と当時のIAEA広報部長による確信犯罪だったわけだ。ハンス・ブリクス事務局長(当時)は報告書を横流しした広報部長を即解雇しようとしたことはいうまでもない。
 16年間続いたブリクス事務局長時代が終わり、エルバラダイ氏が事務局長に就任すると、ブリクス時代の広報担当責任者・英国出身のキット広報部長とドイツ出身のマイヤー氏は退職を強いられている。その背後には、IAEA広報部を掌握したい米国の意向が強く働いていたという。
 IAEA広報部に新たに送り込まれた1人が、欧州安保協力機構(OSCE)から転身してきた米国人フレミング女史だ。同女史はロイター通信、AFP通信、AP通信、CNN放送など大手メディアのジャーナリストを優遇し、情報を提供(リーク)することで彼らを飼い慣らしていった。例えば、北朝鮮の核問題がエスカレートした時、フレミング女史は平壌から送信されてきた外交書簡をコピーし、知人のジャーナリストたちに密かに配っている。
 IAEA関係者は「ブリクス時代の広報部は技術問題の広報活動が中心だったが、フレミング女史が就任して以来、IAEA広報部は政治的思惑が支配するようになった」と証言している。
 ちなみに、フレミング女史はエルバラダイ事務局長の退陣直前の今年6月、ジュネーブの国連機関に転身する。同女史の退陣後、IAEAは新しい事務局長を迎えるが、同時に、広報部も新しい体制でスタートすることになるだろう。

NHKとフジTVの野心的取材

 NHK取材班が北朝鮮のウラン濃縮活動の真相を追って欧州で取材中だ。取材ターゲットの1人はウィーンで10年余り国際原子力機関(IAEA)担当参事官だった北朝鮮外交官(科学者)ユン・ホジン氏だ。西側情報機関筋によれば、同氏はウラン濃縮関連物質の調達のため欧州で暗躍してきた北の核関連物質密輸請負人である。オランダのウラン濃縮機器メーカー、ウレンコ社から濃縮技術を入手し、パキスタンの原爆製造を手助けしたカーン博士のような立場、といえば理解できるかもしれない。
 NHK取材班はそのユン・ホジン氏のプロフィールを掴むためIAEAの北朝鮮査察担当官や元報道官などにインタビューを重ね、その後、ストックホルムに飛んで同参事官時代のIAEA事務局長ハンス・ブリクス氏との会見を計画している。
 ユン参事官についてはこの欄でも紹介済みだ。2008年7月3日掲載の「北朝鮮外交官の家族写真」を再読していただければ、同参事官のプロフィールは分かるだろう。
 米中央情報局(CIA)は1997年頃、ウィーンの北朝鮮外交官宅を盗聴していた事件があったが、その盗聴のターゲットは金正日労働党総書記の義弟の金光燮大使ではなく、ユン参事官だったのだ。 北朝鮮の核情報入手に躍起となっていたCIAはユン参事官に目を付けたのだ。オーストリア内務省の「北朝鮮外交官盗聴事件調書」によれば、ユン参事官が「DKS」などロシア系企業と頻繁に電話し、ロシアの軍需企業「マオ」との接触があったことが判明している。
 欧州で目下、北関連取材を行っている日本のメディアはNHK取材班だけではない。既に報告したが、フジTV取材班が、金総書記の要請に基づき欧州で物品調達で動いてきた権栄緑氏の取材を計画中だ。同氏は長い間、ウィーンにあった北朝鮮直営銀行「金星銀行」(2004年6月閉鎖)に幹部として登録され、拉致された韓国映画監督、申相玉・崔銀姫夫妻をベルリンで迎えたり、大量のベンツ車をドイツから購入してきた人物だ。藤本健二氏の著書「金正日の料理人」(扶桑社)の中でも紹介されている。フジTVの取材は金正日総書記用の物品調達担当者の真相に迫ろうとするものだ。
 NHKとフジTVの取材は、音楽の都ウィーンを舞台とした北朝鮮の過去の活動を検証する野心的なもの。冷戦時代が終わり、北朝鮮が欧州連合(EU)諸国と外交関係を樹立した後は、北にとってもウィーンの拠点はその価値を失ったが、NHKとフジTVの取材は「ウィーンが過去、北の主要拠点であった」という事実を改めて想起させてくれるだろう。

上海で北のPOPs問題会合

 中国の上海で昨年11月24日、2日間の日程で北朝鮮の「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」(POPs)に関する専門家会合が開催された。非公開会合のためメディア機関には会合内容が報じられていないが、非常に重要な問題も含まれているので、ここで会合の概要を報告する。
 同会合は中国政府、国連訓練・調査研究所(UNITAR)、ストックホルム条約事務局、スイス、ドイツ、ノルウェー、スウェーデン、国連工業開発機関(UNIDO)らが共催したもので、総数19人のPOPs問題専門家が参加した。北朝鮮からは金ヨンウ国家環境問題調整委員会副事務局長、李ソンイル国土環境保護省上級研究員の2人が出席した。
 同会合内容をまとめた議事録(全22頁)によると、北側はストックホルム条約の義務履行の意思を表明し、昨年11月には国内実施計画(NIP)をPOPs事務局に提出したことを明らかにした。
 北のNIPによると、北は特別管理産業廃棄物(PCBs)、DDT、ヘキサクロロベンゼン(HCB)の3物質の生産、使用の停止を主要目標に掲げ、その目標実現のために国際関連機関の技術、経済支援を要請している。
 一方、中国代表は北朝鮮に支援と現行のPOPs計画の経験交流などを申し出ている。ドイツ代表はストックホルム条約に関連する新化学物質に関する中国開催ワークショップの支援を表明し、スイス政府はPOPs関連物質の生産縮小促進のために9万スイス・フランの支援を公表した。
 なお、UNITAR代表は「韓国政府から北側の専門家育成のため総額15万ドルの支援があった」と報告している。ちなみに、北側専門家の教育計画が今年もスイスで実施されるという。
 議事録で興味を引く点は、北代表の李ソンイル上級研究員が「わが国は最近、バーゼル条約(有害廃棄物の国境を越える移動を管理する条約)に加盟した」と表明していることだ。

米国務長官と中国の「宗教の自由」

 クリントン米国務長官はアジア歴訪の最後の地・中国を訪問し、最終日の22日、北京市内のキリスト教会を訪問したという。中国高官との会談では「金融危機」と「安全保障問題」を中心議題と位置付け、「人権問題」については直接議題にすることを避けた手前、最終日に象徴的だがキリスト教会を訪問して、「宗教の自由」の重要性をアピールした、というわけだろう。
 しかし、訪問したキリスト教会は共産党政権が容認する官製教会であって、当局から迫害されている地下教会ではない。官製教会を訪問する事で、中国当局の「宗教の自由」を逆に追認する危険性も排除できなくなる。
 クリントン長官の訪中前、中国中部ナンヤンで礼拝に参加した60人以上のキリスト者が当局に一時拘束されている。アジア・ニュース通信社によると、クリントン長官の訪中直前、著名な人権活動家が一斉に自宅監禁され、クリントン長官との会合が行われないようにしたというニュースもある。
 北京五輪大会開催時でも明らかなったが、中国当局は「宗教の自由」を使い分けている。国際社会の目が届くところでは寛大な姿勢を誇示する一方、そうではない場合には一層厳しい迫害を繰り返す、というやり方だ。
 「宗教の寛容と人権のためのフォーラム」(FOREF)はチベットの人権問題に言及し、「北京大会が終われば、メディアの中国への関心が減少する一方、北京当局のチベット人への弾圧はこれまで以上に激しくなっていくだろう。この懸念は日ごと、現実化している」と警告を発したことがある。
 同じことが今回もいえるかもしれない。「クリントン長官が中国の地から一歩、足を離すと、中国人権活動家やキリスト者への弾圧が一層激しくなる恐れがある」と。

IAEA報告書と「報道の勇み足」

 国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長は19日、シリアの最新査察履行報告書を35カ国の理事国に送付したが、日本の大手新聞社らは報告書内容を伝え、「新たなウランを検出した」と指摘したうえ、「黒鉛が発見された」と報じた。
 当方はシリア報告書をゆっくりと目を凝らして読んだが、「新たなウランが見つかった」は確かに記述されているが、「黒鉛が発見された」という内容は3頁の報告書の中にはない。
 そこで当方は「新たにウランが検出された」という見出しの記事を東京に送信したが、多くのメディアは「黒鉛が見つかった」という点を大きく報じたことはいうまでもない。なぜならば、「シリアが北朝鮮の支援を受けて黒鉛型原子炉を建設中」という西側情報機関の情報を裏付ける重要な証拠となるからだ。
 それではどうしてエルバラダイ事務局長は来月2日から開幕する定例理事会用にまとめた「シリア報告書」で「黒鉛」が発見された事実を記述しなかったか、という問題が出てくる。
 そのように考えていた時、IAEA事務局から「事務局長の報告書ではメディアが報じる『黒鉛が見つかった』といった内容は一切記述されていない。それは一部加盟国の憶測情報だ。事務局長の報告書に基づくかのように報じられているのは遺憾だ」という内容の一種のメモランダムが理事国に送られたという。
 すなわち、IAEA側は現時点では「新たにウランが検出されたが、黒鉛は発見されていない」という立場となる。今回の「黒鉛発見」は「報道側の勇み足」ということになる。

バチカン、越南と外交交渉再開

 ローマ・カトリック教会総本山バチカン法王庁は20日、ベトナムの首都ハノイで両国間の外交関係再開交渉をスタートした、と明らかにした。バチカン放送が報じた。
 同放送によると、バチカン使節団(団長ピエトロ・パロリン外務局次長)とベトナム側は外交関係を樹立する第1歩として作業グループを設置して協議、次期会合を開催することで合意したという。ただし、次期会合の時期は未定だ。
 両国関係はここにきて改善してきたが、司教任命問題や聖職者数の制限問題など、課題が山積していることは事実だ。最近では、カトリック信者たちがハノイの旧バチカン大使館の土地の返還を要求して集会を開催している。ベトナム当局側は「教会が自発的に返還した」として、信者達の要求を退けている。同土地は1950年代、政府に接収された。
 バチカン法王庁とベトナム間の外交関係正常化の動きは2007年頃から加速する一方、ベトナム・カトリック教会のグエン・ヴァン・リー神父が反政府活動を扇動したとの理由で裁判を受けるなど、ベトナム共産政権の宗教政策には依然、揺れが目だった。
 ローマ法王べネディクト16世が2007年1月25日、法王庁内でベトナムのグエン・タン・ズン首相と会談したことが契機となって、1975年以来途絶えてきた両国間の外交交流が動き出した経緯がある。
 バチカン側は「国家の独立を尊重し、カトリック教会は政治的な活動をせず、同国の発展に貢献する」という立場を表明し、「未解決問題は双方の努力で解決していく」という。
 アジアではベトナムはフィリピン、韓国と共にキリスト信者数が多い国で、人口の約10%、約800万人が信者と推定されている。
 バチカンにとって、中国とベトナム両国の共産政権との外交関係再開が大きな課題としてこれまで残されてきた。

欧州を席巻するカンナビス

 欧州で最も乱用されている麻薬類はカンナビスだ。15歳から64歳の年齢層で約7100万人が1度はカンナビスを摂取している、という統計が出ているほどだ。ウィーンに本部を置く国際麻薬統制委員会(INCB)が19日に公表した最新年次報告書の中で指摘されている。
 同報告書によると、欧州は不法カンナビスの最大市場であると共に、世界第2の不法コカイン市場であるという。コカインは南アフリカから西アフリカ経由で欧州に密輸されている。ただし、ここ数年は東欧経由で西欧に密輸されるケースが増え、コカインもアヘン密輸のルート「バルカン・ルート」で西欧に運び込まれるケースが増加してきた。例えば、2007年度には旧ユーゴスラビアのマケドニアで480キロのコカインが押収されている。
 一方、ヘロインはアフガニスタンからバルカン・ルート経由と中央アジアのシルクロード経由の2ルートで欧州に運び込まれる。西欧でも若者層でヘロインの乱用が拡大してきたと警告を発している。
 それだけではない。欧州は世界第2の不法アヘン市場でもある。西欧ではアヘン乱用は減少傾向にあるが、特に、ロシアを含む東欧でアヘン乱用が増え、国連薬物犯罪事務所(UNODC)の推定では約200万人の東欧国民が乱用している。また、中・東欧で不法覚せい剤の製造が広がっている。UNODCによれば、ロシアでアンフェタミン類製造の最大級の実験所が発覚している、といった具合だ。
 欧州の麻薬事情に関心がある読者は www.incb.org を訪れたらいいだろう。

シャンペンの代わりにワインを

 ウィーンの舞踏会シーズンのハイライト、ウィーン国立歌劇場(Staatsoper)の第53回舞踏会(Opernball)が19日夜(日本時間20日午前)、開かれた。
 外は零下10度まで下がったが、歌劇場内はムンムンするほどホットで女性たちは舞踏会専用の華やかなドレスに包まれて、お相手の男性とワルツに興じる。
 外では約400人に警察官が反舞踏会デモを警戒して警備に当たっていたが、大きな不祥事もなく夜は更けていった。
 このコラムを書いている当方は、もちろん、舞踏会の会場にはいない。オーストリア国営放送が流す舞踏会の様子を見ていただけだ。ゲストの中には日本人も含み多くの外交官たちの姿も見られる一方、オーストリアの上流社会のエリートたちが家族や恋人を連れて参加している。
 ボスニア紛争時代、「近隣国で多くの人が犠牲となっているのに、舞踏会で馬鹿騒ぎをするのは宜しくない」といった反舞踏会デモが起きたが、今回は「金融危機で国民経済が厳しく、多くの国民が職を失っている。そのような時に贅沢三昧の舞踏会を開催するのは宜しくない」といった声もあったが、大きなデモを行うほどの勢力とはならなかった。
 ところで、オーストリア政府からはファイマン首相も夫人連れで参加したが、シャンペンは高価(295ユーロ)だから、ワイン(60ユーロ)を、おつまみはキャビア・サンドウッチではなく、ソーセージとセンフを注文し、金融危機に直面している連邦国家の首相として見本を示していた(日刊紙オーストライヒ)、というから感動的だ。
 当方なら「好きなものを飲み、食べて下さい。今晩一晩ワルツを踊って、明日から気分一心、金融危機の対策にがんばってください」と言いたいが、日頃から気配りの首相はそれができない。首相の宿命だ。

北朝鮮・金光燮大使の悩み

 北朝鮮最高指導者・金正日労働党総書記の義弟、駐オーストリアの金光燮大使はいま頭を悩ませている。義兄の金総書記の健康問題ではない。ましてや、ポスト金総書記の動向でもない。「オーストリア・北朝鮮友好協会」会長ポストが空席となって既に1年半が過ぎたが、次期会長がまだ見つからないことだ。
 2006年から会長を務めてきたウィーンの実業家アドルフ・ピルツ氏が07年9月1日、心臓発作で急死したのだ。同氏は就任時に「新しい情報誌("Fokus KDVR")を発行し、北朝鮮の歴史、文化を国民に紹介したい」と抱負を語るなど、アイデアと意欲があった。北側の信頼も厚かっただけに、大使も同氏の死は「ショックだった」という。
 ピルツ氏の急死以後、副会長のエデュアルト・クナップ氏が今日まで会長代理を務めてきているが、金大使は「早急に新しい会長を見つけたい」とさまざまなルートを使って打診していることがこのほど明らかになった。
 友好協会メンバーの中には「副会長を会長にすればいい」という声もある。副会長自身も会長ポストに意欲があるが、金大使は「外部から新しい人材を抜擢したい」と考えているという。次期会長として、ー匆馘影響力がある、経済的バックボーンがある、等が条件として考えられている。その点で、「現副会長は余りにも小粒」というわけだ。
 次期会長候補として現在、1人の大物教授の名前が挙がってきた。本人の許諾と友好協会メンバーの信任が必要だが、金大使としては「ぜひとも会長に」と熱いエールを送っているところだ。
 友好協会では1980年代、90年代、著名な学者が会長を勤め、フィッシャー現大統領ら社会党(現社会民主党)系政治家たちがメンバーとして参加していた時代があったが、核問題が国際問題となって以来、政治家たちも1人去り、2人去りして、現在は誰もいなくなってしまった。金大使は大物教授に会長職を依頼し、友好協会を昔のように活気ある団体としたいのだろう。

北朝鮮外交官の還暦祝い

 知人の北朝鮮外交官が今月、60歳の還暦を迎えた。事前に知人の誕生日を知った当方は「貴国でも還暦は非常に大切な人生の節目として大きく祝う習慣があるはずだ。是非とも食事に招待させて頂きたい」と申し出たが、知人は「残念ながら君の好意を受けることはできない。君も知っていることではないか」という。
 知人がいう「君も知っていること」とは、当方を含む外国人ジャーナリストとどのような機会でも一緒に食事することは自国の治安当局関係者から睨まれ、取り締まりの対象となる危険がある、ということだ。
 「治安当局関係者」は海外の同国大使館に最低1人は派遣されている。彼らは駐在外交官や家族の動向を監視し、平壌に逐次報告するのが任務だ。その関係者に睨まれ、国への忠誠が疑われた場合、どのような結果が待っているかは、北朝鮮外交官ならば誰でも知っていることだ。
 そこで「食事が難しければ、何かプレゼントをしたい」というと、、知人は笑いながら、「残念ながら、無理だね。君もそんなこと考えないほうがいいよ」と言った。食事に招待もできないし、還暦祝いのプレゼントもダメ、というのだ。
 正直いって、当方は聞く前から知人の答えを知っていたが、「ひょっとしたら、可能かもしれない」というかすかな期待があったことも事実だ。知人は海外駐在歴が長く、西側文化をよく知っていたからだ。
 ちなみに、当方は過去、2人の北朝鮮関係者を食事に招待したことがある。今でも不思議に思うことだが、2人は招待を受け入れ、当方と一緒に食事したのだ。1人は国際原子力機関(IAEA)で10年間余り査察官だった金石季氏。もう1人は北朝鮮最高人民会議・金永南常任委員長の息子、金東治氏だ。
 なお、知人は後日、夫人と還暦祝いをしたのだろう。数日間、仕事を休んでいた。当方が先日、「還暦祝いは終わったのですか」と聞くと、知人は返事をせず小さく笑った。
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