ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

2009年04月

IAEA次期事務局長の懐具合

 国際原子力機関(IAEA)のフェルキ理事会議長は29日、今年11月末に退陣するエルバラダイ事務局長の後任選挙に5人が立候補したことを公表した。それによると、在ウィーンの国際機関日本代表部の天野大使のほか、前回選挙で戦った南アフリカのIAEA担当ミンティ大使、スペインのエチャバリ経済協力開発機構(OECD)原子力担当事務局長、スロベニアのペトリッチIAEA元総会議長、そしてベルギーからポンスレ元エネルギー相の5人だ。
 ここでは次期事務局長選の予想ではなく、その年給(懐具合)を紹介したい。
 IAEA理事会(計画・予算委員会、理事国35カ国)は27日からウィーン本部で開催されたが、当方が入手した次期事務局長の年給に関する外交文書によると、その年給は約24万ドルだ。それに接待費など年間約3万ユーロが追加支給され、それに住宅手当で約5万1548ユーロ、子供・児童手当て約3万ユーロが支給されることになっている。
 至れり尽せりだ。民間の小企業に勤務しているサラリーマンには夢の夢、といった給料体系だ。
 それだから、というわけではないが、エルバラダイ事務局長が4年前、米国の強い反対を退けても3選出馬に固守した理由もなんとなく想像ができる。
 もちろん、国連機関では事務局長だけではなく、その職務ランクによって給料体系が確立されているから、IAEA事務局長だけが飛びぬけて高給取りというわけではないことを断っておく。
 いずれにしても、天野大使、次期事務局長の椅子を目指し、がんばって下さい。

独で宗教授業の導入案が挫折

 ドイツの連邦首都ベルリン市で26日、公立学校で宗教授業を倫理と対等の選択科目にするかを問う住民投票が実施されたが、反対が51・3%を獲得し、賛成は48・5%に留まった。投票率は29・2%だった。その結果、宗教授業の公共学校導入案は却下された。
 宗教授業の導入を要求する市民運動「プロ・リリ(Pro Reli)」は昨年、署名活動を実施。住民投票実施に必要な17万人の署名を集めた。「プロ・リリ」の要求が受理されるためには、ベルリン市の有権者数245万人の4分の1、約61万2000人の市民の支持が必要だった。
 ベルリン市の公立学校では2006年から、第7学年から倫理が義務科目となり、実施されてきた。一方、宗教(この場合、カトリック、プロテスタントなどを含む宗教一般)は補助科目に過ぎなかった。
 それに対して、ベルリン市民の間から公立学校で宗教授業を第1学年から実施すべきだという声が高まり、「プロ・リリ」(Pro Reli)という市民運動が結成された経緯がある。
 独カトリック教会司教会議のツォリチィ議長(大司教)や新教のフーバー監督は失望を表明する一方、「公共の場で宗教と倫理問題に関する活発な論議が行われたことは有意義であったし、キリスト教、イスラム教、ユダヤ教が協力しあったことは大きな成果だ」と評価している。
 ちなみに、宗教授業導入反対派は「公共学校で宗教授業が実施されれば、宗教根本主義者を強化、拡大させるだけだ」などと主張してきた。
 最後に、「プロ・リリ」の提唱者クリストフ・レーマン氏は「住民投票の結果はベルリンが2分されていることを端的に物語った。西ベルリンでは賛成派が過半数を越えた一方、東ベルリンではその逆の結果だった。東西両ベルリン市の再統合から20年が経過したが、ベルリン市は依然、分裂している」と述べている。

一試合で14枚のイエローカード

 欧州のプロ・サッカーは世界一のレベルを誇っているが、残念ながら当方が住むオーストリアのプロ・リーグ(Bundesliga)は欧州リーグの中でも下位に入る。
 ところが、25日夜の試合で一部リーグ陥落の危機にある2チーム(Mattesburg対Kapfenberg)が対戦したが、その試合で主審(Fritz・Stuchlik)がなんと14枚のイエローカードを出したのだ。一試合で14枚のイエローカードは欧州リーグでは新記録だろう。1チームのイレブンの数より多くのカードを出したことになる。
 それだけではない。同主審は正規の試合時間90分が過ぎた後もロス・タイムなどを計算して15分間の延長戦を行わせている。これまた、新記録だ(試合は、Maaesburgが3対1で勝った)。
 珍しい記録を報じる同国メディアのスポーツ記者たちの評価は予想外に悪くない。14枚、イエローカードを出した、という理由で審判を批判している記事は少ない。
 FIFA(国際サッカー連盟)公認審判の主審は規則に忠実な審判として選手の間でも知られている。ちなみに、審判の中には、この程度はいいとか、先程ミス判断したから、今回は違反でも大目に、といった手加減や配慮をする審判が結構多い。
 プロのテニス界とは違い、ビデオ検証を導入していないため、審判のミス判断を覆すことはできない。その一方、10年前に比べ、試合テンポは速くなり、審判が判断に苦しむ場面が少なくないことも事実だ。
 最後に、個人的な印象だが、主審のイエローカードを振り回している姿を見た時、なぜか“教理の番人”と呼ばれてきたローマ・カトリック教会最高指導者ローマ法王のべネディクト16世の姿と重なってしまったことを付け足しておく。

605人の脱北者が難民認知

 3日間連続、北朝鮮に関わるテーマで申し訳ないが、取材で入手した情報を一刻も早く読者の皆さんに紹介したい、という動機からなのでご了解お願いしたい。
 ジュネーブ難民条約に基づいて難民申請を提出し、難民として認知された北朝鮮国民の数は2007年度、24カ国の先進諸国で605人、新たに難民申請者数は237人だった。この数字はウィーン国連内の難民高等弁務官事務所(UNHCR)のローランド・シェーンバウアー報道官から入手したばかりだ。この数字は国連機関が集計したものだけに、当方は注目している。
 24カ国とは、韓国を除く先進諸国が対象で、カナダ、米国、欧州諸国が主だ。ちなみに、韓国紙・朝鮮日報は昨年12月、北朝鮮国民で欧州の国籍所持者の数は2002年から06年間で1400人を超えたと報じた。同紙によると、欧州で北政治亡命者を受け入れた数が最も多いのはドイツで、その数は500人を超え、フランス、スペインがそれに次ぐと報じている。
 ところで、オーストリアではこれまで認知された北朝鮮難民はいない。オーストリアは冷戦時代、共産圏から約200万人の政治亡命者を収容してきた体験を有しているが、北朝鮮の政治亡命者を受け入れたことは現時点ではないというのだ。
 同国内務省によると、2006年に3人の北朝鮮国籍者が難民申請をしたことが判明しているが、認知はされていない。その後は申請者も認知者も出ていないのだ。難民収容国家の呼称を誇示してきたオーストリアとしては少し奇妙だ。シェーンバウアー報道官は「理由は分らない。これまで皆無だ」というだけだ。
 なお、欧州では現在、アフリカから大量の難民が押し寄せてきている。彼らはボートに乗ってイタリアやスペインの海岸を目指す。多くは経済難民といわれ、ジュネーブ難民条約に該当しない不法移住者として取り扱われている。

韓国・国家情報院の自信

 北朝鮮ナンバー2とみられている張成沢労働党行政府長が先月、フランス、イタリア、スイスの欧州3国を訪問したという。韓国の連合ニュースが発信元だ。
 張成沢氏の訪欧目的については、当方はこのコラム欄で「海外資金の管理が主要目的」という憶測を紹介したが、欧州で北朝鮮問題を担当する韓国国家情報院の知人は「連合ニュースの情報は誤報だ」と一蹴した。
 その理由を聞くと、「張成沢は目下、超多忙な指導者だ。国を留守できるほど余裕はないはずだ」と説明する。
 もちろんだ。金正日労働党総書記を治療したフランス医者団に会ったり、イタリアの実業家と再会するために、張氏はわざわざ訪欧する必要はない。その点は当方も同感だ。ただし、欧州の金ファミリーの隠し資金の管理ならは事情は少し違うはずだが、知人は「張氏の訪欧自体が間違いだ」と、繰り返し強調したのだ。
 欧米メディア関係者ならば、金正哲氏(金総書記の二男)に関するニュースを金正雲氏(同三男)に関する情報と間違うことは十分、考えられる(過去、その種の人違い情報があった)。しかし、韓国の通信社ならば、訪欧中の北の人物が張成沢かどうかのチェックは実施済みのはずだ。それとも、連合ニュースが主張する「北消息筋」はそもそも架空の存在だったのか。
 当方は「普段は慎重な知人がどうして今回、自信をもって主張するのか」という点に関心がいった。張氏の訪欧目的が欧州の金ファミリーの隠し資金の管理であったならば、知人はメディア関係者には当然、詳細な情報を隠すだろう。
 「張成沢の訪欧」について、もう暫く結論を下すのを見合わそうと考えている。

在ウィーン北朝鮮人の犯罪件数

 聞いてみるべきものだ・・・そんな感慨を体験した。
 当方は先日、オーストリア内務省連邦犯罪局(Bundeskriminalamt)の知人を訪問した。音楽の都ウィーン市の犯罪統計について聞きたいことがあったからだ。
 知人が作ってくれたコーヒーを飲みながら、ウィーン市の昨年度犯罪件数、犯罪別統計などを聞いた。
 知人は「ウィーン市では身体・生命に係わる犯罪が増加する一方、財産犯罪は減少傾向にあった。ただし、今年に入り、後者も増加傾向が見えてきた」という。犯罪発生率から判断すれば、ウィーン市は依然、欧州の都市の中では「安全な都市」に入る。例えば、殺人事件は家族・友人の間で発生するが、市民が見知らぬ人物に路上で襲撃される、といった類の殺人事件は皆無に近い。
 ところで、話が自然と「駐オーストリアの北朝鮮人犯罪」になった。知人はコンピューターのデーターを見ながら、「北朝鮮国籍者の犯罪件数は2007年度は3件、昨年度は9件だ。前年度比で200%の急増を意味する」という。
 ビックリした。書き出しの「聞いてみるべきものだ」という感慨はその時、感じたものだ。
 「罪種別に教えてくれないか」と聞くと、「詳細なデーターは今すぐには分らない。来週まで待って欲しい」という。知人はその時までに犯罪別情報を調べておく、と約束してくれた。
 ちなみに、これまたビックリしたが、駐オーストリアの日本人が起こした犯罪件数は2007年度は7件、08年度は10件で前年度比で42%増だった。犯罪発生率では日本人が圧倒的に低いが、犯罪総件数では北朝鮮国籍者のそれより1件、多いのだ。威張っていられない。

エルバラダイ氏の胸像が建つ日

 国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長は今年11月末、3期、12年間の任期を終え退陣する。エジプト出身の事務局長の退陣後の人生プランは明らかになっていないが、理事国の中からノーベル平和賞受賞者(2005年度)の事務局長の胸像をIAEA理事会室の前に建てる話が出ている。
 ウィーン国連Cビル4階の理事会室前には既に5人の歴史的人物の胸像がある。ポーランド出身で放射能物質の発見で夫ピエールと共にノーベル物理学賞を受賞したマリー・キュリー夫人(1867〜1934年)、核分裂の発見者・ドイツ人物理学者オットー・ハーン博士(1879〜1968年)、ソ連核計画の創設者、レーニン国家賞受賞者のイゴール・クルチャトフ氏(1903〜1960年)、インドの核計画の父・物理学者のホミ・バーバ博士(1907〜1966年)、そして核エネルギーの平和利用を提唱したIAEA創設者・米国のアイゼンハワー大統領といった歴史的人物の胸像だ。
 その一員の中にエルバラダイ事務局長が加わるわけだ。歴史的な人物の中に加わることにエルバラダイ事務局長自身が恐れ多いと萎縮しているか、というとそうではないらしい。
 12年間の事務局長時代に北朝鮮、イラン、シリアなどの核問題が表面化し、依然解決からは程遠い状態。山積したIAEAの課題は次期事務局長に引き継がれることになる。
 それでは現事務局長の功績は?と考えると、唯一思い出すことが出来るのはノーベル平和賞の受賞だ。しかし、物理学賞とは違い、政治的思惑で決定される平和賞の受賞だけに、「実質的な功績は皆無」といった辛らつな批判の声も聞かれるわけだ。
 胸像を建立するには、エルバラダイ事務局長の功績は過去の5人の歴史的人物のそれと比べ、明らかに見劣りすることは間違いないだろう。

国連外交官が愛する5つの噂

 人間は噂が好きだ。女性だけではない。国連の外交官も結構、噂を愛するし、噂を流すことがある。情報機関の偽情報工作は別として、耳にした情報を確認せず他国の外交官にもらす。1週間もすれば、その噂は外交情報として定着する、といった具合だ。
 根拠があるかどうかは別問題だ。噂を語る時の外交官の生き生きとした顔を見ると、外交官は噂を愛する存在であることを改めて知る。
 コラム数も1000本を越えたことだし、気分を一掃するために、ウィーンの国連内で現在、流れている代表的な噂を5つ紹介する。どうかそれらを安易には信じないでほしい。

 々餾欷胸厠狼ヾ悄複稗腺釘繊砲亮ヾ事務局長選(秘密投票)で米国は在ウィーンの駐国際機関日本代表部の天野之弥大使を支持しなかった(本当に聞こえるから、噂は恐ろしい)。
 ■稗腺釘礎甘大使のF女史は大統領の昔の愛人だった(ここでは実名を避ける)。
 9駭工業開発機関(UNIDO)の元事務局長は事務局長室内で秘書とセックスを行う(ウィーンの国連外交官ならば誰でも一度は耳にする噂)。
 す駭⊃Πの中に国際テロ組織アルカイダの連絡人が潜伏中(事実に近い噂)。
 ゥΕーンの国連内に北朝鮮最高指導者・金正日労働党総書記の親族が勤務している(北関連の情報は実証されるまでは噂の域を越えることがない)。

 以上だ。

 読者の皆さんは上記の5つの噂をどのように判断されましたか。これらの噂は、全く根拠がないわけではないが、事実として取り扱うには不十分、という情報です。
 なお、い留修砲弔い討蓮▲ーストリア内務省が一度、調査したことがある。

“天罰”発言神父辞退の真相

 ローマ法王べネディクト16世から補佐司教に任命された後、教会内外で強い抵抗にあって任命を辞退したオーストリア教会リンツ教区のワーグナー神父(54)が、同国の週刊誌プロフィール最新号(4月20日号)の中で、辞退に到った背景について初めて明らかにしている。
 ワーグナー神父は、ハリケーン・カトリーナ(2005年8月)が米国東部のルイジアナ州ニューオリンズ市を襲い、多くの犠牲者を出したことについて、「同市の5カ所の中絶病院とナイトクラブが破壊されたのは偶然ではない」と述べ、「神の天罰が下された」と宣言して憚らない。また、「同性愛者は病人だ」と語り、大きな波紋を投じた聖職者だ。
 同神父が2月初め、べネディクト16世から補佐司教に任命された直後、シュヴァルツ教区司教は歓迎を表明したが、教区内外で神父への批判が高まると、神父を弁護することはなかった。同国教会最高指導者シェーンボルン枢機卿も任命直後、歓迎を表明したが、その数日後、緊急司教会議を招集し、神父への対応を協議している、といった具合だ。
 同神父は2月15日、「教会内外に自分の任命に強い反発がある」として任命の辞退を決定したが、それに先立ち、シェーンボルン枢機卿はべネディクト16世に書簡を送り、ワーグナー神父の補佐司教任命の撤回を強く要請していたという。
 「信者の教会脱会の増加、それに伴う教会収入の減少に直面している教会は教会内のリベラルな勢力やメディアから激しい攻撃に晒されているワーグナー神父に任命辞退を強いた」というのがどうやら事の真相らしい。
 ワーグナー神父は「自分はカトリックの教えを主張しただけだ。自分の発言を撤回させる考えはない」と主張している。
 価値観の相対主義が席巻する社会で、是非は別として、カトリック教会の伝統的な教えを主張することが次第に難しくなってきた。ワーグナー神父の任命辞退劇はそのことを端的に物語っているのだろう。

ジャーナリストたちの「過去」

 オーストリアの週刊誌プロフィールは最新号(4月20日)で米中央情報局(CIA)の解禁文書を紹介し、そこで同国の代表紙ディ・プレッセの元発行人兼編集局長だった故オットー・シュールマイスター氏(Otto Schulmeister)が冷戦時代、CIAの協力者だったと報じた。
 同誌は3月23日号で元ウィーン市長のヘルムート・ツィルク氏(Helmut Zilk)が旧チェコスロバキア共産党政権時代の秘密警察(StB)の情報提供者だったと報じ、オーストリア国民に大きな衝撃を与えたばかりだ。今回はその第2弾というわけだ。
 ツィルク元市長は社会党(当時)に所属し、社会党政権下で文相も歴任したジャーナリスト出身の政治家だった一方、シュールマイスター氏は同国の保守紙プレッセの著名なジャーナリストだった。左派系と保守系のジャーナリストが冷戦時代、東西の情報機関の手先として動いていたわけだ。音楽の都・ウィーンが冷戦時代、東西両陣営のスパイ合戦の舞台となった、という歴史的事実を改めて想起させてくれる。
 プロフィールによると、シュールマイスター氏は1960年代、CIAの意向や願いを反映した社説を発表し続ける一方、米国の利益を阻害する問題には沈黙していたという。
 CIAは68年、同氏を単なる情報提供者ではなく、“協力者”という立場に引き上げたほどだ。ただし、同氏はツィルク元ウィーン市長とは異なり、CIAから金銭的報酬は得ていなかったという。
 ちなみに、CIAは60年代、シュールマイスター氏だけではなく、オーストリア国営放送、日刊紙クリア、ザルツブルガー・ナハリヒテン紙の記者たちとも接触していたというから、オーストリアでは当時、程度の差こそあれ、社会党左派ジャーナリストは旧ソ連や東欧諸国の情報機関の、保守系メディア関係者は欧米の情報機関の情報提供者や協力者となっていたというわけだ。
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