ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

2009年06月

北の「偉大な継承」

 北朝鮮労働党の機関紙「労働新聞」は23日、金正日労働党総書記の偉大なる業績の継承を主張し、「主体の血統を継承」する重要性を強調した。具体的には、故金日成主席、金正日総書記、そして3代目の金正雲氏(?)への偉大な継承を意味する(金総書記は数年前、「3代で政権が世襲されれば、世界の笑いものになるだけだ」と自ら述べていたのに、なんて水を差すつもりはない)。
 「偉大」というべきかどうかは別問題として、「継承」は間違いない。共産主義では世襲制は絶対受け入れられないが、主体思想を国是とする北朝鮮では久しく共産主義と別離しているから、「世襲」ゆえに批判されることはないだろう。もちろん、日本の「世襲」議員と同様に、「世襲」最高権力者といわれて揶揄される心配もない。
 ところで、故金日成主席から政権を継承した金総書記は当時、「遺訓統治」を実施して権力を固めていった。抗日パルチザン闘争を体験しなかった金総書記は父親の遺訓を前面に出して不足する指導者としてのカリスマ性を補っていったことは周知の通りだ。
 さて、偉大な継承の3代目となる金正雲氏(?)は血統以外で何を父親から継承するのだろうか。北朝鮮の国民経済が昨年度、3・7%のプラス成長を遂げた(韓国中央銀行発表)といっても、同民族の韓国経済の比ではない。毎年、国際機関から食糧支援を受けないと生存できない国家が正雲氏の眼前に横たわっているのだ。
 情報の信頼性は別として、キングメーカーの張成沢・労働党行政府長から後継意思を問われた長男・正男氏や次男の正哲氏は「後継の意思はない」と断ったという。もっともな話だ。
 明確な点は、3代目が継承できるものは、「先軍政治」の成果といわれる数基の核兵器だけだろう。核兵器こそ、正雲氏が父親から譲り受ける数少ない贈物なのだ。
 参考までに言及するが、「朝鮮半島の非核化」は故金主席の「遺訓」の核をなしていたはずだ。その遺訓を継承した金総書記は核兵器の実験を行った。そして今、3代目は祖父の遺訓を破った父親・金総書記から核兵器を継承するのだ。この矛盾と対立を内包した継承こそ、北流の「偉大な継承」というのだろう。

IAEA広報部の刷新を期待

 国際原子力機関(IAEA)広報部は24日夜、ドナウ河沿いのレストランでグリル・パーティを主催した。ゲストは招待されたジャーナリストたちだ。ただし、招待状を受け取ったジャーナリストもいる一方、敏腕記者として著名なジャーナリストには招待状が届かない、といったこともあった。招待状をもらって喜ぶジャーナリストもいる一方、「なぜ、俺には招待状が来ないのか」と激怒する国連記者たちもいた。
 パーティの当日は生憎、雨降りでゲストも50人程度。パーティの開始が遅れたために、グリルが始まる前に帰っていった記者たちも多かった。
 問題は、IAEA広報部がジャーナリストを「ベストフレンドたち」と「そうではない記者たち」に分け、前者だけを常に優先するやり方だ。
 「個人企業や民間企業ならば当然だが、国連機関の、それも広報部がジャーナリストを選択し、招待状を送るというやり方は良くない」
 「IAEA事務局は理事会で予算のアップを要求しているが、広報部の浪費を先ず止めてから要求すべきだ」といったきつい声も聞かれる。
 IAEAではコンフィデンシャル情報が部外に流れるケースが絶えず、外交文書が広報部員と交遊しているジャーナリストたちに筒抜けとなっている事態は普通ではない。
 情報は武器だ。その情報を巧みに使い分け、親密な関係のあるジャーナリストたちを優先し、そうではないジャーナリストたちを疎外するやり方は、少なくとも国連機関の広報部としては失格だろう。
 国連機関の広報部はコンフィデンシャル情報に対する管理能力と、同時に公平な広報活動が要求される。IAEA広報部の抜本的な刷新を期待する。

G8首脳たちのバチカン詣で

 イタリア中部ラクイラで7月8日から10日まで主要国首脳会議(G8サミット)が開催されるが、オバマ米大統領や麻生太郎首相らの首脳たちがサミット会議開催前後にバチカン法王庁(ローマ・カトリック教会総本山)を訪問し、ローマ法王べネディクト16世と会見する予定だ。
 バチカン放送によると、G8首脳陣の先頭を切って、日本の麻生首相が7日、バチカンを訪問し、べネディクト16世と会見する。日本首相としては最初のカトリック信者の首相誕生ということもあって、バチカン側も大歓迎だ。
 9日には、カナダのハーパー首相が続き、10日にはオバマ米大統領が法王を謁見訪問することになっている。
 世界に約11億人の信者を誇るローマ・カトリック教会最高指導者、ローマ法王との会談は首脳会談に慣れている米大統領や日本首相にとっても特別な意味合いがあるらしい。忙しいスケジュールにもかかわらず、法王との会見を望む。
 ところで、法王と首脳たちの会談では通常、中東和平問題、環境保護問題、金融危機などの国際問題が議題として取り上げられるが、時には、ゲスト国が抱えている問題についても、意見の交換が行われる。
 例えば、麻生首相との会談では、法王から死刑廃止への要請が出てくるかもしれない(バチカンは死刑廃止論者)。また、オバマ大統領との会談では、中絶問題や胚(はい)性幹細胞(ES細胞)研究問題がテーマとなるだろう。一部中絶容認者の米大統領にとって、法王との会談は快いものとはならないかもしれない。欧州で人気の高いオバマ大統領もバチカンでは一般的に批判的に評価されているからだ(参照「解放神学者が駐バチカン米大使に」2009年6月3日掲載)。
 いずれにしても、麻生首相やオバマ大統領のバチカン詣ででどのような発言が飛び出すか,注目される。特に、衆院総選挙を控えている麻生首相、べネディクト16世との会談では失言にくれぐれも注意して下さい。

ホーフブルク宮殿への道

 オーストリア大統領選(6年間)は来年夏、実施される。ハインツ・フィッシャー現大統領(70)は目下、再選出馬の意思を表明していない。一方、エルヴィン・プレル・二ーダー・エストライヒ州知事(62)が立候補意思をメディアを通じて明らかにしている。
 フィッシャー大統領が再選意思表明を躊躇している理由として、健康問題があるからだといわれている。いずれにしても今秋には再選出馬かどうかを決定するという。
 フィッシャー大統領の出身政党、社会民主党は「再選出場を表明すれば、全力で支援する」(ファイマン首相)や「フィッシャー大統領に代わる人物はいない」(ホイプル・ウィーン市長)といったエールを送っている。
 一方、プレル州知事はオーストリア最大日刊紙「クローネン」の支援を受け、大統領職に意欲を示している。ただし、出身政党の国民党の中には「プレル州知事の早々な出馬に少々戸惑っている」といった感じだ。その背景には、フィッシャー現大統領との闘いとなれば、苦戦は必至だ。プレル州知事の立候補表明はフィッシャー大統領の再選出馬断念を前提としている、という見方が強いほどだ。
 オーストリアでは大統領職は名誉職で実際の政治には大きな影響力がない。下院議長職を12年間務めたフィッシャー大統領は一貫して名誉職の道を歩んできた政治家だ。一方、プレル州知事は州レベルだが権力志向の強い政治家として知られている。プレル副首相は甥に当たる。だから、「プレル家は連邦首相と大統領のポストを掌握しようと腐心している」といった見出しが日刊紙で踊っているほどだ。
 ホーフブルク宮殿の連邦大統領公邸の主人を目指し、静かだがホットな闘いが始まろうとしている。
 なお、フィッシャー大統領は9月末、「オーストリア・日本修好140周年」を記念して来日する予定だ。

北の米クレジット・カード所持者

 「その人」はアメリカン・エクスプレスのゴールド・カードの持ち主だ。「その人」とは、欧州に居住する北朝鮮人だ。
 当方はたまたま、彼がゴールド・カードを旅行会社の窓口で出しているのを見た。突然、航空券を購入しなければならなくなったのだろう。平壌から連絡が入ったのかもしれない。躊躇している場合ではない。直ぐに航空券を購入し、指定された都市に行かなければならない。
 旅行会社関係者はそのカードを見ると、素早くチケットを予約してくれる。アメリカン・エクスプレスのゴールド・カードは一種の社会的ステータスを示すシンボルだ。「その人」はそのカードを再び財布の中に入れた。
 ところで、「その人」は通常、まったく普通の生活をしている。突然、休暇をとる点だけが、「特長といえば特長」(西側情報筋)だ。
 ファミリーから緊急の電話が入り、何かを調達しなければならないとか、欧州の都市でファミリー関係者と会って、随行しなければならない、などの依頼を受けるからだ。アメリカン・エクスプレスのゴールド・カードはその時、役立つ。
 ところで、駐オーストリアの北朝鮮外交官でクレジット・カードを所持している外交官といえば、当方が目撃した範囲だが、金光燮大使(金正日労働党総書記の義弟)と核問題担当参事官の2人だ。朴カンソン商務官も仕事柄所持しているだろう。すなわち、在ウィーンの北朝鮮外交官では多くみても3人に過ぎない。それに前述した「その人」と権栄緑氏(労働党資金担当副部長、ないしは総書記秘書室副部長)、北朝鮮のIOC委員、国際テコンドー連盟(ITF)総裁の張雄氏の3人だ。通常の北外交官はカードを持っていない。
 カード所持者の中でも、アメリカン・エクスプレスのゴールド・カードを持っている北の人物は、多分、「その人」以外にいないだろう。

偽米国債事件の調査近況を聞く

 総額1340億ドル(約12兆8900億円)相当の巨額な米国債を無申告で国外に持ち出そうとしていた2人の邦人(未確認)がイタリアで拘束されたという事件について、遅まきながら当方は24日、駐ミラノ日本総領事館関係者に電話し、事件の調査近況について聞いてみた。


 ――2人の邦人が所持していた日本旅券は本物だったのか。
「日本旅券は有効な旅券だったことを確認している」
 ――ということは、2人は日本人だということか。イタリアのメディアによれば、2人はフィリピン人だと報じていた。
「それはない。2人は日本人だ」
 ――イタリア警察から調査報告を受けているのか。
「イタリア警察当局から調査報告を受け取っていない」
 ――邦人を今後調査する予定はないのか。
「2人は尋問調査を受けた後、釈放された。彼らが逮捕され、拘束されていた場合、邦人保護の観点から何らかの対応ができるが、釈放されたから、保護というわけにもいかない」
 ――メディア報道によれば、米政府は米国債が偽造国債であることを確認したという。
「日本側としては何もいえない」
 ――巨額なニセ米国債事件の背後に北朝鮮工作員の影がないか。
「現時点で何もいえない。日本側としてはイタリア警察当局の調査待ちだ」
 ――北朝鮮は1990年代、外貨稼ぎの手段として自国銀行保証債を発行し、欧州で売りさばいていたことが判明している。
「その件については知らない」
 ――メディア関係者から問い合わせが殺到しているのでは。
「いろいろなところから問い合わせがきている」


 在ミラノの日本総領館関係者の口は堅かった。現時点では、イタリア警察の調査報告待ちという。駐イタリアの日本大使館関係者は目下、同国中部ラクイラで7月開催予定の主要国首脳会議(G8サミット)の準備で忙しく、ニセ米国債事件の解明に人材を投入するだけの余裕がない、というのが実情かもしれない。もちろん、麻生太郎首相が参加するサミット会談は重要だが、事件の解明を疎かにしてはならない。大きな事実が飛び出すかもしれない。

放蕩息子たちよ、カム・ホーム

 世界最大のキリスト教会、ローマ・カトリック教会の米国教会とオーストラリア教会がこのほど「カトリック信者よ、カム・ホーム」というタイトルの宣伝フィルムを放送し、信者ばかりか、普通の人々からも好評を博している。
 「カム・ホーム」とは、「教会に戻ってきてくれ」という意味になるが、その前提として、「多数のカトリック信者たちが教会から背を向け出て行った」という厳しい現実があるわけだ。さもなければ、「カム・ホーム」とはいわないだろう。
 理屈は別として、多くの信者たちが教会から脱会していった理由としては、\賛者の性スキャンダル事件の多発、⊇ゞ気悗隆愎漢喙此↓アイデンティティの欠如などが挙げられている。
 そこでPRフィルムを通じて、教会への理解を促進し、世界宗教としての誇りと活動、兄弟愛を紹介し、イエス・キリストのもとで信者間の連帯感を啓蒙していこうというわけだ。
 当方は早速、バチカン放送で紹介されていたサイトをオープンし、「カトリック信者たちよ、カム・ホーム」(www.catholicscomehome.org)のフィルムを見た。洗練されたカメラ・ワークで単刀直入にテーマ毎に紹介している。カトリック信者としてのアイデンティティを回復し、自信をもって欲しい、といったフィルム作成者の熱い思いが伝わってくる。
 当方の推測だが、フィルム作成者の頭の中には、新約聖書の「ルカによる福音者」15章11節から24節の「失われた息子、放蕩息子の話」があったのではないか。
 ところで、教会から信者たちが去って行く最大の原因となっている聖職者の性スキャンダル事件多発への対策はどうなっているのか。神父候補者に対して心理試験を実施し、聖職者の適応能力を審査する教会も出てきたが、抜本的な解決策からは程遠い。
 「カトリック信者よ、カム・ホーム」は好意的に受け止められたが、教会脱会傾向をストップできなければ、フィルムのパート2、パート3が必要となってくるだろう。
 Catholics come home !!

注目される偽造「米国債」事件

 総額1340億ドル((約12兆8900億円)相当の巨額な米国債を無申告で国外に持ち出そうとしていた2人の邦人(未確認)がイタリアで拘束されたという事件を聞いた時、当方は直ぐに北朝鮮工作員の仕業ではないかと考えた。
 それなりの理由はある。北朝鮮では過去、外貨不足をカバーするため、同国外国貿易銀行が額面総額220億ドルにも達する銀行保証債を発行したことがあるからだ。
 例えば、南アフリカの武器業者A・M・フォン・エック氏は北朝鮮の外国銀行発行の銀行保証債を額面の2〜3%の価格でドイツ不動産会社「UNIMO」(ドレスデン市)に売ったことが確認済みだ。同氏はコルシカのマフィア・グループと繋がりがある実業家で、北朝鮮とは密接な関係を有する。また、スイス・ジュネーブの「ザ・アツゥリンター」社が航空機業者のスペシャル・エア・オプテーション・グループ(SAOG)から飛行機を購入する際、北朝鮮貿易銀行保証債(額面40億ドル)での支払いを打診するなど、北朝鮮発行の銀行保証債は1990年代、欧州各地で流通したことが判明している。
 ちなみに、北朝鮮の銀行債を購入する業者やマフィア・グループは当時、購入価格と額面価格の差で巨額の利益を目論む一方、南北統一後、銀行債の保証を統一政府に要求する意図もあったといわれる。そのため、韓国政府は非常に警戒していたほどだ。
 今回の偽造「米国債」事件は、北朝鮮がここにきて自国銀行の銀行保証債の発行から「米国債」の偽造に切り替えてきたことを示しているのではないか。支払い不能国の銀行債では顧客が当然、限定される。そこで金融危機で揺れる国際金融市場に偽造の米国債を大量に流通させることで外貨の荒稼ぎを狙った、北の工作ではないか。
 偽造「米国債」事件の今後の捜査では、。何佑遼人の身元確認、▲ぅ織螢△繁鳴鮮の関係、の2点が焦点だ。
 なお、北朝鮮の偽造能力は既に米100ドル紙幣スーパー・ダラーで実証済みだ。

ポスト五輪の中国の宗教事情

 北京夏季五輪大会が終わって1年が過ぎようとしている。中国共産党政権は五輪大会を成功させる為にさまざまなイメージ・アップ作戦を展開させたが、その1つが「宗教の自由」の改善だった。五輪選手が宿泊するホテルや施設には聖書が置かれ、官製聖職者組織の愛国教会主催の礼拝も開かれた。そのため、「五輪大会開催は中国社会をより解放させる契機となる」といった好意的な声が聞かれたものだ。
 しかし、期待は次第に失望へと変わりつつある。まず「宗教の自由」だが、明らかに後退してきた。例えば、書籍印刷業者S氏が先日、北京の裁判所で3年間の有罪判決を受け、約1万5700ユーロ相当の罰金の支払いを義務付けられた。罪状は「不法な商売をした」というものだ。具体的には、S氏の会社が当局の認可なく、聖書やキリスト教系の書籍を印刷していたという。当局が警戒しているのは、多くの書籍が政府公認ではないキリスト教関係者に贈呈されていた、という点だ。
 20人余りの国家安全局関係者が昨年11月、S氏の会社を家宅捜査し、S氏を拘束し、書籍を押収した。S氏は今年1月4日、証拠不十分で一時、釈放されたが、3月19日に再び拘束されたわけだ。
 また、聖書を無料で人々に配布したという理由で同じように、中国の1人の神父が3年の有罪判決を受けたばかりだ。神父は裁判では「イエスの福音を多くの人々に伝えたいので聖書を配布した」と説明したが、受け入れられなかった。
 ローマ・カトリック教会総本山・バチカン法王庁も北京夏季五輪大会開催が中国の宗教政策を改善させる契機となると期待してきたが、ここにきて中国からは強硬姿勢しか伝わってこないので失望感が生まれつつある。
 バチカン放送によると、中国使節団が現在、バチカンを訪問し、将来の国交樹立を目指して協議中という。1昨年6月、「中国カトリック信者への手紙」を発表したローマ法王ベネディクト16世は中国との国交樹立には積極的という。それに対し、香港のゼン枢機卿は「バチカンは中国と性急な国交締結を実現するために妥協してはならない」と警告を発しているほどだ。

イスラエルへのメッセージ

 6月の国際原子力機関(IAEA)定例理事会は最終日の18日に入って活発な論争が展開された。論争のテーマは「シリアの査察履行状況に関する問題」だった。
 イスラエルが2007年9月、シリア北東部のDair Alzourサイトの核施設を空爆し、破壊した。ダマスカスは「軍事施設」と説明しているが、イスラエル側は北朝鮮の支援を受けて建設中の原子炉だったを主張してきた。
 イスラエルのシリアの施設への軍事攻撃について、エルバラダイ事務局長は「イスラエルは如何なる情報もIAEA側に開示せず、シリアの施設は核施設だ。シリアを糾弾すべきだと要求するだけだ。いかなる国も他国の核施設を爆撃する権利はない。国際法に明確に違反している」と指摘したのだ。
 環境サンプルから検出されたウラン粒子について、エルバラダイ事務局長はイスラエル側に「空爆に使用したミサイルは劣化ウラン弾だったのか」と書簡を通じて聞いたところ、イスラエル側からは「わが国から起因したものではない」という簡単な返答が戻ってきただけで、詳細な説明はなかったという。
 事務局長は「イスラエルは核拡散防止条約(NPT)に加盟せずに、他国の核拡散を批判し、軍事力を行使している」と怒りを爆発させたのだ。
 事務局長の怒りは理解できる。イスラエルは決して国際法外にいない。イランの核問題を批判するのなら、イスラエルはその前にNPTに加盟し、その義務を果たすべきだ。イランが国際社会から批判を受けるのは、イランがNPT加盟国だからだ。
 イスラエルは1981年、イラクの原子炉を爆発した(バビロン作戦)。そして2年前にシリアの核施設を空爆した。イランは現在、イスラエルがナタンツのウラン濃縮施設やアラクで建設中の重水炉を空爆するのではないかと警戒しているほどだ。
 イスラエルはその特異な歴史から、「安全」を最重視し、反イスラエル国家に対しては毅然とした態度で臨む。しかし、国際社会で共存していくためには国際法を遵守しなければならない。権利を要求する前に、その義務を果たさなければならない。
 オバマ米大統領の「核兵器なき世界」という核軍縮メッセージは、約200基の核兵器を保有しているといわれるイスラエルにも向けられているのだ。
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