ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

2013年10月

イランの「新しい提案」の中身は

 国際原子力機関(IAEA)とイランは28日、29日の両日、核検証問題についての協議をウィーンのIAEA本部で開き、共同声明を発表して終えた。IAEAのテロ・バヨランタ(Tero Varjoranta)事務次長が読み上げた共同声明によると、「協議は非常に生産的だった。過去と現在の未解決問題の解明に向け双方が協調し、実務的な手段を通じて解決していくことで合意した。両者は協議の継続のため来月11日、テヘランで協議することで一致した」という。

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▲共同声明を発表するIAEAのバヨランタ事務次長(右)とイランのナジャフィ大使(左)(2013年10月29日、ウィーンのIAEA本部で撮影)

 記者団からは当然のことだが、イランが提示した「新しい提案」の内容について質問が飛び出したが、「未解決問題を解決するために実務的な手段で対応する」(イラン側のIAEA交渉担当のレザ・ナジャフィ大使)という説明だけで、具体的な内容にはまったく言及がなかった。

 協議の初日、IAEAの天野事務局長はイランのアッバス・アラクチ外務次官と会談したが、「未解決問題を解決するため具体的な前進が期待される」と表明。一方、イランの交渉担当のアラクチ外務次官は「わが国の核開発計画は平和目的である。未解決な問題に対しては新しいアプローチで解明されるだろう」と述べた。ここでも、イランの「新しい提案」については具体的な説明がない。

 そこでイランが提示した「新しい提案」について、可能な限り推測してみたい。
 イランは国連安保理決議、IAEA理事会決議を無視してウラン濃縮関連活動を継続・拡大。同国中部ナタンツのウラン濃縮施設で新たに最新型遠心分離機を導入し、濃縮活動の加速化を図る一方、アラクで重水炉の建設を進めている。 IAEAは、イランの核計画の軍事転用疑惑の鍵を握る首都テヘラン郊外パルチンの軍事施設への査察を要求してきたが、イラン側は「軍事施設」という理由で拒否し続けてきた。欧米側はイランが同施設で核兵器用の高性能爆薬実験を行ったと見ている。

 IAEA側が「非常に生産的な協議だった」という以上、イランが申し出た「新しい提案」には以下の3点のいずれかが含まれているはずだ。
 第1は、ウラン濃縮関連活動の全面的停止は絶対考えられないが、その濃縮度を5%に制限し、20%以上の濃縮を停止、ないしは外国(ロシア)に依頼するという妥協案だ。欧米側としては核開発に繋がる20%以上のウラン濃縮は認めない。
 第2は、IAEAが繰り返し要求してきた追加議定書に署名し、加盟するという申し出だ。事前に通知せずに突発的な査察が可能となるから、IAEAの査察検証がこれまで以上にやりやすくなる(イランは米英人のIAEA査察員は認めないだろう。例えば、日本の場合、ロシア人のIAEA査察員の核関連施設への査察を受け入れないのと同様の理由)。
 第3は、パルチン軍事施設への査察を認める案だ。ただし、米科学国際安全保障研究所(ISIS)は8月、衛星写真を通じて、イランが首都郊外のパルチン軍事施設周辺のアスファルト舗装が5月末に完了したと報告している。IAEA査察員が現地入りしたとしても、核関連活動の証拠は見つからないかもしれない。イランがIAEAの査察受け入れを承認すれば、テヘランが核問題の解決に真剣であることを国際社会にアピールできる。

 イランは上記の3点を一度に交渉テーブルの上には置かないだろう。イラン側は、国連の対イラン制裁の緩和が狙いだから、欧米側の出方を見ながら提案してくると予想される。テヘランの新しい提案は対イラン制裁緩和と密接に連結しているからだ。

 穏健派のハサン・ロウハニ新大統領は就任直後から核計画の未解決問題の解決に意欲を示してきたことから、欧米諸国は「イラン側は国連制裁の緩和を求めて譲歩を示すだろう」と見ているが、イラン国内で反ロウハニ師の動きも活発化してきている。
 ジュネーブで来月再開するイランと国連常任理事国にドイツを加えた核協議でどのような政治的進展があるか、注視される。

日本の若者よ、海外で未来を築け

 読売新聞電子版(23日)に「国際機関で働きませんか」というタイトルの記事があった。国連機関には、その分担金に比べ、日本人職員が少ないことを受け、国連と日本外務省が22日、東京都内で国連職員採用に関する説明会を開いたというのだ。

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▲ウィーンの国連機関(2013年10月、撮影)

 この記事を読み10年前の包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)の朝食記者会見のことを思い出した。CTBTOのウォルフガング・ホフマン事務局長(当時)主催の朝食記者会見には早朝開催にもかかわらず、多くの国連記者たちが参加した。

 当方はその朝食記者会見でホフマン事務局長に質問したことがあるが、その内容はズバリ、「CTBTOには日本人職員が少ないのではないか」というものだった。その時、ドイツ人事務局長は「われわれは優秀な日本人職員をいつでも大歓迎するが、日本人自身は国連で働くことを余り願っていないのではないかね」と答えた。この場合、言葉や能力のことではなく、日本人の気質、メンタリティーのことを意味していた。

 日本の商社関係者から「若い時代、海外生活を体験することはいいが、3年程度だ。それ以上、長期間、日本を留守にすると帰国しても職場に席がなくなっている心配があるからね。それに子供の教育問題もあって長期間の駐在は厳しい」と聞いたことがある。

 ホフマン事務局長の話を聞いて、当方は当時、何も返答できなかった。なぜならば、「そうかもしれない」と思ったからだ。しかし、あれから10年以上の年月が過ぎた。日本人のブログなどを読むと、一つの会社に生涯、勤め上げるといった考えはもはやなくなってきたという。会社側もいつでも解雇できる社員を願っているという。当方は日本の雇用状況についてよく知らないが、過去10年間で日本の雇用市場は激変したのだろう。

 ポルトガルやスペインでは半分の青年たちが失業している。優秀な学歴保有者も職場を見つけるのが難しい冬の時代を迎えている。一方、専門知識を持つ労働者不足で悩むドイツの会社はスペインで説明会を開催し、青年たちをリクルートしている。採用する労働者には独語の学習を支援するなど至れり尽くせりの対応を行っている。その求募に応じてドイツに移住する若者たちも増えている。

 現代の日本人の若者が海外に飛び出す絶好の時を迎えているのかもしれない。単なるキャリアを積む、といった短期海外組だけではなく、異国の地で自分の人生の目的を実現していくと考える青年たちが昔以上に増えてくるのではないか。その意味で、読売新聞の記事が報じていた「国連機関の日本人職員の募集」はタイムリーな企画だ。

 IT技術が進歩し、世界は文字通り、グルーバル村となった。一生、同じ国に住むのもいいが、移住し、多くの異民族の同胞たちと交流する時代が既に到来してきている。交流を重ねていくことで、領土問題、「歴史の正しい認識」問題なども自然に解決していく、と信じている。議論と外交で解決できない難問も人的交流を重ねていくことで解けていくのではないか。海外に出て働く日本人は平和大使だ。日本の良さを再発見するためにも、若者よ、海外に飛び出し、そこで未来を築け。

「大統領は既にご存知と思いますが」

 独週刊誌シュピーゲル電子版(28日)には早速、面白い話が出ていた。米国家安全保障局(NSA)がメルケル独首相の携帯電話を盗聴していたことが発覚した後、メルケル首相とオバマ米大統領が会談した。両首脳間で欧州単一通貨ユーロの安定化問題が議題となった。メルケル首相は欧州の立場を説明する前に思い出したように、「大統領は既にご存知だと思いますが……」と切り出したという。メルケル首相は米大統領にわざわざ話さなくても、大統領はNSAから独政府の立場に関する情報を入手済みだという話だ。

 冗談はさておき、首相の携帯電話が盗聴されたことが判明すると、与党キリスト教民主同盟(CDU)から強い抗議の声が上がっている。欧州連合(EU)と米国間で協議中の「自由貿易協定」交渉を無期限に延期すべきだという声も聞かれる。ハンス=ペーター・フリードリヒ独内相は同盟国へのスパイ行動を禁止する法案の採択を求めている、といった具合だ。現時点ではっきりしていることは、独政府が米国側の説明を聞くために特別使節団をワシントンに派遣することだけだ。

 興味深い点は米国内の反応だ。米メディアもNSAの独首相盗聴工作について報じているが、欧州メディアのようにはヒートしていない。米国内では、NSAの民間人盗聴問題で抗議する数百人のデモがあったぐらいだ。

 米下院の共和党議員ペーター・キング氏は報道番組の中で、「NSAの活動は米国民だけではなく、フランス国民、ドイツ国民をもテロから守ってきた」と説明、欧州側の盗聴批判に不満を表明している。同議員は「ドイツ企業はイラン、イラク、北朝鮮と商談を行ってきた。米国内多発テロ事件(2001年9月11日)ではイスラム過激テロリストがハンブルクから米国に入国したのだ」と、テロ事件での欧州側の責任を追及している。

 フランス、ドイツなど欧州の情報機関は過去、NSAからテロ情報を入手してイスラム過激派のテロ計画を事前に防止したことがある。NSAは既に欧州諸国の情報機関と密接に連携している。それだけに、欧州側はNSAの盗聴工作を一方的に批判できない弱みがある。

 EUと米国との自由貿易協定は、ドイツ企業にとっても重要な協定だ。協定を通じて雇用拡大も期待できる。メルケル首相の携帯電話が盗聴されていたからと言って、協定締結を延期することはドイツ経済にとっても大きな痛手だ。

 ここまで考えていくと、メルケル独政府が実際履行できる対米制裁は口頭による遺憾の表明だけではないか。今回のメルケル首相盗聴問題がメディアで大きく報道されなかったら、米独両国は内々で話し合い、外交上の決着がついていたかもしれない。しかし、報道された現在、ドイツ側も何らかの対米制裁を取らざるを得なくなったわけだ。メルケル首相の盗聴問題は米国以上にドイツ側に負担となってきた。

 他国の情報機関が自身の携帯電話を盗聴していたということは気分は悪いが、自国の情報機関も他国の政府関係者や要人を盗聴しているのだから、あまり叫んでも利点は少ない。
 NSA盗聴工作の犠牲者・メルケル首相は、こまめにSMS(ショートメール)を送信する習慣を慎み、携帯電話で話す時は極力、機密情報は話さない、といった可能な対策を取ることで今回の盗聴騒ぎの幕を閉じるべきだろう。情報機関の工作問題を政治議題として協議することは賢明でない。両国の関係を不必要に険悪化させるだけだ。

「携帯電話は使いません」

 米国家安全保障局(NSA)が世界の指導者を盗聴していたというニュースは欧州でも大きな波紋を投げかけている。米国の盗聴活動を批判する声が多いが、「あなたの携帯電話は盗聴を防止できるシステムを持っているか」という一歩、進んだ問題も提示されてきた。
 NSAに2009年盗聴された独メルケル首相の携帯電話はノキア6260SLIDEだ。同首相が今、使用している携帯はBlackberryZ10で一応、Krypohandyで盗聴防止システムが導入されている。
 
 面白かったのは、インドのシン首相が「あなたの携帯電話は盗聴されていませんか」というメディアの問いかけに、81歳のインド首相は「自分は携帯電話を使用しない」と答えたというのだ。NSAの携帯電話の盗聴に対して、携帯電話を使用しないことが最善、最強の手段であることは間違いないが、世界の指導者が皆、インドの首相のようには出来ない。緊急に対応しなければならない問題に対して、国家の印を押した書簡を郵送していては解決できる問題も解決できなくなる。インターネット時代、世界の指導者は携帯電話、IT技術を否応なく駆使せざるを得ないだろう。

 アルプスの小国オーストリアのファイマン首相は同国のメディアから「首相の携帯電話は米国に盗聴されていませんか」と聞かれた。「私の携帯電話など大国米国は関心がないだろう」とはいえないから、「暗号化技術などを導入しているから安全だ」と答えたという。
 英紙ガーディアン電子版によると、世界の35カ国の指導者が米の盗聴工作の犠牲となったという。盗聴された35カ国の指導者は「世界の政治を左右できる影響力のある指導者」と米国の公認を受けたわけだ。近い将来、「G8」(主要国首脳会談)という呼称に倣って、米国公認指導者クラブ「G35」が設置されるかもしれない。いずれにしても、米国の盗聴技術は、電子データの暗号化技術を解読できるというから、対抗手段は現時点では限られる。

 ここでは携帯電話が提示する問題を少し哲学的に考えたい。携帯電話は基本的には相手と対話したり、用件を伝えるためにある。その携帯電話の登場でわれわれの相互理解は深まったか、というテーマだ。

 携帯電話の登場で世界は本格的なコミュニケーション時代を迎えた。携帯電話は事故や災害時には大きな助けとなる。携帯電話を所持していたから、事故現場から救援を依頼できた、といったケースは少なくないだろう。私たちは携帯電話、それに関連するソーシャルネットワークの登場で24時間、相手をキャッチし、話すことができる時代の恩恵を享受している。

 問題は、携帯電話の登場でヒューマン・コミュニケーションは良くなったかだ。妻、友人、同僚との相互理解が深まったか、ホットラインで繋がっている国家同士の関係が改善したか、等だ。対話の頻度は増えたが、その内容が薄くなってきたという。残念ながら「良くなった」と断言できない。全く変わらない、益々悪くなったというケースもあるだろう。携帯電話、IT技術の登場で世界が一層、相互理解を深め、平和になったとは聞かないのだ。

 もちろん、相互理解の有無を決定するのは「わたしたち」であり、携帯電話の有無でも送信回数でもない。しかし、24時間、友人と連絡が取れ、対話できる環境で生きながら相互理解が深まらないとすれば、何が問題だろうか。

 完全な盗聴防止の携帯電話が近い将来造られる希望はある。しかし、携帯電話などIT技術を駆使して「わたしたち」が相互理解を深めるることができるか、という問いには安易に「イエス」といえない。このように考えると、わたしたちは憂鬱になってしまうかもしれない。
 「携帯電話の使用」を断念できない現代人は、携帯電話を有効に利用して相互理解を深めるために努力を積み重ねていく以外にないだろう。技術発展の速度に比べると、わたしたち自身の成長速度はなんと遅々としていることだろうか。


 

「教会財産」の杜撰な管理

 独リムブルク司教区のフランツ・ペーター・テバルツ・ファン・エルスト司教の教会関連施設建設への巨額な出費(推定約3100万ユーロ)が大きな社会問題となっている。ロー法王フランシスコは21日、同司教の謁見を受けたばかりだ。バチカンからの情報によると、同司教はしばらくの間、休職し、その代行としてヴォルフガング・レシュ首席神父が司教総代理として従事するという。同司教がその後、司教区に帰任するかは独司教会議が設置した調査委員会の報告で最終的に決めるという。司教区の信者の間では、法王が即司教の解任を決定しなかったことに不満の声も出ているが、バチカン側は「法王は慎重に対応している」という。

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▲「財産問題の管理が問われるバチカン法王庁」(2011年4月、撮影)

 ところで、独教会司教区の問題は決して一司教の嗜好・浪費問題に収束されるものではないだろう。教会保有の財産とその運営が問われているからだ。すなわち、これまで非公開だった「教会の財産」について、どれぐらいで、どのように使用されているかという非常にデリケートな問題が問われだしてきたのだ。

 例えば、世界に12億人以上の信者を有するローマ・カトリック教会総本山のあるバチカン市国には資金管理とその運営を担当するバチカン銀行(正式には宗教事業協会、IOR)があるが、同銀行は過去、不法資金の洗浄(マネーロンダリング)容疑やマフィアとの関係などの疑いがもたれた。バチカン銀行だけではない。ドイツのローマ・カトリック教会系銀行「Pax銀行」が避妊薬や軍需品を製造する企業に投資し、資金運用していたことが明らかになったことがある。Pax銀行は1917年、教会や慈善活動組織カリタスのために創設されたカトリック教会系銀行だ。その銀行が資金の運用先として避妊薬などを製造する米国の大手医療関係メーカー「ワイス社」(Wyeth)や軍需品のトップメーカーの英「BAEシステムズ」に投資していたことが発覚した、といった具合だ。フランシスコ法王はバチカン銀行頭取の入れ替えなど、教会系金融機関の刷新に乗り出している。

 カトリック教国のオーストリアを例に挙げてみる。同国では毎年、数万人の信者が教会から脱会しているが、それでも同国最大の宗派でその数は約550万人だ。同国カトリック教会には約4200人の神父が従事し、540人の執事が勤務している。同国教会は昨年から教会の収入と支出を公開している。それによると、昨年、5億3800万ユーロの収入があった。その約80%は信者からの教会税だ。総支出は5億3300万ユーロだ。その大部分は人件費だ。

 オーストリアの教会の場合、各司教区が教区独自の財政報告書を作成しているので、オーストリア全土の詳細な財務状況を掌握するのは難しいという。教会は教会税で運営されているが、その他に教会は莫大な財産を保有している。総額は100億ユーロを上回ると推測されている。土地、教会建物、墓地、学校、幼稚園など教会はさまざまな施設を保有している。カトリック教会は同国で2番目の不動産所有者だ(オーストリア国営放送を参考)。

 新約聖書の「マタイ福音書」22章には「カイザルのものはカイザルへ」というイエスの有名な聖句がある。パリサイ人がイエスを陥れるために貨幣デナリを持ってきて、「カイザルに税金を納めてよいでしょうか、いけないでしょうか」と聞く。イエスは彼らに「これは誰の肖像か、誰の記号か」と聞く。そして「カイザルのものです」と答えると、「それでは、カイザルのものはカイザルに、神のものは神に返しなさい」と答えている。すなわち、この世のもの(貨幣)はその支配者に、神のものは神に返すべきだというわけだ(カイザルはローマ皇帝の呼称で、世俗的な支配、権威を象徴)。信者の献金は神に捧げられたものと考えれば、その管理運営が大切となることはいうまでもないことだ。

 イエスの第一弟子ペテロを継承するカトリック教会では、財産の管理・運営でいつも問題があった。カイザルの資産に目が眩み、心を奪われた聖職者は過去、少なくなかった。独リムベルクの司教問題は決して新しいテーマではなく、教会財産の杜撰な管理が問われているのだ。
  

米国は盗聴工作を止めない

 欧州連合(EU)の盟主、ドイツのメルケル首相がカンカンに怒っているという。連立政権交渉で野党第1党の社会民主党が不当な要求を主張しているからではない。オバマ米政権がドイツでも盗聴工作を展開させていたことが判明したばかりか、自身が愛用している携帯電話も傍受されていたことが判明したからだ。「同盟国の政治家の対話を盗聴していたということは許されない」と激怒し、23日、オバマ大統領に電話で「重大な背任行為だ」と異例の強い抗議をしたというのだ。

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▲NSA本部(NSAのHPから)

 米国の盗聴はメルケル首相が最初の犠牲者ではない。フランスのルモンド紙によると、米国は昨年末から今年初めにかけて同国企業や個人の電話7000万件以上を傍受していたという。オランド仏大統領はオバマ米大統領に電話で抗議し、事実関係の説明を求めたばかりだ。英紙ガーディアン電子版によると、世界の35カ国の指導者が盗聴されていたというのだ。

 どの国が米国の盗聴や傍受の犠牲となったかを列挙しても意味がない。米国は世界の全ての指導者を盗聴していたと考えるほうが事実に近いのではないか。ひょっとしたら、米国家安全保障局(NSA)はオバマ大統領の家族も盗聴していたかもしれない。NSAの盗聴システムは既に政府のコントロールを離れ、自動操業しているかもしれないからだ。

 明確なことは、EUの政治家や世界の指導者が激怒し、抗議を表明したとしても、米国はその情報戦略を停止することはない、ということだ。なぜならば、米国は、世界の要人が発信するメール、携帯電話を盗聴できる技術的、財政的能力を保有している唯一の国だからだ。どの国が自国のメリットを駆使しないことがあるか。残念ながら、世界の政治舞台では倫理は通用しない。国益が最優先だ。相手国と商談したり、政治交渉する場合、情報がその勝敗を左右する。情報戦争と言われて久しい。そして米国がどの国よりも多くの情報を入手し、それを交渉の武器として使用できるのだ。米国が利己的な国というのではない。その情報力が桁違いに発展しているだけだ。
ちなみに、オバマ大統領は8月、米中央情報局(CIA)元技術助手のエドワード・スノーデン氏の問題に初めて言及し、「彼は愛国者ではない」と一部メディアの英雄扱いに釘を刺す一方、「国家の安全とテロ対策に取り組むNSAの情報活動は愛国的だ」と評価している。

 メルケル首相の怒りを受けたオバマ大統領は盗聴を否定し、調査を約束したが、あくまでも外交上の対応だろう。一方、メルケル首相も米国の盗聴が即停止されるとは考えていないだろう。だから、盗聴防止対策を取るだけだ。

 東西両ドイツの再統一の貢献者、ヘルムート・コール氏は首相時代(在位1982年〜98年)、重要な電話を掛ける時、近くの電話ボックスを探し、そこから電話したという。コール氏は「旧東独共産政権が盗聴していることを知っていたからだ」という。コール元首相の愛弟子、メルケル首相が米国の盗聴工作に慌てふためいている、と考えるのは間違いだろう。
 実際、独シュピーゲル誌が23日に報道する前からメルケル首相は米国の盗聴を知っていた気配があるのだ。社会民主党のガブリエル党首によると、社民党との連立交渉の席でメルケル首相は極めて口数が少なく、異常なほど慎重だったと証言している。シュピーゲル誌が報道しなければ、メルケル首相は盗聴問題を米国との内々の交渉で決着させていたかもしれない。なぜならば、情報国・米国が欧州の指導者を盗聴しないと考えるほうが可笑しいからだ。

 冷戦時代とは異なり、情報戦争時代では敵国、同盟国の区別は極めて希薄となってきた一方、盗聴を含む情報技術は急速に発展してきた。情報戦争では情報収集技術の有無が決定的だ。情報収集能力のある米国に誰がその活動を停止させることができるだろうか。
 米国のCIA工作員がニューヨークの国連で傍受していた時、偶然、「中国の工作員も同じように傍受していることが判明した」という。笑い話ではない。世界は目下、情報戦争下にあるのだ。

大連立政権は政治を退屈させるか

 ドイツで先月22日、隣国のオーストリアで同月29日、それぞれ議会総選挙が実施された。ドイツではメルケル首相が率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と野党第1党の社会民主党(SPD)の大連立政党の政権交渉が進行中だ。一方、オーストリアではそれより少し早く、与党社会民主党と国民党の大連立政権の継続が内定し、現在、両党間で大連立政権発足を目指して交渉が進められている。大連立政権が実現した場合、ドイツは4年ぶり、オーストリアは続投を意味する。 

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▲オーストリア連邦首相府官邸(2012年、ウィーンで撮影)

 ドイツでは20日、社民党が幹部会でCDU・CSUとの大連立政権を目指すことを決定したばかりだ。両党は外交・国防、財政、エネルギーなど12作業グループと4サブ・グループを設置して、各テーマごとに専門グループの間で政策協議が行われる。
 社民党側は最低賃金(時給8・50ユーロ)の導入を選挙公約としただけに絶対譲れない。CDUは「旧東独の雇用を奪い、中小企業経営者でも強い反対の声がある」として拒否してきたが、ここにきて社民党の主張に歩み寄る姿勢を見せている。ただし、富者への増税、欧州金融取引税の導入問題のほか、ギリシャへの追加財政支援問題、緊縮政策と経済成長とのバランスなど、両党が対立するテーマには事欠かない。「増税は必要ない」(ショイブル財務相)というCDUに対して、社民党がどれだけ譲歩を引き出すことができるだろうか。

 ちなみに、メルケル第1次政権(2005年〜09年)は社民党との大連立政権だった。社民党は大連立政権に意欲はあるが、不安もある。「メルケル首相主導の連立政権に参加した政党は次回選挙で必ず敗北する」というジンクスがあるからだ。社民党は2005年、メルケル第1次政権に参加したが、次期選挙(09年)で得票率を大きく落とし、メルケル首相のCDUだけが独り勝ちした。メルケル第2次政権の政権パートナー、自民党は今回、議席を完全に失うという歴史的敗北を喫したばかりだ。第2党として、社民党がそのカラーを発揮できない場合、同じことが生じる危険性は払拭できない。

 一方、オーストリアでは8作業会に分かれ、両党の担当議員が交渉に当たっている。ファイマン首相が率いる現政権の継続ということもあって、両党はファミリーのような雰囲気で政権交渉を行っている。ただし、教育問題では、14歳まで一律制学校システムを主張する社民党に対し、国民党は「子供の能力によって自主的に選択できる教育システム」を擁護するなど、両党は対立している。富豪税を要求する社民党に対し、増税反対の国民党といった具合で、大連立政権の場合、抜本的な改革は元々期待薄だ。両党の一致点は、政権政党の特権、甘味を失くない、というところだろう。
 第2次連立政権の課題は「第1次政権とは違う」ことを国民にどのようにアピールするかだ。最も簡単な道は閣僚の顔を変えることだ。国民党党首のシュビンデルエッガー外相が財務相ポストを担当、科学担当省を未来問題担当省に併合するなど、舞台裏で既に動きがみられる。

 ドイツもオーストリアもクリスマス前に大連立政権の発足を目標に動き出してきた。独社民党の場合、連立交渉が終結した段階で47万人の党員に書簡でその是非を問う予定だから、多少の紆余曲折は考えられる。

 両国の国民の中には、「多難な時代を乗り越えていくためには大連立政権が最善の選択肢」という点でほぼコンセンサスはあるが、野党勢力の存在感が一段と薄くなる一方、「政治は益々退屈となっていく」という声もある。

  

メディアは「神」について語れ

 当方は「誰がメディアに権力を与えたか」というコラムの最後に、「旧約聖書によると、天使長ルーシェル(蛇)はエバに『(エデンの園の中央の木の実を)取って食べるなと神はほんとうに言われたのですか』と囁き、エバはルーシェルの誘惑に負けて、神の戒めを忘れ、食べてしまう。嘘情報をエバに広げた最初のメディアはルーシェルだったわけだ。われわれメディア関係者はルーシェルの嘘情報に騙されないように常に自省すべきだろう」と書いた。失楽園の話だが、少々、端折って書いたのでその内容が意味不明になってしまったと感じている。そこで今回、少し説明する。

 ルーシェルは人類最初の女性、エバを誘惑する。その際、、ルーシェルは神の言葉を巧みに利用する。「神はエデンの園にあるどの木からも取って食べるなといわれたのですか」とエバに聞く。エバは「中央の木の実だけは取って食べるな。死んではいけないから、といわれました」と答えた。すると、ルーシェルは「あなた方は決して死ぬことはないでしょう。神は、その実を食べれば神のように善悪を知る者になることをご存知です」と囁く。

 神は自身の似姿に創造した人間に対し、「生み、増やしなさい」と祝福している。エバとアダムが将来、家庭を築き、子供を繁殖すること願われていたことが分かる。だから、エバとアダムは成熟すれば取って食べて良かったわけだ。その点、ルーシェルの囁きは嘘ではない。しかし、神は「食べるな。食べれば死ぬだろう」と警告している。一方、ルーシェルは「食べても死なず、むしろ、目が開き、善悪を知る者になる」と呟き、神が許してない時に食べろと勧めたわけだ、これは明らかに嘘だ。実際、食べたエバ、そしてアダムは、聖書学的に表現すれば、堕落したわけだ。堕落は死を意味する(「食べる」とは、聖書の世界では性的関係を持つことを意味する表現)。

 繰り返すが、人類最初のメディアの使命を持ったルーシェルはまったく出鱈目な話を伝えたわけではないのだ。独語ではHalbwahrheitという。半分正しいという意味だ。知恵の天使だったルーシェルはどこかのメディアのように出鱈目な話を広げ、拡大したのではない。真理の半分を語り、相手を騙したのだ。

 さて、現代のメディア界を見渡してほしい。当方の同業者は誰が見ても直ぐに嘘と分かるような情報は流さない。多くは‘半分の真理‘を読者に伝達するのだ。だから、多忙で、自身で検証する時間のない大多数の読者はついつい騙される。メディア界にはルーシェルの教え子たちが少なくないのだ。

 付け加えると、メディアは神の話を可能な限り回避しようとする。神を含め宗教一般について生来、懐疑的であり、出来れば無視しようと腐心する。あたかも、神が登場すれば、半分の真理しか報道していない自身の罪状が暴露されるのではないか、と恐れるようにだ。ルーシェルは自身の罪状が公の場で明らかになることをあらゆる手段を駆使して隠す。

 神が存在するかどうか、メディアも時たま、話題にするが、「悪魔」が存在するかは議論されることはほとんどない。聖書には約300回、「悪魔」の存在が言及されている。にもかかわらず、私たちは「悪魔」の存在については無頓着だ。「悪魔」といえば、全くのおとぎ話のように受け取る人々が多いだろう。その点をみても、ルーシェルがいかに知恵者か分かるというものだ。

 最後に、メディア関係者にとって耳の痛い話を紹介し、このコラムを閉じる。

 米ミュージシャン、カート・コバーン(kurt Cobain)は1994年4月5日、銃で自殺したが、それ以後、“急いで生き、激しく愛し、若くして死んだ”ミュージシャンたちのグループを“クラブ「27」”と呼ぶ。その伝説を生み出したコバーンは生前、「ジャーナリストは最も尊敬に値しない存在だ」と述べていた。厳しい言葉だが、肝に銘じるべき警告だ。

高位聖職者の「生活ぶり調査」

 独週刊誌シュピーゲル電子版が面白い企画を行った。独のローマ・カトリック教会27教区の責任者に質問を送り、その結果を発表している。質問内容は、〇紛機平機卿)の住居状況、⊆屬亮鑪燹△箸い辰燭わめて世俗的な質問だ。独週刊誌の企画の狙いは明らかだ。リムブルク司教区のフランツ・ペーター・テバルツ・ファン・エルスト司教の巨額な教会関連施設建設費(推定約3100万ユーロ)が大きな社会問題化し、国民の間にも「他の高位聖職者(枢機卿、大司教、司教)の生活ぶりはどうか」といった素朴な関心が高まっている。そこで少々、覗き趣味的な企画となったわけだ。

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▲ウィーン市内のローマ・カトリック教会(2013年4月1日、撮影)

 週刊誌らしい企画だが、あまりにも世俗的な質問であり、高位聖職者も答えるのに苦労したかもしれない。質問には、聖職者不足をどのように克服するか、聖職者の独身制を維持すべきか、といった教会が現在直面している深刻な問題はまったくないからだ。

 独週刊誌は「独教会の27教区責任者(2教区は空席)がほとんど返答してくれた」と自負し、その結果を20日の電子版で紹介している。例えば、アヘン司教区のハインリッヒ・ムシングホフ司教(73)は203平方メートルの大きな住居で、3部屋、風呂場、トイレ、台所があり、使用している車はBMWだ。エッセン司教区のフランツ・ジョセフ・オバーベック司教(49)は220平方メートル、車はVWだ。ケルン大司教区のナイサー枢機卿の場合、246平方メートル、車はBMWだ。枢機卿でもミュンヘン・フライシング大司教区のラインハルド・マルクス枢機卿(60)は3部屋だが、大きさは90平方メートルと小さい。
 質素な生活をしている司教としては、レーゲンスブルグ司教区のルドルフ・フォ―ダーホルツアー司教(55)は専用車を持っていない。ロッテンブルク・シュトゥットガルト司教区のゲブハルド・フュルスト司教(65)は司教邸に住んでいる、といった具合だ。面白いのは、フルダ司教区のハインツ・アルガ―ミセッン司教(70)は174平方メートルの住居だが、「近い将来、110平方メートルの小さな住居に移りたい」と述べている。同司教は174平方メートルの住居が広すぎて「少々、贅沢かな」と正直に告白しているわけだ。
 
 27教区の高位聖職者がシュピーゲル誌の質問に答えている姿を思い浮かびてみた。「答えないと、憶測されるかもしれない」と考え、仕方なしに答えた司教もいただろう。「あれもこれも、あの奴が馬鹿なことをしたからだ」とテバルツ・ファン・エルストエルスト司教に怒りをぶっつけた聖職者もいたかもしれない。「質素な生活、「車は中古車を」と叫ぶフランシスコ法王の姿を想起したかもしれない。「贅沢と華美な生活時代は終わった」と時代の変化を密かに嘆き、「昔は良かった」と呟いた高齢聖職者がいたとしても驚かない。

 独ローマ・カトリック教会は国家機関ではないから、高位聖職者がどのような生活ぶりをしていてもそれは教会の問題だ。部外者が、ああだ、こうだというべきではないかもしれないが、信者から教会税を受け取っている以上、詳細な会計報告は不可欠だ。使い方に問題が生じれば、信者から追及されるのは当たり前だ。神を語り、イエスの苦難の道を紹介する教会聖職者が奢侈な生活に溺れているようでは、信者たちの心に届く説教や牧会は期待できないだろう。ただし、住居の大きさと所有する車種によって聖職者の良し悪しは判断できない。


 【テバルツ・ファン・エルスト司教問題』
 ローマ法王フランシスコは21日正午(現地時間)、リムブルクのフランツ・ペーター・テバルツ・ファン・エルスト司教の私的謁見を受けた。両者の会談は約20分間と短く、その内容は明らかにされていない。リムブルク司教広報担当者は「エルスト司教はローマ法王を謁見し、鼓舞されたと述べている」という。一方、バチカン関係者によると、「フランシスコ法王はエルスト司教の処遇問題では早急な決断を下さない考えだ。先月設立されたリムブルク司教区建設問題特別委員会の調査報告を待って決めるだろう」という。ドイツ・メディアによれば、同司教は辞任に追い込まれるだろうという。

元ナチス親衛隊大尉の埋葬問題

 「ナチス戦争犯罪者は死ぬと火葬される。墓には埋葬されない。だから、彼らには墓がない」
 元ナチス親衛隊のエーリヒ・プリーブケ元大尉の埋葬騒動の背景を調べている時、上記の話を知った。

 プリープケ大尉は11日、ローマで100歳で死去した。元大尉は、イタリアで第2次政界対戦中の1944年3月24日、355人の民間人(その内、75人はユダヤ人)を殺害した戦争犯罪容疑を受け、一時期アルゼンチンに逃亡していたが、そこで逮捕され、イタリアに引き渡された。大尉は1998年に終身刑を受けたが、高齢を理由にローマで自宅拘束されてきた。元大尉は最後までユダヤ人の虐殺に関与したことを否定していた。

 ローマ市は過去のナチス戦争犯罪者の例に倣い、元大尉の遺体を火葬する予定だったが、元大尉の遺族が「父親はカトリック教会の葬儀を願っていた」と主張したため、火葬は断念され、葬儀を行うことになった(イタリアではどのような葬儀を行うかは遺族が決定し、当局は強制できない)。
 しかし、ローマ市当局とカトリック教会ローマ教区は元大尉のカトリック葬儀を拒否した。その時、ローマ・カトリック教会から破門されたカトリック教会根本主義組織「ピウス10世会」(聖ピオ10世会が葬儀を引き受け、ローマ南東部アルバノの「ピウス10世会」所属の礼拝堂で15日、葬儀を挙行することになったのだ。ただし、葬儀反対の左派グループとネオナチグループが衝突したため、葬儀は中断されてしまった。

 そこで、元大尉の遺体をどのように処置するかで関係者と遺族が頭を悩ましたわけだ。イタリアのメディアによると、元大尉の遺体をドイツに運び、そこで埋葬する案が出ている。ローマ市の イグナツィオ・マリーノ市長は16日、「ドイツ側と元大尉の遺体問題で非公式の接触をした」と述べている。ドイツ外務省側も「イタリアの駐ローマのわが国の大使館と接触はあったが、公式な要請はまだない」と語っている。

 ところが、元大尉の遺族のパオロ・ジャキー二i弁護士は19日、「ローマ市当局と埋葬問題で平和的合意が実現された」と発表した。合意内容は明らかになっていない。明確な点は、ローマ市警察は市内、その周辺の埋葬は不許可したということだ。その理由は、埋葬地がネオ・ナチグループの巡礼地となる危険性があるからだ。元大尉の出身地、独のBrandenburg当局も同じように埋葬を拒否している。ちなみに、元大尉は生前、アルゼンチンで眠っている妻の墓の横で埋葬されることを願っていたというが、アルゼンチンもナチス戦争犯罪者の埋葬を拒否している、といった具合だ。

 参考までに、カトリック教会が拒否した葬儀を受け入れた「ピウス10世会」について簡単に紹介する。ローマ・カトリック教会の総本山、バチカン法王庁は「ピウス10世会」と対立してきた。その主因は、第2バチカン公会議に参加した故マルセル・ルフェーブル大司教が教会の近代化を明記した公会議文書の内容を拒否し、69年に独自の聖職者組織「ピウス10世会」を創設したからだ。
 ヨハネ・パウロ2世(在位78年〜2005年)は84年、条件付けでラテン語礼拝形式を容認する一方、「ピウス10世会」との教会再統合の道を開く努力をしたが、大司教はその直後、教会法に反し、4人の神父を司教に叙階。そのことを受け、バチカン側は同大司教と4人の司教を破門した。
 ルフェーブル大司教は91年亡くなり、その後継者にベルナルド・フェレー司教が「ピウス10世会」代表に就任すると、同司教は2000年、パウロ2世を謁見し、05年にはべネディクト16世と会見するなど、教会破門宣言の撤回を実現するために腐心したが、バチカンとの交渉は暗礁に乗り上げたままだ。

 興味ある点は、「ピウス10世会」の主要メンバーだったリチャード・ウィリアムソン司教は2008年、スウェーデンのテレビ・インタビューの中で「ホロコーストのガス室は存在しない」と発言し、世界を驚かしたが、元大尉も最後の遺書の中で「ホロコースト」を否定している。元大尉と「ピウス10世会」との間には、思想的に類似性が感じられる。「ピウス10世会」側がプリーブケ元大尉の葬儀を受入れたのも決して偶然ではないだろう。
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