ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

2014年03月

なぜ中国は欧州の友人でないのか

 中国の習近平国家主席は28日、ドイツを公式訪問し、アンゲラ・メルケル首相、 ヨアヒム・ガウク大統領と会談した。同主席は、両者から北京当局の人権蹂躙を指摘され、言論の自由の重要さを諭された。そして国家主席の行く先々で海外亡命チベット人や法輪功信者たちの抗議デモと遭遇せざるを得なかった。

 独高級紙「フランクフルター・アルゲマイネ」(FAZ)は28日電子版で「中国とドイツはパートナーだが、友人ではない」(Partner, keine Freunde)とかなり厳しい表現で両国関係を総括し、「戦略的パートナーは調和的な友人関係とは違う」と書いている。
 
 財政危機下にあり、多数の失業者を抱える欧州諸国にとって、中国市場は重要であり、その投資は魅力的だ。中国はそのことを誰よりも知っている。中国にとってもドイツは第3番目の貿易相手国であり、その工業技術は喉から手が出るほど欲しい。
 独中関係はこれまで双方の実利を中心に発展してきただけに、中国はドイツに対していい印象を抱いてきた。そのドイツから今回、「中国はドイツの友人ではない」と玄関払いされたようなショックを受けたはずだ。

 欧州諸国の中で中国と経済関係を結びたくない国は少ない。しかし、北京政権がそれゆえに「わが国は世界から愛されている」と受け取るとすれば大きな間違いを犯すことになることが今回の訪独で明らかになった。すなわち、ドイツは中国を日本や米国と同じように友人とは見ていない。厳密にいえば、経済関係の相手に過ぎないということだ。
 
 なぜ、中国はドイツの友人ではないのか、北京政府はじっくりと考えるべきだろう。ドイツと中国ではその国体が異なる。価値観、世界観が違う。ドイツは議会民主主義国家であり、中国は共産党独裁国家だ。国際社会の異端児、北朝鮮とは友邦関係を結ぶことができても、ドイツとは貿易関係に留まるのだ。

 別の例を挙げてみよう。ウクライナのクリミア半島のロシア併合問題で、欧州とロシアが貿易パートナー関係だが、友人関係ではないことが改めて明らかになった。
 旧ソ連共産政権の後継国ロシアは、70年間余りの共産党政権時代の過去を清算し、隣国へ謝罪などの歴史の再考プロセスを行ってこなかった。だから、欧州は今なお、旧ソ連の後継国ロシアから脅威を感じている。友人関係からはほど遠いのだ。

 プーチン氏は自国へ制裁を課す欧州に対し、「欧州はロシアの友人ではなかった」と痛感して、寂しさを味わっているだろう。ちょうど、習近兵国家主席が今回の訪独で味わったようにだ。ロシアがソ連共産政権時代の蛮行を謝罪し、議会民主主義社会に再生されるならば、欧州は心の底からロシアを頼もしい友人として歓迎するのではないか。
 
 中国の場合も同じだ。その共産党独裁政権を放棄し、人権・言論、信教の自由を遵守する社会となれば、たとえ中国が経済大国でなくなったとしても、欧州は中国を友人として暖かく迎えるだろう。

批判してきた者の「深層心理」

 在オランダ・ハーグの米大使官邸でオバマ大統領の仲介のもと安倍晋三首相と朴槿恵大統領の初の日韓首脳会談が行われた。朴大統領が前日、疲労が蓄積したため夕食会などの公式行事を欠席した、というニュースが流れてきていたので心配したが、日米韓首脳会談は実現された。安倍首相と朴大統領にとっては初の会談だ。
 首脳会談の議題には「正しい歴史認識」問題が含まれていなかったこともあって大きな意見の対立はなく、北朝鮮の核問題への対応で3国首脳は一致したという。

 現地からの報道によると、安倍首相は韓国語で「マンナソ パンガプスムニダ」(お会いできてうれしいです)」と朴大統領に挨拶したが、朴大統領はまったく表情を変えなかったという。韓国の中央日報日本語電子版は27日、「安倍首相、韓国語のあいさつに、朴大統領、無表情」と報じている。第1回の首脳会談だけでは、これまでの険悪な両国関係を一挙に改善することは難しいのは当然だろう。

 ここでは「批判してきた側」の「心理」状況について分析を試みた。この場合、批判される側は安倍首相だ。批判する側は“告げ口外交”を展開させてきた朴大統領だ。
 はっきりしたことは、批判されたきた側が批判してた側と会合した時、有利な心理状況に立つということが追認された。逆に、批判してきた側はその相手が眼前にいる場合、どうしても気が引けてくる傾向がみられることだ。

 どうしてだろうか、批判の中には事実より過大な表現や言葉があったからかもしれない。批判された側から質問された場合、どのように説明しようかと考えてしまう。換言すれば、批判してきた側は批判されてきた者より内省的になりやすい。

 一方、批判されたきた側は批判する側の説明を聞きたいという思いが強い。批判された時は受け身だったが、批判する者と会談した時は立場が逆転する。より積極的に批判者と向かい合うことができる。

 安倍首相は朴大統領との会談では朴大統領より気楽に会談に臨めたのではないだろうか。一方、朴大統領は安倍首相との初会合を考え過ぎて前日、体調を崩してしまったというのが真相ではないか。

 安倍首相の韓国語のあいさつに対して日本語で切り返すといった洒落た対応もできたはずだが、無表情で聞き流してしまった。大統領の無表情は韓国の国内向け、という解釈も聞かれるが、批判してきた者は心理的に追い込まれているのだ。批判は人間生来の本性に反するだけに、多くの不必要なエネルギーが必要となるから、疲れやすくなる一方、時として空虚感も出てくる。
 
 目の前にいない人物を批判する時、注意が必要だろう。その人物と会った時、心理状況は快いものではないからだ。どうしても批判しなければならない時はその対象が目の前にいる時に限るべきだろう。これが安倍首相と朴大統領の初の首脳会談の心理分析から引き出せる教訓ではないだろうか。
 昔から賢人といわれた人は、相手を批判せず、批判されることを甘受してきた人物たちが多い。

なぜプーチン氏を擁護するのか

 ゲアハルト・シュレーダー元独首相(69歳、首相任期1998年10月〜2005年11月)はクリミア半島の独立を問う住民投票実施前、欧州連合(EU)のウクライナ政策を批判し、「EUはクリミア半島の危機を煽っている」と批判し、間接的にロシアのプーチン大統領を支持した。
 元首相のプーチン氏支持は不思議ではない。プーチン氏の政治顧問のような立場であり、ロシアのガスプロム子会社の役員などを務める元首相は過去、機会ある度にロシアを擁護してきたからだ。

 シュレーダー氏のプーチン擁護をもう少し聞いてみよう。
 「EUはクリミア半島の地勢学的な状況への理解に欠けている、ウクライナは文化的に分断されてきた国だ」と指摘。具体的には、「欧州はウクライナに、欧州を取るかロシアを選ぶかの2者択一を強要してきた。EUは本来、文化的、歴史的に分断されたウクライナには両路線を提示すべきだった。すなわち、EUはウクライナに準加盟協定を締結する一方、ロシアとは関税同盟を結ぶといった解決策を提示すべきだった」という。

 シュレーダー氏は「ロシアは確かにウクライナの主権を蹂躙した」と認める一方、「自分が首相時代、北大西洋条約機構(NATO)は国連安保理決議なくしてセルビアに軍事攻撃をしたことがあった。あれも明らかに主権蹂躙に当たる」と述べ、欧米側はロシアを安易に主権蹂躙と批判できる立場でないと釘をさしている。

 ここにきてもう1人の元独首相がプーチン氏を擁護し出した。ヘルムート・シュミット元首相(95歳、首相任期1974年〜82年)はプーチン氏のクリミア政策に理解を示す。同氏は政界から身を引いた後、高級週刊新聞「ディ・ツァイト」の発行人であり、90歳を超えた現在もドイツの最高知識人の一人として尊敬されている人物だ。

 シュミット氏は欧米諸国の対ロシア制裁について「無意味なことだ。制裁はロシアだけではなく欧米諸国にも影響を及ぼす。ウクライナ情勢は危険だが、その主因は西側にある。西側は興奮し過ぎている」と言い切っている。そしてロシアをG8から追放したことも厳しく批判した。
 
 シュミット元首相はプーチン氏がクリミア半島を併合させたことに対し、「ロシアは国際法を違反したが、世界では過去、国際法はなんども蹂躙されている」と述べ、シュレーダー氏と同じ論理を展開し、プーチン氏に理解を示した。同氏によれば、「ウクライナは独立国家だが、民族国家ではない」というのだ。

 シュレーダー氏のプーチン擁護発言に対しては無視してきた同国の野党指導者たちもシュミット元首相の発言に対しては反論している。
 ドイツ野党「緑の党」は「問題は主権尊重という国際法の順守であり、論理の問題ではない。プーチン氏は明らかに国際法を違反している」と主張している(独週刊誌シュピーゲル電子版)。ただし、ドイツ左翼党のギジ連邦議会共同議員団長はツイッターでシュミット氏の発言を評価し、「メルケル首相は元首相の発言を無視してはならない」と述べている、といった具合だ。

 メルケル第3次連立政権はキリスト教民主同盟。キリスト教社会同盟と社会民主党の大連立政権だ、社民党出身のシュタインマイアー外相はウクライナ問題ではロシアのクリミア半島併合を厳しく批判しているが、元首相のプーチン擁護発言に対してはメルケル政権関係者から批判めいた声は聞かれない。

 ロシアのクリミア併合を厳しく批判する米、英、ポーランド、そしてバルト3国とは異なり、ロシアと経済関係が深いEUの盟主ドイツは対ロ経済制裁に対して消極的だ。ひょっとしたら、2人の元独首相のプーチン擁護発言は、現職でない気楽さもあって、ドイツの国益を代弁しているのかもしれない。

なぜ人は知識・情報を求めるのか

 IT技術はグローバルなコミュニケーションを可能とし、1人が数千人の友人をもち、短信を交換できる時代を生み出した。“時代の恩恵”といえばそれまでだが、人間の生活領域が急速に拡大した一方、失ったものもあるのではないか。その最大のものは、「信じる」ということが難しくなってきたことではないか。

 現代社会では信じる前に当然、知る作業が要求される。納得しない限り、信じない。これは知識人だけの特権ではない。普通の人間もそうだ。納得するプロセスで前者と後者には多少の相違があるだけだ。

 「鰯(いわし)の頭も信心から」といった世界はもはや存在しないし、そのような世界からの脱皮こそ文明社会の発展と称されてきた。文明が進み、発展していけば、鰯の頭は遠ざかるが、今度は「不信」という悪魔の囁きが次第に大きくなる。

 現代人は信じることが怖いのではないか、と思うことがある。換言すれば、疑うことこそ自身のアイデンティティと思っている場合が結構多い。信じる人は情報、知識が欠如しているからだ、と過小評価される。

 しかし、「知る」のは本来、「信じる」ためにあったのではないか。知る作業に没頭する現代人は多くの知識と情報を駆使するが、「信じる」ことを前提としない無数の情報と知識の世界で苦悩する。考えてほしい。「信じる」ことを前提としない数多くの知識・情報は人間の生活にどのような意義を付加するだろうか。

 メディアは本来、人間と人間の間を仲保する役割を担っているが、現実のメディアは人間と人間の間の不信を限りなく煽っているように感じる。
 「あの政治家の話を信じなさい」というのではなく、「あの話の背後には実はこれこれがあって……」と囁き、読者の不信を煽ることが多い。信念のある人の発言はプロパガンダと一蹴される。

 人は何かを信じようとしているが、大量の情報の波に遭遇し、「信じる」ことに躊躇し出した。批判と怒りが知性の証明と受け取られ、人間生来の「信じる」ことが軽視される。IT時代はその危なさを一層、加速させているように思う。

 欧州社会では実用的な不可知論(Agnosticism)が広がってきている。不可知論とは、神の存在、霊界、死後の世界など形而上学的な問題について、人間は認識不可能であるという神学的、哲学的立場だ。それゆえに、神の存在を否定しないが、肯定もしないという立場を取る。イギリスの生物学者、トマス・ヘンリー・ハクスリーが19世紀、「不可知論」という用語を初めて使用したといわれている。

 具体的な例を挙げて考えてみたい。世界の通貨の米ドル硬貨には「In God We Trust」と印されている。通貨は社会を構成している人間同士が信じ合うという土台の上で流通していく。社会の構成員が信じない通貨は流通できないし、貯金しようとする人はいないだろう。仮想通貨(ビットコイン)の登場は、世界が不信に陥っていることを象徴的に示す社会学的な現象とも受け取れる。

 「宗教」と「科学」は対立する領域ではない。知る(科学)ことで信じる(宗教)世界を発見するために、両者は存在している。両者が対立し、闘争している時代は人間にとっても決して幸せではないだろう。

 わたしたちは心の安らぎを感じる世界を模索している。人間生来の原型の世界に違いないと信じ、その世界の内容を知るために知識や情報を求めているのではないだろうか。

誰がイスラエルの核を監視するか

 ウィーンの国連内に事務所を持つ包括的核実験禁止機関(CTBTO)準備委員会のラッシーナ・ゼルボ事務局長は今月18、19日の両日、イスラエルを初めて公式訪問し、リーバーマン外相、シュタイニッツ情報国際関係・戦略関係相、そしてイスラエル原子力エネルギー委員会のチョレブ長官(IAEC)らと会談した。

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▲ゼルボ事務局長とイスラエルのリーバーマン外相(右)(CTBTO提供)

 ゼルボ事務局長はイスラエルのナショナル・データセンターと放射性実験所RL09が運営されているソレク核研究所センター(SNRC)を訪問し、「イスラエルの3カ所の監視施設がCTBTOの国際監視システム(IMS)に参加し、CTBTOを支援している」と感謝を表明している。
 具体的には、イスラエル南部の都市エイラートとメロン山の補助地震観測所、そしてソレク核研究所センターの放射性核種研究所の3施設だ。

 ナショナル安全研究機関(INSS)主催のセミナーに参加したゼルボ事務局長は、「イスラエルの懸念であったIMSの監視能力は向上し、加盟国間の連携は強化されてきた。CTBTが発効されることでで信頼醸成の枠組みを構築できる道が中東地域でも切り開かれる」と強調した。
 同事務局長は、「2人の閣僚がIMS監視システムとCTBT機関のこれまでの歩みに強い関心を示したことは嬉しい」と報告している。

 CTBT署名国は3月現在、183カ国、そのうち162カ国が批准完了。条約発効に批准が不可欠な核開発能力保有国44カ国中8カ国がまだ批准を終えていない。米国、中国、北朝鮮、イスラエル、インド、パキスタン、イラン、エジプトだ。
 CTBT機関によると、337施設から構成されるIMSは現在、約90%が完了している。イスラエルは1996年9月25日に署名したが、監視システムについて不満を表明し、批准を拒否してきた経緯がある。

 ゼルボ事務局長は19日、The Times Of Israelとのインタビューの中で、「加盟国は自国の安全を最優先するが、CTBTが発効すれば、その安全はさらに強化される」と述べ、イスラエルに早期批准を促している。

 なお、イスラエルは核兵器の保有については否定も肯定もしない立場を維持している。西側情報機関筋によれば、同国は約200基の核兵器を保有している。同国は過去、核兵器を破棄する前の南アフリカと連係して大西洋上で核実験を実施した、といわれている。中東諸国では、国際社会の監視外にあるイスラエルの核に脅威を感じる声が絶えない。

中国の「年次麻薬統制報告書」から

 ウィーンの国連薬物犯罪事務所(UNODC)本部で開催された麻薬委員会(CND)第57回会期で中国国家禁毒委員会(NNCC)が提出した同国2014年版の「年次麻薬統制報告書」(全60頁)を入手したので、その一部を紹介する。

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▲中国国家禁毒委員会発行2014年「年次麻薬統制報告書」(2014年3月25日、撮影)

 昨年の麻薬乱用者数は約247万5000人だ。その内、アヘン乱用者数は135万8000人、合成麻薬の乱用者数は108万4000人だ。麻薬乱用者総数では前者が54・9%。後者が43・8%を占めている。 

 また、36万5000人は不法麻薬摂取で初めて取り締まりを受けた(初犯者)。68万2000人は麻薬常習者、24万2000人以上は麻薬法違反として処罰や療法を受け、18万4000人は麻薬治療を受けた。

 中国で目下深刻な問題は合成麻薬の拡大だ。同国公安部当局は合成麻薬の拡大を阻止するため特別活動を展開し、合成麻薬の乱用者の監視を強めている。
 18万3000人が合成麻薬の常習者であり、12万4000人は合成麻薬摂取の初心者だ。それぞれ、前年比で51・25、47・7%急増した。

 中国の公安部によると、昨年麻薬犯罪関連件数は15万0943件、16万8296人を麻薬関連法で逮捕した。前年比で件数23・89%、逮捕者26・75%、それぞれ急増した。
 麻薬押収量では、ヘロイン8・55トン、アヘン1・46トン、メタンフェタミン類19・52トン、大麻草4・50トン、ケタミン(Ketamine)9・69トンだった。

 NNCCは学校内の麻薬拡大を阻止するため学校内で麻薬問題の啓蒙活動を強化しているところをみると、学校内の麻薬乱用が広がっているのだろう。また、麻薬常習者の治療のためのワークショップなどを中国全土で開催している。

 その一方、中国側は麻薬対策を強化するため隣国周辺諸国、ベトナム、ミャンマー、ラオス、イランなどと麻薬犯罪対策で連携を進めている。 

 ちなみに、北朝鮮産の麻薬類が中国に大量に流れ込んでいる。北朝鮮専門メディア「デイリーNK」が1月報じたところによると、「北朝鮮産の麻薬類は安くて品質もいいため、中国でも人気がある」という。

30日は「マフィアの日」って本当?

 ローマ法王フランシスコは21日、「時間が残されているのなら、悔い改めるべきだ」とマフィア関係者に呼び掛けた。法王は同日、イタリアで過去、マフィア、Camorraによって犠牲となった1万5000人の犠牲者を慰霊する集会で犠牲者の遺族関係者と共にこのように祈ったという(バチカン放送独語電子版)。

 慰霊集会は ローマのLuigi Ciotti神父が創設したアンチ・マフィア組織、Libera(リベラ)が主催したもので、1996年以来、毎年、マフィアへの戦いを呼びかける集いを開いている。

 当コラム欄でも、フランシスコ法王が昨年5月、説教の中でマフィアに対して挑戦を宣言して以来、シチリア系マフィアは法王を脅威と受け取ってきた、と何度か書いた。特に、法王がバチカン銀行の刷新に乗り出してからは、「われわれの領域に侵入する者」として敵意を抱いている。南米教会出身のローマ法王はマフィアからさまざまな強迫を受けながららも、「悔い改めよ」と呼びかけているわけだ。

 マフィアは強迫だけではない。イタリアではマフィアによって殺害されるケースが頻繁に起きている。例えば、昨年夏、パレルモの検察官関係者が爆弾で殺された。イタリアのマフィアと戦っていたシチリアの神父もシチリアのマフィアCosa Nostraに殺害されている、といった具合だ。

 ところで、3月30日が「マフィアの日」であることを偶然知った。もちろん、マフィアを祝う日ではない。30日はマフィアという言葉の由来となった「シチリアの晩鐘事件」(1282年)が起きた日だ。

 シチリア島は当時、フランス国王の支配下にあった。事件は復活祭後の月曜日、フランスの兵士たちが教会の前に集まっていた若い女性に手を出そうとした。その時、その夫が兵士を殺したため、市民も彼を助け、他のフランス兵士を殺した。島民のフランス人殺害はシチリア全土に拡大し、殺害されたフランス人の数は4000人にもなったという。夫がフランス兵士を殺した時、教会の晩鐘が鳴ったことから、後日、「シチリアの晩鐘事件」と呼ばれるようになった。

 同事件を契機に「マフィア」と呼ばれる犯罪組織が生まれたが、これはシチリア島民がフランス兵士殺害の際、「Morte alla Francia Italia anela」(全てのフランス人に死を、これはイタリアの叫びだ)」と叫んだことから、その言葉の頭文字をくっ付けると「マフィア(mafia)」となったからだ。ただし、この説の真偽は確かではない。

 フランシスコ法王は「マフィアは単なる組織犯罪グループではない。犯罪グループならば警察力で解決できる。マフィアの背後には社会的、文化的問題がある」と指摘している。

北問題でIAEAの「5年間の空白」

 国際原子力機関(IAEA)の査察官が北朝鮮の寧辺核関連施設から国外追放されて来月16日で5年目を迎える。換言すれば、IAEAは北の核問題検証で5年間の“空白”があることを意味する。
 そのため、IAEAの天野之弥事務局長は定期理事会の冒頭声明では北の核問題については「まったく情報がない」と言い続けきた。

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▲IAEAと北朝鮮の核協議風景(IAEA本部にて、撮影)

 例えば、天野事務局長は今月の3月定例理事会で、「北朝鮮の核問題は引き続き深刻な懸念だ。北朝鮮当局はIAEAとの間のセーフガード協定の順守を明記した国連安保理決議の義務を速やかに履行すべきだ」と要求したばかりだ。同事務局長のこの発言内容は昨年11月理事会とほぼ同じだ。北の核問題では進展がないから仕方がない。

 一方、IAEAの5年間の空白期間、北側はさまざまな核関連活動を実施してきた。北朝鮮は過去、3回核実験を実施した。最初は2006年10月9日、そして2回目は09年5月25日、そして13年2月12日の計3回だ。そのうち、2回はIAEAの空白の5年間の期間だ。

 北は昨年、寧辺の5KW黒鉛減速炉を再稼働したと表明している。実際、同施設周辺の上空から放射性希ガスが検出されている。北はIAEA査察官の不在をいいことにウラン濃縮関連活動も本格化している、といった具合だ。

 IAEAと北朝鮮の間で核保障措置協定が締結されたのは1992年1月30日だ。あれから20年以上が過ぎる(イランの核問題が理事会の議題となったのは2003年以降)。

 北朝鮮とIAEA間の主要な出来事は以下の通り。
 。稗腺釘舛1993年2月、北に対し「特別査察」の実施を要求。北は拒否し、核拡散防止条約(NPT)から脱会表明。
 ∧督の核合意(1994年)
 ウラン濃縮開発容疑が浮上
 に未錬娃嫁12月、IAEA査察員を国外退去させ、翌年、NPTとIAEAから脱退。
 ィ競国協議の共同合意に基づいて、北は2002年、同国の核施設への「初期段階の措置」を承認し、IAEAは再び北朝鮮の核施設の監視を再開。
 λ未錬娃糠4月、IAEA査察官を国外追放。それ以降、IAEAは北の核関連施設へのアクセスを完全に失う。

 IAEA査察局アジア担当のマルコ・マルゾ部長は「6か国協議の再開が実現されれば、IAEAの査察問題が議題となる。IAEAとしては北問題での政治的環境が改善されるのを持つだけだ」と諦観している。

 なお、オランダ・ハークで25日開催される日韓米首脳会談では核問題を含む北朝鮮への対応が主要議題となる。

学校内でも進む“イスラム化”

 ウィーン市教育委員会が公表した生徒の宗教調査によると、ハウプトシュ―レとミッテルシュ―レでは、イスラム系生徒数がカトリック系生徒の数を上回っていることが明らかになった。

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▲ウィーン市16区の工業高校(HTL)(2014年3月22日撮影)

 ハウプトシュ―レでは現在、1万734人の生徒がイスラム系、カトリック系は8632人、セルビア正教系4259人、そして無宗教3219人だ。
 ギムナジウムでははイスラム系はまだ少数派で5395人だ。参考までに、フォルクスシュ―レの場合、カトリック系2万3807人、イスラム系1万7913人、無宗教1万1119人、セルビア系6083人、その他2727人、プロテスタント系2322人だ。

 ハウプトシュ―レの場合、ドイツ語ができない移住者2世の子供が多いという事情がある。イスラム系生徒が今後も増えてくることが予想されるため、ウィーン市教育委員会は生徒のドイツ語教育の強化などの対応に乗り出している。

 読者の皆さんの理解を助けるために、オーストリアの教育システムを簡単に紹介する。幼稚園を終えると、フォルクスシュ―レ(4年間)の後、ハウプトシュ―レ(4年間)、またはギムナジウム(8年間)か、HTL (工業系) HAK(商業系)と進む。フォルクスシュ―レは6歳から9歳、ハウプトシュ―レが10歳から14歳、そしてギムナジウムが10歳から18歳までだ。

 日本の小学校に当たるフォルクスシュ―レで勉強に関心がない生徒や成績が良くない子供、早く職業に就きたい子供はハウプトシュ―レを選ぶ。もちろん、特定の職業教育を習得したい場合、2年から4年の職業学校に通う。将来大学など高等教育に進学したい子供はギムナジウムに進学する。8年間学んだ後、マトゥーア(Matur,卒業試験)に合格すれば、希望の大学に入学できる。

 与党の社会民主党が「子供に早い段階で人生の道を決定させるのは良くない」としてミッテルシュ―レを提案し、フォルクスシュ―レからミッテルシュ―レに通い(この間14歳まで一律)、その後、大学進学希望者は、ギムナジウムの上級学年(Oberstufe)に編入できる体制だ。ミッテルシュ―レの導入が進められているが、まだ実験段階だ。

 ところで、イスラム系生徒が増える一方、カトリック系生徒が減少することで厄介な問題も生じる。ウィーン市教育法では、学校で生徒の過半数以上がキリスト系生徒の場合、教室に十字架を掲げることができる。過半数以下の場合、学校が十字架をかけるかどうかを自主的に決定する。

 しかし、イスラム系出身の生徒数が多くなり、生徒の親から十字架を外してほしいという要望が出てきて、学校側が苦慮するケースが最近増えてきている。学校側と生徒の親たちの間で十字架騒動が生じ、メディアで報じられることもある。

セルビア人政治家の“華麗な飛躍”

 旧ユーゴスラビア連邦の盟主、セルビア共和国で16日、早期総選挙が行われ、大方の予想通り、セルビア進歩党(SNS、党首ブチッチ氏)が定数250議席中158議席を獲得して圧勝した。SNSは2012年5月に実施された前回総選挙と比べ85議席増だ。この結果を受け、SNSのブチッチ党首(現第1副首相)を中心とした政権が発足する見通しだ。

 SNSは得票率48・2%を獲得、議席数では単独政権も可能だが、政権の安定を強化する意味から連立政権の樹立を目指す意向という。

 その他の選挙結果は、与党セルビア社会党(SPS)は44議席、民主党(DS)19議席、新民主党(NDS)18議席だ。

 ところで、SNSのブチッチ党首(第1副首相)は1990年代、過激な民族派政党「セルビア急進党」に所属し、ミロシェビッチ大統領政権下で情報相を務めてた政治家だ。ブチッチ氏は一時期、過激な民族主義者としてその名を轟かせてきた。

 その同氏がその政治信条を中道右派に修正し、今ではセルビアの改革派のホープと受け取られている。セルビア人の若手政治家の華麗な飛躍だ。

 セルビア共和国は1月、欧州連合(EU)と加盟交渉を開始したばかりだ。それに先立ち、同国は昨年4月、EU加盟交渉の前提条件でもあったコソボとの関係改善で合意に達している。
 ブチッチ氏は時代の趨勢を読み取る能力に長けている。ブチッチ氏は「2年以内に失業率(約25%)を急減させる」と述べ、セルビアの欧州統合プロセスを加速していく意向を表明済みだ。

 ところで、ブチッチ氏は自身の政治信条の転身について、昨年のBBCとのインタビューの中で「われわれは、恐ろしいミステークをする存在だ、ということを認めざるを得ない」と述べ、「われわれは過去の実りなく障害の多い政治からチェンジしなければならない」と強調している。

 セルビアのブチッチ氏は“チェンジ”を繰り返し語る。それは同氏の政治信条だけではなく、セルビア共和国国民もチェンジを必要としているというのだ。

 政治家として不変な政治信条を持ち続けることは大切だが、自身の政治信条の欠陥を認め、それを修正・補完し、新たな信条を積極的に吸収していく姿勢は大切だろう。
 44歳の若きセルビア人政治家の華麗な飛躍はそのことを示している。時代は“不変”から“変化”を求めてきているわけだ。
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