ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

2014年04月

日本はオバマ氏を信頼できるか

 オバマ米大統領のアジア4カ国歴訪は無事終了した。ワシントンは大統領のアジア歴訪を、日本を含むホスト国アジア4カ国は米大統領の訪問を、それぞれどのように評価しているだろうか。世界唯一の大国・米国の大統領公式訪問はアジア4カ国にとって大きな政治的価値があったことはいうまでもない。

 最初の公式訪問先・日本では、オバマ大統領は安倍政権が願っていた「尖閣諸島に日米安全保障条約第5条が適用される」という内容を明記した日米共同声明を発表した。訪韓では、北朝鮮の核脅威に対して米韓両国の協力強化、訪問4カ国で唯一イスラム教国マレーシアでは27日、環太平洋経済連携協定(TPP)の早期妥結を確認し、フィリピンでは28日、米比の新軍事協定を調印するなど、ビジネスライクの米大統領らしく課題を次々とこなしていった。

 ホスト国はゲストに対して独自の接待に腐心。安倍晋三首相は銀座の高級寿司の接待など工夫を凝らした。興味深かったのは、米国がホスト国にプレゼントを持参したのは韓国だけだった。韓国の文化財(大韓帝国の国璽など印章9点)の返還だ。
 オバマ大統領らしく、北朝鮮の核の脅威に対峙する一方、国内で旅客船「セウォル号」沈没事故という悲惨な事態に直面する朴槿恵大統領への配慮が伺えた。それがソウルの記者会見で飛び出したオバマ大統領の慰安婦問題発言(「ひどい人権侵害だ」)の遠因だったかもしれない。

 ホスト国4カ国に共通していた願いは東南アジア海域の覇権を狙う中国に対する米国側の公式表明だった。オバマ大統領は4カ国訪問でその期待に一応応えているが、大統領の発言にところどころ中国への配慮、気遣いが見られたことも事実だ。

 問題は、オバマ大統領が「米国は中国の覇権を許さない」と警告したとしても、その発言に実行性が伴わない場合だ。オバマ政権の過去の外交政策を想起すると、その可能性は決して皆無ではないのだ。

 シリア内戦勃発前やロシア・プーチン大統領のクリミア併合に対するワシントンの外交は常に臆病であり、腰が据わらず、実行力と貫徹力に欠けていた。それだけに、オバマ大統領のアジア4カ国時の発言がどれだけ政治的重みがあるか、と懐疑的に受け取る政治家も少なくない。
 
 例えば、オバマ米大統領がウクライナ危機、それに関連したロシア問題を解決できない場合、中国の軍事攻勢に直面している日本、フィリピンは米国の公約に過大な期待を抱くことができなくなる。

 独週刊誌シュピーゲル電子版23日付は、オバマ大統領の日本、韓国、マレーシア、フィリッピン4カ国歴訪に関する記事の中で、「ウクライナ危機がオバマ大統領のアジア歴訪の上に影」という記事を掲載していたほどだ。同誌もオバマ大統領の外交力にはかなり懐疑的だ。

 オバマ政権はクリミア併合を実施したモスクワに毅然とした姿勢を貫き、譲歩を勝ち得るか、それともプーチン大統領の政策に屈服するか、アジア4カ国は注視しているだろう。後者の場合、米国が中国の領土野心を阻止する、と考えないほうが無難だろう。

 オバマ大統領から「尖閣諸島に日米安全保障条約第5条が適用される」という明言を引き出した日本側も浮かれてばかりはいられない。
 中国やロシアは、オバマ大統領を「戦争を恐れる米大統領」と受け取り、その領土的野心を実現するためにさまざまな変化球を今後も投げてくるだろう。

ローマ法王の「韓国国民への伝言」

 中央日報日本語電子版(26日)によると、韓国の天主教(カトリック教会)大田教区長のユ・フンシク主教は24日、バチカンでフランシスコ法王を謁見した。ユ主教は、韓国の珍島沖で起きた旅客船「セウォル号」沈没事故の犠牲者を哀悼した法王の祈祷に感謝の意を伝えたという。

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▲バチカンのヨハネ23世とヨハネ・パウロ2世の列聖式=2014年4月27日、オーストリア国営放送の中継から(ヨハネ・パウロ2世は1984年、訪韓してヨイド広場で約100万人の信者集会を開いた)

 同日報によると、フランシスコ法王は「韓国民すべてに深い哀悼を表す。若者に会いに行く訪韓を控え、多くの若い生命の犠牲を非常に残念に思う。韓国民がこの事故をきっかけに倫理的・霊的に生まれ変わることを望む」と強調したという。

 中央日報の同記事はニュースランキングのアクセスでトップを飾っていたところをみると、多くの読者が法王の発言に感動を覚えたのだろう。
 
 まだ多数の行方不明者がいる段階で時期尚早かもしれないが、韓国国民は同事故から教訓を引き出すべきかもしれない。「セウォル号」沈没事故の技術的、人為的な問題点は別として、フランシスコ法王が語った「韓国国民は倫理的、霊的に生まれ変わるべきだ」という点に絞って考えてみたい。

 ローマ法王の発言内容はかなり異例だ。「国民に倫理的、霊的に生まれ変わるように」という内容は、韓国民の倫理的、霊的な現状が良くないという判断がある。それでは、何を変えるべきなのだろうか。

 多数の若者たちが犠牲となった「セウォル号」沈没事故で国民はショックに陥り、「わが国は3等国家だ」、「後進国だ」といった自嘲気味な意見が聞かれる一方、政府の事故への対応を批判する声が溢れている。

 ところで、韓国民族は大国に侵略され続けてきた歴史を持っている。外国の植民地政策や為政者の政略の犠牲となってきた。そのためか、韓国民族は問題が生じる度に加害者(国)を恨み、非難する一方、自己の不甲斐なさを嘆き、自嘲気味に陥ってしまう傾向がある。欧州では、3国分断など苦い経験をしたポーランド国民の野党精神(為政者への懐疑心)に少し似ている。

 韓国国民の30%以上が信じているキリスト教が世界宗教と発展した背景には、その受難歴史があった。キリスト教会指導者や宣教師たちは受難を厭わなかった。その受難歴史はキリスト教の世界的発展の原動力となった。

 もちろん、キリスト教会の受難と今回の旅客船沈没事故はまったく異なる次元の出来事だが、フランシスコ法王は「歴史の中で多くの受難を体験してきた韓国民族はキリスト教の歴史から学ぶことができるはずだ。加害者(国)を批判し、恨んだり、また逆に自己卑下するのではなく、それらの不運から発展の栄養素を吸収すべきだ」と期待しているのかもしれない。それが法王の「霊的に生まれ変わってほしい」という表現となったのだろう。

 フランシスコ法王は8月14日から18日、韓国を公式司牧し、大田や忠清南道一帯で開かれる「第6回アジア青年大会」に参加する。ローマ法王の韓国入りまでまだ3か月半余りの時間がある。それまでに韓国国民はローマ法王のメッセージにどのように応えるだろうか。

羽生選手は食事に関心がない!

 オバマ大統領が23日夜、安倍晋三首相と銀座の高級寿司店で会食したというニュースは読者の皆さんもご存知だろう。読売新聞によれば、「オバマ大統領は14貫の寿司をペロリと食べた」という。大統領自身、「人生で最高の寿司を食べた」という。

 ところで、ソチ冬季五輪で金メダルを獲得した羽生結弦選手が24日、東京・有楽町の外国特派員協会で会見しが、その中で「僕自身、食事にあまり興味がなくて……」と答えているのを読んで、食欲だけは健在な当方はビックリした。19歳の青年、それもスポーツ選手が「食事に関心がない」ということをすぐには信じられなかった。
 もちろん、スポーツによっては食を自制しなければならない種目はあるが、「食事に関心がない」という発言はその種の問題ではないことは明らかだ。
 
 話は飛ぶが、欧州に長く住んでいる当方に東京の友人たちは、「君は海外に住んでいていいな」と羨む。上司からガミガミいわれることなく自由に生活できる、というイメージが友人たちにはあるからだ。
 
 多分、友人は海外長期滞在日本人にも大変なこともあることを知らないのだろう。それは、美味しい日本食を味わう機会が少ないということだ。

 日本には駅校内の立ソバ屋から銀座の高級寿司屋まで多種多様の日本食が溢れているが、当方が住んでいる音楽の都・ウィーンでは日本食材を得ることは簡単ではないし、値段も高い。
 福島第1原発事故後、日本から輸入される日本食には放射能チェックの検査がある。事故直後は検査に数カ月かかった(最近は検査も簡単になった)。ウィーンの日本食材の店舗から日本製品が消え、韓国と中国製商品が占領してしまったほどだ。

 幸い、現在は日本食屋に行けばラーメンやカレー粉、醤油、味噌など基本的な日本食材は手に入る。しかし、その範囲は限られていることはいうまでもない。
 だから、「海外に住む日本人は自由を得たが、日本食を味わう恩恵を失ってしまった」というのが、海外長期駐在日本人の本音ではないか。

 参考までに、ウィーン市内には数軒の日本レストランがあるが、今年に入ってウィーン市最大の日本レストラン「天満屋」が突然閉店してしまった。岡山の本社から閉店命令が出たからだという。小規模な日本食レストランを除くと、現在はアラブ富豪が所有するホテル最上階の日本レストランがある程度だ。

 自由を選ぶか、美味しい日本食を味わうか、海外長期駐在日本人は時としてハムレットのような呟きが飛び出してしまうのだ(ひょっとしたら、食いしん坊の当方だけが呟いているかもしれないが……)。

 それにしても、羽生結弦選手はどうしたのだろうか。「食の天国」に住んでいながら、天国の住人としての特権を自ら放棄するとは。


■短信

ヨハネ23世とヨハネ・パウロ2世の列聖式

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▲2人のローマ法王の列聖式に世界から約100万人の巡礼者がサンピエトロ広場とその周辺に集まった(2014年4月27日、オーストリア国営放送の中継放送から)

 ローマ法王フランシスコは27日午前、バチカン法王庁のサンピエトロ広場でヨハネ23世とヨハネ・パウロ2世の2人のローマ法王の列聖式を挙行した。
 ヨハネ23世(在位1958年10月〜63年6月)はカトリック教会の近代化を決定した第2バチカン公会議(1962〜65年)の提唱者であり、信者から最も愛されたローマ法王といわれる
 一方、ヨハネ・パウロ2世(在位1978〜2005年4月)は“空飛ぶ法王”と呼ばれ、在位27年間で世界127カ国を訪問し、法王外交を展開させた。ポーランド出身の法王として冷戦時代の終焉にも大きな役割を果たした。
 なお、列聖式には、前法王べネディクト16世も同席した。バチカンによると、世界から約100万人の巡礼者が集まったという。


パレスチナ、国連専門機関加盟か

 パレスチナ自治政府の主流派ファタハとガザ地区を支配するイスラム根本主義組織ハマスはは23日、暫定政府の発足で合意したというニュースが入ってきた。
 ハマスをテロ組織と指定し、ハマスとの和平交渉を拒否してきたイスラエルはパレスチナ側の今回の合意を「和平交渉の大きな障害」と強く反発している。今月末に迫った和平交渉期限までイスラエルとパレスチナが何らかの合意に達する可能性は無くなったと受け取られている。

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▲ウィーンの国連機関の正面入口(2013年4月撮影)

 それだけではない。パレスチナ側は今月29日、イスラエルに和平交渉の意思がないと断言し、パレスチナ国家建設に向けて手を打つという。具体的には、国連機関への加盟申請書の提出だ。

 パレスチナは2012年11月、国連総会で賛成多数の支持を受け「オブザーバー組織」から「オブザーバー国家」の地位に格上げされた。今月2日には15の国連・国際条約の加盟を申請したばかりだ。国連の専門機関への加盟申請はそれを更に一歩前進させることを意味する。

 パレスチナは2011年10月末、パリに本部を置くユネスコ(国連教育科学文化機関)に加盟しているが、今月末、アッバス自治政府議長はウィーンの国連工業開発機関(UNIDO)などに加盟申請書を提出すると受け取られている。

 UNIDO関係者は「李勇事務局長は目下、中国だ。5月5日にはウィーンに戻ってくるから、パレスチナの加盟申請の最終的判断はその以降になるだろう。いずれにしてもパレスチナが加盟申請書を提出したならば特別理事会が招集されて最終決定が下されるだろう」という。

 パレスチナにとってUNIDOの加盟申請は他の国連機関への加盟よりも容易だ。米国が1996年、UNIDOを脱会しているからだ。だから、米国はイスラエルの意向を受けてパレスチナのUNIDO加盟反対への音頭を取ることはできない。例えば、ユネスコの場合、米国は供出金の停止など、ユネスコ側に圧力を行使している。

 ウィーンの国連関係者は「パレスチナ人職員は既にUNIDOに勤務している。パレスチナの加盟には大きな支障はないが、包括的核実験機関(CTBTO)や国際原子力機関(IAEA)などへの加盟申請の場合、難しいだろう。なぜならば、安全問題と関係する国連機関の加盟には米国やイスラエルの強い反発が予想されるからだ」という。

一人の英雄で韓国は救われる

 韓国の珍島沖で起きた旅客船「セウォル号」沈没事故で乗船者475人中、25日現在、死者181人で、121人は依然行方不明だ。
 事故調査が進められているが、船長ら乗組員が沈没する2時間前にボートで脱出する一方、船客に対して適切な救援活動を行っていなかったことが判明し、遺族関係者ばかりか、韓国国民を怒らせている。

 「韓国は3等国家だ」「後進国だ」といった自嘲気味の声が、国民の間から聞かれることは、悲劇を一層、悲しくさせている。

 もし、乗組員の一人でも「船客を救済するために、犠牲になった」ということが判明すれば、国民はどれだけ救われただろうか。自分を犠牲にして他者を救った一人の人間がいたならば、「セウオル号」沈没の悲劇にも救いが出てくるからだ。韓国国民はその乗組員によって救われたかもしれない。
 
 韓国メディアも自嘲記事を書くのではなく、その一人の英雄がどうして自分の命を犠牲にしても他者を救ったのか、その秘密を解明するするためにペンを走らせることができたはずだ。中央日報のように、「わが国は3等国家だ」という社説を書かなくて済んだはずだ。
 朝鮮日報日本語電子版は25日、「今回の惨事が典型的な『後進国的人災』だった状況が続々と明らかになり、インターネット上は『2時間にわたり沈みゆく船を眺めているだけで、子どもたちを失った国に希望はない』といった嘆きの声であふれた」と書いている。書き手も読み手にも辛い内容だ。

 第2次世界大戦中、コルベ神父はアウシュビッツ収容所で1人のユダヤ人の代わりに自ら死の道を選び、独房で亡くなった。同神父の話は今なお多くの人々を感動させている。同神父のように、韓国の沈没事故で旅客を救うために犠牲となった乗組員は一人もいなかったのだろうか。

 先の朝鮮日報日本語版は「あるネットユーザーは『壬辰倭乱(文禄・慶長の役)では(日本が攻めてくる前に)王が土城を捨てて逃げ、6・25(朝鮮戦争)のときには指導部が漢江の橋を落として逃げ、今回は船長が乗客を捨てて逃げた』と書き込んだ」と報じている。すなわち、韓国では指導者や責任者が英雄ではないのだ。

 国家を救い、国民を奮い立たせ、その民族の名誉を守ってくれた英雄を韓国は今最も必要としている。その英雄は政治家や軍指導者でなくてもいい。無名な一人の市民でもいい。自分の命を犠牲にして他者を救ったという人間の証が必要なのだ。英雄の存在は韓国を救うのだ。そして、その数(英雄)が多いほど、国民は国家に誇りを感じるのではないだろうか。

「高級寿司」は日米関係を救うか

 オバマ大統領は23日夜、安倍省三首相と銀座の高級寿司店で会食したというニュースが入ってきた。安倍首相がオバマ大統領の個人的交流を深めたいという狙いから高級寿司店での会食が実現したという。

 読売新聞電子版によると、「菅義偉官房長官は24日午前の記者会見で、『かなり食べたと聞いている。表情からすこぶる満足だったのではないか』、『非常にくつろいだ雰囲気の中で首脳同士が懇談し、信頼関係を構築する役割を果たすことができた』と意義を強調した」という。同紙によると、オバマ大統領は「寿司を14貫ペロリと食べた」という。

 ところで、「高級寿司は両国関係の信頼関係を構築する役割を果たすか」という命題を提示し、考えてみたい。口の悪い政治評論家ならば「高級寿司で国家関係が深まるのならば、世界に寿司を輸出すればいい。寿司はノーベル平和賞を獲得するだろう」といった皮肉の一つでも放つだろう。

 実際、高級寿司は紛争を解決しないし、険悪した国家関係を改善するとは考えにくい。しかし、当方は「高級寿司はセンスのない外交より大きな成果をもたらす潜在的可能性を秘めている」と考えている。百万言を吐くより、美味しい寿司をゆっくりと堪能できれば、疲れた心と体は少しは癒されるだろう。

 人は昔から会食を好む。美味しい食事を頂きながら談笑する時間は家庭ならば至福の時だ。会社でも上司と部下の交流の時だ。国家の指導者同士の会食も例外ではないだろう。難しいテーマを交渉する時、テーブルに美味しい御菓子や果物でもあれば、会談の雰囲気は和やかになる。

 大げさに表現すれば、人が食事を挟んで談笑するのは、いがみ合いの多かった人類歴史から学んできた“知恵”ではないだろうか。
 国同士の交流でも、ホスト国は事前にゲストの好物が何かを調べ、会食時にはゲストの最高の好物を並べるならば、会議は半ば成功したようなものだ。
 その意味で、オバマ大統領は寿司が大好き、という情報を得て、「銀座の最高級の寿司屋でオバマ大統領を接待しよう」と考えた安倍首相は人間を熟知した戦略家というべきだ。

 最後に、なぜ、高級寿司を含む万物を介すると人の心は和み、荒れた心情は落ち着くのか、について当方の所感を述べる。

 旧約聖書を読みと、「信仰の祖」と言われたアブラハムは神に万物を供えている。イスラエル(勝利者)という呼称を得たヤコブはハランで得た家畜など全万物を実兄のエサウに捧げ、兄との関係を修復するのに成功している。
 すなわち、アダムとエバが堕落した後(失楽園)、人は神に直接帰ることができなくなったので、万物を神の前に供えることで帰ろうとしてきた。万物は人を神に引き戻す役割を果たしてきたわけだ。

 だから、「首脳同士が懇談し、信頼関係を構築する役割を果たすことができた」と語った菅義偉官房長官の発言を単なる外交辞令といって切り捨てることはできない。

米は北の核実験情報を掴んでいる

 韓国の聯合ニュース電子版によると、「北朝鮮北東部の豊渓里にある核実験場で坑道を覆う幕とみられるものが設置され、車両の動きが活発化するなど、4回目の核実験の可能性が考えられる」という。オバマ米大統領が25日、ソウル入りする時を狙った北の揺さぶり戦略の性格が強いと受け取られている。

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▲フランスの1971年の核実験(CTBTOの提供) 

 北が実際、オバマ大統領のソウル滞在中に第4回目の核実験をする可能性はどうだろうか。タイミングからみて、最高のチャンスだからだ。「新しいタイプの核実験」をそれも宿敵米国の大統領がソウル滞在中に実施すれば、その政治的効果は計り知れないほど大きい。もちろん、国際社会の反発もこれまで以上に強烈なものとなることは避けられないだろう。北が国際社会から更なる孤立という代価を払っても核実験をするかは不明だ。

 北の場合、大気核実験でもなく、地下核実験だ。ソウルに直接の影響は通常考えられない。しかし、核実験で不祥事が生じ、大量の放射能が大気中に放出した場合は状況が異なる。気流によって違うが、ソウルは決して安全とは言えない。そのうえ、核実験で不祥事が生じた場合、北の危機管理は決して万全ではないだろう。

 すなわち、核実験で不祥事が生じる場合、オバマ大統領のソウル滞在はかなり危ない冒険となる。ワシントンもそのことを知っているはずだ。危険が完全に排除できない場合、米国はソウル訪問をキャンセルし、別の機会に回すことも十分考えられる。

 しかし、22日現在、ワシントンから韓国訪問の延期といったニュースは流れてこない。オバマ大統領は予定通り、ソウルを訪問する。ということは、ワシントンは北が25日、26日の両日に核実験をしない、ないしはできないという情報を既に掴んでいる可能性が高いわけだ。

 忘れないでほしい。世界の35人の指導者の携帯電話を盗聴できる米国家安全保障局(NSA)が朝鮮半島でも活動しているのだ。ひょっとしたら、というより確実に金正恩第1書記の言動も手に取るように掴んでいるはずだ。会話から会議内容までワシントンでは韓国語ができる専門家が日々、盗聴した内容を分析しているだろう。

 オバマ大統領はNSAからソウル訪問中は北の核実験がないという確信を入手しているはずだ。繰り返すが、ソウル訪問中に北が核実験するという情報を入手していたならば、米大統領はソウル訪問を再検討したはずだ。オバマ大統領には危険を犯してまでソウルを訪問しなければならない緊急課題も義理もないからだ。

宣教師ザビエルの「誤算」

 カトリック教作家・遠藤周作は「沈黙」のセバスチャン・ロドリゴの書簡の中で、「支邦人たちの大半は、我々の教えにも耳を貸さぬとのことです。その点、日本はまさしく、聖フランシスコ・ザビエルが言われたように、『東洋のうちで最も基督教に適した国』の筈でした」と語らせている。

 ザビエル師の宣教から600年余り経過したが、「東洋のうちで最も基督教に適した国」のはずの日本のキリスト教人口は依然、1%以下に過ぎない。その一方、隣国・韓国では国民の3分の1がキリスト信者だ。「教えに耳を貸さない」といわれてた支邦人(現中国)では2000万人余りのキリスト信者が存在するといわれている。ザビエル師の眼識は残念ながら大きく外れたといわざるを得ない。

 以上は、宗教別統計に基づいた話だが、キリスト教が定着できなかった日本は生来、野生で荒々しく、利己的で攻撃的な民族か、というならば、「日本民族ほど倫理観の高い民族はない」といわれるほど、その民族の資質の高さは世界からも評価されている。ザビエル師自身も日本民族の質の高さに驚きを表明している一人だ。

 キリスト教の伝達は未開発国の啓蒙と発展に貢献したことは事実だが、民族の精神的発展のためにはキリスト教の教えが不可欠とは言えない。キリスト教が定着しない国でもその民族の倫理性、道徳性が開発されていったケースはあるだろう。世界第4番目の無宗教国家と言われる日本などはその代表的なケースかもしれない。

 「結婚はチャペルのあるキリスト教会で、子供の七五三には神社にお宮参りし、そして葬式は仏教式で行う」
 一般的な日本人の宗教への姿勢について語る時、少し軽蔑の思いを込めてこのように表現される。

 ローマ・カトリック教会には、「イエスの教えを継承する唯一、普遍的なキリスト教会だ」という「教会論」がある。俗に言うと、「真理を独占している」という宣言だ。だから、キリスト教の神を信じながら、同時に他の宗教のイベントも実践するといったことは欧州人には理解できない。

 稲作を中心とした社会共同体の中で相互助け合ってきた日本人は自然を崇拝する気質を育み、共同体の一員としての倫理観も発展させていったのかもしれない。また、日本社会は恥の文化だ、という指摘も聞く。

 問題は、倫理、道徳では消化できない課題に直面した時だろう。例えば、大地震などの天災、生死の問題などだ。また、倫理・道徳は時代の要請に基づいて構築されている場合が多いから、時代が変われば、その規範とすべき内容も変わっていく。特定の宗教を持たない社会では、世俗化が進んでいった場合、その歯止めが利かなくなる危険性も出てくる。これは無宗教の日本人社会が直面している問題だ。

4人のローマ法王と「列聖式」

 復活祭を終えて一息つく間もなくくローマ・カトリック教会は27日、ヨハネ23世とヨハネ・パウロ2世の列聖式を挙行する。2人のローマ法王の列聖式には数百万人の信者たちがサンピエトロ広場に集まると予想されている。ヨハネ・パウロ2世の母国、ポーランドからだけでも50万人の信者たちがローマ入りするといわれている。

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▲ヨハネ23世の生家(2013年9月26日、ソット・イル・モンテにて撮影 )

 バチカン専門家のアンドレアス・エングリュシュ氏はオーストリア日刊紙クリア(20日付)とのインタビューの中で、「列聖式にはフランシスコ法王と退位したべネディクト16世が同席し、2人のローマ法王(ヨハネ23世、ヨハネ・パウロ2世)の列聖式を行う。教会歴史ではこれまでなかった歴史的出来事だ」と答えている。

 ヨハネ23世(在位1958年10月〜63年6月)はカトリック教会の近代化を決定した第2バチカン公会議第(1962〜65年)の提唱者であり、信者たちから最も愛される法王として有名だ。
  同23世が第2バチカン公会議開催を決めた時、公会議開催には長い準備期間が必要と受け取られていたので、教会内外で驚きをもって受け取られた。ヨハネ23世は後日、第2公会議開催は「神の声に従っただけだ」と述べている。

 ヨハネ・パウロ2世(在位1978〜2005年4月)は“空飛ぶ法王”と呼ばれ、世界を司牧訪問し、冷戦時代の終焉に貢献したことはまだ記憶に新しい。同2世の場合、死後9年で聖人に列挙されるという異例の早やさだ。

 ローマ・カトリック教会では「聖人」の前段階に「福者」というランクがある。そして「列福」と「列聖」入りするためには、当人が関与した奇跡が証明されなければならない。
 ヨハネ・パウロ2世の場合、2011年5月、列福されたが、バチカンの奇跡調査委員会はフランスのマリー・サイモン・ピエール修道女の奇跡を公認している。彼女は01年以来、ヨハネ・パウロ2世と同様、パーキンソン症候で手や体の震えに悩まされてきたが、05年6月2日夜、亡くなった同2世のことを考えながら祈っていると、「説明できない理由から、手の震えなどが瞬間に癒された」というのだ。「列聖」入りのためのもう一つの奇跡は、コスタリカの女性の病気回復が公認された経緯がある。

 ヨハネ23世の場合、フランシスコ法王が列聖のための奇跡調査を免除している。
 ちなみに、フランシスコ法王とヨハネ23世は風貌もよく似ている。ヨハネ23世が法王に選出された時、既に76歳だった。フランシスコ法王も76歳で選出された。ヨハネ23世は素朴で笑顔を絶やさず、ユーモアと親しみで当時、信者たちを魅了させた。フランシスコ法王の言動も同じように、世界で新鮮な感動を与えている、といった具合だ。

 今回の列聖式は、フランシスコ現法王が主導し、前法王べネディクト16世が同席する。すなわち、4人の法王が列聖式に関わるわけだ。過去の列聖式では見られなかった豪華キャストによる式典となるわけだ。

忘れられる「パレスチナ人問題」

 イスラエルとパレスチナの交渉期限の今月末が差し迫ってきた。よほど楽天主義者でない限り、「問題の解決は可能だ」とは言えなくなった。

 いつものように、イスラエルとパレスチナの双方が「交渉が暗礁に乗り上げたのは相手側の責任だ」と弁明する用意をしている。

 パレスチナ側は「イスラエルが約束していたパレスチナ囚人の釈放を実行しなかったからだ」とし、15の国連・国際条約の加盟を申し込んだ。「パレスチナ人国家」へ更に一歩駒を進めた感じだ。
 それに対し、イスラエル側が「パレスチナ側は主権国家の道を一方的に進めている」と強く反発し、パレスチナ自治政府に代わって徴収している関税・税収入の譲渡停止などの経済制裁を施行したばかりだ。

 一方、イスラエルとパレスチナ間の平和交渉に全力を投資し、昨年7月以来、多くの時間を費やしてきたケリー国務長官は「米国がいつまでも時間を有していると考えるべきでない」と、交渉が進まないことにイライラしてきている。

 昨年再開した交渉はどうなったのか。イスラエルとパレスチナ両者は一応、2国家共存で一致しているが、国家建設で不可欠な国境線の設定の見通しはない。そればかりかエルサレムの地位問題、難民帰還問題、入植地問題、イスラエルの安全保障問題など主要改題は未解決のままだ。

 パレスチナ側は「イスラエル側は問題解決の意思がない」という。多分、これは正鵠を射ているだろう。イスラエルはパレスチナ国家の建設をさまざまな理由を付けて防ごうとしていることは周知の事実だ。イスラエル側は、パレスチナ側の統治能力のなさや内部の権力争いに助けられている面も否定できない。

 パレスチナ問題に解決の道が本当にないのか、といえばそうではない。イスラエル人とパレスチナ人が一つの国家の下で共存すればいいのだ。国境線を設定する必要もない。ただし、この共存案の致命的問題は、パレスチナ人が近い将来、国家の過半数を占め、イスラエル人が少数派に落ちてしまう危険性が出てくることだ。だから、イスラエル側はパレスチナ人と一つの国家の旗のもとで共存できないわけだ。選挙をすれば、人口の多いパレスチナ人が多くの行政区を合法的に掌握できるからだ。

 中東・北アフリカ諸国で“アラブの春”(民主化運動)が勃発して以来、汎アラブ主義は後退し、アラブ諸国でパレスチナ問題への関心も薄れてきた。

 一方、欧米諸国はウクライナ危機に直面し、大国ロシアと対抗するために内部の結束が急務となってきた。解決の見通しのないパレスチナ問題に時間を費やすことができなくなりつつある。パレスチナ問題で解決の筋道をつけ、ノーベル平和賞でも、と密かに考えていたケリー米国務長官もここにきて疲れが目立ち始めたのだ。
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