ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

2014年05月

人は不正で得た金をどこに隠すか

 日本のメディアによると、江戸時代の伊勢商人、旧長谷川邸の蔵から享保11(1726)年発行の大判金、慶長6(1601)年発行の慶長小判など54点が見つかったという。当方がまだ日本に住んでいた1960,70年代にはこの種のニュースは結構頻繁に報じられていたという印象があるが、最近はまったく聞かなくなっていた。

 そのように考えていた矢先、大紀元日本語版(5月29日付)が「中国共産党幹部の腐敗汚職問題に関連して、腐敗幹部たちが不正に得たカネをどこに隠すか」という興味深いテーマの記事を掲載していた。腐敗党幹部たちが不正で得た金の隠し場所として8か所挙げられている。腐敗党幹部たちは、「盗まれるのが怖くで様々な方法でカネを隔したり、処分したりしている」というのだ。

 以下、大紀元が掲載した、腐敗党幹部が不正なカネを隠すベスト8カ所だ。
 1. 2000万元(約3億2千万円)が特殊油紙に包まれ、池に沈められる
 2. 10億元(160億円)のカネを貯蔵するための倉庫として不動産を購入する
 3. プラスチック製のくずで埋める
 4. 数十万元を田んぼに埋める
 5. カネを貯蔵するため、ガスタンクを購入し、中に貯蔵する
 6. プラスチック製の袋に包み、空洞のある樹の元へ隠す
 7. 屋根の瓦の下に敷き詰めて隠す
 8. 穴を掘り土の中に埋める

 これをみると、中国の腐敗幹部たちが不正で得たカネの隔し場所で苦心していることがよく分かる。興味深い点は、隔すために「土の中」などに“埋める”のが結構多いことだ。江戸時代の話ではない。21世紀に生きる人間の不正なカネの隠し場所だ。人はひょっとしたら「隠す」という行動では進化していないのかもしれない。

 話は少し飛ぶが、世界の富豪たちはスイスの銀行に隠し口座を持つ例が多い。タックスヘイブンだ。スイスの銀行は久しく世界の富豪たちの海外資金の隠し場所だったが、米国や欧州連合(EU)がタックスヘイブンの撲滅に乗り出してきた。そこでスイス側は国際的批判を避けるために顧客の銀行機密を追及する関係当局者に提供するケースが増えてきている。

 最近では、プロサッカー界で目下、世界一強いクラブと呼ばれているドイツのFCバイエルン・ミュンヘンのウリ・へーネス会長(辞任)が3月、スイスの銀行に隠し資金を保管していたとして2850万ユーロの脱税でミュンヘンの裁判所から3年半の有罪判決を受けたばかりだ。

 不正で得たカネを「土の中」に埋めたり、スイスの銀行に隠し口座を開き、保管するなど、人々はさまざまな知恵を駆使して隠そうとする。
 不正で得たカネを持たない大多数の人々はその言動をみて教訓を学ばなければならないだろう。不正で得たカネを持つ人はそのカネを盗まれるのではないかと怖くて眠れなくなるという。安眠したい人は不正なカネを得ようと腐心しないことだろう。

 と、ここまで書いて「悪い奴ほどよく眠る」という言葉があるのを思い出した。不正で得たカネを隠し持ちながらよく眠る人がいるというのだ。そのような神経の太い人に対しては、神の審判に委ねる以外にないだろう。

プーチン大統領の横に座るのは誰

 欧州連合(EU)首脳会談やG7サミット会議では会議最終日には記念撮影をすることがある。基本的にはホスト国を中心に女性政治家が近くに陣取ることが多い。ただし、政治の世界では謙虚さは特別褒められる性質ではないから、最前列に並ぼうとする厚かましい政治家もいる。最近では、参加者の名前が予め付けられているケースが増えた。

 敵対関係というか、批判合戦をしている同士が参加する会議の場合、ホスト国は神経を使う。独週刊誌シュピーゲル電子版によると、6月6日のノルマンデー上陸作戦の記念式典で「誰がプーチン大統領の傍に座るかで舞台裏でちょっとしたゴタゴタが生じている」というのだ。

 来月6日、第2次世界大戦最大の軍事行動、ノルマンディー上陸作戦70年目(Dデイ)の記念式典がフランスで開催される。連合軍は1944年6月6日、ドーバー海峡を渡ってフランス・コタンタン半島のノルマンディーに上陸し、ナチスドイツ軍と激戦を繰り返し、最終的にパリを解放する。第2次世界大戦最大の軍事作戦だ。
 独誌シュピーゲルによると、オバマ米大統領、エリザベス英女王をはじめ多数の首脳陣が参加する。その中にロシアのプーチン大統領も含まれているという。

 ところで、ウクライナ危機以来、プーチン大統領は欧米メディアから「現代のヒトラー」と比較されるほど、その評判は地に落ちている。オバマ米大統領やエリザベス女王が参加する米英政府から「式典ではプーチン大統領の傍の席にはしないでほしい」という要請がフランス大統領府に届いているという。

 国際社会から嫌われ者のプーチン大統領の記念式典の参加を強く支持したのはメルケル独首相だ。だから、プーチン大統領の傍の席にメルケル首相が座ればいい、という声が強い。メルケル首相自身もプーチン大統領の傍の席でも問題がないというから、最悪の事態は回避できる見通しという。
 プーチン大統領は独語も話せるからメルケル首相にとって話し相手としては退屈しない。ちなみに、ウクライナからポロシェンコ新大統領も招待されている。

 ついでに、オバマ大統領やエリザベス女王がプーチン大統領の傍の席に着いた時を考えてみよう。対ロシア制裁を実施する欧米諸国の首脳の場合、何をテーマにプーチン氏と話せるだろうか。
 「プーチン大統領、われわれの制裁の効き目はどうですか」などとは聞けないから、せいぜい天候の話しかできなくなる。相互に批判を繰り返した手前、気まずい思いがあるだろう。だから、「できればプーチン大統領の傍には座りたくない」と考えても不思議ではないわけだ。

 参考までに、オランド仏大統領は記念式典前日、プーチン大統領をエリゼ宮殿に招いて非公式の会談をするなど、ロシア側にも気を使っているという。

ロシア人富豪の買物ツアー減少

ロシアのクリミア併合に対して欧米諸国は制裁を実施してきた。欧州連合(EU)は3月17日、クリミア自治共和国とロシアの21人の政治家、軍人指導者の資産凍結、渡航禁止などの制裁を皮切りに、次第に制裁対象を広げてきたが、口の悪いメディアからは「子供の風呂桶に浮かぶプラスチック製のワニに過ぎない」と冷笑されてきた。ところが、欧米の対ロシア・ウクライナ制裁は決してプラスチック製のワニではなく、それなりの影響を与えていることがこのほど明らかになった。

 オーストリア日刊紙プレッセ(27日付)によると、ロシアやウクライナからオーストリアへ買物ツアーにくる富豪たちの数が減少してきたという。
 「ロシアからの旅行者が去った」というタイトルの記事で「ロシア人はウクライナ危機以来、歓迎されていないと感じ出した。また、高級ブティックで自分の口座が凍結されていることに気が付く場合も出てきた。その結果、オーストリアを訪問するロシア人観光客が減少してきた」という。

 ロシア人旅行者の買物は日本人や韓国人旅行者とは桁違いの規模だ。ブティックの全ての商品を買うのではないかと思えるほどだ。ウィーン市民がショーウインドー前で眺めながら溜め息が出るほどの高級服、バック、宝石などを彼らは買っていく。
 ロシアの大富豪の場合、高級品だけではなく、それを売る店舗や建物まで買ってしまう。だから、ウィーンの不動産業者も富豪ロシア人をお得意様にしているほどだ。例えば、英サッカーのプレミアリーグの名門チェルシーFCのオーナー、ロシア富豪ロマン・アブラモビッチ氏はウィーン市一等地の不動産を購入済みだ。

ロシア正教会のクリスマス・シーズンを迎えると、休日を取ってスキー休暇を楽しむロシア人が多い。彼らが好む旅先はオーストリアのチロル州、ザルツブルク州のスキー場だ。
 その時期になると、ザルツブルク空港やインスブルック空港はモスクワやサンクトペテルブルクからチャーター便が飛来して、殺到する、といった具合だ。

 ちなみに、オーストリアを2011年訪問したロシア人の数は約36万人だった。2005年に11万人だったから、その数は6年間で3倍強の増加を記録したことになる。オーストリア商工会議所によると、ロシア人旅行者が落とす外貨は年間3000万ユーロにもなると推定されている。

 ロシア人観光客の殺到はもちろんオーストリアのホテルやレストラン、高級店にとって恵みの雨だ。それがウクライナ危機以来、減少してきたというのだ。
 オーストリア統計局のデータによると、ウィーンを訪問するロシア人観光客の宿泊日数は今年3月は前年同期比で13%減、4月は22%減だった。

 ロシア人はウクライナ危機以来、オーストリアを含む欧州旅行を回避する傾向がみられるという。ロシア人は「われわれは歓迎されていない」と感じるからだという。もちろん、ルーブルの急落も響いている。

 プーチン大統領やロシア人指導者やオリガルヒ関係者が欧米諸国の制裁をどれだけ肌で感じているかは不明だが、オーストリアに来るロシア人富豪の減少は「制裁はそれなりに効果が出ているからだ」といえるかもしれない。

カラス欧州議員の“執念”の勝利

 オーストリアで25日、欧州議会選挙の投開票が行われ、ファイマン連立政権の国民党が得票率(27・3%)を微減させたが、第1党を堅持した。選挙前は第1党維持は難しく、悪くすれば第3党に後退すると予想されていただけに、国民党にとって快挙だ。

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▲カラス議員の勝利を1面トップで報じるプレッセ紙(2014年5月26日 撮影)

 国民党は独キリスト教民主同盟(CDU)の姉妹政党で中道右派政党だ。前回の国民議会選や州選挙でも後退傾向にあった。欧州議会選前も「第3党になれば、シュビンデルエッガー党首(財務相)の辞任は回避できないだろう」と言われてきただけに、党首を含む党関係者は久しぶりの朗報に酔っている。

 国民党の勝因は党リストで第1位に立候補したきたオトマール・カラス欧州議会議員(56)の活躍にあったことは誰の目にも明らかだ。1999年からブリュッセルで活躍してきたオーストリア政界一番の欧州議会通である。選挙戦中、風邪でTV討論会に参加できないという事態もあったが、乗り越えてきた。オーストリア日刊紙プレッセは26日付で「国民党の勝利ではない。カラス議員の勝利だ」という論評記事を掲載しているほどだ。

 カラス議員と好対照だったのは社会民主党が擁立したオーストリア国営放送(ORF)の花形記者出身のオイゲン・フロインド氏だ。社民党から第1党の地位獲得を託されたフロインド氏はカラス氏の欧州議員としての経験の前に完敗した、といった感じだ。

 ところで、カラス議員の選挙戦略は少々変わっていた。選挙ポスターで出身党・国民党のロゴを載せなかったのだ。通常、候補者は出身党のロゴを付けたポスターを使用するが、カラス氏の場合、国民党ロゴを意図的に避けてきた。その理由は「私は政党の壁を越え、欧州全体の代表の一人という意識があるからだ」と説明してきたが、事情はもっと複雑だ。

 カラス氏には国民党現指導部に対して不信の思いが強い。具体的には、二―ダーエストライヒ州のプレル州知事(ErwinProll)を中心とした党人事政策にカラス氏はこれまで苦い体験をしてきたからだ。具体的には、前回、欧州議会選で第1党となり、カラス氏が当然、党代表としてブリュッセルに派遣される予定だったが、プレル州知事の意向もあってブリュッセルに初めて派遣される元内相のシュトラッサー氏が国民党代表に抜擢されたのだ。カラス氏にとって屈辱の人事だったはずだ。

 カラス議員は国民党のロゴを使用しない選挙ポスターを使用して世論調査の予想を覆して第1党を堅持した。シュビンデルエッガー党首(財務相)にとって少々複雑な気持ちだろうが、欧州議会選第1党は同党としては久しぶりの快挙だけに、ここはカラス氏の勝利を共に祝おうといったところだろう。

 カラス氏は欧州委員のポストを視野に入れているという。外貌は地味だが、政治的野心は燃えている。クリスタ夫人はワルトハイム元大統領(元国連事務総長)の娘だ。オーストリア政界の政党争い、党内の権力闘争には関心を払わず、欧州の政治舞台でその手腕を発揮したいと考えているわけだ。

 ウィーンの中央政界から追放されたような形でブリュッセルに行ったカラス氏の今回の勝利は一政治家の執念の凄さを物語っている。

ヤルゼルスキ氏の「敗北宣言」

 ポーランドのウォイチェフ・ヤルゼルスキ元大統領が25日、ワルシャワの病院で死去した。90歳だった。軍人あがりの政治家で1989年から90年の間、大統領を務めた。首相時代の1981年12月、レフ・ワレサ氏を中心とした自主管理労組「連帯」の民主化運動を制圧するために戒厳令を発したが、それが契機となり、同国の民主化運動は加速され、旧東欧諸国共産政権の崩壊の道を開いていった。

 冷戦時代、旧東欧共産政権を担当してきた当方はヤルゼルスキ氏という名を聞けば、2つの発言を想起する。一つは戒厳令発令に対する国民からの批判に対してだ。
 同氏は民主化後、「自分が戒厳令を発せなかったら、旧ソ連軍が侵攻することを知っていた。だから、祖国を他国の支配下に置かないために、わが国は戒厳令を敷き、主権国家を守ってきたのだ」と弁明していた。
 当方はこの発言内容は事実ではないかと考える。ポーランドは過去、3国(プロイセン、ロシア、オーストリア)に分断されるなど、民族の悲劇を体験してきた国民だけに、主権を保持することの重要性をどの国よりも理解していたからだ。ヤルゼルスキ氏は母国を共産政権の盟主・ソ連の占領下に置かないために腐心したのだろう。

 もう一つは、「わが国は共産国(ポーランド統一労働者党)だが、その精神はカトリック教国に入る」と述べた発言だ。ポーランドは共産政権下でもローマ・カトリック教の信仰は国民の間で燃え続けてきた。ローマ法王にポーランドのクラクフ出身のカロル・ボイチワ大司教(故ヨハネ・パウロ2世)が選出されたのも偶然のことではなかった。ヤルゼルスキ氏の「わが国はカトリック教国だ」は共産国指導者としては一種の敗北宣言といえる発言だ(同氏自身、カトリック信者だったともいわれる)。

 しかし、旧ソ連・東欧諸国の民主化後、ポーランドでも無神論、ニヒリズム、不可知論が広がり、国民の神への信仰は揺れだしてきた。英国で始まった「神はいない運動」は同国にも進出し、ゲイ・パレードが開催されるなど、同国の世俗化テンポは想像以上に早い。

 例えば、2011年10月9日実施されたポーランド総選挙(下院選挙)では、新党「パリコト運動」が第3党に躍進した。同党は、ローマ・カトリック教会の影響が強いポーランドで反教会主義を掲げ、「国民は教会に支配されてきた祖国を奪い返すべきだ」と主張し、「教会と国家」の分離を強く要求している。(同党は昨年10月、「みんなの運動」に改名)。

 ヤルゼルスキ氏は共産政権下の独裁者というイメージがあるが、当時の東欧共産党政権下では珍しい人間的な側面を持った指導者だった。

大豪雨は「民族和合」のチャンスだ

 ボスニア・ヘルツェゴビナ北部やセルビア共和国で120年ぶりといわれる大豪雨に見舞われ、これまで判明しただけでも44人が犠牲となった。ボスニアでは約100万人の国民が直接、間接的な被害を受けた。

 オーストリア国営放送のニュース番組で24日、バレンティン・インツコ・ボスニア上級代表が被害状況を報告していた。上級代表は「被害地では今も電気がなく、飲料水もない。家を失ったり、家財を失った数は100万人になるだろう。欧州諸国や民間機関からの救援物質が届けられている」という。

 上級代表は「ボスニア紛争では、イスラム教徒か、カトリック信者か、セルビア正教徒かで争いをしてきた。しかし現在、その3民族が相互に助け合い、救援物質を感謝して分け合っている。大豪雨は大きな被害をもたらしたが、ボスニアの3民族間の壁が壊れ、和合の兆候が見られてきた」と報告している。

 ボスニアは1995年12月、デートン和平協定後、イスラム系及びクロアチア系住民が中心の「ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦」とセルビア系住民が中心の「スルプスカ共和国」とに分裂し、各国がそれぞれ独自の大統領、政府を有する国体となった。

 ボスニア紛争は死者20万人、難民、避難民、約200万人を出した第二次大戦後最大の欧州の悲劇だった。イスラム系、クロアチア系、セルビア系の戦いは終わったが、デートン和平協定が締結された後も民族間の和解からは程遠く、「冷たい和平」(ウォルフガング・ぺトリッチュ元ボスニア和平履行会議上級代表)の下で、民族間の分割が静かに進行してきていた。

 ところで今年2月、失業と貧困に抗議した国民の反政府デモがボスニア33都市で行われた。騒動の発端は、同国北東部のツズラ市で5日、5か所の国営企業が民営化後、倒産し、約1万人の労働者が職を失ったことから、自治体政府への不満が高まった。
 民族紛争で争ってきた3民族が社会的閉塞感の克服を求めて立ち上がってきたわけだ。上級代表は「2月のデモは国民の意識が政治的、民族的束縛から解放されてきたことを示している」とポジティブに分析する。
 
 インツコ上級代表は最後に、「今回の大災害はボスニア復興のチャンスとなるかもしれない。政治家や関係当局は過去、政治的・民族的な理由から機能しなかったが、ここにきて動き出してきた。大雨は民族の境界線に関係なく降り注いだが、同じように救援活動も民族間の境界線を超えて行われている。イスラム系の住民がセルビア系村を支援し、カトリック教会が強い地域の住民がイスラム系住民を支援しているのだ」と証言する。

 民族紛争、そして120年ぶりの豪雨、洪水と困難が続くが、その試練を乗り越えてボスニアの3民族間の和合が進められることを期待する。

改革派法王下で初の破門者が出た

 ローマ・カトリック教会の教会法カノン1379に基づき、教会改革運動を主導してきた信者代表で宗教教育学者マルタ・ハイツァー(Martha Heizer、67)さんが22日、夫と共に教会から破門宣言を受けた。

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▲フランシスコ法王の中東巡礼最初の訪問先、ヨルダンのアンマン市風景(2015年5月9日、撮影)

 破門を受けた聖職者、信者たちは今後、サクラメント(聖体拝領)を受けることができなくなるうえ、教会による婚姻、埋葬などは許されなくなる。

 ハイツァー夫妻は、南米教会初のローマ法王として就任以来、教会内外で人気があるフランシスコ法王下で初の破門者となる。それも法王と同じように教会の刷新を訴えてきたインスブルック教区の平信者グループ「わたしたちは教会」リーダーが破門されたのだ。
 同代表夫婦は2011年9月、自宅で家庭礼拝をし、神父の不在の下、聖体拝領を行ったことから、それが教会法に違反する、というのが破門理由だ。
 ハイツァー代表は「私たち夫婦は未成年者への性的虐待をした聖職者と同じように扱われた」と強く反発している。

 バチカン側の情報によると、今回の破門決定にはローマ法王は一切関与せず、担当教区のマンフレッド・ショィヤー司教(Manfred Scheuer)が決定したという。
 同司教は当時、バチカン教理省にハイツァー夫婦の家庭教会の件を報告。教理省は教区で事実関係を調査して対応するようにと通達した経緯がある。だから、バチカンが主張するように、フランシスコ法王はこの破門決定には一切関わっていないことになるが、司教による破門決定は法王にも事前に報告されたことは間違いないだろう。

 教会法では、破門された信者や聖職者が悔い改めた場合、破門破棄の道はいつでも開かれている。代表は「悔い改めることはない。家庭内礼拝で聖体拝領を実施することは素晴らしいことだ」と主張し、「自分は依然カトリック教会の信者であり、礼拝にも参加するし、教会税も払い続ける」という。
 ちなみに、「われわれは教会」運動はこれまでも女性聖職者の任命や聖職者の独身制の破棄などを要求してきた。

 オーストリアのローマ・カトリック教会最高指導者シェーンボルン枢機卿はインスブルック教区司教の決定を支持、「教会全体の規律を破壊するもので到底受け入れられない」と指摘している。

 家庭教会で神父ではなく、信者代表が礼拝を主導し、聖体拝領などを行うことはフランシスコ法王の出身地、南米教会ではよく見られる現象だ。なぜならば、聖職者不足が深刻で、教区に礼拝をする聖職者がいないからだ。

 信者の家庭で礼拝が行われ、そこで信者の代表が神父の権限でサクラメントを行うようになれば、聖職者不足は解決できるが、教会の存在意義は失われる。教会中心の信仰生活から信者たちの主導的な家庭教会が強化されれば、教会機構の抜本的変化を意味するだけに、清貧の教えを説くフランシスコ法王も認めることはできないわけだ。

 バチカン放送独語電子版は23日、オーストリア教会の破門報道に関して3本の記事を掲載している。フランシスコ法王の中東巡礼に重なったこともあって、メディアの関心は目下少ないが、教会改革運動代表の破門は教会の在り方を問う大きな問題だ。扱い次第では教会機構が吹っ飛んでしまうほどの深刻なテーマなのだ。

「スイス人はエゴイストだ」は本当?

 スイスで先日、最低賃金の引き上げを問う住民投票が実施され、否決された。それを聞いたオーストリア人の中には「スイス人は少々変わっている」と呟いたという。労働者は賃金の引上げを願う。そのため、時にはデモも行う。にもかかわらず、隣国のスイス国民は最低賃金値上げに反対したことから、「スイス国民は変わっている」という印象を受けたのも仕方がないことだ。

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▲スイス・フラン紙幣 

 オーストリア国民の呟きに対して、スイスのジャーナリストの記事がオーストリア日刊紙プレッセ(22日付)に掲載されていた。ベルナー紙のクロード・シャトレン記者は「スイス人はマゾヒストではない。単なるエゴイストなだけだ」というのだ。その記事の概要を読者に紹介する。

 最低賃金(時給)を22スイス・フラン(月4000スイス・フラン)に引け上げるかの是非を問う住民投票が実施され、約76%の国民が反対し、否決された。
 同国では2012年3月、法的に規定されている労働者の年次最低有給休暇を従来の4週間から2週間増やして6週間とする案について、その是非を問う住民投票が実施されたが、その時も約66%の国民が拒否し、他の欧州諸国の国民を驚かせたことはまだ記憶に新しい。

 この2つの住民投票の結果から、「スイス国民は労働を愛し、勤勉で働き者。その一方、賃上げなどを願わない規律ある民族」といった印象を受けたとすれば大きな間違いだ。精神分析学の発祥の地ウィーンでは「スイス国民はマゾヒストなのだ」という診断を下す声もあるが、ベルナー紙記者は「スイス国民はマズヒストではない。単なるエゴイストに過ぎない」と書いているのだ。

 同記者は「スイス国民の大多数は既に6週間の休暇を享受している。そして国民の大多数は月4000スイス・フラン以上を稼いでいる。6週間以上の休暇や最低賃金4000フランを必要としている国民は少数派に過ぎない。彼らの多くは外国人労働者だ。だから大多数のスイス国民は『俺たちが享受している権利をわざわざ少数派に分けることはない』と考え、住民投票ではノーと答えた」というのだ。
 すなわち、労働を愛する国民でも、質素な生活を願う国民でもない。既成の特権を少数派に与えたくないだけだというのだ。

 6週間有給休暇案が拒否された時、ゝ找貌数を6週間に拡大すれば、年間50億ユーロの追加支出が必要、∪源坤灰好箸鮃發瓠↓商品の競争力を弱体化させる、等の理由が挙げられた。一方、スイス人の同記者はストレートだ。「有給休暇を十分楽しむ大多数の国民はその特権をわざわざ少数派に与えたくないだけだ」と説明する。

 記者は分かりやすい例を挙げる。老後保護の確保に関する住民投票が行われたら、国民の大多数はそれを支持するだろう。一方、傷病保険の場合はそうはいかないだろう。恩恵は少数者に限られているからだ。

 思い出してほしい。スイスで今年2月9日、欧州連合(EU)などから同国に移民する数を制限するかどうかを問う国民投票が実施され、制限賛成派が50・3%、反対派49・7%でEUからの移民数制限が承認されたばかりだ。外国人率23%のスイスでは外国人労働者のこれ以上増えることは願われていないのだ。

 スイス人記者の自国の住民投票結果の分析はクールだ。しかし、選挙でも住民投票でも有権者の投票動機というものは、どの国でもスイス人とあまり変わりがないのはないか。決して、スイス人だけが際立ってエゴイストということはないはずだ。

「天国は近づいた」

 イエスは弟子たちやユダヤ人たちを前に「天国は近づいた」(新約聖書「マタイによる福音書」4章17節)と宣言した。あれから2000年の月日が経過した。

 世界到る所で紛争と戦争、憎しみと対立が繰り返されている。シリア内戦では既に16万人以上が犠牲となった。イスラエルとパレスチナの和平交渉は停止状況だ。ウクライナ危機では欧米とロシア間で険悪な関係が続き、戦争に発展する恐れすら懸念され出した。

 紛争地域だけではない。欧州では多くの若者たちが失業状況だ。富む者と貧しい人々の格差は拡大。それだけではない。合成麻薬などの麻薬中毒がじわじわと浸透し、欧米文化は内から崩れ落ちようとしている。

 どこに天国はあるのか。残念ながら、どこにも天国を見いだせない。それではイエスは偽預言者だったのか。信仰の薄い弟子たちを鼓舞するために「もう少し我慢すれば、天国は到来する」とハッタリを利かしただけなのか。
 世界最大の宗派、キリスト教信者たちはイエスの「天国は近づいた」という言葉を信じてきた人々だ。彼らはイエスの言葉に騙された哀れな犠牲者に過ぎないのだろうか。

 今月29日は「イエス(主の)昇天の日」を迎える。復活イエスが40日間歩んだ後、天国に昇天する日だ。その後、ペンテコステ(聖霊降臨)が起きた。弟子たちは今にもイエスは再臨し、天国が到来すると堅く信じ、殉教の道を厭わず進んでいった。

 やはり、「天国は近づいた」のだ。極端にいえば、外的な環境は限りなく天国に近いから、あとは人間が良くなれば天国は到来する時を迎えている。

 科学分野では天国は既に到来している。全世界の人々が一瞬のうちに互いに通信でき、全ての出来事を共有できる。再生医学が登場してきた。米物理学者ミチオ・カク教授の「未来の物理学」を読めば、その感を一層強くする。ロボット技術からナノテクノロジー、宇宙技術からコンピューター技術まで、科学はわれわれが考えている以上に急速に発展してきた。

 欧州司法裁判所は先日、グーグル社は請求があれば個人情報を同社のサーバーから削除しなければならない、という判断を下した。大量の個人情報が行き来する現代社会では、その情報が悪用される危険性は現実的だ。だから、情報管理は大きな問題だ。その一方、ビッグ・データ(Big Data)を分析することで都市計画、輸送計画などに役立つ。それを研究する「社会物理学」が現在、脚光を浴びてきた。
 同じ情報が悪い目的にも社会発展のためにも利用できる。全て「人」の対応次第でその評価が変わるわけだ。

 それでは、どうしたらわれわれ一人一人は天国の住人となれるだろうか。わたしたちは外的な天国作りに追われる余り、天国人になる為の内容を疎かにしてきた。
 わたしたちが成長しなければならないことは明らかだが、どのように成長すべきかは各自が答えを見出す以外にないだろう。

 ちなみに、イエスは「天国は近づいた」という言葉を発する前に、「悔い改めよ」と語っている。イエスはわたしたちに「過去」の清算、パラダイムシフトを求めていたのだ。

欧州文化は没落したか 

 欧州ソング・コンテスト、ユーロヴィジョン(Eurovision)でオーストリア代表Conchita Wurst(コンチタ・ヴルスト)さんが優勝した直後、ロシアの民族主義者、ウラジーミル・ジリノフスキー氏は「欧州は終わった」と呟いたという。

 コンチタ・ヴルスト氏は同性愛者であり、女性として振る舞い、生活している一方(夫である男性と住んでいる)、顎髭を付ける奇抜な姿でユーロ・ヴィジョンを制したことはこのコラム欄で書いたが、その衝撃度は多分、日本の読者には理解できないかもしれない。ヴルスト氏はその後、ヌード姿をメディアに流すなど、同性愛者としてメディアの寵児となっている。

 そのヴルスト氏を大歓迎する欧州国民の姿をみて、ロシアの民族主義者は「欧州は終わった」と呟いたわけだ。換言すれば、2000年のキリスト教文化の結集でもある欧州文化が越えてはならない一線を越えてしまったという指摘かもしれない。

 独週刊誌シュピーゲル最新号はヴルスト氏の登場を単なる同性愛者歌手の凱旋という次元ではなく、社会現象として報道している。同誌は「ヴルスト氏を応援する人々は欧州文化の寛容さを意味し、没落ではないと受け止めているが、欧州では寛容と退廃(デカダン)は常に結びついてきた」と述べている。

 ところで、ウクライナ危機は、同国が欧州統合に参画するか、ロシアとの共存を図るかの路線問題が直接の契機だった。25日の大統領選はその路線紛争に決着をつける政治的イベントと考えられている。

 問題は、ウクライナ国民が統合を願う欧州のアイデンティティ,、価値観とは何か、という素朴な問いかけだ。ウクライナ国民はヴルスト氏を寛容さで包み込む欧州文化の一員となりたいのか。単なる経済的恩恵を享受したいだけなのだろうか。

 ヴルスト氏の勝利に歓喜する人々の姿を見た初老のウクライナ人は「これではっきりとした。われわれはロシアに統合する」と叫んでいる姿がTV画面に映っていた。

 ロシアのプーチン大統領の最側近、ロシア鉄道総裁のウラジーミル・ヤクニン氏はヴルスト氏の登場を「低俗な民族的ファシズム」「欧州文化の没落」とデカダン的な西欧を論評している(シュピーゲル誌)。

 ちなみに、英歴史学者トニー・ジャットは「欧州(EU)は元々、恐れと不安から創設された機関であり、強さや楽観主義の象徴ではなかった。そして経済とその福祉が政治に代わって欧州の重要目標とされてきた」という。
 「欧州機関の民主主義の欠陥は今日、外からはロシアのプーチン大統領に、内からは極右ポピュリストたちの攻撃にさらされる結果となっている」という(独誌シュピーゲル)。
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