ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

2016年08月

「幸せ」は「不幸」の数より多い

 米航空宇宙局(NASA)によると、先月28日未明、午前3時24分、「2016QA2」と呼ばれる直径35mの小惑星が地球から8万4000kmのところまで接近したが、衝突することなく通過したという。衝突していた場合、多くの被害が生じたと予想されている。小惑星の接近は通過数時間前になってキャッチしたという。事前に分かっていたら、一部でパニックが生じたかもしれない。

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▲「木星の写真」(NASA公式サイトから)


 天文学者によると、太陽圏には60万以上の小惑星が存在すると推測されている。過去にも、2013年2月15日、「2012DA14」と呼ばれた約直径20mの小惑星が地球から2万8000kmのところまで急接近、静止人工衛星より地球に近いところを通過した。小惑星は大きさが45〜50mで推定13万トン。地球に衝突し、海面に落ちた場合、津波が生じ、都市に落下した場合、かなりの被害が考えられた。2年前の2014年9月には小惑星が約4万kmの距離まで近づき、通過したことがあった。

 われわれが知らないところで、地球規模の危険が接近していたわけだ。最近では、イタリア中部を先月24日未明に襲った地震もそうだろう。まだ人が眠っている時、マグニチュード6・2規模の地震が発生し、290人以上の犠牲者が出たばかりだ。“天災は忘れたころにやってくる”というが、実際、その通りだ。

 地震や小惑星の衝突は人知をもってしても防ぎようがない。われわれが生きている世界には案外、この種の危険性が少なくないのではないか。近い将来、交通事故件数は限りなく減少し、難病の治癒率も急速に向上するだろうが、地震や小惑星の衝突といった危険性には人間はかなり無力だ。少々憂鬱になってしまう。

 もう少し、時間を広げて考えると、人類は滅亡の道を歩んでいることは間違いない。地球にとって不可欠の太陽は今後、10億年、次第に明るくなり、中心核の水素が燃え尽くす。そして太陽は膨張し出し、赤色巨星となる。太陽が放出する灼熱を受けて地球上の水は全て蒸発し、遅くとも30億年後に地球上の生き物は消滅していると予想されるからだ。大地震がなくても、小惑星の衝突がなくても、われわれ人類は滅亡するわけだ。

 このように考えて益々憂鬱の世界に陥ろうとしていた時、英科学誌「ネイチャー」によると、国際研究チームが太陽系に最も近い恒星「プロキシマ・ケンタウリ」の近くに、水がある可能性のある、地球に似た惑星を発見したと発表した。地球の代用惑星が見つかった可能性があるのだ。ひょっとしたら、人類は太陽が膨張し、赤色巨星となる前に、地球から脱出できるかもしれない。

 憂鬱な思いに囚われると、そこから這い出すことが大変だ。そこで、恣意的にわれわれ人類が如何に幸せな存在かを考え出す。すると、生きていること自体がかなり奇跡的なことだと分かってきた。様々な不幸なことが生じたとしても、生き延びる道を模索し、生きてきた。空気も水もわれわれの味方だった。大げさに表現すれば、宇宙を支配する自然法則はわれわれを支援しているように感じる。先日起きた天災に嘆き、数億年先のシナリオに絶望するより、今生きていることの幸せに感謝し、全力をもって生きていくのが最善かもしれない、という結論になった。

 この楽天気質丸出しの結論は、「幸せ」が「不幸」より多いという確信によって裏付けされているからだ。「不幸」の数は指で数えられるかもしれないが、われわれが生きていくために与えられている「幸せ」の数は両手の指をもってしても数えきれない。そもそも人は自身の「不幸」は数えるが、「幸せ」の数は数えようとしないものだ。

「難民歓迎政策」と「太陽政策」の蹉跌

 独日刊紙ヴェルト(8月26日付)とのインタビューの中でイスラム教学者 Hazim Fouad 氏は、「イスラム過激主義者サラフィスト(厳格なイスラム復古主義者)に対抗する最高、最強の武器は難民ウエルカム(歓迎)政策の一層の促進だ」と答えている。少し驚いた。
 同氏は、「西側に逃げてきたイスラム系難民が、『自分はここで歓迎されている』と感じることができれば、サラフィストたちの甘い言葉に惑わされ、イスラム寺院に行き、西側文化憎悪の説教を聞くことはない」というのだ。同氏によると、「多くのイスラム系難民はサラフィストの勧誘を拒否する、なぜならば、彼らは紛争地から逃れてきたからだ。しかし、ドイツで自分が歓迎されていないという感情が高まれば、危険性が出てくる」という。

 難民ウエルカム政策の提唱者、メルケル首相が聞けば笑みを浮かべ、頷くかもしれないが、ドイツ国民の多くはどうだろうか。昨年100万人余りの難民を受け入れてきた。その結果、難民に紛れ込んで来たテロリストがフランス、ベルギー、そしてドイツでもテロ事件を引き起こした。その一方、難民収容ハウスを襲撃する事件が多発し、難民と国民の間に亀裂が生まれてきた。要するに、ドイツの治安は悪化し、外国人犯罪が増加する一方、イスラム・フォビア、外国人排斥運動などが国民の間で広まってきている。その結果、メルケル首相の難民ウエルカム政策への批判が国民の間でも聞かれ出し、あろうことか身内の与党内からも出てきたわけだ。

 先のイスラム教学者の主張は、「歓迎が足りないから、問題が生じてくる」とい論理だ。「難民ウエルカムが中途半端だと、その結果も中途半端に終わる。与え尽くせ」という一種のアピールだ。そういえば、ローマ・カトリック教会のフランシスコ法王もそうだ。彼らは異口同音に「紛争地から逃げてきた難民を暖かく迎え入れよ」、「西側社会のボートはまだ一杯ではない」と主張し、難民受け入れに腰が引けている政治家たちに檄を飛ばしている。

 実行可能かは問わず、愛の実践、完全無私な愛の実践を求めているわけだ。その点、世界の紛争解決と平和を提唱して創設された国連も同じだ。「ジュネーブ難民条約」では、「政治、民族、宗教などの理由から逃れてきた難民の収容」を明記している。
 もちろん、メルケル首相、フランシスコ法王、そして国連の3者の「難民ウエルカム政策」には微妙な相違もあるだろうが、紛争から逃れてきた難民を迎え入れよ、という人道主義的なアピールでは同一だろう。

 イスラム教学者の「難民ウエルカム政策の促進」論を読んだ時、韓国の対北政策で一時もてはやされた対北支援政策「太陽政策」(Sunshine Policy)を思いだした。その太陽政策がうまく機能しないことが明らかになってきた時、先のイスラム教学者のような学者が出てきた。ウィーン大学東アジア研究所ルーディガー・フランク教授は、「太陽政策がうまく機能せず、当初の目標が実現できないのは、韓国を含む国際社会が北支援を十分に実施していないからだ」と指摘し、「太陽政策がうまくいかないのは、不十分だったからだ」というのだ。その話を聞いた時、やはり同じように驚いたことを思いだす。

 イスラム教学者の「サラフィストからの誘惑を断つほど難民を歓迎」と、フランク教授の「北が独裁国家をやめて解放されるまで経済支援を続けよ」という主張は論理的に酷似している、しかし、前者はイスラム過激派テロの危険性を排除できない一方、北には韓国から入手した経済支援で核開発を促進させる危険性があった。実際、後者はそのようになった。韓国の金大中大統領(任期1998〜2003年)が提唱した太陽政策は北の核開発を支える結果となったことはまだ記憶に新しい。

 残念ながら、完全な愛の人も、他国のために奉仕を惜しまない国家も存在しない。一方、溺愛は子供の成長にマイナスになるように、支援を受け続ける国も国民もひ弱になっていく。だから、理想と現実の妥協がどうしても必要となる。全ての難民を受け入れることはできない。北の国民が飢餓に苦しんでいるとしても、経済支援が独裁者の手によって核兵器開発に使われることを回避するために、どうしても対北経済支援を制限せざるを得ない。

 「難民ウエルカム政策」と「太陽政策」の背後にある、無条件に与え、困窮下の兄弟姉妹を支援するという暖かい思いやりを失うことなく、現実との妥協点を模索していかなければならない。暖かい思いやり、人道愛だけでは問題は解決されないのだ。

V4グループ首脳の「私の主張」

 メルケル独首相は26日、ポーランドの首都ワルシャワを訪問し、ポーランド、チェコ、スロバキア、そしてハンガリーのヴィシェグラード・グループ(V4)首脳と難民政策などについて意見を交換した。
 V4は、シリア、イラクなどから難民が欧州に殺到して以来、メルケル首相の“難民ウエルカム政策”を激しく批判し、ブリュッセル(欧州連合=EU)の難民分担案に強く反対してきた。結果は、予想されたことだが、「V4との妥協点を模索する」というメルケル首相の思惑は空振りに終わり、難民政策では、V4とメルケル首相の間に大きな溝が改めて浮き彫りにされた。

 そこで、難民政策に対するV4グループの首脳の声をまとめておく。V4グループは今年、創設25年目を迎えた地域協力機構だ。

 .魯鵐リーのヴィクトル・オルバン首相はEU主導の政策に常に異議を唱えてきた“EUの異端児”と呼ばれる政治家だ。メルケル首相との会談では、「EUの難民政策の修正を求める」と早々と戦う姿勢を示してきたほどだ。
 オルバン首相はワルシャワ首脳会談前、対セルビアの国境線の壁建設拡大を宣言し、「われわれの国境を花や動物の人形で守ることはできない。国防は軍隊、警察、そして武器だ」と述べ、難民ウエルカム政策を実施するメルケル首相を間接的に批判している。

 ▲船Д海離椒侫好薀奸Ε愁椒肇首相は25日、ワルシャワの首脳会談に先駆けメルケル首相とプラハで会談したが、「加盟国に難民の強制的な受け入れを要求するやり方は容認できない」と述べ、「わが国はイスラム系難民を受け入れない」と強調し、メルケル首相にストレートパンチをくらわしている。
 プラハ政府建物前では市民から「メルケル、出ていけ」といったシュプレヒコールが響き、同首相の難民政策への批判が強いことを物語った。

 ソボトカ首相は、「歴史も文化も異なる難民を迎えることを好ましくない。そのうえ、イスラム過激派テロ組織『イスラム国』(IS)に属するテロリストが難民の中に混ざって入ってくる」と強調し、フランスやドイツでのISのテロ事件を指摘し、「イスラム系難民の社会統合は容易ではないという現実がある」と主張している。

 ホスト国のポーランドのベアタ・シドゥウォ首相は、「難民政策でわれわれは一致を見出さなければならない」と述べ、「難民の分配ではなく、紛争地での開発・人道支援の拡大」を提案し、ブリュッセルの難民政策との妥協を模索する姿勢を示している

 ちなみに、同国のヴィトルド・ヴァシチコフスキ外相はドイツ通信(DPA)とのインタビューの中で、「ドイツの難民政策は非常に利己的な計算に基づいている」と批判し、ドイツの難民政策を“自国中心”だと断言している。

 ず埜紊蓮∈G7月1日からEU議長国となったスロバキアだ。同国のロバルト・フィツォ首相は、「わが国はイスラム系難民を受け入れる考えはない」と宣言してきた中欧の政治家である。その一方、「EUの共同防衛政策の重要性」を訴えている。
 
 メルケル首相とV4諸国首脳は、「EUの域内外の安全問題は、来月16日にスロバキアの首都ブラチスラヴァで開催予定のEU非公式首脳会談の重要テーマ」という点で一致したという。特に、トルコが10月、EUとの間で合意した難民政策を解消した場合、再び大量の難民がバルカン・ルートで欧州に殺到するケ―スが十分考えられるからだ。
 
 ワルシャワからの情報によれば、難民政策、安保問題以外では、英国のEU離脱後の加盟国間の結束問題が話し合われた。ホスト役のシドゥウォ首相は、「英国の離脱後、EUは安保と経済政策の両分野で連帯が願われる。EUは問題の解決でなければならない。EUが問題となってはならない。そのためにもEUの改革は急務だ」と述べている。


 メルケル首相は、「非公式首脳会談がブリュッセルではなく、ブラチスラヴァで開催されることは大切だ。国民がEUを肌で感じることができる機会となるからだ」と述べ、V4首脳に連帯と結束を訴えている。

極右派政党から初の大統領誕生か

 オーストリア大統領選の第3ラウンドが10月2日、実施される。第1ラウンドは4月24日、第2ラウンドの上位2候補者による決選投票は5月22日、そして決選投票のやり直し投票が10月2日というわけだ。通常の大統領選より1ラウンド多いのは、同国憲法裁判所が7月1日、5月22日の大統領選決選投票を無効と表明し、やり直しを命じたからだ。その理由は、「選挙関連法には不備はないが、その実施段階で形式的ミスがあった」というもの。

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▲「大統領選の新しい選挙ポスターを紹介する自由党関係者」(オーストリア自由党の公式サイトから)

 そして夏休みは終わり、第3ラウンドの選挙戦の幕が今月24日、切って落とされた。候補者は野党「緑の党」元党首、アレキサンダー・バン・デ・ベレン氏(72)と極右派政党「自由党」副党首で国民議会第3議長のノルベルト・ホーファー氏(45)の2人だ。前者のバン・デ・ベレン氏は第2ラウンドの決選投票で得票率50・3%、3万0863票の僅差でホーファー氏を破り、当選が決まっていた。それだけに、憲法裁判者の投票のやり直し命令は無念であっただろう。一方、ホーファー氏は大統領府のホーフブルク宮殿入りへのチャンスをもう一度得たわけだ。

 バン・デ・ベレン氏の新しい選挙ポスターのタイトルはハイマート(Heimat)だ。“故郷”という意味。難民出身の同氏にとって、ハイマート(本国)は少々複雑な問題だ。それを逆に取って「オーストリア・ファースト」を叫ぶホーファー氏を攻撃しようというわけだ。一方、ホーファー氏の新しいポスターは「Macht braucht Kontrolle」(権力には監視が必要だ」)だ。トーマス・クリスティル元大統領(任期1992〜2004年)が選挙戦で使用した選挙ポスターのキャッチフレーズを利用した。

 同国の複数の世論調査では、ホーファー氏が一歩リードしている。このままいけば、欧州初の極右派政党出身の大統領が誕生する雲行きだ。同国日刊紙「エーステライヒ」(8月25日付)によると、8月23、24日の両日、600人の有権者に質問した結果、ホーファー氏が約53%でバン・デ・ベレン氏は47%で、両者の差は6%とかなり大きい。

 ホーファー氏が先行している理由として、移民問題とトルコ問題が同氏に有利に働いていることが考えられる。極右政党「自由党」は移民、難民の規制を主張してきた。一方、「緑の党」は移民・難民の受け入れを訴えてきた。ここにきて浮かび上がってきたトルコ問題では、ホーファー氏は、「トルコの最大少数民族クルド系住民を攻撃するなど、トルコ国内問題を海外に持ってきて展開し、民族紛争を煽ることは許されない。トルコの欧州連合(EU)加盟は目下、考えられない」とトルコ批判を強め、国民の支持を得ている。

 ホーファー氏にとって問題なのは、英国のEU離脱だ。ブリュッセル主導のEUに対して、自由党は過去、英国と同様、EU離脱も辞さない立場を取ってきたからだ。
 ホーファー氏は英国のEU離脱決定直後の日刊紙とのインタビューの中で、「EUが加盟国の主権を尊重せず、ブリュッセル主導の政治を継続するなら1年以内に国民投票を要求する」と述べていたが、ここにきて「EUに対する考えは何も変わっていない。EU離脱のシナリオはあくまでも緊急状況下で考えられるだけだ。わが国のEU離脱は目下、考えられない」と説明し、EU離脱支持の路線を修正している。

 いずれにしても、高齢な候補者バン・デ・ベレン氏はホーファー氏に対して守勢を強いられている。同氏にとって、「極右派政治家を大統領にしてはならない」といった内外の声が高まることだけが希望だろう。

 参考までに付け加えると、今回は3回目の大統領選だが、「今回の投票で問題が生じ、再びやり直しでも要求されたら、それこそ世界の笑いものになってしまう」ということで、同国内務省の選挙担当者は緊張しているという。
 ソボトカ内相は関係者に対し、〜挙関連法を遵守すること、投票終了の午後5時まで暫定結果などを外部に流さないこと、TVなどのカメラマンに投票場の風景を撮影させないこと、などを通達したという。大統領の栄光を獲得するために3回も選挙戦をしなければならなくなった2人の候補者も必死だが、内務省関係者も投票が無事終わるまで心を休めることができない。

「ルシファー」が地上にやって来た!

 当方は最近、米TVのドラマ「ルシファー」(Lucifer)を視ている。シリーズ2がまもなく公開されると聞く。少々、コメデイー風に描かれたストーリだが、結構面白い。ルシファーは聖書の世界では重要な存在だ。人間始祖アダムとエバを誘惑し、「取って食べてはならない」という神の戒めを破らせて堕落させた張本人だ。欧米のキリスト教社会ではルシファーといえば「悪魔の天使」を意味する。

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▲TVシリーズ「ルシファー」のポスター

 そのルシファーを主人公にした映画だ。神から叱咤され地獄から追われ地上のロサンゼルス市に現れたルシファーは、地上ではロサンゼルス市警の女警察官(クロエ・ダンサー)を助けて様々な犯罪を解決していくという話だ。

 ルシファーが、「あなたは何を願っていますか」と問いかけると、尋ねられた人は心で願っている本当のことを白状してしまう。ところが、1人だけルシファーの魔術にはまらない人間がいた。それがロス市警のクロエ・ダンサーだ。ルシファーは嘘のない純粋な女警察官に新鮮な驚きを感じる。

 ルシファー役を演じる俳優はトム・エリスだ。興味深い点は、悪魔を演じるエリスの父親と叔父はバプテスト派教会の牧師であり、家族関係者には聖職者が多いことだ。ジャーナリストから「悪魔役を演じることに家族から反対はなかったか」と聞かれた時、エリスは、「私がルシファー役を演じることに何も反対はないよ。映画の世界の話だからね」と笑いながら答えている。ちなみに、ルシファーが放映されると、米国カトリック教会では「聖書の深刻な内容を茶化している」といった批判の声が出ているという。敬虔な信者にとっては、ルシファーは決してコメディアンではないわけだ。

 ところで、米ハリウッドではここにきて米俳優ではなく、英国人俳優を抜擢するケ−スが増えている。「Dr House」の主人公を演じたのは英国人俳優ヒュー・ローリーだった。英BBCが放映する「シャーロックホームズ」のシャーロックホームズ役は英俳優のベネディクト・カンバーバッチが演じたが、カンバーバッチは現在、米ハリウッドで売れっ子だ。米CBSで2012年から放映され大ヒット中の「エレメンタリー」(Elementary)でシャーロック・ホームズ役を演じるジョニー・リ・ミラーも英国人だ。「ウォーキング・デッド」(Walking dead)の主人公リック・グライムズは英国俳優のアンドリュー・リンカーンが演じた。今回のルシファー役のトム・エリスは英国人ではないが、ウェールズ出身者、といった具合だ。

 ハリウッドはここにきて米国俳優ではなく、英国俳優を好んで主人公に抜擢してきた。それには理由はある。(胴颪稜侏イ歪名錙巨額のギャラを要求するが、英国人俳優はそれほどではない、制作側としては経済的メリットがある。∧胴駝韻榔儿饋庸侏イ話す英語に惹かれる。すなわち、本場のブリティッシュ・アクセントに米視聴者が心をひかれるという、1儿饋庸侏イ榔薹爐侶亳海豊富であり、演劇力は確かだ、といった理由だ。

 なお、番組「ルシファー」を観て改めて気がついた点は、悪魔は自分から人間を懲らしめない。人間が悪いことをした時、その罰として人間を懲らしめるだけだ。悪魔が理由なく人を苦しめることはない、ということだ。不幸なことに、人間はさまざまな悪いことをするので、ルシファーは罰を与えるために忙しくなる、というわけだ。

前法王が語った「生前退位」の事情

 世界に12億人以上の信者を有するローマ・カトリック教会の最高指導者ローマ法王の地位を生前退位したベネディクト16世(在位2005年4月〜2013年2月)がこのほどイタリア日刊紙「ラ・レプッブリカ」(La Repubblicap)とのインタビューに応じ、生前退位を表明した背景について詳細に説明する一方、退位後の日々について語っている。

 そこでバチカン放送独語電子版が報じたイタリア日刊紙とのインタビュー記事(8月24日付)を参考に、ベネディクト16世の生前退位の背景、その後の日々について報告する。

 第265代ローマ法王ベネディクト16世は2013年2月28日、ローマ・カトリック教会史上、719年ぶりに生前退位した。在位期間は約8年間だった。その生前退位を決断した理由について、「2012年3月23日から28日までのメキシコとキューバ訪問が決定的な契機となった。生前退位はもはや避けられないという思いが湧いてきた」という。南米訪問が生前退位を決断する上で大きな契機となったという内容は初めてだ。

 バチカン法王庁の欧州と訪問先の南米では気候も環境も大きく異なる。公式行事が重なった南米訪問は強靭な体力を誇ってきたベネディクト16世をして「もはやこれ以上、公務をこなすことはできない」という思いが湧くほどだった。換言すれば、体力、健康の限界を強く感じたわけだ。ベネディクト16世は当時、85歳の誕生日を迎える直前だった(「法王と『カリブに浮かぶ赤い島』」2012年3月30日参考)。

 同16世は、「法王の職務を継続したいという思いはあった。例えば、『信仰に関する回勅』を完成したかった。しかし、2013年は多くの課題が控えていた。多分、自分はそれらを最後まで全うできないだろうと思った」という。

 同16世曰く、「メキシコ、キューバの南米訪問をもう一度する体力は自分にはなかった。なぜならば、翌年(13年)にはリオデジャネイロで世界青年集会の開催が予定されていた。ローマ法王の参加が必要な重要イベントだ」と説明。同時に、「自分が生前退位しても、後継者が神の御心を継続し、自分が残した使命を全うしてくれるという確信はあった」という。
 ベネディクト16世はその直後、医者に相談し、リオ開催の世界青年大会に参加しないことを決意し、生前退位を決断している。

 生前退位後については、バチカン庭園内にあるマーテル・エクレジエ修道院で住み、神のため、後継者のために祈る生活を始めようと考えた。同修道院は以前、バチカン放送所長が居住していたが、その後、祈祷院に変わり、修道女が去ると、同修道院が空いた。そこで退位後、ベネディクト16世は同修道院で祈りの生活を始めることにしたわけだ。

 その結果、バチカンにはフランシスコ法王と前法王のベネディクト16世という2人の法王がいる異常な状況になった。ベネディクト16世は、「後継法王フランシスコに対する忠誠の思いは全く変わらない。フランシスコ法王に対して連帯感と友情関係が生まれてきた」と明らかにしている。フランシスコ法王は法王選出直後、自分に電話をかけ、重要な司牧訪問前には必ず連絡してくれる。親子、兄弟のような関係だという。

 在位27年間を務めたヨハネ・パウロ2世後、ローマ法王に選出されたベネディクト16世の8年間の在位期間はまさに波乱万丈の時代だった。聖職者の未成年者への性的虐待事件が発覚し、その対応に追われる一方、法王の執事(当時)がべネディクト16世の執務室や法王の私設秘書、ゲオルグ・ゲンスヴァイン氏の部屋から法王宛の個人書簡や内部文書などを盗み出し、ジャーナリストに流した通称「バチリークス」事件が発生。同時に、バチカン銀行の不正問題やマネーロンダリングが暴露されるなど、不祥事が次から次と多発した。また、ベネディクト16世の生前退位の背景にはバチカン内の改革派と反改革派の抗争があったと一部で推測されていた。

 ベネディクト16世は「生前退位の直接の理由は南米訪問で体力の限界を知ったことだ」と初めて明らかにしたわけだ。換言すれば、ベネディクト16世は、南米訪問後の2012年4月から翌年2月まで約10カ月間、教会にとって719年ぶりとなる「法王の生前退位」の準備を慎重に進めていったわけだ。

人間に「自由意志」はあるか

  脳神経学者には、「人間には自由意志はない。それは幻想に過ぎない」と考える学者グループと、「自由意志があり、責任もある」と受け取る学者たちがいる。すなわち、脳神経学者の間で自由意志の有無についてコンセンサスがまだ見つかっていないわけだ。
 独週刊誌「シュピーゲル」最新号(8月20日号)は科学欄で著名な脳神経学者、リューダー・デーケ教授(Lueder Deecke)をインタビューしていた。その内容を紹介しながら、自由意志について少し考えてみた。

 1960年代、独フライブルク大学で2人の脳神経学者ハンス・ヘルムート・コルンフーバー教授と当時ドクトル試験受験者だったデーケ教授が実験を通じて人間が随意運動をする直前、脳神経に反応が見られることを発見した。これは Bereitschaftspotential(BP,英Readiness potential)と呼ばれる。この発見はその後の脳神経学の研究に大きな影響を与えた。

 具体的には、脳神経学者には、デーケ氏らが発見したBPの存在について、人間に自由意志があることを証明するのか、それとも神経細胞(ニューロン)の自律的反応に過ぎないのかで解釈が分かれていった。

 「人間は無意識によって操られている存在」と解釈する脳神経学者が出てきた。米国の心理学者ベンジャミン・リーベト(Benjamin Libet)やドイツのゲルハルト・ロート(Gerhard Roth)やヴォルフ・シンガー(Wolf Singer)らは、「人間はマリオネットのような存在だ」「遺伝素質、環境、教育、化学、神経網などで動かされている」という決定論者的な解釈を取った。

 デーケ教授はシュピーゲル誌のインタビューの中で、「われわれの実験結果が間違って受け取られた。われわれは人間の脳は単なる受信機的な受身機能だけではなく、自発的な決定を促す部分があることを実証したかった」と説明している。
 ちなみに、2人の脳神経学者は著書『意志と脳』の中で、歴史的な観点から意志を検証し、心理学、神経学の意志、人間の進歩と意志の関係などを詳細に記述している。この分野の古典だ。

 自由意志の有無は脳神経学者や心理学者にとって重要なテーマだが、それだけではない。哲学、神学、法学など多くの分野でも大きな課題だ。例えば、フランス人の神学者ジャン・カルヴァンは「全ては神によって事前に決定されている」という「完全予定説」を主張している。

 興味深い点は、人間をマリオネットに過ぎず、自由意志が存在しないとすれば、その人間が犯罪を犯した時、刑罰に処することができるかという問題が出てくる。脳神経学者の「人間には自由意志がない」という主張が一時期、米国の司法界にも一定の影響を与えたことがある。その結果、脳神経の欠陥という理由で多くの犯罪者が刑罰を逃れるケースが出てきた。最近は、脳神経学者の主張は依然実証されていない見解に過ぎない、という受け取り方が支配的となっているという。

 ところで、ベルリンの脳神経学者 John-Dylan Haynes 氏は信号の実験を通じ、無意識の決定に対し意識が拒否するメカニズムを証明し、人間が単なる無意識の世界に操られた存在ではないと主張している(「シュピーゲル誌」2016年4月9日号)。
 人が信号の前にいる。次は「青」になると考えた人はアクセルを踏む。その瞬間、信号が「赤」に変わる。人は自身の無意識の人質となり、身動きができなくなる。そこでこの状況を打破するために、人は無意識がもたらした行為をストップするというのだ。‘Free Unwille’という内容だ。政治学的に表現すれば、人は自身の無意識の決定に対し、‘拒否権’を有しているというわけだ。

 なお、デーケ氏はシュピーゲル誌とのインタビューやさまざまな講演の中で、「人間は本来、自由意志を持った存在だが、その意志は完全には発展していない。自由意識を成長させるために努力を繰り返し、正しく訓練していけば、自由意志は次第に完全なものとなっていく。逆に、自由意識を悪用すれば、その自由意志はその力を失い、最後には人間は無意識の世界の虜となっていく」という趣旨の内容を語っている。デーケ氏の指摘は非常に啓蒙的だ。

在位「33日間」で博物館が建った法王

 世界の大国・米国を指導した大統領は退任すると自身の名前がついた図書館、博物館が建てられ、現役時代の外交文書や書簡が陳列される。それを真似たわけではないだろうが、世界に12億人以上の信者を有するローマ・カトリック教会最高指導者、ローマ法王も亡くなると博物館や記念館が建立されるようになった。

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▲イタリアのベルガモのヨハネ23世博物館(2013年9月26日、ヨハネ23世博物館で撮影)

 当方は3年前、イタリアのミラノ市から北東59キロにある小都市ベルガモ市(Bergamo)郊外のソット・イル・モンテにあるローマ法王ヨハネ23世(在位1958年10月〜63年6月)の生家を訪問したことがある。教会の近代化を決定した第2バチカン公会議を主導したヨハネ23世の生家は立派な博物館となっている。在位期間27年間を務めたヨハネ・パウロ2世(在位1978年10月〜2005年4月)も母国ポーランドに、生前退位したベネディクト16世(在位2005年4月〜13年2月)の場合、出身地の独バイエルン州に、それぞれ博物館や記念館があるといった具合だ。

 退位後や亡くなった後、自身の博物館と図書館をつくられる大統領やローマ法王は短くても4年以上の任期を全うしているが、在位33日間の最短在位期間の法王ヨハネ・パウロ1世の博物館が今月26日にオープンする。在位期間は最短だったが、博物館の建設では歴代の法王に負けていない。米大統領が任期1カ月で亡くなった場合、果たして独自の図書館、博物館が建つだろうか、とついつい考えてしまった。

 ヨハネ・パウロ1世(在位1978年8月26日〜78年9月28日)は法王に就任後、33日後に亡くなった。その法王の博物館が今月26日、同法王の生誕地イタリア北部のカナーレ・ダーゴルドでバチカンのナンバー2、ピエトロ・パロリン国務長官を迎えて、開館式が行われる。バチカン放送独語電子版が19日報じた。

 同法王は“笑う法王”と呼ばれ、信者たちの人気が高かった。バチカンでは現在、列福手続きが進められている。イタリアの貧しい家庭で生まれたアルビノ・ルチアーニ(本名)は幼い時から聖職者の道を目指した。70年にはヴェネツィアの大司教になり、生涯貧困問題に強い関心をもち続けた。筆の達つ聖職者で、「神父にならなかったら、ジャーナリストになっていた」といわれるほどで、さまざまなメデイアに意見や見解を明らかにしている。

 ところで、近代の教会史で在位期間最短の法王となったヨハネ・パウロ1世の急死についてはさまざまな憶測が今なお流れている。以下、まとめておく。

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 新法王がバチカン銀行の刷新を計画していたことから、イタリアのマフィアや銀行の改革を望まない一部の高位聖職者から暗殺されたという説だ。十分な死体検証も行われなかったことから、証拠隠滅という批判の声もあった。ヨハネ・パウロ1世の死が伝わると、「ローマ法王はバチカン法王庁の書記官によって毒殺された」という噂が真っ先に流れた。米国のデビット・ヤロプ氏はその著書「神の名のもとで」の中で「ヨハネ・パウロ1世は毒殺された」と主張している。また、ベットで死んでいるパウロ1世を最初に見つけたのは修道女だったが、公式発表では個人秘書が発見したことになっている。


 ◆峙淦心筋梗塞」説
 バチカンは同法王の死因を急性心筋梗塞と発表している。フランスのヤクエス・マーチン枢機卿がその著書「私が仕えた6人のローマ法王」の中で、毒殺説を否定する一方、「問題は死因ではなく、長年心臓病に悩まされていたことが明らかにもかかわらず、コンクラーベ(法王選出会)はなぜヨハネ・パウロ1世をローマ法王に選出したかだ」と指摘している。ヨハネ・パウロ1世は法王就任前に、「私は心臓病に悩まされているから、長時間の激務には耐えられない」と語っていたという。


 「予定説」 
 法王の実弟エドアルド・ルチア二氏は「私の兄は77年7月11日に、ファティマのマリア再臨の目撃者ルチア修道女と会い、長時間話したことがある。その会談後、兄は顔面蒼白となり、非常に取り乱していた」と証言し、「ルチアは何か非常にショッキングなことを兄に伝えたのではないか」と指摘。その「何か」の1つとして、同氏は「ルチアはローマ・カトリック教会の将来ばかりか、兄に対してもローマ法王に就任したとしても短命に終わることを予言したのではないか」と推測し、ヨハネ・パウロ1世の急死が神の予定であったと受け取っている。ちなみに、同法王が書いたといわれる「遺書」が今日まで発見されていない。

 「33日法王」の急死をテーマとした映画や書籍が出版されている。パウロ1世はローマ法王としての業績はほぼ皆無だが、そのミステリアスな「急死」で有名になった法王だ。その法王の博物館が建立された。信者たちにとって新しい巡礼地が生まれたわけだ。

4年後の東京五輪の成功を祈る

 当方は猫ひろしさん(39)という日本人男性を知らなかった。ネット情報から有名なコメディアンだとを知った。知らない男性の言動について、ああだ、こうだ、というのは失礼なことかもしれないが、猫ひろしさんがリオデジャネイロ夏季五輪最終日の21日、男子マラソンを完走後、語ったコメントを読んで「この人には夢があったのだな」と強く感じた。その夢を実現するために日本人からカンボジアに国籍を変え、五輪に参加したということが分かった。

 猫ひろしさんの国籍変更の詳細な経緯は知らないが スポーツ選手の中では五輪や世界大会に参加したいために国籍を変える人はいる。世界大会や五輪に参加するためには一定の規定をクリアしなければならないし、参加枠も決まっている。全員が参加できるわけではない。
 例えば、米国では水泳競技で五輪に参加するためには厳しい予選を通過しなければならない。その予選は本大会より厳しい、といわれるぐらいだ。猫ひろしさんの場合、日本人のマラソンの五輪枠組みに入れなかったが、カンボジアではまだチャンスがあったから、国籍を変更したのだろう。

 もちろん、スポーツ選手の国籍変更理由はそれだけではない。自国の所属競技協会との関係が悪化し、国際大会への参加の道が途絶えた選手が別の国の選手として参加するケースも少なくない。

 当方が住むオーストリアはウインタースポーツのメッカだ。冬季五輪も2回、開催した。アルペンスキー競技だけではなく、スキージャンプもトップ級だ。アンドレアス・ゴールドベルガ―というジャンプ選手がいた。ワールドカップ総合を3回獲得した名選手だった。葛西選手と同世代の選手だ。彼がコカインなど麻薬問題でオーストリアのスキー・ジャンプ協会から半年間の資格停止の処分を受け、長野冬季五輪に参加できなるという状況が生じた。そこでゴールドベルガ―選手はスロベニアの国籍を取ろうと試みたことがあった。国際的スキー・ジャンプ選手の国籍変更は当時、世界のメディアでも大きく報道されたことがあったので、読者の中にも記憶されている人
も少なくないだろう。

 猫ひろしさんは2011年、国籍を変更し、ロンドン大会ではカンボジア代表に選出されたが、国籍変更後、1年未満しか経過していないなどの理由から大会参加を拒否された。だから、リオ五輪はカンボジア人の猫さんの五輪デビューとなったわけだ。

 猫ひろしさんは完走した。時間は2時間45分55秒で、参加者155人中139位、完走者中140人中、139位だった。読売新聞電子版によると、猫ひろしさんは「カンボジア人も日本人もブラジルも応援してくれた。最高の42・195キロでした。後半、苦しくて足が動かなくなったが、僕を選んでくれたカンボジアでも放送されている。絶対に歩かないぞと踏ん張った」という。走ることが大好きな男の気概を感じた。

 夢を持つことは大切だ。それを実現する為に努力することはもっと素晴らしい。「走る」という競技は多くのスポーツ競技の中でも最も古い競技だろう。走り出した少年が人より早く走りたくて練習を繰り返し、そして五輪大会に参加したいという夢が膨らんでいったのだろう。猫ひろしさんは大きなドラマを書いたわけだ。

 リオ夏季五輪大会は幕を閉じ、いよいよ2020年の東京大会だ。リオ大会では、水泳競技で5個の金メダルを獲得したマイケル・フェルプスの活躍、、そして陸上男子400mリレーで銀メダルを獲得した4人の日本人ランナーの勇姿が忘れられない。多分、もっと、もっと多くのドラマがあったのだろう。

 リオ五輪大会開催中もシリアやウクライナ東部で戦闘が続き、多くの犠牲者が出ている。また、ドーピング問題でロシアの陸上選手が五輪参加できずに終わった。4年後の東京五輪を人類の連帯と和解を誇示できるスポーツ祭典としたいものだ。東京五輪の成功を祈る。

量子物理学者と「神」の存在について

  量子テレポーテーションの実現で世界的に著名なウィーン大学の量子物理学教授、アントン・ツァイリンガー氏(Anton Zeilinger)は、「量子物理学が神と直面する時点に到着することはあり得ない。神は実証するという意味で自然科学的に発見されることはない。もし自然科学的な方法で神が発見されたとすれば、宗教と信仰の終わりを意味する」という。同教授がウィーンの教会新聞日曜日版とのインタビューの中で答えたもので、バチカン放送独語電子版が18日報じた。

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▲世界的な量子物理学者ツァイリンガー教授(オーストリア週刊誌「プロフィール」でのインタビューから)

 人々は分からないことにぶつかればその説明を求める。人々は余りにも多く神について語り、その定義を提示してきた。神は全知であり、全能だ、といった具合にだ。ツァイリンガー氏は、「自分は神秘主義者かもしれない。人は神を感じることができるが、神について多くのことを語ることはできない」という。

 「神」とはいかなる存在か、宇宙の森羅万象を創造した神は存在するのか、等々、昔から人間は考えてきた。新約聖書の「ヨハネの黙示録」1章には神自身が答えている。「私はアルパであり、オメガだ」という。アルパは最初であるから、宇宙の創造者を意味し、オメガは終わりを意味するから、その完成者という意味かもしれない。同時に、「黙示録」の別の個所には「私は初めであり、終わりである」という表現もある。それ以上、何の説明もないのだ。

 人間が時間や空間の概念から神に問いかけたとしても所詮無理があるのだろう。量子情報のパイオニアのツァイリンガー教授は、「量子物理学がさらに発展したとしても神に遭遇することはない」と断言し、神について「多くを語ること」に警告を発している。神は人間の言語体系と認識メカニズムでは掌握できないというわけだ。

 少し古いが、オーストリアの週刊誌「プロフィール」(2012年8月9日号)は神について、教授に聞いている。同誌の会見記事の見出しは「愛する神をわれわれは発見できない」だった。
 プロフィル誌記者はツァイリンガー教授に、「神は自然科学的に理解できないのか」と聞くと、教授は、「神は証明できない。説明できないものは多く存在する。例えば、自然法則だ。重力はなぜ存在するのか。誰も知らない。存在するだけだ」と説明。そして無神論者については、「無神論者は神はいないと主張するが、実証できないでいる」と述べている。

 それでは、宇宙すべては偶然に誕生したものだろうか。ツァイリンガー教授は、「偶然でこのような宇宙が生まれるだろうかと問わざるを得ない。物理定数のプランク定数(Planck Constant)がより小さかったり、より大きかったならば、原子は存在しない。その結果、人間も存在しないことになる」と指摘している。宇宙全てが精密なバランスの上で存在しているというわけだ。

 profil: Das konnte doch genauso gut Zufall sein.
Zeilinger: Aber da frage ich: Warum ist die Welt so, dass der Zufall so etwas produzieren kann. Wenn etwa das Plancksche Wirkungsquantum viel kleiner oder groser ware, dann gabe es nicht annahernd die Moglichkeit, dass es Atome gibt. Und damit uns.
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