ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

2017年04月

なぜ今、北はミサイル発射したのか

 成功する可能性が少ない実験を繰り返す科学者はあまりいないだろう。先ず、成功しない理由を解明し、その問題点を解決してから実験を繰り返すだろう。それでは北朝鮮の金正恩労働党委員長はなぜ完成からほど遠い弾道ミサイルの発射命令を出すのだろうか。

 韓国「聯合ニュース」日本語電子版によると、北朝鮮は29日午前5時半ごろ(現地時間)、西部の平安南道・北倉付近から弾道ミサイル1発を発射したが数分後、空中爆発し、失敗したという。ついこの前もミサイルを発射して失敗している。そして今回も同じように空中爆発したのだ。北関係者がミサイル本体の問題点を解決した後、再発射したという感じはしない。むしろ発射成功を恣意的に回避しているような様子すら感じるのだ。

 考えられるシナリオを羅列してみる。

 ゞ眄飢源瓩亙特罎寮裁強化や包囲網に対し怒りにかられ、ミサイルの発射命令を下した。金正恩氏の負けず嫌いの性格が危険なミサイル発射となった(金正恩の性格論)。

 ⇔拗顱γ羚颪僚近平国家主席の面子つぶし。トランプ米大統領から北への圧力強化を要請された習主席が対北制裁の強化に乗り出してきたことに対し、「中国はわが国を管理できない」といった金正恩氏の必死の抵抗(習近平主席の面子つぶし論)。

 M莊遑稿に大統領選を控えている韓国国民に向けて、北が大国・米中の圧力に抵抗している姿を見せつけ、韓国民が失ってきた民族のアイデンティティを喚起させ、北側との連帯感をアピールする(民族アイデンティテイ論)

 な胴颪箸寮鐐茲貌った(戦争論)。

 上記の4つのシナリオでは、い寮鐐莽世枠鷂充妥だ。成功するか分からない弾頭ミサイルを数発発射したぐらいで、超大国米軍との戦いで勝利できると考えるほど正恩氏はお人よしではないだろう。△寮格論は完全には排除できない。指導者の性格が契機となって紛争が激化することがあるからだ。しかし、対米戦争開始は即北朝鮮の終わりを意味する。少々、根拠の弱いシナリオだ。

 問題は△鉢だ。金正恩氏はひょっとしたら△鉢を同時に狙っているのではないか。トランプ大統領と首脳会談した後、習近平主席は中国経済の発展を最優先し、トランプ氏の意向に乗って対北制裁に乗り出してきた兆候が見られるからだ。ただし、中国共産党内には習近平主席の政策を批判する親北派がいるから、習近平主席がどこまで対北制裁を貫徹できるか不透明だ。明確な点は、トランプ氏から「対北制裁を強化している」と称賛された習近平主席の面子をつぶすために、成功する保証のない弾道ミサイルを一発発射させた。

 そしてだ。韓国はいよいよ大統領選の終盤に入った。同時に、朝鮮半島は緊迫している。その時、国際社会からの圧力にもかかわらず、北は弾道ミサイルを発射した。この場合、ミサイルが成功するかどうかよりも、米中の圧力にも拘わらず、それに抵抗する姿を韓国民に見せつけることができれば十分だ。
 もちろん、多くの韓国民は北のミサイル発射を批判するだろうが、少なくない国民は同民族の北が大国の圧力に必死に抵抗している姿をみて、計り知れない屈辱感を味わっている。換言すれば、「民族の誇りを北側は必死に守ろうとしているが、われわれは米軍の傘下に入って安楽な生活をしている」といった思いだ。
 親北派の大統領候補者はその国民の複雑な心情が分かるから、彼らの口からは「北を軍事力で崩壊させよ」といった強硬論は決して飛び出さない。

 もちろん、北の狙いは4つのシナリオ以外にも考えられる。戦争勃発の危機が高まっているこの時、金正恩氏が未完成の弾道ミサイルの発射に何を託しているのか、朝鮮半島の紛争の源泉を知るうえで重要なテーマだろう。

法王の空の足「アリタリア航空」破産?

 ローマ法王フランシスコは28日、実質27時間のエジプト訪問中だ。ここで同法王のカイロでの超教派活動を紹介するつもりはない。カイロ発から詳細な情報が流れてくるだろうからだ。今回、フランシスコ法王が近い将来、外遊できなくなるかもしれないという話を紹介する。80歳を迎えた南米出身のローマ法王の健康問題が表面化したからではない。バチカンが1964年以来、ローマ法王の空の足として利用してきた「アリタリア航空」がひょっとしたら破産してしまうかもしれないのだ。

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▲ローマ教皇搭乗機に敬礼するアメリカ軍兵士(White House photoより)

 バチカン放送は25日、ローマ法王のカイロ訪問に関連した記事で、「“法王の航空”が破産寸前」というタイトルの記事を発信した。それによると、1万2000人の社員を抱えるアリタリア航空会社の3分の2の社員が24日、会社再建案を拒否したというのだ。
 その案が受け入れられない場合、同航空の大手株主はもはや投資しないという。同国のパオロ・ジェンティローニ首相も「救援策を受け入れない限り、他の選択肢は破産しかない」とはっきりと航空会社に警告を発していた。同航空会社労組は「再建案の拒否は自殺行為だ」と憂慮しているほどだ。

 再建案はイタリア政府、航空会社労組、そして会社取締会が共同提案したもので、その主要ポイントは、賃金の平均8%カットと1600人の社員削減だ。「アリタリア航空」の2大株主、49%を出資しているアブダビの「エティハド航空」とイタリアの大手銀行「ウニクレディト 」は「同再建案を全社員が受理しない限り、20億ユーロの財政支援は出来ない」と既に表明してきた。
 欧州航空会社関係者は「1600人の社員の解雇阻止のために1万2000人の社員の職場を失うことは尋常でない」と、アリタリア航空の今回の決定に首を傾げている。

 ローマ南西部の国際空港フィウミチーノ空港(通称・レオナルド・ダ・ヴィンチ国際空港)をハブ空港とするアリタリア航空は過去何度も経営不振に陥ったことがある。一時、エールフランス‐KLMの買収案も出たことがあった。

 アリタリア航空は今日、86の都市に就航している。そしてローマ法王パウロ6世 (任期1963〜78年)が1964年、同航空を初めて利用して以来、53年間、ローマ法王の外遊を担当する“法王の航空”と呼ばれてきた。

 少し、話が飛ぶが、欧州連合(EU)加盟国で3番の経済国イタリアの国民経済は目下、かなり重症だ。「アリタリア航空」の経営危機はその一部に過ぎない。隣国オーストリアの代表紙プレッセは26日の1面トップで「イタリアの重症の原因は何か」というタイトルの記事を掲載していた。同紙は「イタリアの政治文化を刷新するために昨年12月、憲法改正を問う国民投票が実施されたが、国民は拒否した。アリタリア航空の現状はイタリア経済の惨めな状況の典型的な例だ」という。

 具体的には、イタリア経済はここにきて1%前後の経済成長を記録したが、OECD(経済協力開発機構)の報告書によれば、「危機が表面化して以来、国内総生産(GDP)は10%落ち、現在の国民経済は1997年の水準だ。その主因は恒常的な脆弱な生産性にある。行政システムが障害となり、規制が多く、斬新なイノベーションが生まれてこない。イタリアは久しく通貨リラ(2002年まで同国通貨)の切り下げを繰り返すことで均衡を保ち、それに慣れてしまった」という。競争力の欠如は失業者を増加させ、若者の失業率はほぼ40%だ。

 イタリアでは、労働組合がストを繰り返す一方、上院が改革案を阻止するケースが少なくなかった。そこで上院の権限を大幅に縮小する憲法改正を問う国民投票が昨年12月4日実施されたが、反対派が勝利。レンツィ首相(当時)が翌日、辞意を表明した経緯がある。

 「イタリア人はとことんまで行かないと改革しない。しかし、その段階になれば、考えられないほどラジカルな改革に乗り出す」(プレッセ紙)という。その時まで、「アリタリア航空」が存在しているか、誰も自信をもって答えることができない。

ロシアの「宗教の自由」蹂躙を憂う

 ロシア最高裁は4月20日、キリスト教系宗教団体「エホバの証人」を過激派団体と認定し、その活動禁止の決定を下した。ロシア当局の今回の決定に対し、国際人権活動グループからは「モルモン教や他の新興プロテスタント系教会に対しても同様の処置を取るだろう」という懸念の声が聞かれる。

 ロシア側の今回の処置は、2016年7月に発効されたヤロヴァヤ法(Yarovaya-Law)に基づく。一般的には「反テロ法」と呼ばれ、国民の会話や携帯電話などを当局がテロ対策という名目で盗聴できる法律だ。発起人となった統一ロシア党のイリナ・ヤロヴァヤ 氏の名前にちなみ、ヤロヴァヤ法と呼ばれる。同法は昨年6月7日、 プーチン大統領の署名を受け、同年7月から施行された。

 ロシア最高裁は今回、「エホバの証人」を公共の秩序の脅威であり、家庭を破壊する過激なグループと規定した司法省の要請を承認したかたちだ。それを受け、「エホバの証人」本部とその395カ所の地方支部は閉鎖され、所有財産は押収される。当局の禁止処置を無視して活動を継続した場合、罰金刑に処され、最悪の場合、最高10年の刑罰を受ける。「エホバの証人」は世界に約800万人の信者を有する。

 ロシア司法省は2007年以来、「エホバの証人」関連文書の公開を禁止している。その理由は、「エホバの証人」が自身の教えこそ唯一であり、その聖書解釈こそ正しいと主張しているからだという。サンクトペテルブルクにある「エホバの証人」本部が今年2月、家宅捜査を受けたばかりだ。

 蛇足だが説明すると、どの宗教団体も自身の教義や教えを最高と信じている。「自分の教えは2番目にいい」と考えている信者はいないだろう。自身の教え、聖書解釈が唯一、正しい、と主張しているのは「エホバの証人」だけではない。世界最大のキリスト教会、ローマ・カトリック教会もしかりだ。その意味で、ロシア司法省の見解は弁明に過ぎない。

 国際人権擁護グループ「人権ウォッチ」は21日、ロシア最高裁の決定を批判、「今回の決定は宗教・結社の自由尊重への著しい違犯だ。ロシア国内のエホバの証人10万人以上の信者の宗教活動を阻害させる」と指摘。「エホバの証人」側はロシアの決定を欧州人権裁判所に訴える意向を表明している。

 ロシアでは2015年、特定の宗教団体に対し、外国からの送金の公開を義務づける法を施行している。団体は毎年、会計報告の提出を求められ、指導者メンバーに関する情報公開も求められるという。それを破った場合、刑罰に処される。


 一方、プーチン大統領の加護を受けるロシア正教会は政府の対応を歓迎している。なぜならば、ロシア正教は外国からの経済支援を受けていないから恐れることはないからだ。他の宗教団体、例えば、イスラム教系やユダヤ教系は部分的に外国からの支援を受けている。

 ロシアではここ数年、治安当局が外国にその本部を置く非政府機関(NGO)を“外国のスパイ”として徹底的に監視してきたが、その対象が宗教団体にまで拡大されてきたわけだ。欧米社会では、「結社の自由」、「宗教の自由」の蹂躙として批判の声が出ている。

「非常事態宣言」下の投票の行方

 フランス大統領選挙と大統領制導入を明記する憲法改正を問うトルコの国民投票の類似点は何か、とクイズマスターから問われたら、あなたはどう答えるか。両者とも有権者が投票する点は似ている。投票権(選挙権)は民主主義の基本だ。

 それだけだろうか。両者とも「非常事態宣言」下で実施された選挙であり、投票だったことだ。興味深い点は、フランスでは「非常事態宣言」下の大統領選に疑問を呈する声は少ない一方、トルコの場合、野党側が「非常事態宣言下で国民の真意を問う国民投票は合法性に欠ける」といった批判の声が出ていることだ。

 「非常事態宣言」とは、国家が異常な危機に直面した場合、「国家等の運営の危機に対し緊急事態の ための特別法を発動すること」だ。

 先ず、フランスの場合、2015年11月13日、パリのバタクラン劇場など数カ所で同時多発テロが発生し、死者130人、負傷者300人以上を出した。オランド大統領はその直後、「非常事態宣言」を発令した。その後、同宣言の期限は延長を重ね、今年7月15日まで施行される。イスラム過激派テロ事件の発生が同宣言発令の契機だった。重要な点だが、フランス国民から同宣言発令に反対の声やその延長に強い批判は余り聞かれないことだ。そして23日の大統領選の投票日、約5万7000人の警察官、兵士が監視する中、フランス国民は投票場に足を向けた。

 一方、トルコの場合だ。同国で昨年7月、軍の一部勢力によるクーデター事件が発生したが、失敗に終わった。危機を乗り越えたエルドアン大統領は警察力で強権を駆使し、根本主義的なイスラム教国の建設に乗り出してきた。
 エルドアン大統領は「クーデターの主体勢力は米国亡命中のイスラム指導者ギュレン師だ」と名指しで批判し、米政府に同師の引き渡しを要求する一方、即「非常事態宣言」を発令し、クーデター事件に関与した軍人らを拘束し、公務員を停職処分、教育関係者や報道関係者を粛清していった。
 トルコ政府は4月18日、非常事態宣言の3カ月間延長を決めたばかりだ。「非常事態宣言」の発令については野党関係者や国民から強い反対の声が出ている。
 
 フランスの場合、非常事態宣言下で大統領選挙が実施されたことは同国初めての事態だった。一方、トルコの場合、非常事態宣言下でエルドアン大統領が強権を施行し、野党側の集会やデモを取締り、反政府活動家を拘束するなどを実施したため、公正な選挙活動は難しい状況下にあった。実際、 欧州評議会の選挙監視団は今月18日、「最大250万票が不正に操作された可能性がある」と指摘している。

 イスラム過激派テロに対応するために「非常事態宣言」を発したフランス(外的要因)、そしてクーデター未遂事件後の治安確保のために「非常事態宣言」を出したトルコ(内的要因)の状況は、5月9日に大統領選の投票を控えた韓国にとって他人事ではないはずだ。

 朝鮮半島の状況は「非常事態宣言」発布前夜の様相を深めている。北朝鮮は弾道ミサイルを発射し、韓国大統領選への干渉(外的要因)も行っている一方、韓国国内は現職大統領の罷免問題(内的要因)などに直面し、混乱している。すなわち、韓国は既に「非常事態宣言」発布状況下にあるわけだ。
 当方が懸念するのは、韓国社会が内外共に危機下にあることを国民は肌で感じているだろうか、という点だ。韓国国民には冷静になって今後5年間を委ねる次期大統領を選出してほしい。

「マクロン氏の勝利」は本当に確か?

 23日に投開票された仏大統領選挙で無党派のエマニュエル・マクロン前経済相(39)が得票率23.8%を獲得して第1位に、それを追って極右派政党「国民戦線」のマリーヌ・ルペン党首(48)が21.5%を得て第2位に入った。この結果、5月7日の決選投票は両者の間で争われることになった。

 投票結果が明らかになった直後、第1回投票で第3位(19・9%)に終わり、決選投票に進出できなかった中道右派「共和党」のフランソワ・フィヨン元首相(63)は「極右候補者の当選を阻止するために他の選択肢はない」として決選投票ではマクロン氏を支持すると表明。同じように、社会党のアマン元厚生相(6・4%)もマクロン氏を支援するように党員に呼びかけた。

 予想されたことだが、極右大統領の誕生を阻止するために“反ルペン網”が作られてきたことから、マクロン氏の決選投票の勝利は確実と受け取られている。
 それに対し、独週刊誌シュピーゲル電子版は「マクロン氏の勝利は間違いない、本当に?」という見出しの記事を掲載し、決選投票でサプライスが起きる可能性はまだ完全に排除できないと指摘しているのだ。

 そこでシュピーゲル誌の警告の根拠を紹介する。

 ルペン氏の父親ジャン=マリー・ルペン氏は2002年、再選を狙ったジャック・シラク大統領と決選投票で争ったが、他の政党が“反ルペン”で結束。シラク氏は得票率約82%を獲得してルペン氏に圧勝した。反ルペン網が構築されれば、ルペン氏にはチャンスがないわけだ。

 しかし、「娘のルペン氏は『国民戦線』の政策から過激な主張を排除し、一般国民にも受け入れやすいように努力してきた。マリーヌ・ルペン氏の勝利のチャンスは父親より高い」とシュピーゲル誌は予想している。父親のルペン氏は当時、「ナチス・ドイツ軍がユダヤ人を虐殺に使ったガス室は存在しなかった」などと発言し、顰蹙をかったことがあった。

 Ipsos-Erhebung の世論調査によると、マクロン氏とルペン氏の対決では、マクロン氏が62%、ルペン氏は38%と予想し、マクロン氏の勝利は間違いないという。

 米大統領選での世論調査ではトランプ氏とクリントン氏の差は数パーセントだった。英国の欧州連合(EU)離脱を問う国民投票の場合もプロ・コントラの差はわずかだった。マクロン氏の場合は対抗候補者に20%以上の差を付けているから、「もはやサプライズはない。マクロン氏の勝利は間違いない」という予測となるわけだ。

 シュピーゲル誌は「不安要因は第1回投票で得票率19・6%を取って健闘した極左派『左翼党』のジャンリュック・メランション氏が決選投票で誰を支持するか発表していないことだ」と指摘する。

 極右派のルペン氏と極左派のメランション氏では政治信条、路線は全く異なっているが、「両者は案外近い」というのだ。両者は既成政党を激しく批判し、既成の社会体制の刷新を主張している。その上、EUの離脱をも辞さない反EU姿勢を明らかにしている。すなわち、両者は近いわけだ。だから、メランション氏を支援した有権者がルペン氏支持に回る可能性が十分考えられるという。「中道右派のフィヨン元首相を支持した有権者の約30%は決選投票でルペン氏を応援するだろう」という予想も出ている。その上、第1回投票でマクロン氏を支援した有権者が「マクロン氏の勝利確実」と考えて投票場に行かないケースも考えられる。

 5月3日、マクロン氏とルペン氏の最後のTV討論会が予定されている、有権者は両者が政治信条で全く異なっていることを知る機会となる。すなわち、リベラル派と右派の対決だ。マクロン氏は既成の政治システム、社会体制の刷新を訴え、“フランスのオバマ”と呼ばれているが、同氏は銀行家であり、特権エリート階級出身者だ。「彼は下層階級の国民の苦悩を理解できないだろう」という声すら聞かれる。

 昨年11月の米大統領選で大方の予想を裏切ってトランプ氏がクリントン女史を破り当選した時、当方はこのコラム欄で「クリントン氏が女性初の米大統領という栄光を勝ち取れなかったのは、米国社会に“ジェンダーの壁”があったからではない。“階級の壁”があったからだ。クリントン氏に代表される一部特権エリート社会に対する大多数の国民の無言の抵抗だ」と書いた。絶対的な有利な立場にあるマクロン氏が決選投票で敗北するようなことがあれば、同じことがいえるかもしれない。

 決選投票まで2週間余りある。この期間に想定外の出来事(テロ事件)が起きた場合、決選投票の行方に影響を与えるだろう。独シュピーゲル誌の「マクロン氏の勝利は確実か」という問いかけは頷けるわけだ。

“バチリークス”をTVドラマ化へ

 バチカン放送(独語版)が21日報じたところによると、イタリアの映画制作会社がこのほどバチカン法王庁内の機密文書を暴露したイタリア人ジャーナリスト、ジャンルイジ・ヌッツィ氏(Gianluigi Nuzzi)の本のTV映画化の権利を獲得したという。制作会社によると、ヌッツィ氏はバチカンの機密流出事件(通称 Vatileaks、バチリークス)のTV番組制作のため米国の脚本家と既に準備に入っているという。

 世界に12億人以上の信者を有するローマ・カトリック教会の総本山バチカン法王庁で機密情報が外部に流れるという不祥事が過去、報道されただけで2回発生している。

 〜伊_Δ戰優妊クト16世在位中の2012年、機密文書の流出事件が生じた。当時、法王の執事をしていたパオロ・ガブリエレ被告(当時46)がべネディクト16世の執務室や法王の私設秘書、ゲオルグ・ゲンスヴァイン氏の部屋から法王宛の個人書簡や内部文書などを盗み出し、イタリアの暴露ジャーナリストのヌッツィ氏に流した事件だ。
 ガブリエレ被告は2012年10月6日、窃盗罪として禁固1年半の有罪判決を受けたが、べネディクト16世は判決後、ガブリエレ氏に恩赦を与えた。

 ▲丱船ン法王庁の司法当局は2015年11月2日、バチカン関係者の2人を機密文書を盗み、漏えいした容疑で逮捕したと発表した。一人はスペイン教会神父のルシオ・アンヘル・バジェホ・バルダ神父(54)だ。もう1人はイタリア・モロッコ出身のソーシャル・メディア専門家のフランチェスカ・シャウキ女史(33)だ。2人は解散されたバチカン経済部門機構改革委員会(COSEA)に従事していた。バルダ神父は法王庁諸行政部門およびその財務を管理する「聖座財務部」の次長で、カトリック教会の根本主義グループ「オプス・デイ」(神の業)と繋がりがあった。同神父は有罪判決を受けたが、フランシスコ法王に恩赦を受けている。
 イタリアのメディアによると、バルダ神父が流した情報には、タルチジオ・ベルトーネ枢機卿(前国務長官)の腐敗(巨額な住居費など)、宗教事業協会(バチカン銀行、IOR)の疑惑口座、バチカンが運営する小児病院「バンビーノ・ジェズ」の不正運営などが含まれているという。

 バチカンは昔から“秘密の宝庫”と呼ばれてきたが、その宝庫に近づき、宝を手に入れようとする人が絶えない。バチカンは必死に機密を守るために腐心してきた。南米出身のローマ法王フランシスコが登場し、バチカン機構の刷新に乗り出して以来、その宝物を守ろうとする一部の高官(枢機卿を含む)と改革派聖職者の間で情報戦が激化してきている。バチカンでは今後、“第3、第4のバチリークス”が生じたとしても不思議ではない。

 ちなみに、イエスの生涯の謎を描いたダン・ブラウンの小説の映画化「ダ・ヴィンチ・コード」(2006年)は大きな話題を呼んだ。最近では、ボストンのローマ・カトリック教会聖職者による未成年者性的虐待の実態を暴露した米紙ボストン・グローブの取材実話を描いた映画「スポットライト」(トム・マッカーシー監督)は2016年第88回アカデミー賞作品賞、脚本賞を受賞した。バチカン内部の機密や赤裸々な人間関係を扱った映画やTV番組は成功するといわれている。人は秘密が好きだ。バチリークをテーマとしたTV番組制作に期待したい。

仏大統領選で2大政党は敗北

 フランス大統領選挙の投開票が23日、実施され、無所属のエマニュエル・マクロン前経済相(39)が約23・7%の得票を獲得し第1位、それを追って極右派政党「国民戦線」のマリーヌ・ルペン党首が約21・9%で第2位に入った。この結果、5月7日の決選投票ではマクロン氏とルペン氏の戦いとなった。
 一方、中道右派「共和党」のフランソワ・フィヨン元首相(63)は19・7%、急進左派「左翼党」のジャンリュック・メランション氏(65)は約19・2%に留まり、決選投票進出を逃した。オランド現大統領の出身政党・社会党が推すブノワ・アモン元厚相は得票率6・2%と2桁を割り、歴史的敗北を喫した。投票率(暫定)は約77%と2012年(79・5%)よりわずか下がった。

 11人の候補者が出馬した大統領選の主要争点は、、欧州連合(EU)の離脱の是非、難民・移民対策、テロ対策、それに国民経済の立て直しの4点だった。経済的に停滞しているといっても、フランスはフランスだ。政治・外交分野では依然、ドイツと肩を並べて発言できる数少ない国だ。その大統領選は、9月24日に実施されるドイツ連邦議会選と共に、欧州の未来を決める今年の重要な政治イベントとして注目されてきた。

 第1回投票の結果は大方の予想通り、親EUのマクロン氏と反EUのルペン党首が決選投票に進出したが、決選投票ではマクロン氏が圧倒的に有利と見られている。なぜならば、他の候補者、政党、支持者が反ルペンで結束することが予想されるからだ。そのため、マクロン氏は現時点で次期大統領に最も近い。

 ちなみに、欧州政界が恐れてきたシナリオは、極右派のルペン氏と極左派のメランション氏が決選投票に進出した場合だった。両者はEUの離脱を主張してきただけに、ブリュッセルにとって最悪のシナリオは回避されたわけだ。

 ところで、欧州の政情は、―祥茲隆成政党が腐敗や汚職、無策で有権者の信頼を失い、厳しい批判にさらされている、難民・移民の欧州殺到を受け、大衆迎合派指導者が国民の支持を拡大。ただし、ポピュリズム政党は選挙の度に得票率を伸ばすが、政権交代や大統領選の勝利といった大飛躍はこれまで阻止されてきた。オーストリア大統領選やオランダ下院選挙(3月15日)の結果はそのことを裏付けている、1儿颪裡釘嬶ッΨ萃蠅鮗け、EU加盟国内の結束が揺れていることだ。

 ,鮗他擇垢襪茲Δ法▲侫薀鵐垢任禄祥茲梁臉党、共和党の候補者フィヨン元首相と社会党の候補者アモン元厚相は決選投票に進出できなかった。両候補者の得票数は合わせても有権者(約4700万人)の約4分の1に過ぎない。有権者の既成政党離れが急速に進んでいるわけだ。

 オーストリア大統領選(昨年4月)でも同じだった。戦後から今日まで社会民主党と国民党の2大政党が政権を主導してきたが、大統領選では両党が擁立した大統領候補者がいずれも第1回投票で敗北し、決選投票に進出できなかった。
 大統領選の決選投票は昨年12月、野党の極右派政党「自由党」と「緑の党」の候補者の間で行われ、アレキサンダー・バン・デア・ベレン氏が極右政党「自由党」の候補者ノルベルト・ホーファー氏を破り当選した。決選投票では、「極右派候補者を大統領にしてはならない」として反自由党網が作られた。同じ展開がフランスでも濃厚だ。

  なお、投票日の3日前(20日)、パリのシャンゼリゼ通りで警官3人が死傷する銃撃テロが起きた。そのショックが大統領選に影響を及ぼすのではないかと予想されていた。フランスでは23日、約5万人の警察官と7000人の兵士が全国で動員され、厳戒態勢を敷いた。非常事態宣言下で大統領選が実施されたのは同国で初めてだ。

ドルトムント「テロ事件」と株価操作

 全ての出来事から教訓をくみ取る姿勢は大切だろう。ましてやテロ事件となれば、テロ対策という観点からも発生した事件から教訓を引き出し、今後の対策に活用すべきだろう。

 ところで、独サッカーのブンデス・リーグ1部に所属する「ボルシア・ドルトムント」(Borussia Dortmund、略字表示BVB)のサッカー選手を運ぶバスを狙ったテロ事件では何を教訓とすべきだろうか。それを考えるために、事件の状況を振り返る。

 独西部ドルトムントで今月11日、欧州選手権チャンピオン・リーグ準々決勝、ドルトムント対モナコ戦が行われる予定だった。ドルトムントの選手たちを乗せたバスが宿泊ホテルを出て試合場に向かった直後、3度の爆発が発生、幸い、DFマルク・バルトラ選手と警察官が軽傷しただけで済んだ。同チームに所属する香川真司選手は無事だった

 事件発生直後、イスラム過激派によるテロを裏付ける「アラーの名で」と書いた犯行メモが見つかったが、同時に、事件現場からは過激左派と過激右派グループの仕業を示唆する犯行文も見つかった。そこで、警察当局は慎重に捜査に乗り出した。

 事件発生の翌日、イスラム過激派と接触があったイラク人とドイツ人の名前が浮上し、イラク人が逮捕されたが、事件と関係がないことが判明し、釈放された。その後、捜査は行き詰まった。犯行の背景が特定できなかったからだ。一方、BVBのサッカー選手が爆弾事件のターゲットだったことから、国民の事件への関心は高く、独メディアも連日、大きく報道した。

 そして21日、事件は急展開した。同日早朝、対テロ特殊部隊(GSG9)がバーデン=ヴュルテンベルク州のテュービンゲン市に住むSergej Wというロシア系ドイツ人(28)を逮捕した。事件は「株のオプション取引で経済的利潤を狙った犯行」(独連邦検察のフラウケ・ケーラー氏)というのだ。イスラム過激派や左・右過激派グループによる犯罪ではなかったのだ。

 独週刊誌シュピーゲル電子版(21日)によると、連邦検察局、連邦犯罪局、そしてノルトライン=ヴェストファーレン州警察が1週間前からSergej W容疑者を監視。その発端は「容疑者が爆弾でドルトムント選手を殺害、ないしは負傷させ、BVBの株を暴落させ、いわゆる株の暴落(Put Option)で巨額な金を手に入れようとしている」という金融関係者筋からの情報だ。容疑者はBVBの選手の宿泊ホテルのコンピューターからBVBの株のオプション取引をしていた。その一方、容疑者は捜査を混乱させるために意図的に3枚の犯行メモを現場に残したわけだ。

 Put Optionは一種の賭けで特定の株の暴落に賭ける。当たれば、少額のかけ金で巨額の利益が得られる。BVBの場合、最大390万ユーロを手に入れることが出来る。独連邦刑事局 (BKA)のホルガ―・ミュンヒ長官は「今回の事件は,ドイツ犯罪史でも例のない全く新しい犯罪だ」という。

 シュピーゲル誌によると、容疑者は銀行の消費者金融(8万ユーロ)を利用してBVB株のオプションを購入したという。容疑者は今年3月、BVBの宿泊ホテルに部屋を予約、その際、犯行現場が見える部屋を要求したという。犯行日、ホテルの部屋から3個の爆発物を信号を発信させ爆発させた可能性があるという。
 爆発は3回あったが、被害が少なかった背景には、第1と第3の爆発は計画通りに爆発したが、バスを破壊する肝心の2番目の爆弾がバスの上空で爆発してしまったからだという。

 BVB関係者は「犯人が逮捕され、事件が解決できたことで選手も試合に集中できる」と歓迎する一方、ノルトライン=ヴェストファーレン州のラルフ・イェーガー内相は「犯行は低劣な動機に基づくものだ」と批判している。

 人は進化する。同時に、その人間が犯す犯罪も時代と共に進化し、巧妙かつプロフェッショナル化していく。ロシア系ドイツ人のBVBバスを狙ったテロ爆発事件はそれを裏付けている。
 容疑者は仕掛けた爆弾の爆発後、BVBの宿泊ホテル内のレストランでステーキを食べながら事件後の動きをフォローしていたという。大胆で冷淡な犯罪だ。

金正恩氏に願われる「理想的負け方」

 北朝鮮最高指導者の金正恩労働党委員長はいよいよどのような“負け方”が理想的かを真剣に考えなければならない時を迎えている。金正恩氏は多分、「戦いは勝利しかないもの」と信じてきたかもしれない。「栄光の勝利者」のイメージはあっても、「理想的な敗者」の道については想像だにしてこなかったのではないか。
 30代前半の青年に勝利の道のノウハウを伝達する親がいても、「息子よ、敗北はこうあるべきだ」と諭す親は少ないだろう。ましてや宮廷社会に生まれ、外部世界から隔離された世界に生きてきた金正恩氏にとって、たとえ相手が世界超大国の米国だったとしても勝利しか脳裏に浮かばないのだろう。

 当方は「『白旗』を掲げない金正恩氏への恐怖」(2017年2月27日参考)というコラムの中で、朝鮮半島の今後の動向として、)夙説、核兵器、弾道ミサイルなどを使用した大規模な紛争ぼっ発、⊆爆説、制裁下で国民生活は急速に悪化、国としての形を失い、大量の難民が中国に流れる、7海離ーデター説、な特翔端貮隊の北指導部への襲撃等の4つのシナリオを紹介した。

 義兄・金正男氏暗殺直後であり、容認される余地が全くないだろうという判断から書かなかったシナリオがもう一つある。金ファミリーの亡命だ。これは決して唐突な話ではない。一部で既に真剣に検討されてきた選択肢だ。

 金正恩氏の父親・金総書記は金日成主席死去「3年の喪」が明けた1997年4月、同国の駐在ジュネーブの李徹大使(当時)を通じて大邸宅(当時で約4億3000万円)を購入している。西側情報機関は当時、「金正日ファミリーの亡命先」と受け取ったほどだ。また、故金日成主席と会見した世界基督教統一神霊協会(現「世界平和家庭連合」)の創設者・文鮮明師は生前、朝鮮半島の平和的再統合として金ファミリーの安全保障と亡命を提案したと聞いたことがある。
 金ファミリーの弾圧の犠牲となってきた数多くの国民にとって、金ファミリーの亡命という選択肢は受け入れがたいだろう。国際司法裁判所で人権弾圧などの蛮行を糾弾すべきだという声が必ず出てくる。ただし、朝鮮半島を再度戦場化させないためには、独裁者の亡命は必要悪かもしれない。

 さて、コラムのテーマに戻る。金正恩氏にどのような「理想的な負け方」が考えられるだろうか。戦って負けるのを絶対に良しとしない金正恩氏の性格から判断すると、戦う前に後退することが最善の道となる。

 国際社会が北に要求している点は、核実験の停止と弾道ミサイル発射の中止だ。これを受け入れる以外に金正恩氏には道がない。その上で、「敗北でも後退でもなく、戦略的選択だ」と国際社会に向かって表明すれば自身の面子は少しは保たれるだろう。金正恩氏にとって幸いなことは、同氏が30代前半の若者だという事実だ。50歳を過ぎた独裁者が「戦略的選択」といっても誰も信じない。

 いずれにしても、米国と中国が対北制裁で舞台裏で合意した兆候が濃厚な時だけに、金正恩氏に残された時間は余り多くない。一刻も早く、「核実験と弾道ミサイル発射を停止し、その国力を国民生活の向上のために投入する“戦略的選択”を下した」と宣言すべきだ。そうすれば、国際社会での金正恩氏の株は少しは上がるかもしれない。なぜならば、犠牲者を出す前に敗北を受け入れることは、圧倒的な軍事的勝利よりも難しいからだ。金正恩氏にはぜひとも「理想的な負け方」を見せてほしいものだ。

欧州に住むトルコ人のステータス

 トルコで16日、議会内閣制から大統領制へ移行する憲法改正を問う国民投票が実施され、賛成51・41%、反対48・59%の僅差で大統領制支持派が勝利した。

 エルドアン大統領の期待に反して、国民投票結果は拮抗し、トルコ社会はエルドアン支持者と反エルドアン派との二分化が深まった感がする一方、欧州居住のトルコ人の投票では、エルドアン支持派が圧倒的に勝利し、ホスト側の欧州はショックを受けている。

 ただし、トルコ国内の投票率は85・5%と、国民の国民投票に対する関心の高さを示したが、欧州居住のトルコ人の投票率は、賛成票が圧倒的に多かった半面、投票率はいずれも50%を割るなど、反エルドアン派が投票を棄権したことが明らかになった。
 
 欧州でトルコ人が最も多いドイツは、イスタンブール、イズミル、アンカラに次いで4番目に大きい選挙区といわれる。そのドイツで憲法改正を問う国民投票に賛成したトルコ人は63・1%だった。エッセン州では75%にも達した。

 ドイツに住むトルコ系住民総数は約290万人(約半分がドイツ国籍だけを有し、投票権を有するトルコ人は残りの半分程度)。16日の投票率は約46%だった。

 独紙ビルトは「トルコ人はわが国で民主主義の恩恵を享受する一方、エルドアン大統領の独裁政治を支持している」と指摘、ドイツの難民・移民の統合政策が効果を挙げていないと指摘している。

 著名なトルコ問題専門家 Haci Halil Uslucan 教授は、「ドイツのトルコ社会では最初の移民世代が依然、強い。彼らは1960、70年代にドイツに来た移民労働者でエルドアン大統領の与党『公正発展党』(AKP)支持者が多い。トルコ人のドイツ社会への統合には4世代から6世代かかるだろう」と述べているほどだ。

 ドイツでは2002年、「社会民主党」(SPD)と「同盟90/_緑の党」の連立政権下で2重国籍制が導入された。「キリスト教民主同盟」(CDU)と社民党の連立時代に入っても2重国籍制は維持されてきたが、今年9月24日の連邦議会選挙を控え、メルケル首相のCDUはここにきて2重国籍の取得資格の厳格化を目指している。

 一方、隣国・オーストリア居住のトルコ人の賛成票は73・2%でドイツを大きく上回り、欧州ではベルギーの75%に次いで2番目の賛成率だった。トルコ人の有権者総数は11万6000人。今回の国民投票の賛成票は3万8215票、反対票は1万3972票だった。投票率は50%を下回った。その理由について、野党関係者は「彼らはエルドアン大統領の独裁政治に批判的だから、投票を拒否した」という。

 オーストリアの極右派政党「自由党」のシュトラーヒェ党首は「独裁者エルドアン大統領を支持するトルコ人はトルコに帰るべきだ」と主張している。
 
 ソボトカ内相は19日、「不法な2重国籍者に対しては今後、オーストリア国籍をはく奪するだけではなく、厳格に処罰していく」と主張している。同内相が2重国籍問題をテーマとするのは、国内のトルコ系住民の多くが2重国籍を不法に有し、今回の憲法改正を問う国民投票でエルドアン大統領を支持する賛成票を投じたからだ。オーストリア代表紙プレッセ20日付1面トップの見出しは「2重国籍者に厳しい罰則を」だった。

 オーストリアでは2重国籍は基本的には認められていないが、不法に2重国籍を有する者が少なくない。政府側はこれまで2重国籍問題に対して監視が難しいという理由から野放しにしてきた経緯がある。
 ちなみに、2重国籍では例外もある。両親が別々の国籍所有者のケースやスポーツ選手や芸術家の場合、本人の希望があり、オーストリア側に利点があると判断された場合、2重国籍が認められてきた。例えば、ソプラノ歌手のアンナ・ネトレプコさんはロシアとオーストリアの2重国籍者だ。

 なお、「社会民主党」と中道右派の「国民党」の現連立政権では、社民党が2重国籍者への対応では厳格な対応に難色を示す一方、独CDUの姉妹政党「国民党」は野党の自由党路線に近く、厳格な対応、必要ならばオーストリア国籍はく奪を支持している、といった具合で連立政権内で意見が分かれている。
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