ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

2017年05月

偽装難民の中国人売春婦が増加

 音楽の都ウィ―ンで中国人売春婦が増加してきた。難民を装って欧州入りした後、難民資格の審査期間、売春をして金を稼ぐ。その背後には、中国人女性を甘い言葉で欧州に呼び寄せる人身斡旋業者が暗躍している。オーストリア日刊紙クリアが29日付で大きく報道した。

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▲ウィーンで難民装った中国人売春婦増加を報じる「クリア紙」電子版

 オーストリア内務省によると、3年前までは“セクシーアジアガール”、“アジア・マッサージ・スタジオ”などの看板を掲げて客を呼ぶ中国系売春宿(Bordelle)は2件に過ぎず、そこで働く中国人売春婦は約30人だったが、その数は今日、75件に急増、中国人売春婦の数も約500人に膨れ上がっている。彼女らは30ユーロから50ユーロで売春に応じるので、地元の同業他社の経営を圧迫しているという。ウィーン市の売春市場は中国人女性で占拠されてきたというわけだ。

 中国人女性はオーストリア入りすると、斡旋業者から直ぐに難民申請を強要される。申請後は3カ月間、オーストリア政府から難民手当が支給されるからだ。その支給金は業者に中国から欧州までの旅費として押収される。そして難民資格審査期間、仕事に従事できるから、中国系マッサージスタジオなどで売春婦として働く。

 難民審査は通常、1年から2年かかるため、その間、売春婦として働き続ける。難民資格が却下された場合でもオーストリア側から補助支援を受けることができるケースが少なくない。ちなみに、中国人難民申請の場合、難民資格の認知率は4人に1人だ。

 クリア紙は、「難民申請の法的手続きを利用した手口だ。オーストリア国民の税金が中国人売春婦への手当金として利用されていることになる」と指摘する。その事実が大きく報道されたならば、国民の反発が予想されることもあって、警察側も中国人売春問題については担当官に「報道関係者の質問に答えるな」と、かん口令を敷いているといわれるほどだ。

 オーストリア警察は昨年、中国系売春宿を一斉捜査し、約150人の中国女性を保護したが、彼らは口を閉じるケースがほとんどだ。中国人女性にとって、人身斡旋業者に管理されているとはいえ、手に入る金は本国中国の時より数段多いから、口を割ることはないという。

 クリア紙によると、オーストリア側の要請を受け、6人の捜査官が中国からウィ―ンに派遣された。彼らは2週間、オーストリア側の捜査に協力し、人身斡旋業者の犠牲者11人を解放したという。中国側の説明によれば、「中国では人身売買は最低でも5年の刑罰で、終身刑に処されるケースもある」という。

メルケル独首相の「欧州独立宣言」

 トランプ米大統領はサウジアラビア、イスラエル、パレスチナ自治区とバチカン市国を訪問後、25日にブリュッセルに飛び、北大西洋条約機構(NATO)首脳会談に参加した後、26日から27日にかけイタリア・シチリア島のタオルミーナで開催された先進7カ国首脳会談(G7サミット)に初デビューした。事前に予想されたことだが、保護貿易、気候変動問題、難民対策などで他の参加国との間で不協和音が目立った。

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▲タオルミーナG7サミット会談(ドイツ連邦首相府公式サイトから)

 欧州連合(EU)の盟主ドイツのメルケル首相は28日、ミュンヘンで開催された「キリスト教社会同盟」(CSU)の集会で演説し、「米国は欧州の信頼できるパートナーではなくなった」と述べ、トランプ米政権に強い不満を表明した。それだけではない。他の欧州諸国に向かって、「われわれは自立していかなければならない」と欧州の米国離れとも受け取られる発言をしている。

 メルケル首相の真意を理解するために演説原文(独語)の一部を紹介する。欧州の米国からの「独立宣言」といえる内容だ。

 Die Zeiten, in denen wir uns auf andere vollig verlassen konnten, die sind ein Stuck vorbei. Das habe ich in den letzten Tagen erlebt. Wir EUropaer mussen unser Schicksal wirklich in die eigene Hand nehmen.

(相手(米国)を完全に頼ることができた時代は過ぎた。そのことをここ数日(サミット会議)、私は体験した。私たち欧州人は自身の運命を自身の手で切り開いていかなければならない)

 タオルミーナG7サミット会議での大きな課題は、ゝじ変動に対応する国際枠組み「パリ協定」の米国の離脱問題、◆畔胴饌莪譟匹鯢顧屬掘∧欷酲念廚坊垢米国に対し、反保護貿易をサミット会談で宣言することだった。
 前者は米国が次週中に最終決定を下すことになったが、米国の「パリ協定」離脱の可能性は高い。保護貿易問題では貿易の自由を推進する反保護貿易で一致し、首脳宣言では「保護主義と闘うことを確認」と明記された。トランプ大統領が譲歩したかたちだ。

 米国と他の主要参加国との間の対立点は解決したわけではない。トランプ大統領の強硬姿勢に直面した他の参加国は、「米国との関係がこれまでのようにはいかなくなった」という印象を強く受けたはずだ。それがメルケル首相の「欧州独立宣言」となったわけだ。

 例えば、サミットのホスト国イタリアにとって北アフリカからの難民問題は急務だった。それだけに、G7サミット参加国から連帯を期待していたが、対メキシコ国境沿いに壁建設を主張するトランプ大統領の賛同を得ることはできず、首脳宣言では「移民の人権尊重」と共に、「主権国家の国境管理の権利」が強調された。

 欧州は“米国第一”のトランプ政権の出現だけではなく、英国のEU離脱が差し迫ってきた。G7サミット会議12回参加の記録を有するメルケル首相は今回、時代の大きな変動を肌で感じただろう。メルケル首相は今後、エマニュエル・マクロン新大統領を迎えたフランスとの結束強化を進めていく意向という。

 ちなみに、トランプ米大統領は25日にベルギーでEUのトゥスク大統領らと会談の中で、ドイツの対米貿易の過大な黒字問題を指摘し、「ドイツを厳しく批判した」という。
 トランプ氏はメルケル首相の難民歓迎政策に対しても厳しく批判してきた経緯がある。トランプ氏は米紙とのインタビューでメルケル首相の難民政策を「カタストロフィーだ。難民がどこから来たのか誰も知らないのだ」と酷評している。
 ドイツとしてはトランプ大統領との関係改善が急務となる。メルケル首相にとって、ウクライナのクリミア半島のロシア編入問題でロシアと対立を抱えている現時点では米国との連携は不可欠だからだ。

 なお、G7サミット会議参加6回目の安倍晋三首相は北朝鮮の核・ミサイル問題について、「新たな段階の脅威になった」という文面を首脳宣言の中に明記させたことでポイントを稼いだ。

「強い指導者」待望論と「メシア」降臨

 時代が閉塞感に包まれ、停滞し出すと、それを打ち破り、新しい時代を切り開く人物の出現を求め出すものだ。それは政治、経済、社会、文化、宗教など各分野でみられる。

 ユダヤ教から派生した宗教では人類を導く人物を救世主「メシア」と称する。バチカン放送は27日、独シュトゥットガルトに本部を置く「カトリック聖書協会」の発行雑誌「Welt und Umwelt der Bibel」最新号で「メシア、救世主の夢」という見出しの記事を紹介している(「メシア」はヘブライ語で、古典ギリシャ語では「キリスト」と訳語される。いずれも「油を注がれた者、救世主」を意味する)。

 2000年前、ナザレのイエスは「イエス・キリスト」と呼ばれる。ヨセフとマリアの間で生まれたイエスの33年間の生涯は新約聖書を読めば分かる。民族の救い主、「メシア」を待望してきたユダヤ人が降臨したイエスを迎え入れることが出来なかった主因は、「メシア」という概念がユダヤ人とイエスの間でズレがあったからだといわれる。多くのユダヤ人にとって「メシア」は民族解放者、ユダヤの「王」を意味したが、イエスは人類の救い主として降臨した。そのため、多くのユダヤ人の目にはイエスは「律法を破壊する危険な人物」として受け取られたわけだ。

 ユダヤ人社会では世界に散らばった“選民”ユダヤ人が再び国を建設する時、時が満ちたことを意味すると信じられてきた。すなわち、「救い主(メシア)が降臨する日」が近いというわけだ。ただし、「メシアの初臨」を意味する。ユダヤ人にとって2000年前のイエスはメシアではなく、「預言者」だった。同国では、メシア降臨運動が今でも活発だ(「イスラエル建国とメシア降臨」2008年5月11日参考)。

 「メシア待望」はユダヤ教とキリスト教だけの専売特許ではない。アブラハムから派生したもう一つの唯一神教、イスラム教でもマフディーと呼ばれる第12代のイマーム(救世主)、ムハンマド・ムンタザルが人類の終末の時、再臨すると信じられている(シーア派分派の中やスンニ派はムハンマド・ムンタザルをマフディーと信じていない)。

 ムハンマド・ムンタザルは西暦869年7月29日、サマラ(イラク北部)で生まれた。彼は第12代イマームでマフディー“隠れイマーム”だった。父親ハサン・アスカリーと母親ナルジスの間で生まれた。ムハンマドの誕生は当時のアッバース朝カリフ・ムウタミドの迫害を避けるために公表されなかったという。ヨセフとマリアがヘロデ大王の迫害を逃れてエジプトに逃げたストーリーに少し似ている。

 カトリック雑誌によると、人類の歴史で女性が「メシア」を表明し、出現したことがない。ローマ・カトリック教会では13世紀以来、女性法王ヨハンナ(Johanna)の話が伝説として流布してきた。時代は9世紀初期、神父の家に生まれたヨハンナは女性であるという理由から教育を受けることも許されない環境下で生きるが、その優秀な能力が認められ、男性修道院の学校に入る。修道僧に変装して修道院で働きながら、多くの病人を癒す。その癒しの能力がローマに伝わり、ローマに呼ばれる。最終的には法王に選出されるという話だ。「女性法王ヨハンナ」は歴史家たちからは史実というより伝説と受け取られている。

 「死海文書」によれば、(終末の時)「聖職者的(祭司長的)メシア」と「国王的メシア」の2人のメシアが同時期に出現するという。換言すれば、宗教的な意味の「メシア」と政治的な支配者としての「メシア」だ。例えば、ローマ帝国の初代皇帝アウグストゥス(紀元前63年生まれ)は当時メシアのように受け取られていた。一方、イエスは生涯、第3者が言わない限り、自らはメシアと表明していない。ちなみに、イスラム教でも終末の時、イエスとマフディーの2人のメシアが出現すると信じられている。

 興味深い点は、仏教や儒教でも終末の時(末法の世)、救世主的存在(例・弥勒菩薩)が出現すると記述されていることだ。世界宗教には表現こそ異なるが、人類の救い主の降臨(再臨)が明記されている。そして21世紀の今日、「メシア」待望、「強い指導者」出現を求める声が出てきているわけだ。

文大統領、法王に「南北の仲介」要請

 バチカン日刊紙「オッセルバトーレ・ロマーノ」は25日、韓国の文在寅大統領がローマ法王フランシスコ宛てに書簡を送り、その中で「南北間の和解への仲介」を要請したと報じた。
 韓国カトリック教会司教会議議長のKim Hee-jong大司教(光州広域市)とSeong Youm元駐バチカン韓国大使は24日、一般謁見の場で文大統領の親書を手渡した。

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▲南北間の仲介をバチカンに要請した文在寅大統領

 バチカン放送(独語電子版)は「韓国、バチカンの仲介を希望」という見出しで文大統領の写真を掲載して大きく報道した。バチカン日刊紙は大統領書簡の内容は詳細には報じていないが、「平和と公平と和解への貢献」に関したものだったという。一方、イタリアのカトリック報道(ACI)によると、「金大司教は『文大統領はローマ法王フランシスコに南北間の仲介を願うために私をローマに派遣した』と説明した」という。

 世界に12億人以上の信者を擁するバチカン市国の外交の評価は悪くない。2014年末の米国とキューバ間の外交関係回復の背後にはバチカンの調停役があったといわれている。オバマ大統領(当時)も「米・キューバ間の和解にはバチカンの大きな貢献があった」と認めている。

 金大司教は23日、ACIとのインタビューの中で、「米・キューバ間のようなバチカンの調停外交は南北間でも可能と信じている。南北間の真摯な対話を促進できるはずだ。北朝鮮は目下、欧米諸国に対して信頼を失っている」と述べている。

 文大統領は、「南北間の軍事境界線で軍事衝突が発生する危険性は現実性を帯びてきた」と警告している。新大統領はわらをも掴む思いであらゆる可能性を模索しているのだろう。バチカン・ルートはその一つだ。ただし、バチカンも南北間の和解仲介は米・キューバのようにはいかないことを知っているはずだ。

 国際キリスト教宣教団体「オープン・ドアーズ」によれば、北朝鮮には5万人から7万人のキリスト者が同国内の30以上の強制労働収容所に拘留され、虐待されている。北全土には約40万人のキリスト者が地下活動を強いられている。同団体が公表する宗教迫害国リストでは北朝鮮は毎年、最悪国トップにランクされている。

 脱北者の金ヨンソク(Kim Yong Sook)さんによると、「聖書を持っているだけで拘束され、悪くすれば収容所に送られ、強制労働を強いられる。そこでは生きて帰ることが難しい状況だ」という。金女史が幼い時、父親が座って首を垂れている姿をよく目撃した。年をとれば皆あんな風になるのかと思っていたという。実際は、父親は祈っていたのだ。北では祈ることは許されないから、祈っていることが分からないように祈らなければならなかったと証している(「北のクリスチャンの『祈り方』」2015年9月21日参考)。

 南北間の調停は誰が演じても容易ではないが、韓国との対話が実利をもたらすと金正恩労働党委員長が判断すれは、バチカンの和解仲介に乗るかもしれない。その意味で、バチカンの南北間の和解外交は朝鮮半島の政情次第だろう。

 フランシスコ法王は2014年8月の訪韓時にソウルの明洞大聖堂で「 平和と和解のためのミサ」を執り行い、「和解は先ず、自らその過ちを認めることから始まる。猜疑、対立、競争心といったメンタリティを捨てるべきだ」と語っている。

どちらのトランプ氏が本物?

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▲第45代米大統領のドナルド・トランプ氏(米ホワイトハウス公式HPから)

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 「若いのに国を動かしている。たいしたものだ」、「適切な状況になれば、金正恩氏と直接会談する用意がある」(5月1日の米ブルームバーク通信から)
 「核兵器を振り回しでいる頭のおかしい男だ」(4月29日、フィリピンのドゥテルテ大統領との電話会談で)

 上記の発言はいずれもトランプ米大統領のものだ。北朝鮮の最高指導者、金正恩労働党委員長は果たしてどちらだろうか。それ以上に大切な点は、金正恩氏は自身に対する米大統領の人物評のどちらを信じるだろうかだ。換言すれば、前者の発言を信じて、発言した人物と対話するだろうか、それとも後者の侮辱発言に怒り、核兵器のボタンに手をかけるだろうか。ハムレットではないが、金正恩氏にとって国の命運をかけて深刻な課題だ。

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 「お会いして大変光栄です。法王は偉大だ」(5月24日、トランプ大統領とローマ法王の初会見で)
 「人の信仰に疑問を投げ掛けるのは恥ずべきこと」(昨年の米大統領選で「壁を建設する者はキリスト信者ではない」といったローマ法王への反論)

 上記の発言は世界に12億人の信者を擁するローマ法王フランシスコに対するトランプ大統領の発言だ。ペテロの後継者のフランシスコ法王は果たしてトランプ氏のどちらの人物評を好むだろうか。謙虚と寛大、慈愛を日々説くフランシスコ法王のことだ、トランプ氏の批判に対しては何も気にしていないだろう。実際、法王は「政治家の評価は何を話したかではなく、何をしたかだ」と述べているからだ。ただし、フランシスコ法王も人間だ。自分を批判した米大統領と会見することは容易ではなかったのだろう。トランプ大統領、メラニア夫人らとの記念写真の時のフランシスコ法王の表情を思い出してほしい。あんな苦々しい顔をしたフランシスコ法王をこれまで見たことがない。ローマ法王をしてもトランプ氏との会見は容易ではなかったことが推測できる。


 テーマに入る。金正恩氏は「頭のおかしい男か」、それとも「たいした若者か」は既に答えが出ているのでここでは言及しない(「金正恩氏の『パラノイア説』」2017年3月11日参考)。考えたいことはトランプ大統領が金正恩氏をどのように考えているかだ。称賛する一方、口悪くけなす。その人物評は180度異なっている。同じことがローマ法王への人物評価でもいえる。ローマ法王を批判したトランプ氏の発言はある意味で貴重だが、会見後の法王評はコロッと変わり、「法王は偉大だ」となる。

 とにかく、トランプ氏の発言は一貫性がなく、コロコロと変わる。トランプ氏に評価された人物(例・安倍晋三首相)も後日、こっぴどく酷評される不安は払しょくできない。このようにしてトランプ氏の発言は世界の指導者を悩ますことになる。大国・米国の大統領から好ましい人物と受け取られたい世界の指導者は少なくないからだ。

 そこでトランプ氏の発言はなぜ変わるかを考えてみた。,箸砲く激情的、感情的で、気分に大きく左右される(性格説)、▲肇薀鵐彁瓩実業界で学んできた戦略、自分より弱い立場の相手の心を不安に落とし、有利な条件を引き出す(トランプ流ディール説)、思ったこと、感じたことを素直に表現するお人よし、問題は表現力が少々劣るため、相手から誤解される(誤解説)、さ雎曚良戮鬚發朕擁に見られやすい相手への潜在的侮辱、軽蔑心、心因性疾患の傾向もみられる(金満家症候群説)。

 以上、4つの可能性を挙げてみた。ひょっとしたら別の分析も考えられるかもしれない。米国の少なくとも半分はトランプ氏を支持した。その結果、第45代米大統領に選出された人物だ。世界はトランプ氏の言動を批判するだけではなく、理解する努力をすべきだろう。解任されない限り、世界は4年間、トランプ氏と付き合わなければならないのだ。

 トランプ氏がある日、突然、ゴルフ仲間と思っていた安倍晋三首相を激しく批判したとする。安倍首相を含め日本国民はビックリしたり、不安に駆られる必要はない。トランプ氏は気分を害した時には、ローマ法王に対しても率直に反論する人間なのだ。日本の首相を罵倒したとしても決して驚くべきことではないのだ。

マンチェスターの「話」

 英国中部マンチェスター市には数回足を運んだことがある。リヴァプールに居住していた時、知人の誘いを受けてマンチェスター市に行ったのが初めてだった。そこでは知人と昼食を一緒にしただけだったが、フィッシュ・アンド・チップスの紙袋が路上に散らばっている湾岸都市リバプールと比較すると、マンチェスター市内はセンスのあるショーウィンドーで華やかだったことを覚えている。およそ35年前の話だ。

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 リヴァプールに住みながら、英ロックバンド「ザ・ビートルズ」関連の建物すら見学することがなかったが、マンチェスターはビートルズ後に登場した英ロック界のヒーロー、「オアシス」(1991年結成、2009年解散)の兄弟(ノエル・ギャラガーとリアム・ギャラガー)の出身地だ。アイルランド系の労働者家庭出身のギャラガー兄弟は性格も全く異なっていた。ノエルは父親によく叩かれた思い出があるという。彼の反逆精神、アンチ権威主義はマンチェスターの労働者社会で育ったところから由来しているのかもしれない。

 マンチェスターは英プレミアリーグの「マンチェスター・ユナイテット(U)」と「マンチェスター・シティ」の2チームの本拠地だが、ノエルとリアムは「マンチェスター・シティ」の大ファンだ。マンチェスターUが24日、欧州リーグ(EL)でオランダの強豪「アヤックス」を2−0で破り、チャンピオンになったというニュースを聞いた時、「オアシス」の2人兄弟の苦り切った顔を直ぐに想像したほどだ。
 
 ノエル・ギャラガーは2016年4月12日、「オアシス」が解散した後に結成したロックバンド「ハイ・フライング・バーズ」を引き連れてウィーンのガソメーター(Gasometer)でコンサートを開いた時、最後の歌を終え舞台から姿を消したが、再び舞台に戻り、「僕のチームが今夜勝ったんだ」と子供のように喜んでファンの前に出てきた時はびっくりした。彼は舞台で歌っている時も、「マンチェスター・シティ」の試合を気にしていたのだろう。ホームゲームの時はスタジオ最前列で必ずといっていいほど応援しているノエルの姿が見られる。ノエルは「マンチェスター・シティ」に就任したばかりのジョゼップ・グアルディオラ監督とインタビューしているほどだ(「『オアシス』再結成の日は来るか」2016年4月15日参考)。

 そのマンチェスターの英国最大のコンサート会場「マンチェスター・アリーナ」(2万1000人収容)で24日夜、米人気歌手のアリアナ・グランデさん(23)のコンサートが開かれたが、彼女が歌い終え、舞台から姿を消した直後、会場ロビー周辺でイスラム過激派の自爆テロが発生し、少なくとも22人が死亡、59人が負傷した、犠牲者の22人のうち、12人は16歳以下で、最年少は8歳の女の子だった。なお、英国メディアによると、「マンチェスター・シティ」のグアルディオラ監督の奥さんと娘さんがコンサート会場にいたが、無事だったという。

 当方はBBCで自爆テロ直後のコンサート会場やマンチェスター市内を見て、茫然とした。自爆テロ実行犯は1994年マンチェスター生まれのサルマン・アベディ容疑者(Salman Abedi)だった。

 ちなみに、マンチェスターやリヴァプールには、ノエルの家族のようにアイルランド出身の移民が多く住んでいる。マンチェスターでは1992年と96年、アイルランド共和軍(IRA)軍が今回の自爆テロ事件のような爆弾事件(通称 Manchester bombing)を起こしている。なお、アベディ容疑者はリビア系の移民家庭出身だ。


 昔、聴いていたピンキーとフェラスの曲「マンチェスターとリヴァプール」(1968年)の歌詞が突然、飛び出してきた。

 A city, a city that may not be so very pretty
 But to be back, a smokestack
 Can be a welcome sight to see

刑務所がイスラム過激化の温床に

マンチェスターの「コンサート会場自爆テロ」の概要

 英国中部マンチェスターのコンサート会場「マンチェスター・アリーナ」で22日午後10時半過ぎ(現地時間)、米人気歌手アリアナ・グランデさん(23)のコンサートが終わった直後、会場ロビーで自爆テロが発生、警察当局の発表によると、少なくとも22人が死去、59人が負傷した。イスラム過激派テロ組織「イスラム国」(IS)は23日、ネットを通じて犯行を声明した。

 爆発はグランデさんが最後の歌を終わり舞台から姿を消した直後に起きた。ファンたちはパニックとなり、出口に殺到。会場側は「慌てないでも大丈夫です」とアナウンスしたが、多くのファンたちは大騒ぎで混乱したという。
 「マンチェスター・アリーナ」のコンサート会場内で自爆テロが行われていたら、さらに多くの犠牲者が出ただろうという。英国では2005年7月、ロンドンで同時テロが起き、52人が死亡した。今回はそれに次いで多くの犠牲者が出た。警察当局によると、犠牲者22人のうち12人が16歳以下で、最年少は8歳の女の子だった。

 テリーザ・メイ英首相は、「テロリストは冷酷にも子供たちを狙っていた」と述べ、怒りを表明。同首相は全ての選挙活動を中止し、緊急安全会議を招集し、テロ警戒レベルを最高の「危機的」に引き上げた。マンチェスターのコンサート会場自爆テロは6月8日実施予定の総選挙(下院)にも影響を与えるのではないか、と一部で受け取られている。

 マンチェスター警察によると、自爆テロ犯は22歳のリビア系英国人で、1994年マンチェスター生まれのサルマン・アベディ容疑者(Salman Abedi)と判明した。警察側は23日、同容疑者宅を捜査した。同時に、23歳の男性が自爆テロ関連で拘束された。そして24日に入ると、他の3人の男性が拘束されている。男たちの詳細な身元は不明だ。

刑務所がイスラム過激化の温床に

 釘やボルトを混入した爆発物は明らかに可能な限り多数の犠牲者を出す狙いがあったはずだ。現時点では、単独犯とみられているが、フランス南部ニース市中心部のプロムナード・デ・ザングレの遊歩道で昨年7月に起きた「トラック乱入テロ事件」でも実行犯は一人だったが、その背後にトラック購入担当や資金集めなどネットワークが暗躍していたことが判明した。同じように、マンチェスターのコンサート会場テロ事件でもその背後に組織的なネットワークが存在していた可能性が排除できない(ニースの大型トラック乱入テロ事件では85人が犠牲となった)。

 ロンドン中心部の英議事堂近くで3月22日、テロ事件が発生し、少なくとも3人が犠牲になり、40人が負傷したばかりだ。テロリストは治安関係者が首都ロンドンに集中している時、マンチェスター市でターゲットを慎重に選んでいった。そして今回、ソフト・ターゲットの「コンサート会場」でテロを実行したわけだ。マンチェスター市は英国の都市の中でも政治的に過激主義の拠点だ。

 テロ対策といえば、すぐに警備の強化や警察官増員がテーマとなる。実際、メイ首相は、「テロの対象となる公共施設、スポーツ、コンサート会場の警備のため軍隊を動員する」と言明したばかりだ。

 看過できない点は、欧州社会では多くの若者は職場を見つけられず、不満をもち、社会に憤りを感じながら次第に過激化していく傾向がみられることだ。特に、欧州社会に統合できない移民出身の若者たちの間にその傾向が目立つ。
 
 欧米のテロ問題専門家は「ジハーディスト(聖戦主義者)は驚くほどコーランに無知だ。最近は、窃盗などで刑務所に入ったイスラム系若者がそこでリクルートされる傾向が目立つ。家族も知らないうちに短期間で過激化していくのだ」という。

 ISは昨年、欧州に居住するテロリストに対し、「シリアやイラクの聖戦に参戦する必要はない。自身の国で聖戦を続行するべきだ」と指令している。欧州のテロ対策関係者は、「イスラム過激派テロ組織の聖戦はもはやシリア、イラクではなく、欧州国内で始まっている。欧米の治安関係者はイスラム系若者の過激化防止にもっと本腰を入れるべきだ」と提言している。

トランプ氏とローマ法王の会見

 トランプ米大統領は24日、バチカンを訪問し、ローマ法王フランシスコと会見する。バチカンの情報によると、会見は一般謁見前の午前8時半の予定だ。
 ミラノ代表紙コリエーレ・デラ・セラ(21日付)によると、トランプ大統領のメラニア夫人はローマ法王に個人的な書簡を送り、「ローマ法王を謁見できることは大きな名誉です」と述べたという。夫人はスロベニア出身のカトリック信者だ。トランプ氏はプロテスタント派の長老派教会に所属。幼い時から聖書に強い関心があったという。就任式には親の代からの聖書を持参し、その上に手を置いて宣誓式に臨んでいる。

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▲駐バチカン米国大使に任命されたカリスタ・キングリッチ夫人(キングリッチ・プロダクション社の公式サイトから)

 バチカン筋によると、トランプ大統領とフランシスコ法王との会談では6つの議題が挙げられているという。^槎餌从、気候変動、I郎ぢ从、だ弧燭梁左掘↓ソゞ気亮由、Εリスト者の迫害問題だ。

 ^槎洩簑蠅任魯肇薀鵐彗臈領とフランシスコ法王と間には意見の隔たりがある。不法な移民の流入を阻止するためにメキシコ国境沿いに壁の建設を計画しているトランプ氏に対し、フランシスコ法王は「いかなる壁も建設すべきではない。壁を建設する者はキリスト者ではない」と主張してきた。気候変動問題では、ローマ法王は環境問題に関する回勅「ラウダ―ト・シ「("Laudato sii)を公表し、環境保護をアピールしてきたが、トランプ氏は環境汚染問題では懐疑派と受け取られている。

 興味深い点はΔ澄C翕戝楼茲覆匹暴擦狆数派キリスト信者たちはイスラム過激派から迫害され、1億人以上のキリスト者たちが故郷から追われて難民となっている。トランプ大統領は同問題でローマ法王と意見を交換することで、世界のキリスト者への連帯を表明する狙いがある(「キリスト者1億人以上が弾圧下に」2015年8月3日参考)。

 トランプ大統領はバチカン訪問前にサウジアラビア、イスラエル、そしてパレスチナ自治区を訪問、イスラム教、ユダヤ教の中心地を巡礼し、中東の和平実現に強い関心を示してきたばかりだ。
 ちなみに、フランシスコ法王は2014年6月8日、「信仰の祖」アブラハムから派生したユダヤ教、キリスト教、そしてイスラム教の3宗派代表をバチカン法王庁に招き、中東の和平実現のために祈祷会を開催している。ローマ・カトリック教会の最高指導者フランシスコ法王、ユダヤ教代表のイスラエルのペレス大統領(当時)、そしてイスラム教代表のパレスチナ自治政府アッバス議長の3人は、バチカン内の庭園で祈りを捧げた(「『祈り』で中東和平は実現できるか」2014年6月1日参考)。

 トランプ大統領はバチカン訪問後、25日にはブリュッセルに飛び、北大西洋条約機構(NATO)首脳会談に参加した後、26日から27日にかけイタリア・シチリア島で開催される先進7カ国首脳会談(G7サミット)に初デビューするが、「トランプ大統領はローマ法王との会見を先進7カ国首脳会談(G7)より重要視している」という。

 なお、トランプ大統領は19日、駐バチカン米大使にニュート・キングリッチ元下院議長の夫人、カリスタ・キングリッチ氏(51)を任命したばかりだ。上院の承認を受けて正式に就任する。キングリッチ夫人はカトリック信者だ。

文大統領は韓国のW・ブラント?

 独週刊誌シュピーゲル(5月13日号)は韓国の文在寅大統領(64)を旧西独時代のヴィリー・ブラント首相(任期1969〜74年)と比較する小解説記事を掲載している。タイトルは「ソウル出身のヴィリー・ブラント」だ。

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▲東方政策を推進したヴィリー・ブラント(ウィキぺディアから)

 ブラント首相は当時、独自の“東方政策”を実施し、旧東独との緊張緩和、再統一を積極的に推進した政治家で、その功績で1971年ノーベル平和賞を受賞したが、首相の最側近のギュンター・ギヨーム秘書が旧東独のスパイと発覚し、ブラント政権は崩壊に追い込まれ、その東方政策は失敗に終わった経緯がある。

 シュピーゲル誌は分断国家だった東西両ドイツと南北の相違点として、ゝ貪貔哨疋ぅ調屬派雋鐇鐐茲呂覆ったが、南北の場合、双方が多くの犠牲者を出す戦争(韓国動乱)を体験した。それ故に、南北の和解は東西のそれ以上に厳しい、南北の分断は東西分断以上に長く、ほぼ半世紀に及ぶから、東西分断より深刻、5貪貽箸砲漏吠軸錣農こΔ魄匈鼎垢覿眄飢枯働党委員長は存在しなかった、と述べている。

 一方、南北と東西の共通点については、「両者とも周辺大国を抜きに和解交渉ができない点で似ている。南北の場合、米国、中国、ロシア、日本との緊密な協議が必要となる」と説明している。その上で「文大統領は現実主義者だ。韓国の安全を危険に陥れることはなく、段階的に平壌指導者の信頼を得たいと考えている」と述べ、文大統領の政治手腕に期待している。

 シュピーゲル誌によると、ブラントは韓国の野党指導者だった金大中(後日大統領に就任)と会談した時、「われわれのように余り慌て過ぎないように」と助言している。

 「共に民主党」のリベラル派代表の文大統領は、北との間の緊張緩和を望んでいる。文氏は韓国動乱時に北から南に逃げてきた人間だ。韓国では人権擁護の弁護士として活躍し、‘太陽政策‘を実施した金大中大統領、それを継承する盧武鉉大統領のもとで南北間の接近を演出してきた政治家だ。

 北朝鮮は21日、弾頭ミサイルを再び発射した。それを受け、文在寅政権は「北の度重なる挑発はわが新政府と国際社会が持っている朝鮮半島の非核化と平和定着に対する期待と熱望に冷や水をかける無謀かつ無責任な行動で、今回の挑発を強く糾弾する」(聯合ニュース)とした外交部報道官名義の声明を発表したが、北が14日弾道ミサイルを発射した時の政府声明の中には、「懲罰」「制裁」といった強い表現を避け、北を刺激しないように配慮していた。

 核開発を継続し、弾頭ミサイルの発射実験を繰り返し、国際社会から厳しい批判を受けている金正恩氏との対話は目下、実現の見通しがないが、状況が許せば、北との対話を必ず模索してくるだろう。考えられるシナリオは、閉鎖された開城工業団地の再開協議だ。その時、日米同盟国との意見調整を忘れ、一方的に緊張緩和政策を実施すれば、韓国と日米間の乖離を狙う北側の思う壺にはまる危険性が出てくる。

 韓国内には北から送られたスパイが暗躍している。それだけに、親北派の文政権はブラント政権の時のようにスパイ事件で躓かないように注意しなければならない。

“鮮度”を失ったポピュリストの「苦悩」

 時間の過ぎ去るのは早い。政治家のキャリアも例外ではない。最近、ビクッとする呟きを聞いた。「彼には新鮮味がなくなってきたね。彼から老いを感じる」というのだ。「誰」のことかというと、オーストリアの極右政党「自由党」のハインツ・クリスティアン・シュトラーヒェ党首だ。彼はまだ47歳だ。野党第1党の党首として選挙戦の度にこれまで台風の目となってきた政治家だ。そのシュトラーヒェ党首に「年を取った」という印象は決して偏見や皮肉からではないだろう。それなりの理由は考えられるからだ。

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▲極右政党「自由党」のシュトラーヒェ党首(2017年5月1日、メーデーの党集会で 「自由党」公式HPから)

 5月に入り、オーストリアの政界では大きな変化があった。与党第2党、中道右派「国民党」の党首に30歳のクルツ外相が就任し、野党第2党「緑の党」の党首を9年間務めたエヴァ・グラヴィシュ二ク党首が個人的理由から党首を辞職し、新しい党首と選挙筆頭候補者の2人組党体制が発表されたばかりだ。

 与党第1党の「社会民主党」党首のケルン首相はファイマン首相の後継者として実業界から政界入りして今年5月17日でやっと1年目を迎えたばかりだ。要するに、オーストリアの主要政党では指導者の交代、世代の交代が急速に行われてきたのだ。
 その中で「自由党」のシュトラーヒェ党首だけが変わらない。変わらない、ということは一見安定しているともいえるが、有権者にとって新鮮味が欠ける、というイメージとなって跳ね返ってくるわけだ。

 シュトラーヒェ党首はフランスの「国民戦線」のマリーヌ・ルペン党首、オランダの「自由党」のヘールト・ウィルダース党首らと共に、欧州の代表的極右政党の指導者だ。
 新聞に掲載された同党首の顔写真をみると、数年前のような鋭さや勢いはなくなった。悪く言えば、初老を迎えた人間のような感じすらする。外観的には、メガネをかける機会が増えた。結婚したこともあってか、顔もふっくらとして前より太った感じだ。あれこれ考えると、極右政党を引っ張る同党首はやはり年をとったのだ。

 シュトラーヒェ党首はヨルク・ハイダーの流れを組む「自由党」に入党して以来、着実に力をつけてきた。一時期、党内で路線対立があったが、2005年4月から12年間、党をまとめてきた。選挙の度に得票率を増やし、オーストリアでは「国民党」を抜いて第2党の勢いを有する政党に発展してきた。10月15日の総選挙では第1党、政権獲得の夢も決して非現実的ではない。

 ちなみに、「自由党」内で後継者問題がまったくなかったわけではない。大統領候補者として決選投票まで進出したノルベルト・ホーファー氏はシュトラーヒェ党首の後継者と受け取られているが、ホーファー氏自身「自分の夢はシュトラーヒェ党首を首相にすることだ」と言明し、後継者の話を完全に否定している。

 ところで、シュトラーヒェ党首から新鮮味が感じられなくなったのは決して外観的なイメージだけではない。外国人排斥、オーストリア・ファーストを標榜し、厳格な難民受け入れ政策を主張して支持を伸ばしてきた「自由党」だが、その主張自身に新鮮さがなくなってきたからだ。その主因は「国民党」党首に就任したばかりのクルツ外相だ。

 シュトラーヒェ党首曰く、「クルツ外相の難民政策はわが党の政策の完全なコピーだ。彼はコピーの天才だ」と嘆く。客観的にいえば、クルツ外相の難民政策は「自由党」よりも厳格だ。だから、「自由党」が難民の受け入れを批判してとしても、クルツ外相を超えた内容にはならない。難民受け入れに不安を感じこれまで「自由党」を支持してきた国民はクルツ外相の「国民党」に票を投じる可能性が高まってきたのだ。シュトラーヒェ党首は心穏やかでいられない。

 中道右派政党の右派化傾向はオーストリアだけではない。オランダでも見られる、同国の総選挙(下院)では、マルク・ ルッテ首相が率いる「自由民主国民党」(VVD)が躍進したが、ルッテ首相は選挙戦でヘールト・ウィルダース党首の極右政党「自由党」の反移民政策を凌ぐ過激な政策を主張し、オランダ社会に統合できない移民は「出ていけ」という主張し、話題を呼んだ(「極右政党が“大躍進”できない理由」2017年5月9日参考)。

 「自由党」はここにきて党独自の経済政策を掲げ、国民にアピールしていこうと腐心している。具体的な政策はまだ公表されていないが、欧州連合(EU)のブリュッセル主導の政策を批判してきた「自由党」としては、代案としてEUとの関係見直し、グロバリゼーションでの国民経済の在り方などについて有権者にアピールできる経済政策を考えているわけだ。

 人は古いものより新しいものに関心をもつ。だから、時間の経過と共に鮮度を失った政治家は国民の支持を失い、姿を消していく。欧州の代表的ポピュリスト、シュトラーヒェ党首は30歳のクルツ国民党党首の登場に焦りを感じる一方、国民は同党首に老いを感じだしてきたのだ。
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