ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

2017年08月

ユーチューバーのJアラート「体験」 

 国連安全保障理事会は29日、日本上空を通過する中距離弾頭ミサイルを発射した北朝鮮に対し、挑発行為の即停止、安保理決議の遵守などを要求した議長声明を全会一致で採決した。一方、北の朝鮮中央通信(KCNA)によると、金正恩労働党委員長は中距離弾頭ミサイル発射を「成功した」と豪語し、「日本を驚愕させた。米グアム島に向けた前奏曲だ」と述べたという。

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▲ブロード君のVblog「abroad in Japan」から(2017年8月30)

 誰も隣人を選ぶことはできない。同じように、隣国を恣意的に選び出すことはできない。日本国民は今、この事実を苦々しい思いで実感しているのではないか。核実験、中長距離弾頭ミサイルの発射を繰り返す北朝鮮はわが国の最も危険な隣国だ。日本が選んだのでも、北側が接近してきたのでもない。気がついた時、日朝は隣人関係として存在してきたのだ。

 北側は核と弾道ミサイルの開発を停止する考えはない。戦略的な中断はあり得るが、停止は北が独裁国家である限り、考えられない。ルーマニアのチャウシェスク大統領夫妻の処刑場面、そしてイラクのフセイン大統領とリビアのガダフィ大佐の2人の独裁者の悲惨な最期を目撃した金王朝だ。核とミサイルは王朝存続を約束する唯一の保険だ。この生命保険を何と交換して解約できるだろうか。あり得ないことだ。この前提の下で日本は隣人の北と対峙しなければならないのだ。

 北のミサイル発射に関連して今回、YouTube(ユーチューブ)で面白いビデオブログ(Vlog)が人気を呼んでいる。日本各地を訪問し、日本の食文化をビデオに作成してユーチューブで公表している英国人ユーチューバー、クリス・ブロード君の報告だ。
 彼は29日、宿泊先の青森で北朝鮮のミサイル発射時に関連したJアラートを偶然にも体験した。彼は早速Vlogを作成し、配信した。30日現在既に65万件以上のアクセスがある。

 以下、ブロード君の「Being Rudely Awoken by a North Korean Missile」(北のミサイルで忌々しくも目を覚ましてしまった)というタイトルのVblogの内容だ。

 早朝6時頃、サイレンが流れ、「北朝鮮がミサイルを発射したようです。頑丈な建物か地下に入って避難してください」というメッセージが聞こえてきたため、目を覚ましてしまった。その数分後、今度は携帯電話にSNSが入ってきた。同じメッセージだ。窓から外を眺めた後、ベットに戻った。その直後だ。今度はテレビから「北朝鮮が今、弾道ミサイルを発射しました」というアナウンサーの声が聞こえてきたのだ。スイッチを押してもいないのに、テレビが自動的について放送が始まったのだ。多分、緊急時にはテレビにスイッチが入るようになっているのだろうか。ブロード君は眠りを妨害した早朝の北のミサイル発射に怒りを感じる一方、Jアラートの情報伝達システムにも驚いてしまった、という3分余りのビデオだ。

 (時事通信によると、総務省消防庁は29日、全国瞬時警報システム『Jアラート』で、北朝鮮のミサイル情報を配信した。発射から約4分後の午前6時2分に『発射情報』を、約16分後の同14分に日本上空を飛んだとの『通過情報』をそれぞれ伝えている)

 ウィ―ンに住む当方はJアラートという言葉は知っていたが、具体的にどのようなシステムか知らなかった。だから、ブロード君だけではなく、当方もその情報伝達システムにはビックリした。

 地震が発生する度に、インターネット上で速報が流れ、津波の危険などについて情報が流れてくる。しかし、地震のないアルプスの小国オーストリアに住む当方はそのような速報を生々しく受信するということはなかった。また、北のミサイルが届かない欧州に住んでいることもあって、Jアラートを体験する機会はない。だから、地震や北ミサイルの飛来情報が流れるたびに避難しなければならない日本国民の状況を考えると、日本という民族の宿命をどうしても考えてしまう。

 参考までに、ウィ―ンで体験する危機管理といえば、原発事故を想定したサイレン演習が年1回、実施されるだけだ。オーストリアには原発はないが、東欧諸国の原発事故を想定したものだ。

北は日米韓の「弱点」を知っている

 北朝鮮は29日午前5時58分、中距離弾道ミサイル1発を発射。ミサイルは北海道上空を通過して太平洋に落下したという。飛行距離は約2700キロで最高高度約550キロと推定されている。北のミサイルが日本領空を通過したことを深刻に受け止め、日本は米韓と連絡を取り、対北への制裁強化など、その対策を協議中だ。

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▲座禅する安倍首相(安倍首相のツイッターから)

 日本の北情報筋は、「金正恩氏は同国のミサイルがグアム島を攻撃できる能力を保持していることを誇示する一方、日本に対してはいつでも攻撃できることを示し、対北制裁を強化する日本に警告を発した」と分析している。21日から米韓軍事演習が実施中であることから、北側が軍事力を示す狙いもあったことは間違いない。

 安倍晋三首相は米国、韓国と協議し、国連安保理を招集して対北制裁の強化などを協議する考えだが、国連の安保理決議をこれまで何度も無視してきた北側に新たな決議を採択したとしてもどれだけの効果があるだろうか。正直にいえば、国連安保理決議では北の核・ミサイル開発を止められない。

 それでは北の蛮行を無視し、看過できるかといえば、できない。隣国の独裁国家が核とミサイルを保持し、いつでも攻撃できるということは、日本、韓国にとって最高度の脅威だ。もはや「平和憲法」云々を叫んでいる時ではない。もちろん、パニックに陥ることはない。必要なことは冷静な現実認識だ。

 それではどうすればいいか。2通りのシナリオが考えられる。非軍事的対応としては、中国が対北原油輸出を完全にストップすることだ。そして中国がその制裁を実施しなければ、中国も北の共犯であることを国際社会の舞台で糾弾すべきだ。必要ならば、対中制裁を実施すべきだ。一方、軍事的対応としては、日本は米韓と連携して、北への先制攻撃も視野に入れていることを内外に明らかにすべきだ。金正恩氏が潜伏している国内の全拠点をリストアップし、「われわれはいつでもその拠点に向かってミサイルを撃ち込める」という具体的な軍事プランを作成すべきだ。

 核とミサイルが独裁国家堅持に不可欠と考えている金正恩氏に、日米韓の「力」を正しく理解させる必要がある。同時に、在韓6万人の邦人と数万人の在韓米国人の避難計画を一部実行に移すべきだ。それを通じて、日米韓3国が軍事行動に踏み切る時が近いことを北側は知るだろう。

 準備が整えば、次は国連安保理で国連憲章に基づいて対北軍事制裁に関する決議案を提出すべきだ。もちろん、拒否権を有する中国とロシアが反対するだろう。その時、日米韓は世界に向かって「中国とロシアが北問題の解決を妨害している。北の核計画、ミサイル開発が推進した背後には、この2カ国が直接的、間接的に支援してきた事実がある」と明確に説明すべきだ。

 問題は、人の命は地球より重い、といった人道主義的人間観が強い日本だ。「平和憲法」がこれまで維持されてきた主因はその人道主義的人間観を掲げて快眠できたからだ。血を流さず、犠牲をなくしたい、この思いに誰も強く反対できないからだ。
 一方、北では国民の命は決して重くない。政権に反対する国民は抹殺され、粛清される。問題は、金正恩氏が「われわれはそうだが、彼らは違う」ことを知っていることだ。だから、金正恩氏は「彼らは先制攻撃できない」という絶対的信仰を有しているのだ。誰が金正恩氏のこの絶対信仰を揺るがすことができるだろうか。

 朝鮮半島の問題解決には従来のやり方はもはや通用しない。対話、外交を通じて解決するのをプランAとすれば、それに代わって「力」で相手を説得させるプランBを引き出しから取り出すべきかもしれない。プランAは時間がかかるうえ、時間は北側に有利だ。最終的には、北の核保有を認知することにもなってしまうだけだ。

 ひょっとしたら、国際社会は、犠牲を出してまで北の核・ミサイル問題を解決しなくてもいいと考えるかもしれない。小国家の独裁国家の北が初歩的な核や弾道ミサイルを開発してもパニックに陥ることはなく、国際社会は対北制裁を継続していけばいいと判断するかもしれない。アメリカ本土には影響がない情勢で、米国内にそのような声が高まってくることが十分予想される。

 ただし、プランAは短期的には犠牲を避けることが出来るが、長期的には、核保有国の北朝鮮が出現し、韓国、日本を含むアジア全域の治安バランスが崩れ、核の拡大をもたらす危険が出てくる。それでもいい、というのならば、われわれはプランAを継続していく以外にない。その場合、誰もその結果には責任は取らないだろう。プランBの場合、責任問題が浮上することは避けられない。その責任を担う覚悟のない指導者はプランAを選択するだろう(いずれにしても、歴史家が後日、その選択を審判することになる)。

 約2500万人の北の国民は独裁政権下で人質となり、その人権は常に蹂躙されてきた。一方、韓国には5000万人以上の同胞が住んでいる。プランAは前者の人権より、後者の人権をより重視する選択ともいえる。

 最後に、読者と共に考えたい重いテーマを提示したい。「この世界には本当に人命より重いものはないのか」という問題だ。

難民が殺到したドイツで犯罪増加

 ドイツのトーマス・デメジエール内相が公表した「2016年犯罪統計」によると、犯罪総件数は637万2526件で、前年比(633万649件)で0・7%微増だったが、外国人の犯罪件数を差し引くと2015年より減少していたことが明らかになった。すなわち、難民・移民の犯罪増加によって同国の犯罪総件数がアップしたというのだ。以下、独週刊誌シュピーゲルの記事を参考にまとめてみた。

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▲ドイツのトーマス・デメジエール内相(同内相のサイトから)

 前年の犯罪統計の公表は毎年慣例のイベントだが、今年が総選挙の年(9月24日実施)だけに、国内の治安問題や難民・移民の犯罪傾向は選挙にも影響を与えるテーマだ。4選を狙うメルケル首相の難民・移民政策の良し悪しが問われることにもなるからだ。

 ドイツ連邦統計局によると、同国の総人口は現在、約8280万人で過去最高レベルだ。人が増えると、犯罪件数は増加するが、昨年の犯罪総数から外国人の犯罪を差し引くと約588万件と推定されている。すなわち、昨年の犯罪件数は2015年より少ないというわけだ。

 犯罪問題専門家は、「難民・移民の増加は犯罪の増加につながる、具体的には、暴力犯罪、財産犯罪、性犯罪、麻薬犯罪の増加につながる」という。実際、デメジエール内相は犯罪統計公表の際、久しく継続してきた犯罪総件数の減少傾向がストップし、増加したことを認め、「外国人容疑者数は前年比で52・7%急増し、約17万4000人で、犯罪件数は29万3000件だ」と述べている。

 2005年秋から難民・移民がドイツに殺到したが、2016年の犯罪件数の中で殺人件数は15年比で14・3%増加、性犯罪は12・8%増、身体損傷件数も9・9%といずれも大きく増加している。単純に考えても犯罪件数の増加と難民・移民の殺到とは密接な関係があると推測できるわけだ。

 シリアやイラク、アフガニスタンから難民が殺到したバイエルン州では昨年、2015年比で難民・移民の犯罪件数が倍になるという。具体的には、昨年約3万6000件の犯罪が難民・移民によるものという。そのほぼ3分の1は暴力犯罪(身体損傷、強盗など)だ。バーデン・ヴルッテムベルク州では昨年、容疑者の10人に1人は難民(申請者)だった、といった具合だ。

 ドイツでは2015年、16年にかけて100万人余りの難民・移民が殺到したが、その中には犯罪者が紛れ込んでいたとしても不思議ではない。ドイツで働き、金を稼ぎたいという夢を持ってきた難民は収容所生活の中で現実に直面し、失望し、攻撃的となったりする。また、紛争地から逃げてきた難民は悪夢に悩む者も出てくる。ニーダーザクセン州のブラウンシュヴァイク市では難民犯罪のための特別委員会が設置されているほどだ。

 もちろん、難民・移民がドイツ人より犯罪的だ、ということはない。ただし、難民の受け入れに反対する右派政党「ドイツのための選択肢」(AfD)などにとって、難民・移民の犯罪問題は格好の選挙テーマであることは間違いないだろう。

 トーマス・デメジエール内相はシュピーゲル誌とのインタビューの中で、「難民が全て聖人ではないが、(全てが)罪人でもない」と答えている。多分、これが正論かもしれない。

「チェコ連邦」の解体が決まった日

 チェコスロバキア連邦を解体し、「チェコ」と「スロバキア」両共和国の独立を決定した「ブルノ交渉」が開かれてから今月26日で25年目を迎えた。1993年1月1日から独立国家の両国はその後、欧州連合(EU)、そして北大西洋条約機構(NATO)の加盟国となって今日に至っている。

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▲インタビューに応じるスロバキア初代首相メチアル氏(1993年3月13日、ブラチスラバの首相官邸で撮影)

 旧チェコスロバキアは1918年、建国されたが、チェコ民族とスロバキア民族間には絶えず小競り合いが生じ、相互不信が強かった。両民族は「チェコ共和国」と「スロバキア共和国」に分かれたが、旧ユーゴスラビア連邦の解体とは異なり、チェコ連邦の解体(通称・ビロード離婚)は民族紛争もなく平和裏に遂行されていった。近代史では珍しいケースだ。

 興味深い点は、チェコ連邦の国民の多数は当時、連邦解体を希望していなかったという事実だ。ただし、チェコ側もスロバキア側でも連邦の解体に関する国民投票は実施されず、政府と議会での討議後、連邦解体が決定された。スロバキアのウラジミール・メチアル元首相は、「チェコ政府側は経済力の脆弱なスロバキアから離れたいという意向が強かった。連邦解体はチェコ側が久しく願ってきたプランに基づいて遂行されていった。スロバキア側はそれに抵抗する手段はなかった」と、オーストリア日刊紙プレッセとのインタビュー(26日付)の中で述懐している。

 連邦解体のプロセスを振り返る前に、チェコ連邦の民主化を考えてみた。ソ連共産党政権はチェコの民主化運動「プラハの春」(1968年)を強権で弾圧した後、プラハを中心として中央集権的なやり方でチェコ全土を支配していった。そのため、スロバキア国民は、「われわれはプラハとモスクワに管理されている」といった不満が常にあった。

 そして1989年の旧チェコスロバキアの民主改革(1989年、通称・ビロード革命)では、チェコとスロバキアでは全く異なったプロセスが進行した。チェコではバツラフ・ハベル(民主化後の初代大統領)を含む左派知識人を中心とした政治運動が主導を握り、スロバキアではカトリック教会を中心とした宗教の自由運動が民主化の原動力となっていった。チェコでは宗教の自由運動はほとんど見られなかった。

 ちなみに、チェコ民族の特長は宗教改革者ヤン・フスの「反カトリック主義」の影響が色濃い。ワシントンDCのシンクタンク、「ビューリサーチ・センター」によると、民主化後のチェコの宗教事情は、キリスト教23・3%、イスラム教0・1%以下、無宗教76・4%、ヒンズー教0・1%以下、民族宗教0・1%以下、他宗教0・1%以下、ユダヤ教0・1%以下だ。無神論者、不可知論者などを含む無宗教の割合が76・4%になる。キリスト教文化圏で考えられない数字だ(「なぜプラハの市民は神を捨てたのか」2014年4月13日参考)。
 チェコ人は宗教色の強いスロバキア人とは明らかに異なっているわけだ。その意味で、旧ソ連共産政権の支配から解放されたチェコ連邦が連邦解体に向かったのは自然の流れだったともいえる。


 メチアル元首相(当時スロバキア与党「民主スロバキア運動」党首)の証言によれば、スロバキアはチェコと公平な連邦システムを築いていきたいと期待していたが、チェコの与党「市民民主党」のバーツラフ・クラウス党首との交渉(1992年8月26日、ブルノ)で連邦解体という話に急展開していったという。そして、1993年1月1日を期してチェコとスロバキアの両主権国家がスタートすることになった。

 分断後、チェコ経済はクラウス政権のもと急速に市場経済を導入し、経済改革を施行したが、メチアル政権は緩やかな改革を実施していった。チェコはEUの模範国となったが、スロバキアはメチアル首相の独裁的政治がブリュッセルから批判される時代が続き、欧州の統合プロセスではチェコより後れを取った。

 25年が経過した今日、チェコはブリュッセル主導のEU政策に批判的となってきている。一方、スロバキアは2009年、ユーロを導入するなど、経済面では順調に発展してきた。


 当方は1993年3月、首都ブラチスラバの首相官邸内で独立国家スロバキアの初代首相のメチアル氏と単独会見したことがある。メチアル氏は新生国家が抱える諸問題について、意見を述べてくれた。印象に残っているのは、メチアル氏が、「連邦解体プロセスは、民族の共存を志向する理想主義的な熱情と、自国の利益を最優先する国益中心主義的傾向のぶつかり合いだった」と証言したことだ。ブルノでの交渉では、クラウス氏との間で激しいやり取りがあったことを彷彿させる発言だった。

テロ対策に苦闘する欧州教会

 スペイン東部バルセロナで車両暴走テロ事件(8月17日)が起き、多数の犠牲者、負傷者が出たが、スペインのメディアによれば、モロッコ出身のイスラム過激テロリストは本来、バルセロナの有名なカトリック教会のバシリカ(サクラダ・ファミリア)を爆発する計画だったという。そのニュースが流れると、欧州のキリスト教関係者に衝撃を与えた。

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▲ケルン大聖堂(ドイツ観光局のHPから)

 ドイツのメディアでは、「ドレスデン(ドイツ東南部ザクセン州)にある福音主義教会の『聖母教会』がイスラム過激テロ組織『イスラム国』(IS)のテロ計画に入っている」という情報が流れている。なぜならば、ISのプロパガンダ・メディアに「聖母教会」が写っていたからだ。

 ドレスデン市警察は「市内のキリスト教会やイスラム教モスクに対する緊急テロ情報はないが、その危険は常に囁かれてきた」という。市内の教会関連施設周辺には警察官が警備の目を光らせている。

 バルセロナの白ワゴン車の暴走テロが起きた後、ドイツのケルン市当局はケルン大聖堂関係者と教会の安全問題で討議し、大聖堂に通じる通路に4トンの石の塊(アンチ・テロ塊)を設置している。ケルン警察当局は「大聖堂がテロに狙われているという直接の具体的な情報はない。いずれにしても、100%の安全は考えられない」と話している。
 ケルン市のヘンリエッテ・レーカー市長は「市全体をバリケートで封鎖すれば安全だとは考えていない」と説明し、市民に理解を求めている。

 ドイツの首都ベルリンで「ベルリン大聖堂」(Berliner Dom)を訪問する人はリュックサックや大きな手袋を持参できない。ベルリンの教会関連施設の安全対策だ。フランスの2015年パリ、16年ニースでテロが発生して以来、ベルリンでは安全対策が強化された。
 ドイツ西部にあるアーヘン大聖堂は、フランス北部のサンテティエンヌ・デュルブレのローマ・カトリック教会で昨年7月26日、2人のイスラム過激派テロリストにアメル神父が朝拝中に射殺されて以来、警戒態勢を強化している。アーヘンでは、リュックサックやカバン持参で教会に入る場合、コントロールされる。

 ただし、ハンブルクやミュンヘンの教会では特別な対応は施行されていない。市民が愛するハンブルクの「聖ミヒャエル教会」の場合、カバンのチェックもない。ミュンヘンの「聖母教会」でも同様だ。ちなみに、隣国オーストリアやスイスの教会関連施設の安全対策もハンブルクやミュンヘンと同水準に留まっている。

 一方、ローマ・カトリック教会の総本山バチカン法王庁があるイタリアでは事情は異なる。バルセロナのテロ事件はイタリアでは大きな影響を与えている。ローマ、ミラノ、ボロー二ャ、トリノの歩行者用専用道路では入口にコンクリートのバリヤーが設置されている。教会前には兵士が警備。バチカンでは110人規模のスイス衛兵がローマ法王の警備に当たっている。
 なお、25日のイタリア国営放送RAIによると、ISがイタリアとローマ法王フランシスコに対するテロ攻撃を予告するビデオ声明を公開したという。

中国が欧米エリート大学に“政治圧力”

 中国共産党政権が欧米のエリート大学に巨額献金し、大学教授たちを北京に招待するなどして親中派人脈を構築してきていることがこのほど改めて明らかになった。

 海外の反体制派中国メディア「大紀元」は米ハーバード大学への献金問題や英ケンブリッジ大学出版局への圧力などを暴露した記事を次々と掲載している。以下、「大紀元」の記事の概要を読者に紹介する。

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▲ウィーン大学キャンパス内にある中国対外宣伝機関「孔子学院」(2013年9月21日、撮影)

 「大紀元」は今月21日、「中国が圧力、ケンブリッジ大学が300の論文を取り下げ」という見出しの記事を掲載した。それによると、同大学出版局がウェブサイトに掲載していた中国関連の300以上の学術論文を取り下げた。大学側は「中国からの圧力があった」ことを認める公式声明を発表している。
 同出版局の説明によると、「中国国営の出版物輸入代行業者は研究論文の取り下げに応じない場合、同出版局全てのコンテンツへのアクセスを遮断させていた。大学出版局としては、他の資料を中国市場で公開し続けるために、一部の論文への検閲を受け入れざるを得なかった」(「大紀元」)というのだ。

 検閲対象となった論文は、ケンブリッジ大学出版局の現代中国研究誌「チャイナ・クウォータリー」で発表していた315点の学術論文で、論文のテーマは、1989年の学生運動「六四天安門」事件での大虐殺、文化大革命、法の支配、小平の改革開放政策、毛沢東主義とマルクス主義、法輪功、労働者の権利、香港、台湾、チベットと新疆などの地域研究だったという。

 ケンブリッジ大学出版局が中国側の検閲を受け入れたことが明らかになると、予想されたことだが、各方面から批判の声が挙がった。そこで大学側は21日、「全ての論文が閲覧できるように処理した」と声明し、中国側の圧力を退けたという後日談が続く。

 「大紀元」は23日、「学問の自由が根幹、ケンブリッジ大学、取り下げ論文を復活」という見出しで続報を報道した。そこで「ケンブリッジ大学出版局が中国側の検閲を受け入れたのは、他の文献も全てシャットアウトするとの圧力を受けたためで、一時的な措置だった」という大学側の釈明を紹介し、「学問の自由は大学の根幹という本来の立場に戻り、論文を復活させた」と大学側の対応を評価している。 

 「大紀元」の暴露記事は続く。今月24日になると、「中国が米ハーバード大学へ巨額の献金」というタイトルの記事を掲載した。「米名門校ハーバード大学は、中国資本から、これまでに少なくとも3億6000万ドルの寄付を受け取っている」という衝撃の内容だ。

 元米政府の軍事諜報分析官は、「中国共産党政権のコントロール下にある中国資本の、米エリート大学への巨額寄付の背景には 、教授たちを“中国寄り”にして、米国の政策または世論に影響を与える狙いがあることは間違いない。ハーバード大学教授は中国で講演して謝礼を受け、著作の出版で印税収入を得、中国側の全額負担の訪問旅行を満喫している」(「大紀元」)と指摘している。

 なお、欧州の独語圏最古の総合大学ウィーン大学にも中国科が開設されているが、中国側はそこに多数の留学生を送り込み、大学内に「孔子学院」(Konfuzius Insutitute)を開設し、大学教授や知識人を北京旅行に招くなどして親中派知識人を育成している(「『孔子学院』は中国対外宣伝機関」2013年9月26日参考)。親中派教授が地元のメディアに時たま寄稿するが、その論文には中国寄りの主張が色濃く反映されているのは偶然ではないわけだ。

 中国共産党政権の情報工作は今、欧米エリート大学内まで進出し、中国寄りの知識人を輩出するため多くの人材と豊かな資金を投入している。その規模は欧米諸国の想像をはるかに超えているのだ。

フェイク・宗教を追放すべきだ

 スペイン東部バルセロナのテロ事件は、逃走中のテロリスト、ユネス・アブーヤアクーブ容疑者(22)が21日、バルセロナ近郊で警察官に射殺され、事件の精神的指導者と見られてきた元イマーム(導師)、アブデルバキ・エスサティ容疑者は16日のアルカナー市で起きた住居爆発事故で死亡していたことが判明したことから、警察当局の捜査は一応終わり、今後はテログループの全容解明が進められる。バルセロナのテロ事件では15人が死亡、120人以上が負傷、テロ実行犯8人の死亡が確認されている。イスラム過激テロ組織「イスラム国」(IS)が犯行声明を出している。

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▲「反テロ宣言」に署名したイスラム教指導者たち(「オーストリア・イスラム教信仰共同体」のHPから)

 ところで、17日のバルセロナのテロ事件後、スペイン全土でイスラム排斥、憎悪が拡大し、これまで少なくとも4件のモスク(イスラム礼拝所)が破壊されたり、モロッコ出身の青年が路上で襲撃されるといった事件が起きている。スペイン日刊紙エル・パイスは23日、「わが国で目下、イスラム憎悪に基づく蛮行が広がっている」と警告を発している

 エル・パイス紙によると、モスクが破壊されたり、傷つけられた所は南部グラナダ, マドリード州のフエンラブラダ市、北部ログローニョ市 そして アンダルシア州の州都セビリアの4都市だ。
 セビリア市のモスクの壁には何者かが「殺人者たちよ、お前たちは代償を払わなければならない」、「ストップ、イスラム」との落書きが見つかったという。グラナダ市では、極右グループ(Hogar Sochia)のメンバーたちが発煙弾や照明弾を投げ、反イスラム主義を叫びながら暴れたという。

 インターネット上でもイスラム教徒が攻撃の的になっている。路上で全く見知らぬ人から「アラブの馬鹿野郎」、「殺してやるぞ」といった中傷や脅迫を受けたイスラム教徒が少なくないというのだ。

 それに対し フランス通信(AFP)によると、グラナダで23日、イスラム教徒200人がデモを行い、社会に広がる反イスラム憎悪犯罪に抗議したという。

 イスラム過激テロ事件が発生する度に、イスラム教関係者は「イスラム教とテロはまったく相反する。イスラム過激派の聖戦思想は真のイスラム教ではない」と弁明してきた。実際、大多数のイスラム教徒は過激派テロとは無縁だ。ただし、「あれはイスラム教ではない」という抗議は欧米キリスト教社会ではあまり理解されていない。なぜなら、世界で起きているテロの大多数がイスラム教と何らかの関係を有しているからだ。その事実の前に、敬虔なイスラム教徒の抗議は無力なのだ。

 オーストリアでは300人のイマームが6月14日、ウィ―ンのモスクに結集して「反テロ宣言」を公表するなど、イスラム教徒だけではなく、その指導者たちが欧州キリスト教社会で席巻する反イスラム主義に危機感を高めている(イスラム指導者「反テロ宣言」の概要」2017年6月16日参考)。

 今後は宗教指導者たちの一方的な宣言や表明だけではなく、キリスト信者や他の宗派間の地に足の着いた対話が不可欠だろう。単にアリバイ的な超教派活動ではなく、政治家、有識者たちを交え、政治、経済、社会、文化など多方面から「イスラム教のテロ問題」について真摯な討論が求められる。

 参考までに言及するが、「宗教」は本来、人間を幸福にし、人生を真摯に生きていくための手助けをするものだ。人を殺し、憎しみを植え付けるような「宗教」はもはや宗教ではない。この極めてシンプルな原点に返るべきだろう。フェイク・ニュースだけではなく、宗教の名を利用したフェイク・宗教を追放すべきだ。

メルケル独首相の4選は当確圏に

 ドイツで来月24日、隣国オーストリアで10月15日、それぞれ総選挙が実施される。ドイツ連邦議会選(下院)ではメルケル首相が率いる与党第1党「キリスト教民主同盟」(CDU)がここにきてライバル政党「社会民主党」(SPD)を10から15ポイントの大差をつけてトップを走っている。メルケル首相の4選は現時点では濃厚だ。

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▲オーストリアの与党・社民党の選挙看板(中央はケルン首相)=2017年8月23日、ウィ―ン市内で撮影

 一方、オーストリアでは30歳の若さのセバスティアン・クルツ党首(外相)の保守政党「国民党」が、ケルン首相の与党第1党「社会民主党」、野党第1党の極右政党「自由党」を引き離し第1位を維持している。クルツ外相はフランスのエマニュエル・マクロン新大統領が自身の政治運動「アン・マルシェ!」(En Marche!=進め!)を結成して選挙戦を戦い圧勝したように、「セバスチャン・クルツのリスト、新国民党」を創設し、著名人を候補者リストに掲げ、従来の国民党のイメージを大きく刷新して選挙戦に臨んでいる。

 先ず、ドイツ連邦議会選では、メルケル首相がその強運を遺憾なく発揮している。今年初め、4選は難しいとみられていた。主因は2015年秋からの難民・移民殺到を誘発した難民歓迎政策の責任が追及され、支持率を急速に失っていたからだ。一方、社民党が今年3月19日、欧州議会議長を5年間務めたマルティン・シュルツ氏を新党首に迎え、新風を巻き起こす勢いを示していたこともある。メルケル首相の4選の芽はこれで絶たれたかといわれたほどだ。

 しかし、その直後に実施された3州の議会選(ザールランド州3月26日、シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州5月7日、ノルトライン=ヴェストファーレン州5月14日)でメルケル首相のCDUが大健闘する一方、シュルツ党首の社会党は全敗を喫してしまった。シュルツ新党首の人気はがた落ちし、「メルケル首相はやはり強い」という印象を国民に強烈に植え付けてしまったのだ。世論調査でもCDUとSPDの支持率は逆転し、メルケル首相の独走が始まったというわけだ。

 新党首を得た社民党の選挙戦の拙さもあったが、メルケル首相の人気回復の背景には、やはり、ドイツの国民経済が欧州で最も安定しているという事実がある。大多数の国民はチェンジより現状維持を望んでいるからだ。失業率は低下し、メルケル首相の口から「2025年までに完全雇用を達成する」という言葉が飛び出すほどだ。欧州諸国の経済がもうひとつ回復しない中で、ドイツ経済だけが順調なことから、トランプ米大統領は「グロバリゼーションでドイツは独り勝ちしている」と不満を吐露したほどだ。

 もちろん、フォルクスワーゲン(VW)を皮切りにディ―ゼル車の排気ガス不正問題が次々と発覚し、“メイド・イン・ジャーマニー”の名を汚したが、メルケル首相自身が輸出国ドイツの看板を担う自動車大手会社の不正問題に対し、「ドイツ車の信頼を落とした」と厳しく批判、メルケル政権の姿勢を明確にし、現政権下で発覚した不正問題のダメージを最小限に抑えることに成功している。社民党はメルケル政権の連立政権パートナーだったこともあって、メルケル首相の難民政策を直接批判しにくいという事情もある。

 メルケル首相の難民歓迎政策が理由で険悪な関係となっていたバイエルン州の「キリスト教社会同盟」(CSU)もここにきてメルケル首相を支援する方向に軌道修正してきた。右派政党の新党「ドイツのための選択肢」(AfD)は選挙の度に躍進してきたが、党内のゴタゴタでその勢いを失ってきた。唯一、中道リベラルの「自由民主党」(FPD)が支持率を伸ばし、連邦議会での議席回復を確実にしている。「同盟90/緑の党」と左翼党は現状維持が精一杯だろう。SPDが投票日までに何らかの対策を講じない限り、「世界で最も影響力のある女性」の常連、メルケル首相はゴールを楽々と駆け抜けるだろう。

 一方、オーストリアのクルツ党首は外相として厳格な難民政策を展開し、対バルカン諸国の国境線を閉鎖する一方、北アフリカから難民が殺到しているイタリアからの難民流入を阻止するためチロル州の国境線監視の強化を打ち出している。同外相の難民政策は大多数の国民の支持を得ている。

 同国メディアの世論調査では国民党の支持率は32%前後でトップ、それを社民党と極右政党「自由党」(ハインツ・クリスティアン・シュトラーヒェ党首)両党が25%前後で追っている。クルツ外相は批判政党として躍進し続けてきた自由党の支持をも奪う勢いを見せているだけに、自由党も内心、穏やかではない。シュトラーヒェ党首は「クルツ外相はわが党の難民政策をコピーしただけだ」と嫌味をいっているほどだ。

 オーストリア政界を戦後から常に主導してきた社民党は凋落傾向にストップをかけられるかどうか、その動向が注目されている。社民党では昨年5月、ファイマン首相に代わって就任したケルン現首相が奮闘中だが、政策は新鮮味に欠け、有権者へのアピールが不足している。

 もちろん、クルツ外相の個人的人気だけで選挙を勝利できるほど現実は甘くないかもしれない。マクロン大統領は旋風を巻き起こし、大統領選後の議会選でも圧勝したが、就任100日が過ぎた今日、同大統領の人気は急落している。個人的な人気だけでは、安定した政治運営が難しいことは明らかだ。それだけに、クルツ国民党は地に足をつけた選挙戦を展開する必要があるだろう。ただし、ドイツでメルケル首相が4選を果たせば、CDUの姉妹政党の国民党はその勝利の恵みを共有できるチャンスが広がるだろう。

時間は誰の味方か

 60代に入ると時間の過ぎ行くのが驚くほど速い、ということをよく聞く。あのアインシュタインが明らかにしたように、重力は空間と光を曲げ、時間を遅らせる。また、「あなたの24時間」と「私の24時間」ではまったく異なっている。早く過ぎ去った1日か、時間が止まったように感じる日か、その時間の濃淡は人それぞれ違い、異なった印象を残していく。

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▲当方の仕事部屋から見えるウィ―ンの朝明け風景(2017年8月、撮影)

 ところで、時間は果たして誰の味方だろうか。嫌なことがあった場合、慌てずに時間が過ぎていくのを待てばいい、と聞いたことがある。それは偽りではなく、多くは事実だろう。当方自身、体の痛みが時間の経過と共にいつの間にか治癒されていった、ということを何度も体験している。時間は痛みを治癒する力を有している。逆にいえば、ある一定の時間が過ぎない限り、癒されないということにもなる。喧嘩別れした2人が再び理解し合うためにはやはり時間が必要だろう。人は落ち着いて考え、再考し、悔い改めたりできる時間を必要とする。

 一方、時間の経過が問題を一層、先鋭化することがある。北朝鮮の核開発問題はその典型的な例だろう。国際社会が看過し、米国が「戦略的忍耐」(オバマ前米大統領)をしていた時、北は核開発を急速に進め、核の小型化にも成功したといわれる。時間は北の核開発問題では平壌の味方をしているわけだ。

 国際社会は制裁を実施し続ければ時間の経過と共に、北は脆弱になり、最終的には崩壊するだろうと漠然と考えてきたが、事実は逆になっている。北は核搭載可能な大陸間弾道ミサイルを開発してきた。北の核問題は政権の交代か、何らかのラジカルなチェンジがない限り、もはや解決できない段階にまで来ている。

 逆に、時間は紛争勢力間に和解を促進するケースもある。最近では、コロンビアの内戦だろう。多くの犠牲と戦い疲れということもあるが、時間は紛争勢力に和解のチャンスを提供している。

 時間はまた、隠されてきた問題を表面化させる。「覆い隠されているもので、現れてこないものはなく、隠されているもので、知られてこないものはない」と新約聖書「ルカによる福音書」12章に記述されているが、不正や腐敗が時間の経過と共に表面化し、暴露されていくケースは日常生活でも見られることだ。
 人は最後まで隠し事を秘めることができない。秘密を墓場まで持っていける人は稀で、隠し事があればそれを告白し、許しを求めようとするものだ。

 時間の効用は別として、時間が物事や人間の精神生活に大きな影響を及ぼしていることは間違いない。時間は絶対ではなく、相対的だ。何億光年先の宇宙の時間と地球上の時間とは違う。時間の経過も非常に主観的だ。腕時計で標準時間を決めることで、人々は時間の経過に伴う混乱を避けてきたのかもしれない。
 
 ビックバーンで宇宙に質量が生まれ、その空間は急速に膨張していった。宇宙のインフレーション理論だ。私が今見ているものは宇宙創造当初の現象かもしれない。宇宙創造時の質量が私の体の中を突き抜けていったかもしれない。

 時間は1日24時間、1年365日、全ての人に等しく与えられていると考えられてきたが、実際は、1日30時間、1年を500日の周期で生きている人間がいる一方、短い周期で人生を過ごしている人もいるだろう。

 昔、「時間よ、止まれ!」と叫んだ不思議な少年が活躍したが、時間はやはり動いている。それを良しとして生きていく以外に他の選択肢はない。時間のもつ優しい癒しに自身の痛みを委ね、堂々と生き抜いていきたいものだ。

独立100周年に国際テロの「洗礼」

 スペイン東部バルセロナ市の車両暴走テロ事件の動向に追われていた時、北欧のフィンランドから「テロ事件が発生したようだ」という情報が流れてきた時はやはり驚いた。フィンランドではこれまでイスラム過激テロ事件が発生したと聞いたことがなかったからだ。
 少し遅れたが、フィンランドのテロ事件をまとめた。

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▲フィンランドの風景(フィンランド政府観光局公式サイトから)

 フィンランド南西部のトゥルク中心部で18日、若い男が大きな刃物で通行人を襲撃し、2人(女性)を殺害し、8人に重軽傷を負わせた。駆け付けた現地の警察官は容疑者の脚を撃ち、逮捕し、病院に搬送した。地元メディアの報道では、容疑者は「アラー・アクバル(神は偉大なり)と叫びながら、通行人を襲った」という。

 トゥルクは、フィンランドの最古の町で一時首都だった時代もあった。バルト海に面す港湾都市。南西スオミ県の県庁所在地で、人口は現在、約17万6000人だ。

 容疑者の犯行動機は依然不明で、犠牲者をランダムに選んで襲撃している。ただし、死者と負傷者の6人が女性だったことから、攻撃しやすい女性を狙って襲撃したと考えられる。犠牲者の年齢は15歳から67歳で、スウェ―デン人、英国人、イタリア人など外国人が含まれていた。

 捜査当局が19日公表した情報によると、犯人はモロッコ出身の18歳の男性。2016年にフィンランド入りし、難民申請をしたが、地元メディア報道によると、「拒否された」という。

 バルセロナのテロ実行犯がほとんどモロッコ人だったこともあって、その直後に発生したトゥルクのテロ事件との関係が注目されている。明確な点は、「ナイフ射殺テロ事件の背後にはテロ的な動機があった」と見られていることだ。地元警察は容疑者と繋がりのある4人のモロッコ人を拘束し、5人目のモロッコ人を国際手配したことを明らかにした。 


 人口約550万人の小国フィンランドは北欧でも最も安全な国の一つと受け取られてきただけに、トゥルクのテロ事件に政治家も国民もショックを受けている。
 フィンランドのユハ・シピラ首相は「テロは卑怯で嫌悪すべき行為だ。わが国はテロ問題と決して無縁の国ではない。テロがわが国にやってきたのだ」と述べ、テロ対策の強化をアピールしている。

 パウラ・リシッコ内相は警察関係者に公共施設、駅や空港での警備の強化を指令している。メディア情報によると、トゥルク市から出る全てのバス、列車のコントロールが実施されているという。同時に、国境の警備強化も行われている。民族派政党からは「難民を国外に追放すべきだ」といった声も飛び出してきたという。


 フィンランドといえば、当方は直ぐに携帯電話メーカーの老舗ノキアや元プロのテニス選手で現在プロのポーカー選手となったパトリック・アントニウス、元F1ドライバーのミカ・ハッキネンの名前を思い出す。政治的には、冷戦時代はロシア寄りで、フィンランド化という言葉も聞かれた。現在は欧州連合(EU)加盟国(1995年)であり、2002年にはユーロを導入済みだ。西にスウェ―デン、東にロシアとの国境に接している。両国は一時、フィンランドを支配した占領国だった。

 ちなみに、フィンランドは今年12月6日、ロシアから独立して100周年目を迎える。その記念の年に、フィンランドは国際テロの洗礼を受けたわけだ。
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