ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

2017年11月

米企業がスーダンに戻ってくる

 国連工業開発機関(UNIDO)第17回総会は27日、5日間の日程でウィ―ンの本部で開催中だが、スーダンから総会に参加したムサ・モハメット・カラマ工業相は28日、当方との単独会見に応じ、南北分断後のスーダンの国民経済、制裁の一部解除を実施した米国との関係などについてその見解を語ってくれた。

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▲インタビューに応えるスーダンのカラマ工業相(Musa Mohamed Karama)(2017年11月28日、UNIDO総会会場内で撮影)

 カラマ工業相は1994年、日本文部省海外留学生として東京大学で農学を勉学し、博士号を得た。駐スーダンの日本大使館で1年間、勤務したこともあるスーダンきっての親日派政治家だ。

 スーダンは領土の大きさではアフリカ大陸で最大の国家だったが、2011年に南北に分断された。カラマ相は、「スーダンは大きな国だ。南北分断でその巨大な地下資源が南側に渡った。工業地帯は主に北部と中部に集中していたから、北スーダンの国民経済には大きな影響はなかったが、地下資源や外貨収入源の損失は痛手だ。広大な領土と700万人の国民を失ったわけだから当然だろう。北側は南スーダン国民の独立への意思を尊重するが、分断は結局、南北両国にとって、失ったものが多かったと言わざるを得ない」と述べた。

 同国の貴重な地下資源の原油拠点はほとんど南スーダンに渡ってしまった。現在の原油生産量は日量約20万バレルだ。新しい原油開発にも乗り出している。米国が対スーダン制裁の一部を解消したことで、米国企業もスーダン市場に戻りつつある。「米石油関連企業シェブロンも戻ってくる。2030年までには日量50万バレルを達成したいと考えている」という。

 カラマ工業相は「トランプ米政権が10月、制裁の一部解除を決定したので私企業の経済活動が可能となった。米企業もスーダン市場に投資できるし、スーダン企業も米国市場に進出できるようになる。ただし、政府間交流、例えば、軍事協力や情報交換といった交流はまだない。米国はわが国をテロ支援国家リストに載せているからだ」と指摘した。

 スーダンはイスラム過激派テロ組織「イスラム国」(IS)壊滅作戦では米国と協力している。スーダンのイスラム教は穏健だ。「如何なるテロ活動も容認しない」という強い信念を有しているという。

 エジプト東部シナイ半島北部のモスク(イスラム礼拝所)で300人を超える犠牲者がでたばかりだ。エジプトはアラブ諸国では大国であり、軍事力もある。なぜエジプトはテロ対策で勝利できないのかを聞いてみた。

 「武力でテロに勝利することは容易ではない。イスラム教社会は全てのグループと対話をし、話し合うべきだ。残念ながら、イスラム世界では民主主義が定着していない。民主主義体制の欠如がテロを生み出す温床となっている面が否定できない」と答えた。

 会見ではバシール大統領のロシア訪問、ロシア製戦闘機スホイ35(Su-35)の購入問題なども質問した。アラブ諸国で初めてロシア製戦闘機の購入問題は少々、厄介な政治問題だけに、同相も返答には苦慮していた。米紙ワシントンタイムズの購入報道が正しかったことを認めたが、購入交渉はまだ終わっていないと明らかにした。

 同国最大の投資国中国との関係については、「中国はわが国の良きパートナーだ。中国は当初、原油開発に積極的に投資してきたが、ここにきて道路、橋建設など土木業、建設業、電気関連分野など産業インフラにも投資している。世界の企業が制裁ゆえにスーダン市場への進出を躊躇していた時、中国企業はわが国を積極的に支援してくれた」と述べた。

 カラマ工業相は最後に、「日本企業がスーダンに進出し、投資してくれることを期待している。例えば、自動車製造、道路・鉄道建設から原油・鉱山開発まで様々な産業分野で日本の投資を期待している」と語った。

ウィ―ンで展開された「北」工作活動

 ‖膣攅匐機爆発テロ事件が発生して今日で30年目を迎える。死者115人を出した同テロ事件は音楽の都ウィ―ン経由で始まった。ウィーン市立公園からリンクを渡ると「ホテル・アム・パークリング」が見える。爆発テロ事件の実行犯の2人、金勝一と金賢姫は犯行前に同ホテルに宿泊している。

 2人は同ホテルに5日間、宿泊した後、ウィーンからベオグラードへ旅立つが、ウィーンでは大韓航空858便爆発後の逃避のための航空チケットを購入する一方、ウィーン旅行をする日本人親子の役割を演じている。ちなみに、金勝一は犯行後、バーレーンで服毒自殺、爆発事件後拘束された金賢姫は1990年4月12日、大統領特別赦免を受けている。

 同テロ事件を受け、米国は翌年1988年1月20日、北朝鮮をテロ支援国家に指定した。ブッシュ政権は2008年10月、テロ支援国家指定を解除したが、トランプ米大統領は今月20日、約9年ぶりに再指定したばかりだ。

 ∨鳴鮮の欧州唯一の直営銀行「金星銀行」(ゴールデン・スター・バンク)がウィーンで1982年開業された。「金星銀行」の開業を支援したのはオーストリアのクライスキー社会党(現社民党)単独政権だった。同銀行には不法武器密輸や核関連機材取引に関与しているという疑惑が度々浮上したが、社会党政権の加護もあって、大きな政治問題とはならなかった。しかし、オーストリアで2000年2月、親米派の国民党主導のシュッセル政権が発足して以来、米国による「金星銀行」壊滅作戦が本格的に始まった。
 同銀行は北朝鮮の欧州工作の経済的拠点として利用され、北の麻薬密輸、ミサイル輸出、偽造米紙幣などの工作にも深く関与してきたことはこのコラム欄でも度々紹介した。

 同銀行は2004年6月末、北側が自主的に営業停止して、銀行の歴史に幕を閉じたことになっているが、真相は異なっている。北が活用した「金星銀行」を営業停止に追い込んだのは米国中央情報局(CIA)と米国家安全保障局(NAS)の工作、オーストリアの当時のシュッセル政権の連携によるものだ。

 「金星銀行」が不法な経済活動を実施していることを掴んだCIAはシュッセル政権にその証拠書類を提示、銀行の閉鎖を要求した。CIAが提示した書類の中にはオーストリアの政治家たちが北側を支援してきたことを示すものも含まれていた。

 米国がそれらをメディアにリークする危険性があることを知ったシュッセル政権は米国側の要求に応じ、銀行の閉鎖を決定し、財務省独立機関「金融市場監査」(FMA)に「金星銀行」の業務監視を実施させた。米国が不法経済活動の証拠をつかんだことを知った北側は、強制閉鎖に追い込まれる前に自主的に営業を停止したというわけだ。


 大韓航空機爆発テロ事件の犯人2人は1984年8月にもハンガリーから車を利用してウィーン入りしている。ウィーンについて、金賢姫はその著書「いま、女として」(文藝春秋社)の中で「はじめてのウィーンの町は、ひたすら緊張を強いられる不慣れな町でしかなかった。特別な感銘を受ける心の余裕などまったくなかった」と記している。

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▲「金星銀行」の幹部、権栄録氏(ウィ―ンの北朝鮮大使館の中庭で撮影)

 「金星銀行」の責任者だった権栄緑(コン・ヨンロク)氏は2009年末、平壌に帰国したが、ウィ―ン駐在期間、ウィーン市1等地にあるカジノによく通っていた。彼は結構、ウィーン時代を堪能していたわけだ。

「南」が「北」より優れている証明?

 世界の大多数は韓国は独裁国家・北朝鮮より全ての点で優れていると考えている。当方もそう考えたい一人だが、100%断言できないことが少々悔しくもある。

 ラムズフェルド米国防長官(当時)が2002年、夜間の朝鮮半島の衛星写真を紹介し、「韓国は夜でも明るく、北朝鮮は闇の中に完全に消滅している。その南北のコントラストを見れば、南北のどちらが発展しているかという質問の答えは一目瞭然だ」という趣旨の内容を述べたことがあった。

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▲ソウル江南大路の夜景(韓国観光局公式サイトから)

 朝鮮半島の夜間の衛星写真は明らかだった。韓国は経済成長し、夜も光を灯している。一方、北は暗闇の中に完全に消えていた。経済的発展という観点からいえば、韓国国民は北の国民より数段、幸せだろう。文明が暗闇から光を求めて発展してきた歴史とすれば、光に満ちた環境圏はそれだけで文明の証明だ。

 一方、北朝鮮国民はどうだろうか。故金日成主席が目標として掲げてきた「白いご飯に肉のスープを食べ、瓦の家で絹の服を着て暮らす」生活どころか、飢餓寸前の状況下にある。人間の基本的権利すら保証されない国で生きている国民が幸せなはずがない(「北の夜空に輝く星は美しいか」2017年8月18日参考)。

 「南北の格差」は衣食住という観点から見れば明確だが、人間はそれだけではないことは言うまでもない。ただし、衣食住も欠けていれば、それ以外の分野を考える余裕がなくなる。衣食住あってこそ次のステップを歩みだすことができる。その意味で、経済的格差は韓国の優位性の決定的な証明ともなるわけだ。

 なぜ、今更そのような話をするのかを説明する。

 北朝鮮兵士が今月、射撃されながらも韓国に命懸けで亡命したが、その兵士が意識回復すると「テレビを見せてくれないか」と頼んだという記事を読んだ。

 23日の東亜日報によれば、元北朝鮮駐英公使の太永浩氏が、「亡命兵士が病床で太極旗を見ながらガールズグループの歌を聞こうとする本当の理由は、目を閉じればまだ北朝鮮で銃弾に追われているという不安感に苦しめられるため、『私が韓国で生きているんだ』と確認し続けようとするもの」と説明したという。 「北亡命兵士は韓国のガールズグループの歌が好きだ」と証言する医者の話も報じていた。

 大韓航空機爆発テロ事件(1987年11月)が発生して今月29日で30年目を迎える。同事件の犯人の一人、女性工作員、金賢姫は逮捕され、ソウルで尋問を受けたが、韓国治安関係者は女性工作員を車に乗せてソウル市内を視察させている。韓国が北朝鮮より優れた国であることを自分の目で確かめさせようとしたわけだ。金賢姫はその著書「いま、女として」(文藝春秋社)の中で証言している。

 脱北者は家族を犠牲にし、知人、友人を捨てて韓国に逃げてきた人々だ。生まれた国が韓国だった国民とは出発が違う。彼らが韓国を第2の故郷と感じ出すまでにはやはり一定の時間がかかるだろう。数少ないが、脱北者が韓国社会に失望して北に戻ったというケースもある。

 韓国が北朝鮮より優れた国家であり、社会であるという証明を考えてみよう。ソウル市内を車で一周しだだけで、韓国社会の優位性が分かるかは不明だが、少なくとも、国民が自由に行き来し、産業インフラは北より数段優れているのが分かる。北ではガールズグループのような歌を聞けないことは間違いない。しかし、韓国の優位性がそれだけだとすれば寂しいことだ。

 韓国は旧日本軍の慰安婦問題に絡んで日本に対して自国の道徳的優位性を主張してきた。それでは、衣食住もままならない同民族の北国民に対して、韓国はその道徳的優位性を主張できるだろうか。

 朝鮮半島の危機が囁かれ、南北の再統一問題も決して遠い先のことではない今日、韓国国民は国家の優位性を北に証明しなければならない時を迎えている。

慰安婦像は韓国の輸出製品か?

 韓国文在寅大統領はここにきて反日路線を躊躇せず歩みだした。その出自は左翼弁護士であり、親北朝鮮派政治家だから自身の源流に戻ったといった方が当たっているかもしれない。

 トランプ大統領の訪韓歓迎晩さん会(11月7日)でのメニューや慰安婦女性の招待だけではない。大統領就任以来、意識的に抑えてきた反日攻勢がここにきて一挙に飛び出してきた感さえあるのだ。(「トランプ氏は韓国の“反日”に一役?」2017年11月11日参考)。

 韓国聯合ニュース(日本語電子版)によると、「韓国国会は24日の本会議で、毎年8月14日を『日本軍慰安婦被害者をたたえる日』とし、慰安婦被害者への支援を拡大することを盛り込んだ慰安婦被害者生活安定支援法の改正案を可決した」という。海外に目を向けると、米サンフランシスコ市議会は今月14日、慰安婦の像と碑文の寄贈を受け入れる決議案を全会一致で可決している。その背後には韓国政府の支援があることは間違いない。文大統領の場合、反日は彼自身の路線だから確信犯といえるわけで、日韓両国の関係は再び険悪化することは避けられない状況だ。

 多くの日本国民は韓国の反日攻勢、慰安婦問題には正直言ってもはや何の驚きもなく、ただ呆れて傍観しているだけかもしれないが、韓国の慰安婦像設置問題は看過できない。日韓両外相(岸田文雄外相と尹炳世韓国外相=いずれも当時)は2015年12月28日、慰安婦問題の解決で合意に達し、両政府による合意事項の履行を前提に、「この問題が最終的、不可逆的に解決することを確認する」と表明しているのだ。韓国国会が可決した「慰安婦の日」関連の改正法には「8月14日を法定記念日とし、慰安婦問題を国内外に伝え、被害者を記憶するための行事などを行う内容が盛り込まれている」(聯合ニュース)というのだ。日韓合意を完全に無視した内容だ。

 それだけではない。日米韓3国が結束して朝鮮半島の危機を乗り越えなけれならない時、反日攻勢をかけるのは軍事的、戦略的にみても賢明ではない。北朝鮮を間接的に支援する政策といわれても仕方がないだろう。

 韓国は慰安婦像をソウルの駐韓日本大使館前ばかりか世界に設置してきたが、これは明らかに世界に憎悪を輸出するようなものだ。サムソンのスマートフォン輸出ではない。韓国政府は民族の憎悪を世界に輸出しているのだ。
 「旧日本軍の蛮行を世界に知らしめるためだ」と弁明するが、それでは韓国兵士のベトナム人女性への性的蛮行や「ライダイハン」問題(韓国兵とベトナム人女性の間で生まれた子供たち)はどうなのか。人の欠点、間違いを糾弾し、自身の問題には目を瞑っているのは人間として品性がないし、国家として2等国家と軽蔑されても仕方がない所業だ(「文大統領「ベトナムに『心の負債』」2017年11月16日参考)。

 韓国は慰安婦問題で「女性の尊厳、人権が蹂躙された」と主張するが、海外での慰安婦像建立はその女性たちの悲しみを輸出製品として世界に送っているのだ。傷口に塩を摺り込んでいるような所業だ。参考までに、韓国は世界的に女性への性犯罪が多い国だ。昔の話ではない。現代の韓国社会の話だ。

 韓国は日本やドイツと同様、世界的な輸出国家だ。自国で製造した商品を海外で売っている。そして韓国にも多くの輸出商品のヒット製品が生まれてきた。自動車からIT製品では世界有数の商品として認められている。

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▲世界に愛と平和を伝える韓国児童舞踏団リトルエンジェルス(ウィキぺディアから)

 工業製品だけではない。韓国には世界に誇る児童舞踏団「リトルエンジェルス芸術団」(1962年創設)があるではないか。英国王室も歓迎し、世界至る所で公演が行われ、その美しさはここで紹介しなくても既に良く知られている。その児童舞踏団が愛されるのは、世界に愛と平和をアピールしているからだ。韓国には憎悪を輸出する国ではなく、愛と平和を世界に伝える国家になってほしい。

サウジとイスラエルが急接近

 イスラム教スンニ派の盟主サウジアラビアとシーア派代表のイランの間で「どちらが本当のイスラム教か」といった争いが1300年間、中東・アラブ諸国で展開されてきたが、ここにきて両派間の覇権争いは激化する気配が出てきた。以下、独週刊誌シュピーゲル(電子版)を参考にその概要を紹介する。

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▲イラン批判を強めるサウジのムハンマド皇太子(ウィキぺディアから)

 攻勢をかけているのはシーア派のイランだ。シリアでロシアと組み、アサド政権を支援。守勢気味だったアサド政権を支え、反体制派勢力やイスラム過激派テロ組織「イスラム国」(IS)を駆逐し、奪われた領土をほぼ奪回する成果を上げている。
 ロシア南部ソチで今月22日、プーチン大統領、トルコのエルドアン大統領、イランのローハー二ー大統領の3国首脳会談が開かれ、シリア内戦の解決に向け国民対話会議の開催で一致し、3国主導のシリア復興プロセスが始まったと受け取られている。

 イエメンではイスラム教シーア派系反政府武装組織「フーシ派」を支援し、親サウジ政権の打倒を図る一方、モザイク国家と呼ばれ、キリスト教マロン派、スンニ派、シーア派3宗派が共存してきたレバノンでは、イランの軍事支援を受けたシーア派武装組織ヒズボラが躍進してきた。スンニ派のハリリ首相は先月、自身の生命が危なくなったとしてサウジのリヤドに逃避行したが、レバノン側は「ハリリ首相暗殺計画はない」と否定し、サウジがイランを批判するために作り上げた話だといった情報も流れている。

 イラクではシーア派主導のアバディ政府に大きな影響力を行使。イラク北部クルド自治州の独立問題でも独立賛成派が住民投票で勝利したが、クルド自治州バルザニ議長は先月29日、突然辞任を表明したばかりだ。イラン側の政治的圧力が功を奏したと受け取られている。米国側がイラク国内のシーア派民兵を撤回させるようにアバディ政府に要求したが、 アバディ首相は拒否し、テヘランを訪問しているほどだ。

 なお、ロシアのプーチン大統領は今月、テヘランを訪問し、エネルギー分野で300億ドル相当の商談を締結している。イランは米国の制裁を恐れる必要なしと豪語し、イラン核合意の破棄を示唆するトランプ米大統領を「国際合意を破る国」と批判している。


 一方、スンニ派の盟主サウジの状況だ、シリア、レバノン、イエメンの3紛争地の背後にはイランのプレゼンスがあることは明確だ。サウジではイランの脅威が囁かれている。イランが中東の覇権を奪い、レバノンからイラン、ペルシャ湾から紅海までその勢力圏に入れるのではないか、といった不安がある。サウジのムハンマド皇太子(32)は反イラン政策を強化している。米紙ニューヨーク・タイムズとのインタビューの中でイランへの融和政策の危険性を警告し、イランの精神的指導者ハメネイ師を「中東の新しいヒトラー」と呼んでいるほどだ。
 ムハンマド皇太子は、「イランの影響の拡大を阻止しなければならない。融和政策は効果がないことを欧州から学んだ。中東の新しいヒトラーが欧州でやったことを繰り返すことを願わない」と指摘している。

 イランの外交、軍事攻勢に対し、サウジはトランプ米政権と結束して対抗する路線を取ってきているが、ここにきてアラブの宿敵イスラエルに急接近してきた。サウジはイランの侵攻に対抗するため軍事的、経済的大国のイスラエルとの関係正常化に乗り出してきたものと受け取られている。

 宿敵関係だった両国が急接近してきた背景には、両国が“共通の敵”を持っていることがある。イランだ。イスラエル軍のガディ・エイゼンコット参謀総長はサウジの通信社 Elaph とのインタビューに応じ、「イスラエルはサウジと機密情報を交換する用意がある。両国は多くの共通利益がある」と述べている。

 ちなみに、イスラエル軍指導者がサウジの通信社の会見に応じたこと自体これまで考えられなかったことだ。この背後にはネタニヤフ首相とサウジのムハンマド皇太子の意向が働いているとみて間違いないだろう。ユバール・シュタイニッツ・エネルギー相はイスラエルのラジオ放送で、「わが国はサウジと非公開な接触を持っている」と認めている。同相はネタニヤフ首相の安全閣僚会議メンバーだ。 

 イスラエルは建国以来、自国がアラブ世界で受け入れられることを願ってきた。イスラエルはエジプトとヨルダンとの友好関係を築いてきたが、最近は密かにアラブ首長国連邦(UAE)にも接近しているという。

 参考までに、米トランプ政権はパレスチナ問題の解決を考えている。その和平案は2002年のアラブ連盟が提案した内容と酷似、アラブ諸国はイスラエルを国家承認し、国交関係を樹立。イスラエルは東エルサレムを首都としたパレスチナ国家を承認し、1967年以降占領した地域から撤退し、難民パレスチナ人の帰還問題にも対応するという内容だ。
 イスラエル側はトランプ大統領の和平案に強い警戒心を持っている。そこでネタニヤフ首相はサウジの反イラン対策を支援する代わりに、パレスチナ和平案でサウジ側がイスラエルの要望を受け入れることを期待しているというわけだ。
 ムハンマド皇太子は今月、パレスチナ自治政府のアッバス議長をリヤドに招待している。イスラエル側の要望に応える外交の一環ではないか、といった憶測が流れている。

 まとめる。サウジの次期国王ムハンマド皇太子は国内の汚職・腐敗対策に乗り出し、著名な王子や閣僚たちを次々と拘束しているが、皇太子の強権行使にサウジ国内でさまざまな意見が出てきている。ここにきて反イラン政策を強化することには、国内の批判をかわす狙いもあることは間違いないだろう。


 一方、イランは軍事的、外交的に成果を上げているが、国内は安定しているとはいえない。1979年のイラン革命前までは近代国家だったが、ホメイニ師主導の革命以来、イラン社会は神権国家か世俗国家かの選択に揺れ、国民も社会も分裂している。

 イランの首都テヘランで今年6月7日、2件の同時テロ事件が発生し、少なくとも13人が死亡、40人以上が負傷した。テヘランの同時テロ事件の背後について、カタールに接近するイランへのサウジ側の報復攻撃という「サウジ関与説」が流れたことがある(「サウジとテヘラン同時テロ事件」2017年6月9日参考)。

 サウジとイランは中東各地で代理戦争を展開させているが、両国が覇権争いで正面衝突するような事態になれば大変だ。中東地域からの原油輸入に依存する日本はサウジとイランの動向から目を離せられない。

ジャマイカ連立からケニア連立へ?

 ドイツで9月24日、連邦議会(下院)選挙が実施されてから早2カ月が経過したが、新政権は依然発足していない。欧州連合(EU)の盟主ドイツの政治的安定を願う他のEU加盟国もメルケル首相主導の新政権の樹立を首を長くして待っているところだ。


 メルケル首相が率いる「キリスト民主・社会同盟」(CDU/CSU)と自由民主党(FDP)と、「同盟90/緑の党」とのジャマイカ連立交渉は4週間以上続いたが、FDPが19日、交渉離脱を決定したことで挫折。それを受け、フランク=ヴァルター・シュタインマイヤー大統領が関係政党の指導者と個別面談し、連立交渉に積極的に介入してきた。ドイツでは異例の大統領介入の連立交渉の行方を占ってみた。


 シュタインマイヤー大統領のポジションは明確だ。新たな選挙の回避だ。そのために、CDU/CSUと社会民主党(SPD)の大連立政権の再現を支持している。前外相の大統領の政治手腕は定評があるだけに、その行方が注目されるわけだ。


A・大統領が大連立政権に拘る根拠について。

‖臈領はSPD所属であり、SPD党への影響力は依然、大きい。
∩軈挙をやり直したとしても、SPDの支持率は増加する見通しはなく、むしろ減少するという世論調査結果が出ている。
O⇔交渉の混乱は極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)の躍進を助ける危険性が出てくること。


 ちなみに、9月24日の連邦議会選の結果によると、CDU/CSUとSPDの大連立政権の場合、議会定数709議席中、399議席を獲得し、数字的には安定政権の発足が可能だ。


B・シュルツ社民党党首は9月の総選挙直後、「社民党は野党になる。メルケル政権に参加する意思はない」と早々と宣言した。
 同党首の根拠は何か。


。昂遒料軈挙でCDU/CSUは前回選挙比(2013年)で約8・6%、社民党も約5・2%それぞれ得票率を失った。大連立政権で約13・8%の得票率が失ったという事実は国民が大連立にNOを突き付けたことを意味する。
▲瓮襯吋誅⇔政権のジュニア政党の立場はマイナスが多い。得点はメルケル首相に行き、失点はSPDに回ってくる。SPDの党独自の政策、社会の公平と格差の是正などの政策が実施できない。



C・シュタインマイヤー大統領とシュルツ党首の23日午後の会談後の行方について。

 大統領は当然、SPDの置かれた立場を強調し、「政権の空白期間が長いのはドイツばかりか、欧州全体にマイナスだ。国家の安定という立場で考え直してほしい」と説得したはずだ。


 それを受け、社民党幹部たちは会合を開いた。12月初めには党大会も控えていることから、社民党は野党に下野するか、それともメルケル連立政権に再び入るかの決断が迫られている。


 シュルツ党首の社民党内での政治的基盤は弱い。ブリュッセルの欧州議会で5年間議長職を勤めたが、ベルリンの政界には疎い。そのうえ、党首に抜擢された後の党の選挙結果は悲惨だ。3州議会選(ザールランド州、シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州、そしてドイツ最大州ノルトライン=ヴェストファーレン州)でことごとく敗北を喫し、本番の連邦議会選では社民党歴史上、最悪の得票率(20・5%)に終わったばかりだ。総選挙後の10月15日に実施されたニーダーザクセン州議会選で初勝利を挙げたものの、シュルツ党首を筆頭候補者に担ぎ上げても選挙に勝てないのではないか、といった不安の声がある。


D・新たに選挙を実施しない場合のシナリオは。

.瓮襯吋觴鸛蠅錬達庁奸殖達咤佞両数政権を樹立し、SPDは政権に参加しないが、それを受け入れる。
■達庁奸殖達咤佞搬舅⇔政権を再発足する。
CDU/CSU、SPDに「同盟90/緑の党」の3党連立政権を発足する。
 各政党のカラー(黒・赤・緑)から「ケニア連立政権」と呼ばれる。

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▲黒、赤、緑のカラーから成る「ケニアの国旗」(ウィキぺディアから)

 SPD内には大連立政権のシナリオを早々と拒否したシュルツ党首への批判の声が高まっている。ヴォルフガング・ティールゼー氏やゲシーネ・シュヴァン氏らは「創造的な解決策」としてケニア連立政権を支持しているSPD幹部だ。


 3つのシナリオでは目下、△最も現実的な選択だろう。その場合、大連立を拒否してきたシュルツ党首の処遇問題が出てくる。同党首が辞任した場合、ガブリエル外相が党首に復帰することが考えられる。ケニア連立政権はあくまでも暫定的、一時的な選択肢だ。

クリスマス市場が狙われている!

 欧州にクリスマス・シーズンがやって来た。アルプスの小国オーストリアでもクリスマス市場は既にオープンしている。子供たちやキリスト教会関係者だけではない。大人たちもなぜか心をワクワクし仕事帰りに市場を訪れ、プンシュ(ワインやラム酒に砂糖やシナモンを混ぜて暖かくした飲み物)を傾ける、といった風景が見られる。

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▲ベルリンのクリスマス市場にトラックが乱入(独民間放送N−TVの中継放送から、2016年12月19日)

 ところで、そのクリスマス市場がいま、危ないのだ。具体的にいえば、イスラム過激派テログループによって狙われているという情報が欧州の治安情報機関筋から流れている。


 例えば、ドイツでクリスマス市場を狙ったテロ計画が発覚し、6人の容疑者が拘束されたばかりだ。ヘッセン州ラジオ放送が21日、捜査当局筋で報じたところによると、テロ対策特殊部隊が同日早朝、カッセル、ハノーバー、エッセン、ライプニッツでイスラム過激派テロリストの住処と思われる家屋に突入、6人のイスラム過激派を逮捕したという。彼らは20歳から28歳のシリア人でエッセン市のクリスマス市場襲撃を計画していたという。治安関係者は過激派の名前や身元を公表していない(後日、爆発物や銃などの物的証拠が見つからなかったことから、警察側は6人を釈放している)。


 クリスマス市場を狙ったテロ襲撃事件は昨年12月19日、ドイツの首都ベルリンで発生している。ベルリン市中央部にある記念教会前のクリスマス市場で1台の大型トラックがライトを消して乱入し、市場にいた人々の中に突入し、12人が死亡、53人が重軽傷を負う事件が発生した。犯人はチュニジア人のアニス・アムリ容疑者(24)で昨年2月からベルリンに住んでいた。


 アムリ容疑者は犯行直後、列車でオランダ経由でフランス東部リヨン市、シャンベリに入り、そこからローカル列車に乗り換え、イタリアのトリノに逃避行を続けたが、2人のイタリア警察に職務質問を受け、撃ちあいとなり、最後は射殺された。クリスマス市場テロ事件はドイツ国民に大きな衝撃を投じたことはまだ記憶に新しい。


 ちなみに、クリスマス市場ではないが、スペインのバルセロナで今年8月17日、白いワゴン車が市中心部の観光客で賑わうランブラス通りを暴走し、少なくとも13人が死亡、100人以上が負傷するなど、OECD(経済協力開発機構)加盟国で少なくとも13件の車両を利用したテロ事件が起きている。そこでクリスマス市場の入り口に車両が侵入しないように、「アンチ・テロ壁」や「ボラード」(車止め、動力によって自動的に昇降するライジング・ボラードも含む)を設置する都市が増えてきた。


 テロ専門家のニコラス・シュトクハマー氏はオーストリア日刊紙エスターライヒ(11月22日)でのインタビューで、「車両がクリスマス市場に突入することを防止する対策が取られてきているが、テロリストたちは爆弾を製造し、それをクリスマス市場で爆発させる計画を考え出しているから、要注意だ」と警告を発している。
 同氏によれば、「ISはシリアやイラクで領土を失ったが、ジハード(聖戦)で訓練されたイスラム過激派が欧州に戻ってきている。彼らは欧州を次の戦地と考え、さまざまなテロ工作を計画している。彼らは聖戦で訓練されたプロのテロリストだ」という。

メルケル首相の指導力に陰りも

 どの国でも連立交渉のテーブルから最初に離脱を表明した政党はその後、他の政党ばかりか、有権者からも批判や制裁を受けるものだが、ドイツの場合はちょっと違うようだ。独週刊誌シュピーゲル(電子版)は21日、世論調査研究所Civeyとの協力で実施した選挙傾向の世論調査を報じたが、それによるとメルケル首相が率いる「キリスト教民主、社会同盟」(CDU/CSU)、「同盟90/緑の党」とのジャマイカ連立交渉から離脱を宣言したリンドラー党首の自由民主党(FDP)が支持率を伸ばす一方、CDUが支持率で初めて30%を割るという結果が明らかになった。

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▲ジャマイカ連立交渉が挫折したことを表明するメルケル首相(CDU公式サイトから)

 リンドラー党首は連立交渉から離脱宣言した直後、有権者や他の政党からの批判に対し、「政党としての信条を放棄してまで政権に参加する考えはない」と言明し、懸命に離脱宣言の背景を説明、理解を求めたが、シュピーゲルは「その必要はないようだ」と指摘し、FDPの支持が伸びているというのだ。

 先の世論調査は連立交渉暗礁直後の20日から21日にかけ5044人を対象にオンラインで実施されたもので、「日曜日に連邦議会選挙が実施された場合、どの政党を支持するか」という質問に対し、FDPの支持率は13・3%で離脱前より1・7ポイント増えた。

 その他、「同盟90/緑の党」も急増し、11・9%で1・5ポイント上昇し、「左翼党」も微増した。一方、メルケル首相のCDU/CSUは29・2%で30%台を割った。同様に、第2党のシュルツ党首の「ドイツ社会民主党」(SPD)は19・5%で遂に20%を下回った。2大政党が支持率を失う傾向は続いていることが明らかになった。

 シュルツ党首は連立交渉挫折直後、CDU/CSUとの大連立政権の再現について、「9月24日の連邦議会選の結果で国民が大連立政権をもはや支持していないことが明らかになった。両党で14%近くの得票率を失ったのだ。わが党はメルケル首相との連立政権はもはや考えていない」と強調し、「わが党は新たな選挙を恐れていない」と豪語していたが、世論調査はSPDの支持率低下は止まらないことを端的に示している。シュルツ党首の周辺から「大連立を組む方がベターかもしれない」といった声が飛び出してきている有様だ。

 ちなみに、シュルツ党首は23日、ベルリンの大統領府を訪れ、フランク=ヴァルター・シュタインマイヤー大統領と今後の政局について話し合う予定だ。SPD出身の同大統領自身は「再選挙には消極的」といわれるだけに、シュルツ党首に大連立政権発足に向け説得するのではないかとみられている。

 一方、2013年に結成し、9月の総選挙で連邦議会に初めて議席を獲得した新党「ドイツのために選択肢」(AfD)は連立交渉が暗礁に乗り上げた直後、「メルケル政権の終焉を告げた。新たな選挙を実施すべきだ」と宣言、更なる飛躍を目指しているが、世論調査によると、1・5ポイント支持率を減らしている。

 ジャマイカ連立交渉が行き詰まった直後に実施された世論調査を見る限りでは、「新たに選挙を実施したとしても政党間の勢力図に大きな違いはなく、最終的には第2ジャマイカ連立交渉を再開するか、大連立政権を樹立する以外の他の選択肢はない」という現実が改めて浮かび上がってくる。

 メルケル首相は、「総選挙の第1党として安定政権の樹立を目指す」と強調しているが、同首相の辞任を求める声が与・野党やメディアの一部から聞かれ出した。“欧州の盟主ドイツの顔”といわれて久しいメルケル首相の辞任を求める声は過去、囁かれたことすらなかった。メルケル首相はその政治的指導力を確実に失ってきているわけだ。

11歳の難民の少年が自殺した

 オーストリア北東部ニーダーエスターライヒ州のバーデンでアフガニスタン出身の11歳の難民少年が自殺したことが明らかになった。難民収容側に落ち度がなかったかなどについて、国民保護官(Volksanwaltschaft)が調査に乗り出している。

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▲ドイツ行の列車を待つ難民家族(ウィーン西駅構内で、2015年9月15日撮影)

 保護者のいない少年は今年2月から6人の兄弟姉妹と共にバーデンの難民収容施設に住んでいた。少年たちが収容された施設は看護などが必要な難民を収容する場所だ。少年の弟がダウン症候群だったからだ。同施設では24時間体制で収容者を加護できる。同時に、ダウン症候群の子供を持つ家族へのヘルプ体制も整っている施設だ。

 少年は11月12日死亡したが、自殺の詳細な背景は明らかにされていない。メディア情報では、11歳の少年はダウン症候群の9歳の弟を世話したり、他の兄弟姉妹を助けていた。最近、万引きで捕まったことがあったという。

 問題点は、7人の兄弟姉妹で最年長の23歳の兄に監護が委ねられていたことだ。だから「23歳の青年にとってその役割は重荷過ぎたのではないか」という声が聞かれるのは当然だろう。保護者がいないため、23歳の兄にObsorge(監護権)が認められ、難民収容施設関係者はこれまで問題はないと受け取ってきたわけだ。

 国民保護官は施設関係者の発言だけではなく、独自調査を始めているという。通常、親戚関係者、兄弟や叔母たちが未成年者の監護権を引き受ける。11歳の少年の自殺後、23歳を含め他の兄弟姉妹はバーデン外に住む親せき関係者に預けられている。兄弟姉妹を引き取った親戚関係者がなぜ監護の責任を最初から担うことが出来なかったか、という疑問が沸いてくる。

 ちなみに、保護者がいない未成年者の難民の監護権問題は今回が初めてはない。アフガン出身の18歳の少年ががんに冒された2人の姉妹の監護人となったケースが報告されている。

 欧州には2015年夏以降、100万人を超える難民が北アフリカ・中東諸国から殺到し、欧州各国はその収容問題に追われた。殺到する難民たちの中には、両親を伴わず、旅券や関連書類すら所持しない未成年者も少なくなかった。「セーブ・ザ・チルドレン」によると、約2万6000人の子どもが家族の同伴なく欧州に到着している。

 オーストリアのメディアは11歳の難民少年の自殺ニュースを大きく報道した。欧州メディアによれば、保護者のいない未成年者が犯罪組織によって性的搾取されているケースがあるという。保護者のいない未成年者の難民の収容について、国際社会はもっと関心と配慮を注ぐべきだろう。

独連立交渉が決裂、新たな選挙?

 ドイツの連立交渉が決裂した。アンゲラ・メルケル首相が率いる与党「キリスト教民主・社会同盟」(CDU・CSU)とリベラル政党「自由民主党」(FDP)、そして「同盟90/緑の党」の3党による連立協議は19日夜(現地時間)、FDPのクリスチャン・リンドナー党首が交渉テーブルから撤退を表明したことから、ジャマイカ連立政権(3党のカラー、黒・黄・緑がジャマイカの国旗と同じことから、通称ジャマイカ連合と呼ばれる)の発足は挫折した。その結果、連邦議会(下院)の新たな選挙の実施、少数派政権の発足、大連立政権の再現まで、さまざまなシナリオが囁かれ出している。

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▲連立交渉から撤退を表明するリンドナーFDP党首(FDPの公式サイトから)

 リンドナー党首は、「連立協議は政策的には前進がなかった。政党間で信頼と共同の土台が欠けていた」と指摘し、「間違った連立政権に参加しない方がベターと判断した」と、連立交渉のテーブルから離脱する背景を説明した。

 交渉では、難民政策と環境問題が争点となってきた。前者では難民の家族呼び寄せ問題でCDU・CSU、FDPと「同盟90/緑の党」との間で違いがあったほか、地球温暖化対策では石炭産業の閉鎖を要求する「同盟90/緑の党」と他の政党間で対立があった。ただし、連立交渉に参加した関係者の話では、「妥協と譲歩に近づいていただけに、FDPの交渉撤退宣言は残念だ」という。リンドナー党首は、「政党が自身の政治信条を重視するのは当然だ。わが党もその政治信条を放棄してまで政権に参加する意思はない」という。

 9月24日の総選挙から4週間に及んだジャマイカ連立交渉は一応、終止符が打たれた形だ。メルケル首相は20日、フランク=ヴァルター・シュタインマイヤー大統領に連立交渉の結果を報告し、今後の対応について協議した。

 現時点では、3つのシナリオが考えられる。/靴燭冒挙を実施する、■達庁奸Γ達咤佞硲藤庁个、CDU・CSUと「同盟90/緑の党」の少数派政権の発足、CDU・CSUと社会民主党(SPD)の大連立政権の再現だ。

 少数派政権発足では、FDPが参加した場合は議会(定数709議席)の過半数355議席に29議席、「同盟90/緑の党」の場合は42議席がそれぞれ足りない。そのため、議会で不信任案が通過すれば政権はいつでも崩壊する危険性が出てくる。
 メルケル首相は、「ドイツは欧州連合(EU)の中心的役割を担う国家だ。ドイツには安定政権が不可欠だ。第1党政党として政権組閣の使命を今後も担っていく」と述べ、安定政権の発足に向け、努力していく意向を重ねて強調している。

 の場合。CDU・CSUはSPDと大連立政権(399議席)を発足する道も考えられるが、シュルツSPD党首は20日、「わが党は責任野党としての役割を果たす考えだ。4次メルケル政権に加わる意思はない」と強調した。
 ただし、SPD出身のシュタインマイヤー大統領が政権空白の長期化を回避するためSPD幹部たちを説得し、大連立政権を発足するよう要請することも十分考えられる。

 ,両豺隋∀∨議会を先ず解散しなければならない。メルケル首相は新政権発足までの暫定首相の立場だ。そこで議会はメルケル首相を新政権の首班に任命した後、議会を解散し、60日以内に新選挙を実施する、という長いプロセスが控えている。その場合、メルケル首相がCDU党首として総選挙に再び臨むかは不明だ。,両豺隋▲瓮襯吋觴鸛蠅梁狄悄⊃慧渕鵑硫爾韮達庁佞選挙に臨む可能性も排除できない。

 問題は、新たに選挙を実施したとしても、現時点では各政党の支持率に大きな変化がないとみられていることだ。いずれにしても、ジャマイカ連立政権の道を失ったメルケル首相には4選を保証する選択肢はもはやなくなってきた。
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