ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

2018年07月

米国の“国連離れ”はやはり危険だ

 グテレス国連事務総長は25日、職員宛てに「国連の活動資金が底をつきそうだ」という悲鳴にも似た緊急アピールの書簡を送った。事務総長によると、加盟国193カ国中、期日までに分担金を支払っていない国は81カ国にも及ぶという。それ自体、決して新しいことではないが、未払い国の中に最大分担金拠出国の米国が含まれていることだ。

 米国は今年、全体の22%、総額5億9140万ドルの分担金を支払う義務を負っているが、それが遅れれば、国連の活動が難しくなるのは当然だ。事務総長は職員に経費の削減と節約を指示しているほどだ。

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▲「イラン核合意」離脱を表明したトランプ米大統領(2018年5月8日、ホワイトハウスの公式サイトから)

 大統領に就任して以来、トランプ大統領は国連機関を「米国民の税金を浪費するだけで成果のない機関」として、これまで何度も批判してきた。批判だけではなく、国連教育科学文化機関(ユネスコ)から脱退する一方、国連人権理事会からも離脱を宣言したばかりだ。トランプ氏の下で米国の“国連離れ”は着実に進んできた。

。横娃隠掲10月、米国務省はパリに本部を置くユネスコから今年末までに離脱すると表明した。その理由は「ユネスコの政治化」だ。具体的には、ユネスコがパレスチナ自治区の「ヘブロン旧市街」をイスラム教の遺跡として世界遺産に登録したことに、親イスラエルのトランプ政権が反発した結果と受け取られている。

▲肇薀鵐彑権は6月19日、スイス・ジュネーブに拠点を置く国連人権理事会からの離脱を表明している。ニッキー・ヘンリー米国大使は同日「政治的に偏見が強く、反イスラエル色が濃い」とその理由を説明している

9駭▲僖譽好船米駝欝澪兒業機関(UNRWA)は7月25日、パレスチナ自治区で働く職員267人を削減すると発表した。トランプ米政権は今年1月、UNRWAへの拠出金の大幅凍結を明らかにし、昨年の3億6000万ドルから今年は6000万ドルしか拠出しないと発表している。米国主導の中東和平交渉にパレスチナ自治政府のアッバス議長が拒否していることに対するトランプ政権の報復の意味合いがある。

 その他、トランプ政権は昨年8月4日、地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」から正式に離脱を国連側に通知。そして今年5月8日には、イランと米英仏中露の国連安保理常任理事国に独が参加してウィーンで協議が続けられ、2015年7月に合意した「イラン核合意」から離脱し、解除した対イラン制裁を再実施していく旨の大統領令に署名している。

 ちなみに、欧州連合(EU)の盟主ドイツのメルケル首相は同月11日、米国のイラン核合意離脱について、「大きな懸念だ。核合意は理想からは程遠いかもしれないが、国連安保理事会決議で採択された合意を一方的に離脱することは正しくない。米国のイラン核合意離脱は国際社会に大きなダメージを与え、国際秩序への信頼を破壊している」と警告している。 

 以上、トランプ氏の大統領就任後の1年半余りの短期間で、2つの国連機関から離脱を表明し、国連安保理決議で採択された「イラン核合意」からも離脱を表明したわけだ。トランプ政権は明らかに反国連、国連離れ外交を主導していることが分かる。

 興味深い点は、国連機関からの離脱の主因がイスラエル問題と密接に関連していることだ。反イスラエル色の強いユネスコや人権理事会から離脱し、パレスチナ人の救済に取る組むUNRWAに対しては兵糧攻めに出ている。「イラン核合意」離脱もイスラエルの安全問題と密接に関連がある、といった具合だ。

 なお、国連国別分担率で中国は2019〜21年の通常予算で日本を抜いて第2位になる予定だ。そうなれば、米中は国連の分担金で1位、2位となるわけだ。両国の違いは、“国連離れ”を見せる米国に対し、中国は世界制覇の野望のため国連を積極的に利用していることだ。

 例えば、習近平国家主席が提唱した新シルクロード構想(一帯一路)を実現するため、北京は国連工業開発機関(UNIDO)を下請け機関として利用し、対アフリカ、バルカン諸国へ経済支援外交を展開させている。

 中国主導の国連外交を考えると、トランプ米政権の“国連離れ”は戦略的に危険だ。米国は“国連離れ”ではなく、国連の改革にもっと関与すべきだ。「安保理改革」だけではなく、「国連の2院制」など抜本的な国連改革案はさまざまな専門家から出されている。同じ価値観を共有する国際機関創設も一つのアイデアだろう。

「非生産的なコラム」かもしれないが

 自民党の杉田水脈衆院議員が月刊「新潮45」に寄稿し、「『LGBT』支援の度が過ぎる」の中で「性的少数派(LGBT)は非生産的だ」、「LGBTのカップルのために税金を使うことに賛同が得られるか」と指摘したことが報じられると、性的少数派ばかりか、マスコミや政治家も巻き込み、寄稿者への批判の声が飛び出しているという。

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▲フォルクス庭園の池で遊ぶ鴨の親子(2018年7月27日、ウィ―ンで撮影、ブログ「ウイーンからカミちゃんのつぶやき」から)

 当方の感想は、「杉田議員の言いたい内容は多分正しいが、問題があるとすれば、『非生産性』という不適切な言葉を使用したことだ」という点に集約できる。人間の出産は工場の生産活動ではない。子供の出産を生産性問題と誤解されるような表現を恣意的に使用したことだ。ひょっとしたら、雑誌関係者がインパクトのあるタイトルが必要と考えた末、「非生産性」という表現が飛び出してきたのかもしれないないが、性的少数派を不快にさせたのは当然だろう。

 同性カップルは子供を産むことができない。極めてシンプルな問題だが、杉田議員を批判する人々は「非生産性」という表現から性的少数派への蔑視を感じ取り、「LGBTのカップルのために税金を使うことに賛同が得られるものでしょうか」という政治家・杉田議員の主張に至っては、議員の傲慢さを感じ、もはや冷静に議論できなくなったのだろう。杉田議員のケースは、政治家は如何なる場合でも発言内容ばかりか、表現にも慎重であるべきだ、という基本的な教訓を思い出させる。

 杉田議員の意見は大きくは間違っていないと思うが、性的多数派からは杉田議員擁護の声は余り聞かれない。むしろ、性的少数派と同様、杉田議員の「非生産性」という表現を激しく批判する声が聞かれる。「非生産性という表現が問題だが、その主張は正しい」といった意見が飛び出しても可笑しくないはずだ。
 性的多数派は性的少数派問題になると何故か躊躇し出す。寛容な人間であることを証明したい、という抑えることができない衝動を感じるからだろうか。

 当方は性的少数派の同性婚には反対する。当方は性的少数派の人々からは「演じているようなうさん臭さ」を感じてきたが、最初から性的少数派として生まれてきた人が実際に存在すること、彼らは社会の厳しい差別にあっていることを知った。

 その意味で、性的少数派への社会的差別は撤廃されなければならない。幸い、性的少数派への差別は少なくなってきている。アイルランド出身の著名な劇作家オスカー・ワイルド(1854〜1900)や英国の数学者で人工知能の父と言われるアラン・チューリング(1912〜54年)が同性愛者として体験したような迫害や虐待はもはや考えられない(例外はロシア)。

 同時に、性的少数派は社会の多数派と同様の権利を得ることはできないと考える。それこそ「差別だ」と指摘されるかもしれないが、それは差別ではなく、社会の秩序だ。子供を有する家族への税率は子供のない夫婦よりさまざまな点で優遇されている。ななぜならば、子供を産み、成長させ、一人前の成人に育成させることを支援するのが国家の役割だからだ。それを不公平と呼ぶべきではない。厳密にいえば、人は生まれた時から不公平な状況に置かれている。

 民主主義国では、何事でも多数派がその主導権を握る一方、少数派は多数派の連帯と支持を得て、その自由を行使する。両者は主従関係ではなく、相互共存の原則に基づいている。

 重要な点は、性的少数派は多数派の寛容と連帯を誤解し、性的少数派の生き方が主流と感じ出すことだ。多数派は性的少数派問題では口を閉じるが、性的少数派が本流とは考えていない。多くは人権擁護、差別撤廃という観点からの連帯であり、支持だ。

 性的少数派が弱者至上主義に陥り、多数派の権利まで介入した場合、多数派はその対応で苦慮するだろう。性的少数派は多数派から出てくシグナルを間違って受け止めれば問題が生じるだけだ。性的多数派は性的少数派に一定の理解を示す必要があるが、少数派も多数派の秩序を尊重しなければならない(「性的少数派(LGBTIQ)の多様化」2018年6月18日参考)。

 日本は今、少子化問題に直面している。杉田議員の表現を借りるならば、「日本は世界的に非生産的な民族」となろうとしている。杉田議員の「性的少数派は非生産的」という主張は、婚姻とは何か、家庭とは、人間の価値はどこにあるのか、などを冷静に考えてみる機会となれば、少しは“生産的”となるのではないか。

「散歩」とピープルウォーカーたち

 散歩も学問だと初めて知った。独週刊誌シュピーゲル(6月9日号)が「散歩」について興味深い記事を書いていた。人間だけが目的がなくても、歩みだす、すなわち、散歩する存在だというのだ。「今からちょっと外に散歩する」と言い残して出かける愛犬や猫は多分、いないだろう。

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▲夜の闇に浮かぶ教会の塔(2018年7月27日、ウィーンで撮影)

 散歩学は独語で Promenadologie(英 Strollology)と呼ばれ、スイスの社会学者 Lucius Burckhardt が1980年代に考え出し、独カッセル大学で学問として広がっていった。散歩学は、人が環境をどのように認識し、人と環境の間の相互作用などを分析する学問という。それだけではない。散歩は「何か大きなことを考える手段」となるという。日常茶飯事の出来事や災いに思考を集中せず、宇宙とは、何のために生きるのかなど、喧騒な日々、忘れてしまった「大きなテーマ」について、歩きながら考えるのが散歩学の醍醐味という。

 確かに、文豪ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(1749〜1832年)もデンマークの哲学者セーレン・キュルゲゴール(1813〜55年)も、あの“楽聖”ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770〜1827年)も毎朝、目が覚めると、朝食前に30分ほど散歩したという。ウィーンの森には「ベートーヴェンの散歩道」と呼ばれる場所があるほどだ。そして「大きなテーマ」について考え、特にはインスピレーションを得たわけだ。ベートーヴェンは散歩時には常に鉛筆と紙を持参していたという。われわれはキュルゲゴールでもベートーヴェンでもないが、それでも「大きなテーマ」について懸命に思考を集中するのもいいだろう。

 欧米社会では愛犬と散歩する時間がない人に代わって犬と散歩する人がいる。もちろん、手数料を払う。ところで、シュピーゲル誌によると、散歩したくても1人ではしたくない人のために一緒に散歩する人々が出てきた。新しいビジネスだ。一緒に散歩する人は People Walker と呼ばれるプロの散歩人だ。話しながら、何か大きなテーマについて語り合う。現代は全てがビジネスとなる時代だ。

 当方も散歩に出かけた。大きなテーマについて考えるためだ。今考えているテーマは、どうして「暗闇」が生まれたかだ。電気を消せば、部屋は暗くなるし、太陽が隠れれば暗くなる、なんて言わないでほしい。聖書の「創世記」によれば、「神は『光あれ』と言われた。すると光があったという。そして神は光とやみとを分けられた」というのだ。

 そこら辺の神の創造プロセスについて、米TV番組「スーパーナチュラル」(Supernatural)のシーズン11は興味深いストーリーを展開させている。神は光を創造するために妹の「暗闇」(ダークネス)を押し込めてしまった。神は大天使ルシファーと連携して妹「暗闇」を閉じ込めることに成功するが、終わりの時には閉じ込められていた暗闇が出てくる。その暗闇(アマラ)は兄に負けないほどパワフルな存在だ。「神」と「悪」の2元論の世界ではなく、“神のファミリー物語”として描かれている点が非常にユニークだ。

 宇宙には暗黒物質が存在する。寿命が切れた星はブラックホールに吸収され、消滅していく。暗黒は決して空想の存在ではなく、宇宙のかなりの部分が暗黒物質で満ちているというのだ。

 散歩しながらここまで考えてから自宅の仕事場に戻ってきた。次の散歩では「光と闇はどのようにして共存できるか」について考えていこうと思っている。

「信頼醸成」から「非核化」へ険しい道

 27日は朝鮮戦争の休戦協定締結から65年目を迎えた。北朝鮮は同日、朝鮮戦争(1950〜53年)で死亡した米兵の遺骨(約55柱)を返還した。シンガポールの米朝首脳会談でトランプ大統領と金正恩朝鮮労働党委員長の間で合意していた内容だ。北側の「信頼醸成」への一歩として評価されている。

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▲北の非核化交渉の最前線にたつマイク・ポンぺオ米国務長官(米国務省公式サイトから)

 それに先立ち、北朝鮮北西部・東倉里のミサイル実験場を廃棄する動きが見られるというニュースが流れた。これも北側の「信頼醸成」への一歩と好意的に受け取られた。米朝首脳会談前には、北側は同国北東部・豊渓里の核実験場の閉鎖を実施し、首脳会談開催への「信頼醸成」の一環として受け取られ、北で拘束中の3人の米国人を釈放した。これまた「信頼醸成」から出た北側の善意と解釈された。

 北側は、重要なイベントの前後には必ずと言っていいほど通称「信頼醸成」と受け取られる行動に乗り出す。なぜ北側は「信頼醸成」に拘るのか。「米朝間の長い冷戦関係、敵対関係を想起すれば、その理由は分かる」という意見もある。本当にそうだろうか。朝鮮半島の現代史をちょっと振り返るだけでも、約束の放棄、隠蔽工作は北側が得意としてきた戦略だ。その北側の瀬戸際外交と「信頼醸成」はパッケージではないか、という疑いが払しょくできない。

 南北間の融和政策を進める韓国の文在寅大統領は25日、「北朝鮮の非核化に向けて良い兆候だ」と早速評価したが、日頃、大統領府の外交部無視のやり方に不満を感じている康京和外相は26日、「北のミサイル実験場の廃棄の動きは意味ある措置だが、検証が必要だ」と、極めて冷静に受け取っている。

 韓国の融和政策は最終的には南北再統一を目指すが、米朝間の接近は北の非核化が目的だ。シンガポールで6月12日に開催された米朝首脳会談はそのために開かれた。単なる米朝間の関係改善のためではない。ひょっとしたら、関係改善は非核化が実現された暁には実現するかもしれないが、逆ではない。非核化も実現されていない時に米朝両国関係が北側の度重なる「信頼醸成」の結果、改善されたとしても、その土台は非常に脆弱なものに終わるだけだ。

 予想されたことだが、トランプ大統領は北側の信頼醸成の度に好意的に受け取っている。米兵の遺骨返還に「米兵家族にとって素晴らしい時になる」と述べ、友達になったばかりの金正恩氏に感謝の意を表明したばかりだ。

 北の非核化を願う日本にとって幸いな点は、米朝交渉の最前線にいるポンぺオ国務長官が25日、上院外交委員会の公聴会で「北朝鮮が現在も核物質の生産を続けている」と明らかにし、北の「信頼醸成」攻勢にもかかわらず、冷静に北の非核化の動向をフォローしていることだ。

 同国務長官によれば、「北朝鮮は、北西部・寧辺に使用済み核燃料再処理施設とウラン濃縮施設を保有し、核兵器に使われるプルトニウムとウランを生産している。平壌近郊にも秘密ウラン濃縮施設(カンソン)が存在する」(時事通信)というのだ。

 繰返すが、北側の狙いは、「信頼醸成」に基づいた米朝関係の改善、そして「終戦宣言」の実現を通じて対北制裁の早期解除を獲得する一方、非核化はあくまでもその後のテーマとすることにある。

 北側が本当に「信頼醸成」に拘るのならば、自国の核関連施設に関する冒頭申告書を提示することだ。どこに核施設があり、何基の核兵器を保有しているかなどの非核化への基本的情報を早急に明らかにすることだ。いくらさまざまな「信頼醸成」手段を繰り出したとしても意味がない。北の「信頼醸成」が最終的には“信頼破壊”に終わることを余りにも多く目撃してきたからだ。

 国際社会は北側が非核化周辺をうろつくのではなく、実際それに乗り出すことを期待している。気になる点は、北側指導部で非核化についてまだコンセンサスがなく、一部強い反対があるという情報が流れていることだ。北の非核化のソフトランディングは少し時間がかかったとしても必ず実現されなければならない。

米国で「左翼に関わるな」運動が話題

 海外反体制派中国メディア「大紀元」(日本語版7月25日)で注目すべき記事が掲載されていた。記事は「草の根運動『左翼に関わるな』キャンペーンが米国で話題」というタイトルで、「米国のSNSで『関わるな(Walk Away)』が6月末からムーブメントになっている。民主党を支持しない意思表示で、その理由を動画や写真をネットに掲載するというキャンペーンだ」という。全文は「大紀元」を読んで頂きたい。米国社会の最新のトレンド報告だ。

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▲首脳会談後のトランプ大統領とプーチン大統領の記者会見(2018年7月16日、CNNの中継放送から)

 冷戦の終焉後、ポーランドやスロバキアで共産政権時代の罪悪を検証しようという動きがあった。時間の経過と共に、国民の記憶が薄れ、新しい世代は共産政権の実相を知らないことから、共産主義への恐れが薄れていく。それを回避するために共産政権時代の罪悪を検証しようという運動だった。

 米国の場合、冷戦時代から民主主義国家のリーダーとして旧ソ連・東欧共産政権の打倒で大きな役割を果たした。特に、レーガン政権時代には共産主義世界を「悪」と規定した。レーガン大統領自身、民主国家陣営と共産国陣営の「善悪の闘争」と見なしていた。

 問題は、米国民は共産政権の実態を体験していないことだ。だから、旧ソ連・東欧共産政権が崩壊し、その思想が米国内に入り込み、共産主義的思潮が大学で浸透してきた時、国民も社会も共産主義への免疫がない。それをいいことに、リベラルなメディアが若い世代を煽った。米国内の最近の容共的傾向は、冷戦時代の体験がなく、共産主義の実相を知らない西暦2000年以降に社会人となった若い世代が支配的になってきたことと無関係ではないだろう。

 もちろん、その背後には、ロシアや中国が米国内でさまざまな情報工作を展開。特に、中国は「孔子学院」を通じて米国内の左翼知識人、メディアをオルグしている。米国では約100の大学に「孔子学院」がある。米連邦議会上院の情報委員会の公聴会で2月13日、クリストファー・ライFBI長官(当時)が、スパイ活動の疑いで孔子学院を捜査していると述べている。米大学内の「孔子学院」の情報活動についてはこのコラム欄でも紹介済みだ(「米大学で『孔子学院』閉鎖の動き」2018年4月13日参考)。

 米国のキャンペーンの発起人、ブレンドン・ストラカ氏(26)は「最近の左のメディアは本当の民衆の声や体験、考えを無視しています。民主党に対する失望と否定は、このキャンペーンの支持者です。左派メディアや民主党は、米国人のためになることを、何もやっていない」と「大紀元」英語版の取材に答えている。
 
 「大紀元」によると、CNNは、「左翼に関わるな」運動が「ロシア宣伝工作による自動発信システム(bot、ボット)」だと報じ、運動に関わらないように呼びかけている。

 興味深い事実は、米ロ首脳会談後のトランプ大統領とプーチン大統領の共同記者会見でプーチン大統領が、「ブラウダー氏(米国出身のビジネスマン)のパートナーは違法にロシアで50億ドルを稼ぎ、米国に送金したが、ロシアにも米国にも税金を払っていない。彼らは4億ドルをヒラリー・クリントン氏の選挙活動資金として渡した」(大紀元)と述べたが、リベラルなメディアはこの発言内容をほぼ無視したことだ。ブラウダー氏はロシアで1996年にエルミタージュ社を創業し、一時は外資系企業でロシア国内トップの資産を保有した。2005年、ロシア国家安全機密に違反したとして、ブラウダー氏は入国を禁じられた。

 当方は米ロ首脳会談の記者会見をCNNでフォローしていたが、CNNはロシアの米大統領選介入疑惑に集中するだけで、クリントン氏への選挙活動資金問題をテーマにすることを回避していた。これなどは典型的な情報操作だろう。客観的にいえば、ロシア大統領が証言したクリントン氏への選挙資金問題はニュース・バリューがある。CNNはそのテーマを恣意的に無視し、“トランプ叩き”に腐心したわけだ。

トランプ氏の「2重否定」と「大文字」

 トランプ米大統領は頻繁にツイッターで発信することで有名だ。そのテキストが発信されると、メディアで即報道され、関係者にさまざまな反響を与える。その発信先が友邦国だけに限られず、独裁国家・北朝鮮の金正恩労働党委員長宛てにも発信するから、メディア関係者もトランプ氏のツイッターを無視できないばかりか、フォローしていないとトランプ氏の政治活動を正しく理解できない。

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▲第45代米大統領のドナルド・トランプ氏(米ホワイトハウス公式HPから)

 トランプ大統領はヘルシンキの米ロ首脳会談(7月16日)でロシアの情報を米情報機関のそれより信頼性があると受け取られる発言をし、与野党から一斉に批判されたばかりだ。トランプ氏はその直後、ホワイトハウスから「2016年の米大統領選への干渉について、「『ロシアではない理由が分からない』とすべきところを『ロシアである理由が分からない』と言ってしまった。私は米情報機関の情報をロシアのそれよりもちろん信頼している」と弁明している。すなわち、一つの否定を入れずに発言したことから誤解が生じたというわけだ。言語学的にいえば、2重否定するところを一つの否定を言い忘れたということになる。

 トランプ氏の説明に基づいて言い直すとすれば、「私がロシアの情報を信頼しないように、米国情報機関のそれを信頼しないということはない」ということになる。少々、複雑なテキストで、最後まで慎重に聞かないと、テキストの2つの not が聞き取れない、といった状況が考えられる。トランプ氏にとって不幸だったが、その2重否定の文の一つの“not”がヘルシンキのプーチン大統領との共同記者会見で欠けてしまったのだ。

 そのトランプ氏が22日、イランのハッサン・ロウハニ大統領へのツイッターで「米国を2度と脅迫するな。さもなければ史上まれにみるような結果に苦しむことになるぞ」とヤクザも顔負けするような脅迫文を発信したが、その脅迫箇所のテキストを“大文字”で発信した。狙いは、もちろん、ロウハニ大統領の注目を一層引くためだ。米大統領から脅迫されたロウハニ大統領は大文字で書かれた脅迫文を読んでどう感じただろうか。

 ことの発端は、普段は穏健なロウハニ氏がトランプ氏のイラン核合意離脱を批判し、米国が11月、対イラン制裁を実施し、イランの原油輸出を止めるならば、軍事対応も辞さないといった内容の強硬発言をしたからだ。普段から激怒しやすいトランプ氏は早速、ツイッターでその脅しに大文字で返答したというわけだ。

 重要な政治行事(ここでは米ロ首脳会談)で一つの否定を忘れ、その発言内容が180度逆にミスリードされた米大統領が過去にいただろうか。敵国の大統領に脅迫文を大文字で発信した米大統領がいただろうか。トランプ氏は文字通り、希少な大統領であり、ある意味で憎めない大統領だ。なぜならば、トランプ氏は忘れた not を直ぐに加えるし、大文字で脅迫することで「今度はミスリードされないぞ」という決意のほどが伺えるからだ。

 いずれにしても、トランプ氏への評価は、何を言ったかではなく、何を実行したかで下すべきだろう。トランプ氏の前任者、オバマ氏は前者で評価された米大統領だが、トランプ氏は明らかに後者の大統領だろう。何かを言うのは瞬間でも可能だが、実際に実行するためには時間がかかる。トランプ氏には忍耐をもってしばらく見守る以外にないだろう(「どちらのトランプ氏が本物?」2017年5月27日参考)。

 願わくは、トランプ氏の側近が大統領の発言の文法上の間違いを即修正させ、強弱をつけるべき時は、「大文字で書いてほしい」と適時に助言できれば、トランプ氏の発言やツイッターの内容にあたふたすることはないだろう。

政治問題化するエジルの独代表辞任

 サッカーのドイツ代表の1人、MFメスト・エジル(Mesut Ozil) が22日、ドイツ代表を辞任すると表明し、その理由として「独サッカー連盟(DFB)内の人種差別主義( Rassismus)と 尊敬心のない無礼な言動」を挙げたことが明らかになると、DFBばかりか、ベルリンの政界にも大きな波紋を投じている。

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▲ドイツ代表のエジル選手(ウィキぺディアから)
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▲エジルの独代表辞任を受け、公式声明を出したDFB(2018年7月23日、DFB公式)

 カタリナ・バーリー司法相(社会民主党=SPD)は同日、「エジル選手がDFBで人種差別主義の犠牲となり、もはやドイツ代表と感じることができなくなった、という表明は大きな警告シグナルとして受け取るべきだ」とツイッターで述べている。

 事の発端は、エジル(29)ともう1人のトルコ系代表、MFイルカイ・ギュンドアンが5月中旬、大統領選挙戦中のトルコのエルドアン大統領と会見し、ユニフォームをもって大統領と記念写真を撮ったことだ。それが報じられると、「ドイツ代表の一員として相応しくない」という批判が高まった。2人をロシア大会に連れて行くのはよくない、といった声すら聞かれた。

 事態が険悪化したのは、ドイツ代表がロシアのワールドカップ(W杯)でグループ戦を最下位で敗北という歴代最悪の結果に終わり、ドイツで敗北の責任を追及する声が挙がったことだ。メディアや一部サッカー界から独代表の“敗北の主犯”としてエジルの名前が頻繁に報じられた。エジルの家族は彼に、「そんな代表チームから辞退すればいい」と激怒したばかりだ。エジルはこれまでドイツ代表として92試合に出ている。2014年のW杯ブラジル大会ではドイツの優勝に貢献したことはまだ記憶に新しい。エジルは現在、英プレミアリーグのアーセナルFCに所属。

 エジルは代表辞任声明(英語で書かれている)の中で「試合に勝てばドイツ人として称賛され、敗北すれれば移民系選手として罵倒される」と少々皮肉を込めて自嘲し、DFBのラインハルト・グリンデル会長への批判を強めている。

 エジルとエルドアン大統領の写真が報道されると、DFBとそのスポンサーはその後のPR活動でエジルを外したことから、エジルはDFBには“望まれていない選手”と感じたという。「友達のルカス・ポドルスキやミロスラフ・クローゼは決してドイツ・ポーランド人とは呼ばれないが、自分に対してはドイツ・トルコ人と呼ぶ。自分がイスラム教徒だからか」と問いかけている。

 エジルの代表辞任について、ドイツの極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)は「メルケル政府が推進する難民・移民の統合政策は空論に過ぎないことを実証した」と指摘し、エジルの代表辞任というタイミングを政治的に利用し、メルケル政権批判を高めていく気配を見せているほどだ。

 一方、ハイコ・マース外相(社会民主党)は「ロンドンに住むミリオネアの社会統合云々は問題にはならない」と一蹴する一方、人種差別主義の指摘に対してはシリアスに受け取らざるを得ないことを認めている。

 エジルは、「家族の出身国の最高指導者に尊敬を払うという意味で会見した。自分はトルコ大統領に会見したのであり、エルドアン大統領ではない」と弁明し、「自分はサッカー選手であり、政治家ではない」と述べている。

 それに対し、ドイツ野党「同盟90/緑の党」のジェム・オズデミル議員は、「それは余りにもナイーブだ。エルドアン大統領は国内で強権をもって多くの反体制派政治家、活動家、人権活動家、ジャーナリストを弾圧している。それを無視して単にトルコ大統領への尊敬を払ったという説明は理解できない」と指摘する一方、「W杯前後のDFBのグリンデル会長やチームのマネージャー、オリバー・ビアホフ 氏の危機管理がまずかった」と説明している。

 与党「キリスト教民主同盟」(CDU)のパウル・ツーミアク青年部代表も同じように、「選挙戦中にエルドアンと会見するのは如何なる弁明があっても余りにもナイーブだ。会見には政治的意図がなかったとは考えられないからだ」と指摘している。

 ちなみに、ドイツだけではなく、トルコでもエジルの代表辞任は様々な波紋を投じている。トルコのメフメト・カサポール青年スポーツ相はツイッターで「我々はエジルの決定を心から支持する」と書き、アブドゥルハミト・ギュル法相は、「代表チームを去ることで、ファシズムというウイルスに対して最も美しいゴールを決めた」とエジルを称賛しているほどだ。

 サッカーの国際試合の場合、FIFA(国際サッカー連盟)は試合前に「われわれは人種差別主義に反対する」という幕を掲げるが、その人種差別主義によって代表が辞任に追い込まれたとすればDFBは信頼を失墜することになる。
 特に、ドイツは2024年欧州サッカー選手権の誘致国の候補に名乗り出ている。「誘致はこれで難しくなった」という声すら出てきている。
 DFBは23日、「人種差別主義はまったく事実ではない」ときっぱり否定し、エジルは社会統合の模範だった選手だ。DFBは今後もさまざまな国の出身者の統合を支援していく考えだ」という声明を公表している。

 なお、エジルは、「自分はドイツ代表のユニフォームを誇りと感動を持って着てきたが、今はそうではない。代表辞任表明は非常に厳しい決定だった。なぜならば、代表チームの仲間やトレーナーたち、そして多くのいい人々がいたからだ」と記している。

猛暑を少し和らげる「幽霊の話」

 とにかく暑い、という。先日、日本に電話した時、知人は猛暑の日々を語ってくれた。当方は40年あまり日本を留守にしているから、日本の夏を忘れてしまった。欧州でも2回ほど、40度を超える猛暑を体験したが、空気は乾燥し、湿気は余りない。知人曰く、「日中はクーラーで何とかしのげるが、夜は体を冷やさないためにクーラーを切って寝るので大変だ」という。

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▲ヘンリー王子とマークルさんの結婚式(2018年5月19日、英BBC放送の中継から)

 そこで猛暑に苦しむ日本の読者のために何ができるだろうかと考え出した。そうだ、「幽霊の話」を紹介すれば少しは暑さを忘れることができるのではないか。このコラム欄でも数回、「幽霊の話」を紹介してきた手前、幽霊は当方にとって決して未知の存在ではない。オーストリア最大部数を占める日刊紙「クローネン新聞」(日曜版)で幽霊の話を紹介していたので、早速その概要を読者に伝えたい。

 英国ロンドン近郊のウィンザー城内の聖ジョージ礼拝堂で5月19日、英王室のヘンリー王子(33)と米女優のメーガン・マークルさん(36)の結婚式が挙行された。ウインザー周辺では10万人以上の人々がヘンリー王子夫妻の新しい門出を祝った。話はヘンリー王子夫妻がエリザベス女王から結婚祝いとして贈られた新居に住む幽霊の話だ。

 その新居はイギリスのノーフォーク州にある王室所有のサンドリンガム別邸だ。周辺は美しい自然に恵まれている。外観は素晴らしいが、実は幽霊屋敷として知る人ぞ知る謂れのある屋敷だった。実際、同屋敷には1963年以降、誰も住んでいない。管理人が定期的に見回るだけだという。

 その屋敷にエドワード7世の息子、アルベルト・ヴィクター(クラレンス公)が生まれた。アルベルトは家族からエディ(Eddy)という愛称で呼ばれていた。彼は学校ではあまり成績の良くない子供だった。大学では豊富な自由時間にポロを興じたり、様々な享楽に耽った。女性から男性、アルコールから麻薬まで全ての享楽の世界に入り込んでしまった。そして1892年、肺炎で死んでしまった。28歳だった。歴史家によると、死因は肺炎ではなく、梅毒だったという。

 問題はエディが亡くなっても彼は自分の屋敷から離れようとしなかったのだ。エディの死後、弟のジョージ(ヨーク公)家族が住んだが、彼らは「屋敷に暗いオーラが漂い、心地よくなかった」という。それ以降、誰もその屋敷に住む者がいなくなったというわけだ。

 エリザベス女王はエディの話を知っていたはずだが、その屋敷をヘンリー王子とマークルさんの結婚祝いに贈呈したわけだ。女王には悪意がなかったはずだ。当方の解釈だが、「若い彼らならば幽霊が出ようが問題ないだろう」という確信が女王にはあったのではないか。ただし、新婚カップルは今、新しい別の屋敷を探しているというニュースも流れてくる。

 ところで、スウェーデンのカール16世グスタフ国王の妻シルビア王妃(73)は、首都ストックホルム郊外のローベン島にあるドロットニングホルム宮殿について『小さな友人たちがおりまして、幽霊です』と述べている。国王の姉クリスティーナ王女(73)も『古い家には幽霊話が付きもの。世紀を重ねて人間が詰め込まれ、死んでもエネルギーが残るのです』と主張している(「欧州王室に『幽霊』と『天使』が現れた」2017年1月6日参考)。欧州の王室では幽霊は既に市民権を有しているのだ。

 幽霊は、生前哀しい人生を送った人間の霊が地上生活から決別できないため幽霊となる場合、ある特定の人物に恨みがある場合、彼らは自身の生きていた周辺に漂い、幽霊となる。
 ちなみに、幽霊の特徴は、幽霊と何らかの関係、相対関係がない限り、その存在がキャッチできないことだ。だから、幽霊が出てきてもそれが見える人と見えない人に分かれる。幽霊が普遍的な存在として認識できない大きな原因だ(「公邸の幽霊は人を選ぶ」2013年5月26日参考)。

入れ墨のないC・ロナルドの「話」

 クリスティアノ・ロナルド(33)は次季からスペインのレアル・マドリードからイタリアのセリエAの王者ユベントスに移籍する(4年契約、推定移籍金1億ユーロ)。ロナルドは既にトリノ入りし、ファンにお披露目の記者会見をしたばかりだ。

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▲ユベントスのユニフォームを見せるロナルド(ユベントスの公式サイトから)

 そのロナルドはシーズン明け前、家族と一緒にギリシャのコスタナヴァリノのリゾートホテルで夏季休暇を楽しんだ。レアル最後のシーズンではチャンピオンズリーグ(CL)で3年連続優勝に貢献する一方、ワールドカップ(W杯)ロシア大会では主将としてポルトガル代表を率いた。強靭な体力を誇るロナルドだが、その体には疲れが溜まっている。家族との休暇で疲れを落とし、ユベントスのロナルドとして心身を整えるのが休暇の狙いだったのだろう。

 スペイン日刊紙が報じたところによると、休暇を終え、ホテルを後にする時、2万ユーロ(約260万円)をチップに置いていった。そしてホテルのマネージャーに「皆に等しく分けてほしい」との言付も忘れなかったという。ロナルドのチップは桁が違う。ちなみに、ロナルドの年俸は推定約3000万ユーロだ。

 蛇足だが、チップ文化のない日本人はチップでは最もケチだといわれている。ウィーン観光地でウェイターに喜ばれる観光客は米国人だ。米国人は通常、10%前後のチップを置いていく。予想外に受けのいい客はロシア人だ。もちろん、海外旅行を楽しむロシア人だから平均的ロシア人ではない。オリガルヒたちだ。彼らの食べ方は少々品性がないが、気分の良い日は桁違いのチップを置いていくことでウィーンのレストラン界では有名だ。
 当方が直に聞いたチップの話としては、ウィーンの日本レストランで家族と共に食事したオーストリアのクルト・ワルトハイム大統領(当時)が食事後、ウェイトレス・ウェイター1人ひとりに50シリングを自分から渡したという話だ。

 チップの話ではないが、最近、俳優界で最も稼ぐといわれるジョージ・クルーニーさん(奥さんは著名な人権弁護士アマルさん)は自分がまだ下積み時代、自分を支えてくれた関係者、友人を食事に招き、関係者にプレゼントをしたという話が流れてきた。ゲストの椅子の下にカバンがあった。その中にはなんと100万ドルが入っていたというのだ。繰り返すが、全てのゲストに100万ドル入りのカバンがあったのだ。クルーニーさんは下積み時代を支えてくれた関係者に感謝を表したかったのだろう。それにしても、100万ドルとは。招かれた関係者の数は何人だったかは知らない。

 話をロナルドに戻す。彼はサッカー界で入れ墨をしていない数少ないスター選手だ。その理由を問われたロナルドは、「入れ墨をすると献血が出来なくなるからね」と説明した。ロナルドは定期的に献血をしていることはよく知られている。神から与えられた体を大切にするという。自宅では野菜を栽培している。彼ほどファンを大切にする選手は今のサッカー界にはいない(ロナルドには脱税問題があったが、スペイン税務当局と罰金刑を払うことで合意している)。

 最後に、ロナルドがユベントスでの記者会見で述べた言葉を紹介する。
 「私は野心的な選手です。居心地のいい場所にとどまって、過去の成功を振り返るつもりはありません。常に集中して前を向き、トレーニングで努力を続けて再びトッププレーヤーであることを証明します」(ユベントスの公式サイトから)。

新法「ユダヤ人国家宣言」の波紋

 イスラエル国会(クネセト)は19日、長時間の審議後、「わが国はユダヤ人国家であり、ユダヤ人に唯一の民族自決権がある」と宣言した「国民国家法」を賛成62、反対55の僅差で可決した。同国には一般の憲法はなく、基本法がその役割を果たしている。新法は基本法と見なされる。なお、新法に批判的なレウベン・リブリン大統領は、「新法は世界とイスラエルでユダヤ民族を傷つけることになる」と警告を発している。

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▲イスラエルの「国旗」(ウィキぺディアから)

 同法の採択が伝わると、予想されたことだが、世界各地から批判の声が挙がっている。 アラブ系のアフマド・ティビ議員は、「新法はイスラエルの民主主義の死を意味する」と主張、「新法によってイスラエルに2グループの国民ができる。権利を有するユダヤ人と単に迎えられているゲストの2通りの国民だ」と述べている。

 以下、新法に対する批判点をまとめる。

 .ぅ好薀┘襪錬隠坑苅固の建国時、「宗教、人種、性別に関わらず全ての国民が平等な社会的、政治的権利を有する」という内容の独立宣言を表明したが、今回の法案は明らかにその独立精神と一致しない。イスラエルはもはや「全ての国民の国家」ではなくなった。
 同国人口の約20%(約180万人)を占めるアラブ系のアラブ語は公用語から外され、「特別な地位」という曖昧な立場に降格させられた。アラブ系少数派から「人種差別、アパルトヘイト(人種隔離政策)だ」といった強い批判が出ている。
 E譽┘襯汽譽爐魎泙燹崚一エルサレム」をイスラエルの首都と認定し、イスラエルを「ユダヤ人の歴史的な国土」と明記している。
 ぁ屮罐瀬篆容植の拡大」について、奨励すべき価値ある国家プロジェクトとして支持を表明している。

 バチカン・ニュースは20日、イスラエルの新法「国民国家法」について「議論を呼んでいる」と述べ、イスラエル国内ばかりか世界でも賛否両論が出ていると報じた。

 また、海外の有力なユダヤ人協会、約17万5000人の会員を有する「米国ユダヤ人協会」(AJC)は新法を批判し、「建国精神からかけ離れ、行き過ぎた内容」と深い失望を表明し、「イスラエルは建国精神を思い出せ」とアピールしている。特に、アラブ語を公用語から外した決定に対し、「イスラエル周辺の政情を考えると、国民の5分の1を占めるアラブ系住民のアラブ語は非常に重要だ」と述べている。

 イスラエルで5月14日、建国70年の記念式典や行事が挙行されたばかりだ。エルサレムでは米国大使館がテルアビブからエルサレムに移転した式典が約800人のゲストを迎え行われた。同時期、イスラエルのパレスチナ自治区で米大使館のエルサレム移転に抗議するパレスチナ人や市民のデモが行われ、それを取り締まる治安部隊と衝突し、ガザ地区だけでも2014年の紛争以来最大の犠牲者数を出している(「イスラエルの70年は成功したか」2018年5月16日参考)。


 イスラエルを取り巻く政治情勢は安定からは程遠い。そのような状況下でクネセトが「ユダヤ人国家の宣言」を可決したわけだ。火に油を注ぐような冒険だ。イスラエル国内で新法に反対する国民のデモ集会が行われ、参加者は「われわれユダヤ人とアラブ人は敵対することを拒否する」と書かれたプラカードを掲げていたという(オーストリア日刊紙プレッセ)。

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