知り合いの外交官に電話しても事務所にいない。時間を置いて再び電話を入れるが、不在だ。同外交官は通常は昼休み前までは事務所で仕事をしているから、当方が電話をかければ、通常は直ぐに電話口に出てきて、「何かあったか」と何時もの台詞をはくものだ。
 その外交官が今週に入って捕まえられない。外交官の携帯電話番号は持っているが、緊急時以外はこちらもかけたくない。秘書によると、知人の外交官は朝から出かけているという。
 しかし、彼はけっして例外ではない。ウィーンに駐在する外交官はこのシーズン、すなわち、クリスマスから年末年始にかけては超多忙なのだ。仕事ではなく、知人やお世話になった人のためにクリスマス・プレゼントを買ったり、食事に招待したりするからだ。この時期をどのように過ごすかで、今後の歩みも決まる、というばかりに、外交官はこの期間、全力で走り回る。
 手にプレゼントの袋を抱えてロビーを動き回る国連外交官の姿が目に付く一方、外部の企業関係者もプレゼントやカレンダーを抱えて国連に頻繁にくるシーズンでもある。
 日本では過去、年始年末の過剰な贈物攻勢が問題となったことがあったが、欧州でも同じような現象はあるが、プレゼントはワイン、チョコレート、カレンダーといったもので、決して豪華なものではない。余り豪華なプレゼントをもらった場合、受け取った側が考えなければならなくなるからだ。
 コストから見た場合、食事に招待する方が予算がかかる。このシーズンに入るとウィーンの高級日本レストランはどこも予約で一杯だ。座席のかなりがゲストを接待する外交官たちで占められている。
 日頃は静かに資料に目をやったり、コンピューター・ワークや会議が多い外交官たちもこのシーズンに入ると、一斉に走り出すわけだ。彼らにとって、真の冬休みはこのシーズンが過ぎ去ってから始まるのだ。