物が安定するためには1本の支えでも、2本の支えでも十分ではない。それでは左右、前後に揺れ動き、風が強い日には倒れてしまう。物が安定する為には最低、3本の支え、柱が必要となる。
 この真理は物だけに当てはまるのではない。人間がその権力を維持したり、その教えを広く述べ伝えるためにも、3人の支えとなる人物や何らかの対象が必要となる。話は少し飛躍するが、イエスには3弟子がいたし、神ですら、天地創造の際には、3人(?)のルーシェル、ガブリエル、ミカエルの3天使長が仕えていたではないか。
 前口上が長くなった。来年5月に最高権力者の座から降りるロシアのプーチン大統領は、その権力を維持し、2012年の大統領選で再びカムバックするために、これまで心を砕いてきた、といわれる。当方はこのブログで「江沢民前総書記に倣え」というタイトルで、「プーチン大統領は第17回中国共産党大会で中央政治局常務委の人事権を掌握した江沢民前総書記の政治手腕を熱心に研究中だ」と書いたことがある。
 そのプーチン大統領がメドベージェフ第1副首相を大統領に推薦する一方、同副首相から「プーチン大統領の政治手腕をロシア国民の為に生かしたい」という要請を受けて首相に就任することに決まったばかりだ。この人事について、「メドベージェフ副首相がサンクトペテルブルク大学法学部の後輩であり、先輩プーチン大統領のもとで17年間忠誠を尽くしてきた人物だから、後継者に任命された」という分析が主流だ。
 確かに、忠誠心のある副首相を大統領とすることで、何時でも首を据え返ることができる一方、自身が首相に就任して大統領を監視しながら、国民に向かって顔を売ることができる。しかし、これでは2本の柱に過ぎない。先に書いたように、安定する為には3本の柱が必要だ。忠誠心のある人物を大統領にし、自身は首相に就任するだけでは決して磐石ではない。なぜならば、権力闘争は熾烈であり、権力の味を一度味わった人物が「はい、分かりました」といってそのポストを譲る、と考えるのは余りにも世間知らずだからだ。
 しかし、賢明なプーチン大統領は3本目の柱を既に準備中だ。すなわち、国営天然ガス独占企業ガスプロム会長のポストだ。大統領職を離れる前までには、同ポストはプーチン大統領に握られているだろう。メドベージェフ副首相が2002年6月以降から就いていたガスプロム会長職を握る事で、プーチン大統領は今後もエネルギーを外交武器として自由に駆使することができる。
 このようにして、プーチン大統領は、忠誠心のある大統領、首相就任、国営天然ガス独占企業ガスプロム会長という「3本の柱」を巧みに操りながら権力基盤を維持する考えであろう。