バチカン放送は昨年9月22日、日本の与党・自民党の総裁選で麻生太郎幹事長が圧倒的な勝利をした時、「日本で初のカトリック信者の首相が誕生」と急報を流し、カトリック信者の首相誕生に大きな期待を寄せたほどだ。あれから9カ月が過ぎようとしている。
 7月には主要国首脳会議(G8サミット)がイタリア中部ラクイラで開催されるが、麻生首相はその前後にバチカン法王庁を訪問し、ローマ法王べネディクト16世を表敬訪問したい意向という。カトリック信者にとって、ローマ法王と会見することは大きな喜びであり、名誉だ。
 首相がG8サミット会議に拘るのは、世界の耳目が集まるサミット会議に参加したいからというより、1人のカトリック信者として法王に会いたいからではないか――当方はここでは好意的に解釈している。
 日本の過去の首相を振り返ると、現職中に病死した大平正芳は聖公会のクリスチャンであった。大平は演説の中で聖書を引用することもあったという。ちなみに、大平はイタリア・ベネチアで開催予定のサミット会議(1980年)に参加できずに急死した。なお、現内閣では与謝野馨財務相がカトリック信者だ。
 麻生首相のバチカン訪問が実現すれば、バチカン側も大歓迎だろうが、同時に、べネディクト16世との会見では日本の死刑廃止問題が飛び出してくる可能性が高い(バチカンは死刑廃止を支持)。
 ところで、日本では政治家の信仰問題が話題となることはほとんどない。日本と好対照は米国の政界だろう。米大統領選挙でも候補者の信仰姿勢が重要な争点となる。いい加減な信仰では国民の信頼を勝ち取ることができない。宗教は飾り物でも見栄でもなく、その人の生き方を示すバロメーターだ。日本とは大きな違いだ。
 麻生首相、日本で良かったですね。ホテルのバーで酒を飲むことが日曜日の礼拝参加よりも好きな首相では、米国では選挙に勝つことは絶対できませんからね。