イラクのキリスト教徒が迫害から逃れるために隣国へ亡命する傾向が絶えない。このままだと同国の少数宗派キリスト教が途絶えるのではないか、といった懸念すら聞こえてくる。
 バチカン放送によると、同国北部キルクークのルイス・サコ大司教はNGO「危機に瀕するキリスト教会」関係者に対し、「イラク国内の少数宗派への迫害が継続する今日、キリスト者にとって希望がない。キリスト者は最も容易に犯罪グループの襲撃の対象となる。イラク治安関係者はキリスト者の安全にあまり関心がない。国際社会はイラク政府に圧力を行使して、キリスト者の保護を要求すべきだ」と語っている。
 同大司教によれば、イスラム教のシーア派が強いイラク南部では「キリスト教徒の家庭は300家庭に過ぎない」と明らかにした。絶滅の危機に直面しているという。
 イラクのマリキ首相は昨年、バチカン法王庁を訪問、ローマ・カトリック教会最高指導者、ローマ法王べネディクト16世と会談したが、法王からはイラク国内のキリスト信者を危惧する声が飛び出したほどだ。
 戦争前に約85万人いたイラクのキリスト教信者(同国人口約3%に相当)は今日、半分以上が国外に避難し、同国南部ではもはやキリスト教のプレゼンスはなく、首都バグダッドと同国北部にかろうじてキリスト教社会が生きのびているだけだ。
 イラク北部モスルでは2008年3月13日、武装集団に殺害されたカルデア典礼カトリック教会のパウロス・ファライ・ラホ大司教の遺体が見つかっている。
 なお、サコ大司教は29日、キリスト教会関係者とイスラム教学者ら50人と共に、イラクの和平と民族間の和解をアピールした。同大司教は「イスラム教徒もわれわれも兄弟であり、神の子だ」と強調し、イスラム教徒のキリスト信者への理解を求めている。