ドイツで第2次メルケル政権がスタートした。キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と自由民主党の3党から成る中道右派政権が11年ぶりに発足したわけだ。 
 ところで、バチカン放送によると、ドイツ連邦議会でキリスト教会に所属する議員が少なくなってきたという。622人の連邦議員のうち、195人の議員がプロテスタント教会に通う。前回選挙後の数より14人減少した。一方、カトリック教徒の数は176人で前回比で3人減だ。
 新旧教会のいずれかに所属する連邦議会議員数は合計371人で、全体の約60%だ。ただし、246人の議員はノーコメントだったという。
 ちなみに、政党の中で教会所属議員の数が最も多いところは、メルケル政権の所属するCDU、全体の約94%。メルケル首相自身はプロテスタント教会の信者だ。
 ドイツでは「教会税」逃れから脱会する信者が増加し、同国で昨年度、新旧両教会合計29万0056人が脱会した。議員先生たちのキリスト教会離れは決して特異なものではないわけだ。
 なお、当方は「独CDUから『C』が消える日」(2008年7月2日)というタイトルのコラムを書いたが、そこでドイツのローマ・カトリック教会ケルン大司教区のマイスナー枢機卿が、「CDUはもはやカトリック教徒にとって絶対支持しなければならない政党ではなくなりつつある」と指摘し、CDUが本来のキリスト教世界観、価値観から離脱してきたと示唆した、と報じた。
 ところで、マイスナー枢機卿の懸念は現実のものになりつつある。新政権で副首相兼外相に就任したFPDのウェスターウェレ党首は同性愛者として政界では有名だ。プロテスタント系キリスト教会では同性愛者の聖職者もいるが、カトリック教会ではいない。
 キリスト教の教えを党綱領にするCDUにとって、家庭問題や倫理問題が争点となった時、自由民主党との間でコンセンサスが難しくなるだろう。それとも、国際金融危機後の国民経済の回復を第一とするメルケル政権にとって、家庭・倫理問題は目下、緊急課題ではないのだろうか。