2013年はあと1日でその幕を閉じ、新しい年が訪れる。そこで遅くなったが、この1年間を振り返る。「当方が選ぶ10大ニュース」としたいところだが、「当方が選んだ3大ニュース」に絞った。

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▲第265代法王べネディクト16世(ウィキぺディアから)

 今年のトップ・ニュースはローマ法王べネディクト16世の退位だ。第2は米国家安全保障局(NSA)の世界的盗聴工作が発覚、そして第3は北朝鮮の張成沢国防副委員長の処刑だ。

 当コラムでは、“なぜべネディクト16世の退位”を今年最大ニュースと選んだかを以下、説明する。米誌タイムは今月11日、恒例の「今年の人」にローマ・カトリック教会最高指導者、ローマ法王フランシスコを選出したと発表した。多くのメディアも南米初の法王、フランシスコ法王の登場を今年の重要ニュースに選んでいるが、現法王の評価は来年以降のバチカン改革の動向次第であり、現時点の評価は時期尚早だ。一方、べネディクト16世の退位表明は世界12億人の信者を有するローマ・カトリック教会に大変革の時を告げた。その影響は今後、さまざまな形で現れてくることが予想されるのだ。

 ローマ法王べネディクト16世は2月11日、心身の限界から退位を表明した。ドイツ人法王は「健康問題」を退位の動機と語ったが、後日、知り合いに対し、「、「神が退位するように言われたからだ」と初めてその真意を明らかにしている(カトリック系ニュース通信社「Zenit」)。
 興味深い事実は、719年ぶりのローマ法王の生前退位表明前後に神秘的な現象が見られることだ。例えば、べネディクト16世が今年2月11日、退位表明した直後、バチカンのサン・ピエトロ大聖堂の頂点に雷が落ちた。イタリア通信ANSAの写真記者が雷の落ちた瞬間を撮影した。イタリアのメディアは一斉に「神からの徴(しるし)か」と報じたほどだ。

 それだけではない。聖マラキはべネディクト16世がローマ・カトリック教会の最後の法王と預言しているのだ。聖マラキは1094年、現北アイルランド生まれのカトリック教会聖職者で預言能力があった。彼は「全ての法王に関する大司教聖マラキの預言」の中で1143年に即位したローマ法王ケレスティヌス2世以降の112人(扱いによっては111人)のローマ法王を預言している。そして最後の法王は生前退位したベネディクト16世だ。

 聖マラキはベネディクト16世について「極限の迫害の中で着座するだろう。ローマ人ペテロ、彼は様々な苦難の中で羊たちを司牧するだろう。そして、7つの丘の町は崩壊し、恐るべき審判が人々に下る、終わり」と預言した。実際、前法王は就任中、聖職者の未成年者への性的虐待事件の発覚、バチカン銀行の不祥事、法王執務室からバチカン内部機密が外部に流出した通称バチリークス事件など多くの難問に直面し、その対応に苦慮したことはまだ記憶に新しい。
 このように、べネディクト16世の退位表明には、神の関与を予感させるものがあるのだ。

 ローマ・カトリック教会ではローマ法王は本来、終身制であり、絶対的な権威を有してきた。1870年には、第1バチカン公会議の教理に基づき、「法王の不可誤謬性」が教義となった。ペテロの後継者ローマ法王の言動に誤りがあり得ないというのだ。「イエスの弟子ペテロを継承するカトリック教会こそが唯一、普遍のキリスト教会」という「教会論」と共に、「法王の不可誤謬性」は、カトリック教会を他のキリスト教会と区別する最大の拠り所だった。

 そのローマ法王べネディクト16世が生存中に退位を表明したのだ。英国国教会のローワン・ウイリアムズ前大主教(在位2002年〜12年)は「べネディクト16世の法王退位表明はペテロの後継者として絶対的権威を有してきた『法王職』のカリスマ性を削除し、(法王職の)非神秘化をもたらす可能性がある」と指摘している。換言すれば、ペテロの後継者ローマ・カトリック教会はべネディクト16世の退位後、これまで踏み込んだことがない道を歩みだすことになったわけだ。その影響はバチカン法王庁だけではなく、世界のキリスト教会との関係にも及ぶことが予想されるのだ。

 べネディクト16世の退位を受けて3月、システィーナ礼拝 堂.で次期法王選出会(コンクラーベ)が開かれ、フランシスコが選出されたことは周知のことだ。「貧者の教会」を標榜し、教会内外から歓迎されたフランシスコ法王は米タイム誌で「今年の人」に選ばれたが、バチカンの改革の時を告げたのは前法王べネディクト16世だ。その意味で、前法王こそ「今年の人」だ。前法王が告げた改革を、後継者のフランシスコ法王が具体的に取り組むことになる。その最初のハードルは来年2月以降に訪れる。