ハーバード大学の国際政治学者ジョセフ・ナイ教授は、「ロシアは将来、中国にガスや原油を供給するガソリンスタンドの存在に過ぎなくなるだろう」と予想している。同教授が言いたい点は、ロシアが抜本的な経済改革を実施しない限り、同国は先端技術の生産・開発力を失い、原油とガスの輸出依存の未開発国の地位に留まるというのだ。

 ウクライナ情勢に関連した欧州連合(EU)の対ロシア制裁はロシアの国民経済を確実に弱体化させている。ルーブルの下落、外国投資・資本の流出などは既に現実化している。
 EUは12日、対ロシア追加制裁を発動した。ロスネフチなど国営石油関連会社、防衛関連会社に対し、資金調達の道を制限した。それに対して、プーチン大統領は報復制裁を検討中という。具体的には、欧米諸国の民間旅客機のロシア上空通過禁止や欧州へのガス供給ストップなどだ。それらが実施されれば、ロシア側にも大きな経済的ダメージが生じることは必至だろう。

 一方、ロシア国民は今のところプーチン大統領の政策を支持し、愛国主義的だ。国内の世論調査によると、約80%の国民がプーチン氏を支持しているが、その支持はいつまで続くだろうか。再選を狙うプーチン氏は国内の反プーチン派への弾圧を強めるかもしれない。そうなれば、ロシアの政情は揺れ動き、その影響は欧州全土に広がることが考えられる。


  ちなみに、プーチン大統領は上海協力機構(SCO)にインドを加盟させ、欧米主導の政治に対し、中国とともに対抗姿勢を示しているが、どこまで実行力のある政策が取れるかは不明だ。特に、ロシアと中国の両国は領土問題を抱え、国益でも相違があるから、中国との連帯といっても限界がある。

 ボディブローを受け続けてきたボクサーのように、ロシアの国民経済は今後、衰退していく可能性が考えられる。その時、プーチン大統領がその帝国主義的な政策を撤回し、欧米諸国との連携を模索する政策に修正するか、欧米との衝突を躊躇せず、突っ走るかの選択を強いられることになる。プーチン・ロシアが中国のガソリンスタンドになり下がったとしても、ロシアは依然、軍事大国だ。欧米側は後者のシナリオをも慎重に検討しておくべきだろう。