ポーランド議会は先月24日、小売店の日曜日営業を2020年までに段階的に禁止する法案を可決した。同国では民主化後、日曜日の営業も認められてきたが、同国で中道右派「法と正義」政権が発足した後、「日曜日は祝日である」として営業閉店に関する法案が議会に提出され、今回可決されたわけだ。ただし、パン店やガソリンスタンドといった小規模店舗は除外され、オンラインショップも同法から外されている。ちなみに、隣国ドイツやオーストリアでは閉店法(Ladenschlussgesetz)が施行されており、基本的には日曜日の営業は禁止されている。

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▲ウィ―ン市のヴィルヘルミーネンベルクのクリスマス市場風景(2017年11月24日撮影)

 日本のように24時間、1週間7日、小売店の店舗が開いているのが普通の文化圏からみたら、閉店法は理解できないかもしれない。欧州はキリスト教文化圏であり、神が天地創造後、7日目に休まれたという言い伝えに基づき、日曜日は労働を休む日という習慣が定着してきた。その休日に働くとは何事かというわけで、開店法ならず、閉店法と呼ばれる法が施行されてきたわけだ。

 ところで、キリスト教社会の欧州でも世俗化の波はもはや止められない。「神はいない」運動ばかりか、「日曜日廃止運動」まで広がっている。キリスト教会側はそれらの世俗化に必死に抵抗し、カトリック教国では「日曜日を守れ」という運動まで生まれているわけだ。
 例えば、「日曜日に働けば、病気になる危険率が高まる」という警告をカトリック系の「フリーな日曜日のための同盟」がメディアに流し、「定期的に休息することが健康維持には欠かせられない。健康のために日曜日は休むべきだ」といった啓蒙活動を進めているほどだ。

 当方の住むオーストリアでは日曜日にもスーパーや百貨店を開くべきだという声が小売店側だけではなく、消費者の間でも久しく聞かれるが、カトリック教会が必死に応戦し、これまで日曜日閉店は維持されてきた。ただし、世俗化の流れに抗せず後退した教会祝日がある。今月8日のカトリック教会の祝日「無原罪の聖マリア」の日だ。学校も会社も閉まる(「聖母マリアの無原罪の御宿り」は1854年、正式に信仰箇条として宣言された)。

 しかし、同日、多くの小売店は店を開ける。なぜならば、クリスマスを控えて買物客が殺到する時期と重なるから、店を閉めるなんてことはできない。昔は12月8日の教会祝日に店を開くと商工会議所や労組から罰金を科せられたが、今日はそんな心配はいらない。 
 オーストリアの大手小売店では独系ReweグループのMerkurは8日、開店するが、同じグループのBillaは休む。オーストリア系の大手小売店Sparは営業する、といった具合で、大手小売店の間で足並みは揃っていないが、「無原罪の聖マリアの日」の教会祝日は確実に死文化してきた。肝心の教会側ももはや「8日は教会祝日だから全ての店は閉鎖せよ」と叫ぶことはなくなっている。