バチカン法王庁が13日公表したところによると、フランシスコ法王は今年11月19日から26日の間、タイと日本を訪問する。タイ訪問は20日から23日まで、日本は23日から26日の日程となっている。日本では東京、被爆地の長崎、広島を訪ねる。詳細な訪問プログラムは後日、発表するという。故ヨハネ・パウロ2世が1981年、訪日して以来、38年ぶりの日本訪問となる。

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▲日本人信徒と会談するフランシスコ法王(バチカン・ニュースのHPから、2018年12月17日)

 ローマ法王の訪日の主要モットーは「命の保護と全ての生命の保護」だ。その意味は、単に個々の人間の尊厳を守るだけではなく、環境も含まれる。特に、2度の被爆した日本にとっては特別の意味合いがあるという。

 訪日のロゴは、3色の「火」だ。キリスト教徒の殉教者への追悼を込めた「赤い火」、聖母マリアへの「青い火」、そして希望の福音を象徴する「緑の火」だ。

 フランシスコ法王が日本好きであることは良く知られている。同法王は昨年9月12日、日本の伊藤マンショを慰霊する団体のメンバーの前で訪日の希望を吐露した。伊東マンショは、安土桃山時代から江戸時代初期のキリシタンで、天正遣欧少年使節の主席正使、イエズス会員でカトリック教会の神父だ。

 フランシスコ法王は聖職者になった頃、日本宣教を希望したが、健康問題があって実現できずに終わった。同法王は2014年1月に行われたサンピエトロ広場での一般謁見で中東からの巡礼信徒に対し、厳しい迫害にもかかわらず信仰を守り通した日本のキリシタンを例に挙げて励ました、という話が伝わっている。

 また、安倍晋三首相は2014年にバチカンで法王と会談し、来日を招請。日本政府は法王に被爆地の広島・長崎で犠牲者のために祈祷を要請し、東日本大震災の被災地でも被災者に激励の声をかけてほしいとの希望を伝達している。

 日本関連では、フランシスコ法王は2017年2月、キリシタン大名の一人、高山右近を「福者」に認定して、列福式を行った。昨年6月には、大阪大司教区の大司教だった前田万葉師(69)が日本人としては6人目の枢機卿に選出された。ちなみに、バーレーンの首都マナマで開催された国連教育科学文化機関(ユネスコ)の第42回世界遺産委員会は昨年6月、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」を世界文化遺産に登録決定している(「ローマ法王の訪日に何を期待するか」2018年11月27日参考)。

 日本のカトリック教会の信者数は約50万人で人口の1%にも満たない。興味深い数字は、これまで62人の総理大臣が誕生したが、7人はキリスト教徒だった。最近では2008年から09年、首相を務めた麻生太郎氏もそうだ。日本ではキリスト教徒の首相の割合は結構高い。日本には海外から50万人以上の出稼ぎ労働者がいるが、フィリピン、韓国、ブラジル出身者にはキリスト信者が多い。

 ところで、世界のローマ・カトリック教会は目下、聖職者の性犯罪対策で苦慮している。オーストラリア、アイランド、ドイツ、オランダ、米国など世界の各国で数万件の性犯罪が発生してきた。フランシスコ法王の信頼を得て財務省長官を務め、バチカン・ナンバー3の地位を享受してきたオーストラリア出身のジョージ・ぺル枢機卿(78)に対し、ビクトリア州高裁は8月、同枢機卿から提出された控訴要求を棄却した。それを受け、未成年者への性的虐待で今年3月に下った禁固6年の実刑判決は変わらず、ぺル枢機卿は刑務所に再拘留されたばかりだ。

 日本教会もやはり例外ではなかった。ローマ法王フランシスコが今年11月に訪日することになった段階で、このコラム欄でも数回予測していたことだが、日本のローマ・カトリック教会でも過去、聖職者による性犯罪が起きていた。月刊誌「文藝春秋」3月号の中でルポ・ライターの広野真嗣氏が「“バチカンの悪夢”が日本でもあった! カトリック神父<小児性的虐待>を実名告発する」という記事を掲載している。児童養護施設「東京サレジオ学園」でトマス・マンハルド神父から繰り返し性的虐待を受けた被害者が答える内容は非常に生々しい(「日本教会にもあった聖職者『性犯罪』」2019年2月16日参考)。

 日本の一部の報道によれば、ローマ法王の日本滞在中、死刑確定者と法王との面会が検討されているという。死刑制度に強く反対しているバチカンの意向を考え、世界に向かって死刑廃止を呼び掛けるチャンスというわけだが、非常に危険な試みだ。ローマ法王の訪問は基本的には、訪問先の信仰の鼓舞だ。政治問題には関与しないことが原則となっている。世界に大きな影響力を持つローマ法王に死刑廃止を訴えてほしいという願いは“法王の政治利用”といわれても仕方がない。

 バチカン側もメディア受けする問題に専心するよりも、日本教会の信仰の復興に心を砕くべきだ。繰り返すが、フランシスコ法王の訪日目的はあくまでも“司牧(牧会)”だからだ。